孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス  極右政党党首マリーヌ・ルペン氏 世論調査でトップに

2011-03-07 21:33:36 | 世相

(いかにも右翼然とした父親に比べると随分ソフトなイメージがありますが、その本質は?
“flickr”より By Partisans de Marine Le Pen... http://www.flickr.com/photos/45639822@N03/5008095214/)

主要政党を抑えての“本命候補”へ?】
1月18日ブログ「フランス 極右政党・国民戦線新党首にルペン氏三女 「ソフトな極右戦略」展開」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110118)でも取り上げた、フランス極右政党「国民戦線」を父親から引き継いだ三女マリーヌ・ルペン党首の人気が上昇中で、ついに次期大統領選世論調査でトップに躍り出たことが話題になっています。

*****次期大統領選、人気1位に極右党首=現職サルコジ氏ら上回る―仏世論調査****
仏紙パリジャン(電子版)は5日、来年の同国大統領選に向けた有権者の意識調査の結果を掲載した。それによると、第1回投票で極右・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首に投票するとの回答が23%と、現職のサルコジ大統領や社会党のオブリ第1書記を抑えてトップに立った。
調査は2月28日~3月3日、調査会社ハリス・インタラクティブが1618人を対象に実施した。サルコジ氏とオブリ氏の支持率は共に21%で、それ以外の候補はいずれも8%以下。社会党候補の下馬評に上げられ世論調査で人気が高いストロスカーン国際通貨基金(IMF)専務理事は、選択肢に含まれていない。【3月6日 時事】
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1月18日ブログで紹介した世論調査では“18%が大統領選の第1回投票でマリーヌ氏に投票すると回答。社会党候補と目されるストロスカーン元財務相の30%、再選を目指すサルコジ大統領の25%に次ぐ3位に入った”ということでしたから、“台風の目”から主要政党を抑えての“本命候補”への位置を狙う勢いです。

フランス国内もかなりの驚きを持って受け止めているようです。昨日朝に紹介されたフランス国内のTVニュースでは「本当かよ・・・・」という感じで、話はもっぱら調査の方法・規模・誤差などに終始していました。

高名な政治家である父親のあとを引き継いだ娘で、カリスマ性があり、ブームを起こす可能性がある・・・と言えば、小泉元首相誕生の頃の田中真紀子さんのような感じもあります。

【「(ナチスの)強制収容所は野蛮の極致」「過激派と極右はお断り」】
3月2日号Newsweekに、いささか刺激的なタイトルの彼女を扱った記事がありましたので、やや長くなりますが、以下に抜粋します。

****サルコジが恐れる極右のカリスマ女******
82歳の父から極右政党「国民戦線」の党首を引き継いだ42歳のマリーヌ・ルペンは来年の大統領選の台風の目になるか。
(中略)
サルコジの与党である中道保守の「国民運動連合(UMP)」や野党の社会党など、主流政党は、マリーヌの名前になるべく触れないようにしていた。マリーヌの知名度を高めたくないと考えていたのだ。
警戒するのも無理はない。最新の世論調査によると、12年のフランス大統領選の第1回投票でマリーヌが20%の票を得て3位に入る可能性がある。第1回投票の上位2候補による決選投票に進出するかもしれないと予測する人も40%に達した。

