孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リビア  反政府派拠点ベンガジ陥落か、英米仏中心の連合軍による空爆か・・・一刻を争う情勢

2011-03-18 21:54:12 | 国際情勢

(国連安保理におけるリビア上空の飛行禁止空域設定などを盛り込んだ新たな対リビア武力行使容認決議案採択を喜ぶベンガジの反政府派住民  “flickr”より By DTN News
http://www.flickr.com/photos/dtnnews/5535795165/
なお、カダフィ政権のカイム外務次官は18日未明、反政府勢力との停戦に応じる用意を表明しており、停戦を模索する動きが水面下で続いている可能性もあるとされています。 )

カダフィ政権 「容赦ない攻撃」の開始を宣言
日本が東日本大震災とその後の原発事故で大きく揺れ動いている間、中東・北アフリカの民主化を求める反政府行動も新たな展開を見せています。
特に注目されるのはカダフィ政権側の武力反撃が激しさを増すリビア情勢と、多数派のシーア派住民の抗議行動からスンニ派王制を守るべく隣国サウジアラビアなどが軍事介入を始めたバーレーン情勢です。

今日はそのリビア情勢について。
反政府派の攻勢によって一時は首都トリポリに追い詰められ、政権崩壊はもはや時間の問題かとも思われていたカダフィ政権ですが、チュニジアやエジプトとは異なり、持てる軍事力を容赦なく使う“カダフィ流”の危機対処が功を奏した形で、今は逆に反政府勢力の本拠地である東部ベンガジに迫る展開を見せています。

****反体制派の拠点都市ベンガジを空爆 リビア政府軍****
リビアの最高指導者カダフィ大佐に忠誠を誓う政府軍が17日、東部にある反体制派の拠点都市ベンガジへの空爆を開始した。
反体制派によると、ベンガジ郊外の空港が空爆されて、滑走路が破壊された。市街地への空爆は確認されていないが、上空を戦闘機5、6機が旋回しており、反体制派が対空砲などで応戦しているという。【3月17日 朝日】
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リビアの最高指導者カダフィ大佐は17日夜、国営放送を通じて演説し、反体制派の拠点都市、東部ベンガジに対する「容赦ない攻撃」の開始を宣言しています。
カダフィ大佐は演説で「ベンガジが裏切り者の街か英雄の街かは明日分かる。ベンガジ市民の解放に行く。私を裏切るな」と叫んだ。そのうえで「武器を置く者は救われるだろう」とも述べ、武装解除を求めています。

また、「我々は今夜、(ベンガジに)到着する。(反体制派には)一切の慈悲も、同情もかけない」とも語っており、もしベンガジ陥落となると反政府派の崩壊だけでなく、政権側による激しい報復・虐殺も懸念される事態となっています。

12時37分の【朝日】では米CNNの報道として、“政府軍の陸軍部隊はベンガジの南約150キロにあるアジュダビヤにとどまったままだとしている。反体制派もアジュダビヤ周辺に数十台の戦車を展開。対空ロケットや対空機銃を積んだトラックも複数配置して、防衛線を張っている。”と伝えていますが、18時24分【毎日】では“ここ数日の戦闘でベンガジの最後の防衛ラインとなるアジュダビアもほぼ制圧されていた。ロイター通信によると、政府軍はベンガジまであと100キロ前後に迫っている。”とされており、事態は緊迫しています。

安保理 「市民を守るため、必要なあらゆる方策を取る」】
こうした情勢のなか、国連安保理はリビア上空の飛行禁止空域設定などを盛り込んだ新たな対リビア武力行使容認決議案を賛成多数で採択しました。リビアの市民を守るために、地上軍の侵攻を除く軍事力行使を国連として認める内容となっています。

****リビア:国連安保理 武力行使容認決議を賛成多数で採択****
国連安全保障理事会は17日、リビア上空の飛行禁止空域設定などを盛り込んだ新たな対リビア武力行使容認決議案を賛成多数で採択した。決議には「市民を守るため、必要なあらゆる方策を取る」との文言が記された。これを受け米英仏などは、反政府勢力の拠点への攻勢を強めているカダフィ政権に対する空爆を含む武力行使を準備する。
決議案には15理事国のうち草案を作成した英仏米など10カ国が賛成。中国、ロシア、インド、ドイツ、ブラジルは棄権した。

