孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チェルノブイリ事故から25年 “25年後のフクシマを、現在のチェルノブイリのような状況にしてはならない”

2011-04-19 20:55:23 | 災害

(チェルノブイリ:半径30kmの入域制限地域の検問所 “flickr”より By Wolfhowl http://www.flickr.com/photos/ashenwolf/5595853993/

【「レベル7」の衝撃
日本の原子力安全・保安院と原子力安全委員会は12日、福島第1原発事故の「国際原子力事象評価尺度(INES)」を放射性物質の放出量を踏まえて「レベル5」から2段階引き上げ最悪の「レベル7」にしたと発表しました。これにより、欧州全土に大量の放射性物質をまき散らし、数十人の死者を出し、その後多数のがん患者を出したチェルノブイリ事故と同じくらい深刻と判定されたことになります。

この判断については賛否両論ありますが、原子力利用を推進しようという立場の国からは、日本の過剰反応との不満も出ています。

“国際原子力機関(IAEA)は、チェルノブイリとの違いを強調するなど警戒感をあらわにした。ロシアやフランスなど原発大国からは日本の「過剰評価だ」と指摘する声も相次いだ。背景には、国際的な原発推進路線の「後退」への危機感の強さが読み取れる。”【4月13日 毎日】

チェルノブイリ事故から25周年
そのウクライナのチェルノブイリ事故(86年4月26日発生)から25年が経過しようとしていますが、19日から首都キエフで原子力関連の国際会議が開催されます。

****チェルノブイリから25周年 キエフで各国首脳級会合へ*****
旧ソ連・ウクライナのチェルノブイリ原発事故から25周年となる26日を前に、各国首脳級の原子力安全サミットなど一連の国際会議が19日から首都キエフで開かれる。福島第一原発事故が進行中で、原発の安全性に改めて注目が集まるタイミングの開催となる。

原子力安全サミットは今回の最大の焦点となり、原子力安全や技術向上の国際協力について議論する。
約50カ国が参加。フランスのフィヨン首相、ロシアのメドベージェフ大統領ら首脳級が顔をそろえる。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長や、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥(ゆきや)事務局長も出席。日本からは高橋千秋外務副大臣が出席し、福島第一原発の現状や事故の経緯などについて報告する。

これに先立ち、チェルノブイリ原発事故の今後の長期的対策を主要8カ国(G8)がウクライナと話し合う支援国会合も19日にある。25年前に原子炉からの放射能を封じ込めたコンクリート製「石棺」の老朽化対策が急がれており、財政的な手立てを模索する。
20~22日にも国際会議が開かれ、事故の教訓や、環境や社会への影響などについて討議する。(後略)【4月19日 朝日】
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【「観光というより、教育的な観点から事故の教訓を学び取ってほしい」】
チェルノブイリ原発から半径30キロ圏内では、現在でも居住などが禁止されていますが、一方、観光ツアーとして公開されるなどの動きも出ています。

***大竹剛のロンドン万華鏡 今のチェルノブイリを歩いてみた “レベル7”から25年、観光地化した惨劇の地****
観光バスで行くチェルノブイリツアー
ウクライナの首都キエフを訪れる観光客の間で、ここ数年、ちょっとした人気を集めている観光ツアーがある。チェルノブイリ原発の事故現場を訪れる日帰りツアーだ。キエフからバスに揺られること約2時間半。原発施設内の食堂で食べるランチ込みで150~160ドルという手軽さが受けている。(中略)

キエフ市内を出発してから約2時間、4号炉から30キロメートルの地点に到着した。ここから先は現在も立ち入り禁止区域に指定され、一般市民の居住は許されていない。つまり、先に進むには政府の許可が必要だ。といっても複雑な手続きは必要なく、事前に旅行会社に伝えておいたパスポート情報と照らして、本人確認を受けるだけで済む。
昨年12月、政府はこうした観光ツアーを正式に許可した。それまでは、研究者やジャーナリスト、カメラマンなどにしか許可を与えていなかったが、既になし崩し的に観光ツアーが組まれるようになっており、事実上、政府が追認した格好だ。(中略)

