孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

東日本大震災  海外で広がる日本支援と冷静な日本人への称賛 原発事故対応のまずさの指摘も

2011-03-16 20:52:24 | 災害

(“flickr”より By euronews http://www.flickr.com/photos/euronews/5525925277/ )

続く最悪シナリオの可能性
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発の事故は、関係者の懸命の努力にもかかわらず終息には至っておらず、メルトダウンによる大量の放射性物資の放出という最悪のシナリオの可能性もなお捨てきれない危機的状況が続いています。

****原子炉冷却に全力=白煙、火災相次ぐ―周辺は高い放射線量・福島第1*****
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)では16日、3号機付近で水蒸気とみられる白煙が大量に立ち上り、4号機では原子炉建屋4階で再び火災が発生した。周辺では高い放射線量を観測。東電は冷却のため同日午後も原子炉への海水注入を続けるとともに、使用済み燃料プールにも海水を入れる準備を進めた。

地震発生時に運転中だった1~3号機では原子炉の冷却機能が失われ、一部炉心溶融が起きた可能性が高く、1、3号機は水素爆発で原子炉建屋上部が崩壊。2号機も建屋内の原子炉格納容器の一部が壊れた可能性が高く、高レベルの放射性物質が外部に放出された。

定期点検中だった4~6号機も含め、原子炉の近くにある使用済み燃料プールも冷却できず、水温が上昇。蒸発して水位が下がり、燃料棒の被覆管が損傷して、同様に高レベルの放射性物質が放出される事態が懸念されている。【3月16日 時事】
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福島第一原発の正門付近では14日に続き、15日にも核分裂が起きた時に出てくる中性子線が検出されたことも発表されていますが、検出の原因は不明とされています。

立場を越えて広がる支援
被災地での救助活動には世界各国から救助隊派遣などの支援が行われていますが、救助支援活動にあたる人々も被ばくを受けています。
****求められる限り日本支援=米兵被ばく続く―海軍****
東日本大震災で救援支援活動に当たっている米兵が新たに数人、低レベルだが被ばくしたことが15日、分かった。米軍が明らかにした。福島県の原発事故による放射線の脅威が増しているが、米海軍第7艦隊のファルボ広報官は「米国と同盟国日本との間には揺るぎない絆がある。日本政府から求められる限り、支援活動をやり通す」と述べた。(後略)【3月16日 時事】
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また、原発事故対策についても、アメリカやロシアから専門家が派遣されています。
****米国から原子力専門家7人、新たに到着****
米国のルース駐日大使は16日、都内の米大使館で記者会見し、米原子力規制委員会の専門家7人が同日、新たに日本入りしたことを明らかにした。
7人は、すでに12日から日本入りしている同委員会の専門家2人に合流し、福島第一原発の危機収拾に向け、日本政府や東京電力と連携して技術的支援にあたる。
米国からは15日に、高空と陸上の放射性物質測定機器が届いているほか、被曝による健康被害の専門家も日本国内で情勢分析にあたっているという。(後略)【3月16日 読売】
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海外では被害を受けた日本支援の声が、日頃の立場・意見の相違を越えて広がっています。
****日本助けよう」、韓国で募金の輪 2日間で4万人*****
東日本大震災で甚大な被害を受けた日本の災害復旧と被災者の救護活動に向けた個人の募金寄付が相次いでいる。
韓国社会福祉法人の社会福祉共同募金会が16日に明らかにしたところによると、日本に向けた募金活動は14日から本格的に始まり、2日間で4万8761件の計2億3977万ウォン(約1700万円)が集まった。(中略)
韓国共同募金会関係者は、「昨年1月に起きたハイチ大地震の時より寄付額が多く、関心が非常に高い。隣国であることが影響したようだ」と話した。
これに先だち、韓国共同募金は13日に第1次緊急救護支援金として50万ドル(約4000万円)を日本に支援している。【3月16日 聯合ニュース】
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韓国ではいわゆる反日団体も支援を表明しています。
****韓流スター、次々哀悼=反日団体も「痛み」―東日本大震災****
被害が広がる東日本大震災を受け、日本となじみ深い韓流スターからも次々と哀悼と支援の声が上がっている。「ヨン様」ことペ・ヨンジュンさんは14日、ホームページ(HP)で「被災された方々の安否が心配でテレビの前を離れられません。心を痛めています」とのコメントを発表した。(中略)
一方、支援の輪は「独島(日本名・竹島)守護」を掲げる反日的な市民団体にも。「ファルビン団」の洪貞植団長は「反日運動を一生懸命やってきたが、それはそれだ。今回の地震は、世界全体で痛みを分かち合わなければいけない。その意味で『市民連帯の集い』を結成し、日本の手助けをしようと考えている」と語った。【3月14日 時事】 
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****前を向いて歩こう」=タイ英字紙が激励広告―東日本大震災*****
タイの英字紙「ネーション」は16日付朝刊で、東日本大震災の被災者を激励する全面広告を掲載した。紙面の中心に大きな日の丸を描き、両脇には「前を向いて歩こう日本」と日本語で掲げた。
紙面上部には日本国民へのお悔やみの言葉を英語で記した。下段には、被災者への義援金を受け付けている銀行や企業の連絡先、毛布の持ち込み先を載せた。さらに、携帯電話からメッセージを送信すると1回10バーツ(約27円)が寄付される携帯各社のサービスについても紹介した。【3月16日 時事】
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14日付の韓国紙・ソウル新聞も1面に、韓国語と共に日本語で「震災に対し、深い哀悼の意を表します」との支援メッセージを掲載しています。