決議案は、2月26日に採択した制裁決議と同様に国連憲章第7章(平和に対する脅威)を明記した。だが今回は41条(経済制裁)には言及せず、武力行使を含むあらゆる選択肢を可能とした。その上で「カダフィ政権の攻撃の脅威にさらされるリビア市民を守るあらゆる方策をとる」と強調した。
一方で「外国軍の占領を除外する」と付言し、欧米軍のリビア国内進出に懸念を示すアラブ各国やリビア市民に配慮した。また、飛行禁止空域の設定では「アラブ連盟との協力の下で」とした。
資産凍結は、カダフィ大佐の側近など政権中枢、リビア中央銀行にも拡大された。
 
会合後、英国のグラント大使は記者団に「決議で行動を起こす法的根拠は整った」と述べたが、武力行使の時期は明言しなかった。
反体制派側に立つリビアのダバシ次席大使は「できるだけ早く行動を起こしてほしい」と語った。

一方、ロシアのチュルキン大使は「飛行禁止空域の実効性に疑問がある」と棄権理由を述べた。
安保理の新たなリビア決議について国連の潘基文(バンキムン)事務総長は17日、採択を歓迎し、「すみやかに決議を実行することを期待する」との声明を発表した。【3月18日 毎日】
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この安保理決議に先立ち、アラブ連盟(22カ国・機構)は12日、カイロの本部で緊急外相会合を開催し、リビアの反体制派が政府軍けん制のため求めていた飛行禁止空域を設定するよう国連安保理に要請することを決定しました。
アラブ連盟の支持は、同空域設定を主導する欧米諸国がアラブ国民による反発の可能性に配慮して求めていたもので、設定に向けた障害が一つ取り除かれた形となっていました。

棄権した国々は“「誰が兵力を負担し、どのように実施するのか道筋が見えない」「軍事衝突は長引き、影響を受ける地域は拡大する」という懸念が強い。複数の国連外交筋によると、圧倒的な武器と軍隊を握るカダフィ政権は強固で、飛行禁止空域設定だけでは市民を保護できず、地上戦も協議しなければならない「泥沼が予想される」”【3月18日 朝日】と主張しています。
“主戦論を唱える英仏に対して国際社会には依然、武力行使に慎重な意見が多い。アフガニスタンとイラクでの戦争が泥沼化した経験から、欧州他国にはえん戦気分が強い。ドイツは「現状は軍事介入の時ではない」(メルケル首相)として決議採決でロシア、中国などと共に棄権に回った。”【3月18日 毎日】

イラク・アフガニスタンへの派兵を抱えるアメリカは更なる大規模軍事行動には消極的でした。しかし、“オバマ米政権は当初、空域設定について、「リビアの防空能力をたたくために大規模な軍事作戦が必要」(ゲーツ国防長官)なうえ、航空機以外の兵器を主体とするリビア軍の攻撃を抑える効果があるかどうか疑問視していた。
だが、米国内の320億ドルの資産凍結を含む制裁措置や反体制派支援によってもカダフィ政権の強硬姿勢は変わらず、反体制派への攻撃が拡大した結果、米議会で「リビア軍が(反体制派の拠点)ベンガジを制圧したら、大量虐殺が起きてしまう」(マケイン上院議員)との懸念が拡大。飛行禁止空域設定を含む安保理決議の容認に傾いたとみられる。”【3月18日 朝日】という判断で、英仏の強硬論に賛同する形となっています。

時間との戦い
また、当初外国勢力の介入には消極的だった反政府側は、カダフィ政権側の圧倒的軍事力、特に空軍力に追い詰められており、こ
こにきて飛行禁止空域の設定、政権側軍事拠点爆撃を強く求めています。