そして爆発を起こした4号炉。防護服を着ることもなくバスを降りて、普段着のままカメラ片手に、事故現場から約300メートルの地点まで近づくことができる。ガイガーカウンターの数値を確認すると、300メートル地点で毎時3.5マイクロシーベルトだった。
現在、4号炉は放射線を遮蔽するために、コンクリートなどを使った「石棺」と呼ばれるシェルターで覆われている。この石棺は老朽化しており、ウクライナ政府は100年耐え得る巨大なシェルターを新たに建設する予定で、既に基礎工事を始めている。

廃墟の学校に散乱する子供用ガスマスク
4号炉を後にして3キロメートルほど離れたところにある町を訪れた。「ゴーストタウン」とも呼ばれ、事故発生から48時間以内に約5万人の住人が避難して廃墟となったプリピャチである。石棺に覆われ記念碑も立つ4号炉より、むしろ、当時の生活が思い起こされるこの町の方が、残酷な事故の記憶を残していた。
中央広場の周りには、旧ソ連時代に典型的だった画一的な団地が立ち並んでいた。窓ガラスは割れ、壁は朽ち果てている。小学校に足を踏み入れると、破れた教科書や壊れたピアノが残されたままだ。放射能から生徒を守るために持ち込まれたものであろう、教室の片隅に散乱している大量の子供用ガスマスクが、事故の悪夢を今に伝えている。(中略)

ウクライナ非常事態省のボブロー副局長は、「観光というより、教育的な観点から事故の教訓を学び取ってほしい」と話す。
実は、事故を起こした4号炉で建設が始まっている新たなシェルターには、16億ユーロ(約1950億円)の資金が必要となる。だが、いまだに6億ユーロ(約730億円)が不足している。
ウクライナ政府は4月19日からキエフで開催する事故後25周年を記念する国際会議で、欧州諸国を中心に国際社会から足りない資金を募る計画だ。事故現場への観光を許可する背景には、チェルノブイリの悲劇が忘れ去られないように、国際社会にアピールし続けたいという思惑もあるのだろう。

25年後のフクシマは……
だが、大惨事となった原発事故の現場に観光ツアーが行くことについては、否定的な意見も多い。
従妹を白血病で亡くしたある女性は、「ウクライナ人の心情として、観光でチェルノブイリに行くことはあり得ない」と話す。彼女は、従妹の死は放射能と関係があるのではないかと考えている。(中略)
チェルノブイリ原発事故では、25年を経た今でも、市民の不安は解消されていない。それでも政府は、事故現場を観光地化してまで、負の遺産の処理に取り組まなければならない。それは、チェルノブイリ原発事故、言い換えれば「レベル7」という事態の深刻さを物語るものだ。
25年後のフクシマを、現在のチェルノブイリのような状況にしてはならない。【4月19日 日経ビジネス】
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事故の後遺症はまだウクライナ経済の重荷となっている
老朽化が進む“石棺”を覆う新しいアーチ状の格納施設建設については、上記リポートにもあるように資金が不足しており、その調達が今回キエフで開催される国際会議の主要目的のひとつとなっています。

****チェルノブイリは、いま  チェルノブイリ、25年後の現実****
・・・焼け落ちた原子炉を封じ込めるため、一時しのぎの策として造られた“石棺”は腐食が進む。
「石棺はこれほど長期間使われるはずではなかった」。同原発の現場監督、アレクサンドル・スクリポフ氏は呼吸マスク越しに、くぐもった声で語る。その背後に立つ1986年4月の爆発事故後に急ごしらえで造られた石棺は、壁の崩壊を防ぐために支柱で支えられている状態だ。(中略)

欧州連合(EU)及び米国の当局は、チェルノブイリ原子炉の恒久的な格納施設を建設する費用の調達に今も苦労している。各国とも世界金融危機で膨大な債務を抱えただけに、税金による支出には及び腰だ。昨年、国際通貨基金(IMF)から156億ドルの緊急支援を受けたウクライナは、単独ではとても費用を賄い切れないとしている。(中略)

