孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ドイツ政界を揺るがす福島第1原発事故  米ニューヨーク近郊の原発は?

2011-03-28 21:01:13 | 国際情勢

(ニューヨーク市中心部からわずか50キロに位置するインディアン・ポイント原子力発電所 万一、事故があった場合は、2000万人におよぶニューヨーク大都市圏住民をまるごと避難させる必要がありますが・・・・
“flickr”より By Tony the Misfit http://www.flickr.com/photos/tonythemisfit/2755502911/ )

独:「これは原発をめぐる住民投票であり、人々は望まないという答えを出した」】
福島第1原発事故は、関係者の懸命の作業にもかかわらず、いまだ収束の目処がたたない状況です。
昨日・今日も、漏れ出た水からの放射線量について測定器の針が振り切れ、危険なため再測定も出来ず帰ってきたとか、「ヨウ素134とコバルト56を取り違えた」「いや、コバルト56ではなくセシウム134と取り違えていた」とか、想定外の事態と混乱が続いているのは周知のところです。

そうした状況ですので、日本では先ずは目先の危機を何とかしのぐのに精いっぱいで、これからの原子力対策云々はとても議論する状況にはありません。
一方、海外では日本の事故を重く受け止め、「原子力ルネサンス」とも呼ばれる原子力重視・再評価の動きに急ブレーキがかっています。

一番敏感に反応しているのがドイツで、州議会選挙で反原発を掲げる環境政党「緑の党」が躍進して州首相を出す情勢で、「日本が独政界に激変をもたらした」(第2公共テレビ)とも言われています。

****ドイツ州議会選で首相率いる与党敗北、反原発派が躍進****
27日の独バーデン・ビュルテンベルク州議会選挙で、メルケル首相が率いる与党連合が敗北する公算が強まった。福島原発の事故を受け反原発を掲げる緑の党が大幅に票を伸ばし、初めて州首相を輩出する見込み。

緑の党と社会民主党(SPD)の合計得票率は47.3%に達する見込みで、同州で約60年にわたり政権を担ってきたメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は敗北を喫することとなる。
1800GMT(日本時間28日午前3時)時点の予測では、CDUと自由民主党(FDP)の与党連合の合計得票率は44.3%となる見込み。
今回の選挙結果はメルケル首相にとっては痛手だが、直接的な責任論には発展しないとみられている。 

敗北した州首相のStefan Mappus氏(CDU)は「過去2週間、日本から伝えられる恐ろしい映像と出来事が主題となった。その他に選挙戦の論点はなく、中央政府の動きもわれわれにとって逆風だった」と述べた。
過去58年にわたり同州で与党の地位を占めていたCDUの得票率は39.3%、FDPは5%。緑の党は24.2%で第2位、連立が予想されるSPDは23.2%。
同州の緑の党のリーダー、Winfired Kretschmann氏は「歴史的な勝利だ。われわれは物事を変えていく」と述べた。

また、同日行われたラインラント・プファルツ州議会選挙でもSPDが勝利し、緑の党と連立を組む見込み。
SPDのガブリエル党首は選挙結果について、原発に対する明確な拒否と指摘。「これは原発をめぐる住民投票であり、人々は望まないという答えを出した」と述べた。
FDPのブリューデレ経済相は、ラインラント・プファルツ州での敗北を厳しい結果と受け止める一方、「日本での一連の出来事、リビア情勢、ユーロをめぐる議論が影響した」と述べた。
メルケル首相のCDUは先月のハンブルク特別市(州に相当)議会選挙で敗北、昨年5月には国内最大州のノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州議会選挙でも敗北している。【3月28日 ロイター】
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メルケル首相が選挙前に打ち出した原発稼働の延長計画の3カ月凍結は、凍結が暫定的なものだったため、「『凍結』は選挙戦術」と見透かされた形で、世論の支持を十分には得られませんでした。
“ドイツでは、79年の米スリーマイル島原発事故以来、原発問題は世論を深く割る「永遠のテーマ」となっている。反原発運動の受け皿になってきた緑の党は、09年の前回総選挙で約1割の支持率だったが、直近の世論調査では支持率が20%を超え、2大政党に迫る勢いになっている。”【3月27日 毎日】