****リビア:劣勢の反体制派、喜び爆発 安保理決議採択*****
安保理決議採択を受け、政府軍の猛攻を前に「陥落」の危機にひんしていたリビア北東部の反体制勢力本拠地ベンガジは18日未明、決議を歓迎する大歓声に包まれた。圧倒的な陸上部隊を擁する政府軍がベンガジに迫る中、これを迎え撃つ反体制派にとって、欧米諸国主体の空爆開始まで持ちこたえることができるかどうか時間との戦いになっている。(中略)

反体制派側は「このままでは政府軍による虐殺は免れない」(報道官)と危機感を強めていただけに、ベンガジの中央広場に設置された大型テレビが安保理決議採択の様子を映し出すと、数千人の人々が一気に喜びを爆発させた。衛星テレビ局アルジャジーラが生中継した会場には、旧王制時代の三色旗がはためき、Vサインを掲げる人々の頭上にいくつもの祝いの花火が打ち上げられた。(後略)【3月18日 毎日】
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“ベンガジ防衛が欧米諸国主体の空爆開始まで持ちこたえることができるかどうか時間との戦い”という差し迫った状況で、フランスが数時間以内に軍事行動を実施する可能性があるとも報じられています。

****リビア政権への軍事行動、数時間以内に実施も=仏政府報道官****
フランスのバロワン政府報道官は18日、ラジオ局RTLに対し、リビアのカダフィ政権に対する軍事力行使を認める国連安全保障理事会の決議を受け、フランスが数時間以内に軍事行動を実施する可能性があると述べた。
バロワン氏は「決議を提出したフランスはもちろん軍事介入に一貫した対応を取る。攻撃はすぐにでも行われる」とした上で、フランスが軍事行動に「参加する」と表明した。

複数のフランス外交筋は、軍事行動には英国も参加する見通しだと話し、米国や中東諸国も参加する可能性を指摘。また、フランス政府は欧州連合(EU)とアフリカ連合(AU)、アラブ連盟の代表者による3者協議を19日朝にも開催したい意向だと述べた。(後略)【3月18日 ロイター】
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英仏米の協議も進展を早めています。
****米英仏首脳が電話協議=対リビア決議採択受け*****
オバマ米大統領は17日、国連安保理が同日、リビアへの軍事力行使を容認する決議を採択したことを受け、キャメロン英首相、サルコジ仏大統領と電話協議を行った。
ホワイトハウスの声明によると、3国首脳は、リビアが直ちに決議を順守し、市民に対する暴力行為を停止すべきだとの認識で一致。さらに、リビアに対する今後の措置について、緊密に協調するとともに、決議履行に向けアラブ諸国などと引き続き協力していくことで合意した。【3月18日 時事】
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カダフィ政権側によるベンガジ制圧が早いか、英仏米を中心とし一部アラブ諸国も参加した連合軍によるカダフィ政権軍への空爆が早いか・・・一刻を争う情勢となっています。

日本的意思決定との差
話は日本の原発事故対応に変わりますが、日本政府の対応にアメリカが苛立ちを募らせているとか。
****日本政府は危機感欠如、不信といら立ち募らす米****
放射能漏れを起こした福島第一原発で事態の悪化に歯止めがかからないことに対し、米国では日本政府の危機感が欠如しているとの焦りが募っている。(中略)

米国社会は常にイラクやアフガニスタンの戦死者など冷徹な現実と向き合ってきただけに、日本政府の対応は手ぬるく映る。ニューヨーク・タイムズは、「日本の政治、官僚機構は、問題の広がりを明確に伝えず、外部からの助けを受け入れようとせず、動けなくなっている」「日本のシステムはすべてゆっくりと合意に達するようにできている」とする匿名の米政府関係者の分析を紹介し、国家的な危機に及んでも大胆な決断ができない日本政府へのいら立ちをあからさまにした。【3月18日 読売】
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今回のリビア情勢への対応も“時間を争う”ものとなっていますが、そうした“決断”を求められる国際情勢をリードするアメリカなどから見ると、日本の意思決定はいかにも悠長に思えるのでしょう。

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