欧州復興開発銀行(EBRD)と欧州委員会は4月20日から22日にかけてウクライナの首都キエフで、新しい格納施設の建設費用として各国政府から6億ユーロ(約8億3400万ドル)以上の寄付を募る予定だ。高さ110mのアーチ型の格納施設の建設費用は総額15億5000万ユーロになる見込みだが、EBRDがこれまでに調達した資金は10億ユーロにとどまる。
チェルノブイリ原発のイホール・フラモトキン所長は、原子炉の閉鎖には20億~25億ドルという新規建設と同じくらいの費用がかかると話す。2000年12月にやっと稼働を終了した同原発では、今も3473人が働く。(中略)

スリーマイル島原発の事故では、冷却システムの不具合によって部分的に炉心溶融が起きた。だが死傷者は出なかった。チェルノブイリでは事故後86年7月までに、原発作業員や消防隊員など少なくとも31人が死亡した。
チェルノブイリには4つの原子炉があり、1号炉が稼働したのは77年だ。EBRDによると、事故は83年12月に試運転を終えたばかりの4号炉の過熱が原因で起きた。
爆発によって建屋の屋根が崩れ落ち、燃料棒の一部を含む放射性を帯びた破片類が屋外に放出され、近隣の森林を破壊した。EBRDによると、事故後の86年10月には同原発の別の原子炉での発電が再開され、2000年末まで続いた。事故の後遺症はまだウクライナ経済の重荷となっている。

ウクライナ緊急事態省のホームページによると、現在もまだ215万人が放射能で汚染された土地に住んでおり、30km圏内の立ち入り禁止区域は今も有効だ。検問所では放射能検出器を使い、過剰な放射線を浴びた可能性がある訪問者がいないか確認している。
同省によると、事故当時に旧ソ連の一部だったウクライナは、今年も原発の安全性を維持するために7億2890万フリブナ(約9200万ドル)を支出する。それに加えて、同国政府は2009年に被害者への手当てとして20億フリブナを支払った。事故で障害を負ったとして登録されている人の数は、2010年初めの時点で11万827人に上る。(中略)
「放射線量の高い地点は非常に多く、現在の石棺を解体し、すべての放射性廃棄物を除去する作業がまだ必要だ。それを完了して初めて、チェルノブイリの問題が解決し、人々と環境への危険性はなくなったと言えるのだ」とスクリポフ氏は語る。 【3月31日 日経ビジネスONLINE】
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【「25年を経て制限区域の汚染は本質的に減った」】
資金だけでなく、放射線汚染自体が未だ残存していることが最大の問題ですが、ウクライナ当局は立ち入りが制限された区域の縮小を検討していることが報じられています。

****チェルノブイリ原発:入域制限区域の縮小を検討****
ウクライナのバロガ非常事態相らは18日、同国北部のチェルノブイリ原発で記者会見し、25年前の事故以来、放射性物質に汚染され、立ち入りが制限された区域の一部は既に安全だとして、同区域を縮小し、経済活動の再開などを検討していることを明らかにした。

事故時のソ連政府は、原発から半径30キロの地域から居住者を立ち退かせ、入域を制限。ウクライナ政府もこの措置を継続しており、制限区域が縮小されれば事故後初となる。
バロガ氏は「25年を経て制限区域の汚染は本質的に減った。土地の大部分はおそらく生活や経済活動に使用できる」と強調。「数百ヘクタールが雇用創出や投資のための経済活動の場に戻せるかもしれない」と述べた。制限区域では事故前、主に農業や畜産業が行われていた。
同区域を管理する政府機関の当局者は、首都キエフ寄りの制限区域の南側は比較的安全になっており、「制限を設けずに居住することも可能だろう」と説明。現在、制限解除に向けて事務作業が行われていると述べた。【4月19日 毎日】
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“25年後のフクシマを、現在のチェルノブイリのような状況にしてはならない”・・・本当にそのように思います。

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