メルケル政権は、今回の選挙結果を受け、原発政策の抜本的見直しを迫られるのは必至の情勢です。
また、バーデン・ビュルテンベルク州の政権交代で、州政府の代表から構成される連邦参議院(上院)での野党優位が強まり、メルケル首相は厳しい政権運営を強いられることになります。

原発「冬の時代」へ
福島第1原発事故の影響はドイツだけでなく世界的に広がっています。
EUでは原発の安全性検査を実施し問題点を検査することで合意、中国も新規原発の審査を一時中断、イスラエルやベネズエラなどが計画中止を表明。運転中に二酸化炭素をほとんど排出せず、地球温暖化対策の切り札として近年脚光を浴びた原発ですが、再び「冬の時代」に逆戻りするとの懸念も出始めています。

避難計画は現実に可能な計画ではなく、単なるおとぎ話の書類
79年のスリーマイル島原発事故以後、約30年間、原発の新規着工を凍結してきたアメリカは10年1月、着工容認に転じ、現在は24基の新設計画が進行中ですが、今後の原発政策は不透明になっています。

****安全性 不透明感増す米原発政策****
福島第1原発事故の長期化を受けて、米国の原発政策の先行きに不透明感が増してきた。国内に福島第1原発と同タイプの原子炉を多く抱え、人口が密集する都市部と近い原発も少なくない。緊急時の近接住民の安全確保という課題が浮上し、事業推進の資金調達も厳しさを増している。

◆「福島モデル」
米国内の原子炉104基のうち23基は、沸騰水型の福島第1原発と同じタイプ。エネルギー効率にすぐれるが、加圧水型に比べて安全性で劣るとの指摘も専門家から出ている。(中略)

◆避難は可能か
24日付米紙ウォールストリート・ジャーナルは、「米原発が新たな不安に直面している」として、原発の近接住民の避難の安全確保に疑問を投げかけた。
ニューヨーク中心部に近いインディアン・ポイント原発、カリフォルニア州ロングビーチに近いサンオノフ原発をはじめ、国内の原発の約半数が人口50万人以上の都市部から50マイル(約80キロ)以内に存在する。
福島第1原発事故では、米政府は80キロ圏内に住む米国民に退避勧告したが、そのまま米国内に置きかえれば国民にパニックが起きかねない。米上院環境・公共事業委員会は4月に、避難など原発の非常時対策に関する公聴会を開く予定だ。

◆資金繰りの壁
米電力大手NRGエナジーがテキサス州で計画中の原子炉増設計画が、中止か延期になる恐れがでてきた。計画に参加する東京電力からの出資が事故の影響で宙に浮き、軽水炉2基で70億ドル(約5700億円)に上る事業費調達のめどが立たなくなったためだ。
NRGのクレーン最高経営責任者(CEO)が「支援先を探すのは容易ではない」と語るように、安全性への不安から金融機関や投資家も原発計画への参画に及び腰となっている。
オバマ政権は昨年2月、約30年ぶりの新規原発となるジョージア州の原子炉建設計画に83億ドルを融資保証すると発表したが、米議会の一部や環境団体は「既存原発の点検が終わるまで建設許可を出すべきでない」と主張している。【3月28日 産経】
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アメリカでは特に、ニューヨーク市中心部からわずか50キロに位置するインディアン・ポイント原子力発電所に関心があつまっています。

“一般に米東海岸では大きな地震は起きないと信じられているが、米メディアによるとマグニチュード7クラスの地震が発生する可能性はある上、同原発の近くには2本の断層が走っているという。現在運転中の原子炉は1970年代に設置されたものだが、最新技術を投入した設計とはいえず、同原発の耐震性を疑問視する声もある。”
“米メディアでは、米政府より避難対象を狭い範囲にとどめている日本政府の判断を非難する論調が目立ったが、ひるがえって米国では、2000万人におよぶニューヨーク大都市圏住民をまるごと避難させることは果たして可能なのか。こうした疑問に対し、米紙ニューヨーク・タイムズは「研究者にとって避難計画は現実に可能な計画ではなく、単なるおとぎ話の書類(ファンタジー・ドキュメント)と見なされている」との専門家の談話を紹介した”【3月25日 産経】

ニューヨーク州のクオモ知事は廃止も視野に入れているとの発言をしていますが、代替電力の調達方法など難問は山積しています。
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