大統領の座を得ることは難しいが、その人気は侮れない。68%の人はマリーヌを「勇敢」と考える。50%の人は自分たちの問題を理解してくれていると評価する。「好感が持てる」と思っている人も37%いた。
12月に行われたテレビの討論番組では、主流政党の送り込んだ軽量級パネリストを一蹴。父とは対極的に、今やメディアの寵児と言っていい。
確かに、父に比べてメディア受けする素地はある。マリーヌは42歳。82歳の父より40歳も若い。2度の離婚歴があり、現在は12歳の娘と11歳の双子を育てるシングルマザーだ。人工妊娠中絶の権利は擁護する。国民戦線の政治家の中では、近代的なイメージと言っていい。
(中略)
大学では法律を学び、刑事弁護士になったが、「ルペン」というファミリーネームが災いしてすぐ仕事に行き詰まった。こうして、父親と同じ政治の世界に進むことになった。
しかし05年には、「(ナチス)ドイツの占領が特に非人道的だったわけではない」という父親の発言に怒り、たもとを分かったことがある。自分がせっかく国民戦線のイメージアップを目指していたのに、それを台無しにする発言だと憤ったのだ。それでも結局、戻ってきた。国民戦線を出ていくという選択肢はあり得なかった。
(中略)
過激派と極右はお断り
マリーヌは党のイメージチェンジも図り、「(ナチスの)強制収容所は野蛮の極致」という発言でマスコミをにぎわせた。ホロコーストに批判的な主張を打ち出すことで支持を集めようというのだ。
「悪魔呼ばわりを甘受することも、逆にそれをあおるのも間違っている」と、彼女はリールの議事堂のカフェテリアで、ゆでアスパラガスを食べながら本誌に語った。
スキンヘッドにミリタリージャケットを着て党本部の周りをうろつくような手合いは歓迎しない、と彼女は続ける。「反ユダヤ主義者と過激派と極右」はお断りだ。「そういう人は必要ないと私は言ってきたし、国民戦線の支持者の68%も必要ないと言っている。つまり、少なくともこの問題は解決済みだ」

とはいえ、マリーヌも単純なソフト路線ではない。攻撃の角度が違うだけで、父が攻撃した争点の多くを踏襲している。例えば、移民を「社会の悪」と見なすことに変わりはない。
彼女はポピュリストと呼ばれても気にしない。「極右、フアシスト、ナチス、ただのポピュリストの中から選ぶなら、ポピュリストで大いに結構」と言い、父親と同じようにしわがれた声で自分のジョークに笑う。
(中略)
ただし、マリーヌを「ライト級ルペン」と考えてはいけない。「多くの問題について、私は父よりかなり厳格だ」と、本人も語る。
(中略)
反イスラム感情を利用
しかし極右の本当の問題は、アラブ系や北アフリカ系移民に対するお決まりの痛烈な攻撃ではなく、「女性や同性愛者の権利、宗教の自由といった自由主義の価値観を守るという名目で、イスラムという宗教を標的にした外国人嫌悪の感情的な議論」だと、仏ナンテール大学の社会学者シルペイン・クレポンは言う。「選挙の票集めとして、かなり効果的だ」
これは、国民戦線を穏健派にも受け入れやすくする戦略でもある。「マリーヌが宗教を攻撃しているので、人種差別に強く反対する左派でさえ共感できる」と、世論調査会社BVAオピニオンのガエル・スリマンは言う。「フランスという国は歴史的に、宗教に対抗して形作られた」
(中略)
「いろいろ問題はあるが、彼女が父親より急進的でないことは確かだ」と、クレポンは言う。「(ただし)父親よりほんの少し危険ではないおかげで、極めて不寛容な意見も多くの人に支持されている」
政治を右傾化させるルペン効果は、既に始まっている。幅広い有権者を引き付けるマリーヌを黙らせてサルコジが再選を果たすには、さらに右へと踏み込む必要がありそうだ。【3月2日号 Newsweek日本版】
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02年の大統領選挙では、マリーヌ・ルペン氏の父ジャンマリ・ルペン氏が社会党のジョスパン候補を抑えて2位に立ち、決選投票に進みましたが、世論の大勢は「反極右」で結集し、決選投票でジャック・シラク氏が圧勝した経緯があります。

確かに、第1回投票を勝ち抜き決選投票に進んでも、左翼票をマリーヌ・ルペン氏が取り込むのは困難でしょう。
ただ、もし第1回投票で中道票を取り込みサルコジを蹴落として、左派候補対マリーヌという決選投票になれば、保守・中道票を集めての接戦になるかも・・・なんて想像もされます。

次期大統領選挙は12年ですから、まだこれからどんな展開が起きるかわかりません。
極右政党の枠から脱出できずに失速するのか、サルコジや社会党候補を脅かすブームを巻き起こすのか。
いずれにしても、欧州社会におけるこうした極右政党の台頭、反イスラム・反移民感情の高まりはフランスだけでなく、欧州各国に共通してみられるところであることは、これまでもしばしば取り上げたとおりです。

コメント
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