(昨年10月20日に行われた、20歳の女子学生マリソル・バジェスさんの警察署長就任記者会見の様子 中央女性がバジェスさん、左の男性は市長です。就任にあたり「息子のためにも、市民が恐れず外出できる、以前の街の姿を取り戻したい」と抱負を述べていました。
今回“亡命”も報じられていますが、生きていて何よりです。
“flickr”より By robert.de.niro.rd http://www.flickr.com/photos/55866398@N02/5228059656/ )
【「殺害の脅迫を受けていた」】
これもこれまで何回か取り上げてきている話題ですが、メキシコ麻薬戦争の話。
一言で言えば、「相変わらずの状況」というところです。
昨年10月26日ブログ「メキシコ「麻薬戦争」 沈静化の兆し見えず」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101026)では、20歳の女子学生がメキシコ北部の町の警察署長に就任した話題などを取り上げましたが、その女子大生警察署長が亡命したとの報道がありました。
****麻薬抗争の町の女子大生警察署長、米国に亡命*****
前年10月にメキシコ北部の町の警察署長に就任した20歳の女子学生が、亡命を求めて米国に渡ったことが3日、親族の話で明らかになった。
メキシコ・チワワ州の米国境近くの小さな町、プラセディス・グアダルーペ・ゲレロでは、前年6月に町長とその息子が殺害された後、警察署長候補の2人が相次いで辞退。一児の母でもあるマリソル・バジェスさんが10月、署長就任を引き受けたばかりだった。
バジェスさんの親族が匿名を条件にAFP記者に語ったところによると、バジェスさんは「犯罪組織から便宜を図るよう要求され、さらに殺害の脅迫を受けていた」。このため、親族2人とともに渡米。今後、亡命を申請する方針という。
プラセディス・グアダルーペ・ゲレロは、前年1年間で3100人が麻薬取引をめぐる抗争とみられる暴力事件で死亡したシウダフアレスの南東65キロにある町。近くの町グアダルーペでは前年12月、町でただ1人の警察官だったエリカ・ガンダーラさん(28)が武装集団に拉致され、現在も行方が分かっていない。【3月4日 AFP】
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【「警官を雇う予算もない」】
上記記事にあるエリカ・ガンダーラさんの拉致事件については、下記の記事があります。
****街でただ1人の警察官、麻薬団に拉致される メキシコ****
メキシコ北部チワワ州グアダルーペで23日、女性警察官のエリカ・ガンダーラさん(28)が武装グループに拉致された。州捜査当局が27日、明らかにした。激しい麻薬抗争が続くグアダルーペでは、警察官が相次いで殺害されたり辞職したりしたため、ガンダーラさんがただ1人の警察官だった。
目撃情報によると、銃で武装した男ら10人あまりがガンダーラさんの自宅に放火し、ガンダーラさんを拉致した。屋外に駐車していた車両2台も燃やされたという。
米国との国境に近いグアダルーペは人口9000人の街。このあたりはメキシコ国内で最も麻薬をめぐる抗争が激しい地域で、2010年だけで3100人が死亡している。
独身のガンダーラさんがグアダルーペ警察で勤務を始めたのは2009年。当時は同僚警察官が12人いた。だが麻薬抗争に巻き込まれて次々と同僚を失ったガンダーラさんは、最近は自動式拳銃を手に、ただ1人で市内をパトロールしていた。
ガンダーラさんはことしAFPの取材に対し、「誰もこんな危険なところで警察の任務にあたりたくない。そもそも警官を雇う予算もない」と語っていた。【10年12月29日 AFP】
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メキシコでは2006年12月にカルデロン大統領が就任して軍も動員した麻薬組織との戦いを始めて以来、麻薬にからむ事件で3万4000人以上が殺されており、特に北部のアメリカ国境の街シウダフアレスでは上記記事にもあるように年間3100人(!)が殺害されるという「麻薬戦争」状態が続いています。
そんな危険なエリアで、若い女性が警察署長になるとか、女性1人しか警官がいない・・・という状態が放置されるのは異常としか思えません。
最初の記事のバジェスさんについては、就任のニュースを見てその後の安否が気になっていましたが、亡命だろうが何だろうが、生きていてよかったというしかありません。
【頭部を切断された15遺体】
「麻薬戦争」の激しさを示すような報道は枚挙にいとまがありませんが、比較的最近のものでは次のような事件も。
****メキシコのリゾート地で頭部のない15遺体見つかる****
メキシコ当局は9日、麻薬抗争がらみの事件で8~9日の2日間だけで51人が殺害されたと発表した。
当局の統計によると、南西部ゲレロ州、北東部チワワのほか首都メキシコ市でも、車からの銃撃や処刑などで殺害された遺体が相次いで発見された。
なかでも8日、リゾート地アカプルコのショッピングセンター脇の路上で頭部を切断された15遺体が見つかった事件は、凄惨(せいさん)を極める。遺体の頭部は、近くにまとめて捨てられていた。犠牲者には17歳の少年2人が含まれていたという。
この事件は、2008年8月に東部ユカタン州の州都メリダ郊外で頭部のない12遺体が発見された事件を超える集団殺害事件となった。メリダの事件は、麻薬組織「ロスセタス(Los Zetas)」による犯行とされている。
メキシコ政府は5年前から、軍5万人を投入して麻薬組織の撲滅に取り組んでいる。【1月10日 AFP】
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****メキシコ北部で警察幹部射殺、麻薬組織の犯行との見方****
メキシコ北部ヌエボレオン州モンテレーで13日夜、地元警察の幹部が車内で射殺されているのが見付かった。麻薬組織の犯行とみられる。州当局が発表した。
殺害されたのは、同州警察の治安・情報機関部門のトップ、オメロ・サルシド氏(40)。スポーツ多目的車(SUV)の中で、銃弾5発を受けて死んでいるのが発見された。
メキシコでは2006年12月にカルデロン大統領が就任して以来、麻薬にからむ事件で3万4000人以上が殺されており、最近では国境付近だけでなく都市部にも被害が拡大していた。
米国とのつながりが強く、市民の年間所得が国内平均の2倍というモンテレーでの凶悪事件の増加は、当地で事業を行う企業が安全性を疑問視することにもつながるため、カルデロン政権の悩みの種となっている。【2月15日 ロイター】
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警察は麻薬組織に牛耳られており全くあてにならない状態ですが、軍を動員した5年にも及ぶ「麻薬戦争」がどうして終息しないのか・・・理解に苦しみます。
もちろん、問題の背景には貧困層の存在、高い失業率、また世界最大の消費地アメリカに隣接する地理的条件などはわかりますが、それにしても・・・・。