中国でも援助の声が広がっています。
*****対日援助、8割超が賛成=大震災で中国世論調査*****
香港のニュースサイト・鳳凰網がこのほど、インターネット上で実施した世論調査結果によると、大震災が発生した日本に対して人道援助をすることに賛成するとの意見が8割以上に達した。同サイトは中国当局系で、本土の利用者が多く、調査回答者の大半は本土のネットユーザーとみられる。
調査は東日本で大震災が起きた11日午後から12日夜にかけて実施し、約100万人が回答。「日本に人道援助を実施すべきだ」とする意見が86.7%を占めた。日本とは対立関係にあるとして援助に反対した人は10.6%にとどまった。

一方、台湾では与党・国民党の黄昭順立法委員(国会議員に相当)の事務所責任者が交流サイト「フェイスブック」で、尖閣諸島の領有権をめぐる対立を理由に対日援助はすべきではないと主張し、ネット上で非難を浴びた。黄氏は謝罪した上で、この責任者を解任した。【3月14日 時事】
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****日本に手を差し伸べよう」=中国紙に学者100人意見広告****
「日本に温かい手を差し伸べよう」。中国共産党機関紙・人民日報系の国際問題紙・環球時報は16日、北京大学国際関係学院の王緝思院長ら中国人学者100人が東日本大震災で日本への支援を呼び掛ける意見広告を出した。
尖閣諸島沖での漁船衝突事件や歴史認識問題で日本に対する厳しい論調が目立つ同紙に、こうした意見広告が出るのは珍しい。

学者たちは「中日両民族には2000年余の交流があり、植民地主義戦争の傷は深く、今もなお残された歴史問題が時に国家間の政治摩擦をもたらしているが、宿命や困難を克服し、互いに励まし合うことが必要だ」と指摘。「日本人は粘り強い。中国人の愛の心と援助の手は、日本人が災難に立ち向かう自信と力になるだろう」と訴え、募金やボランティアによる支援活動への参加を呼び掛けた。【3月16日 時事】 
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なお、アメリカではハイチ大地震のときと比べると募金は低調だそうで、「日本はハイチやインドネシアと異なり先進国だ。米国民が広範な国際支援が必要と一般的に考える国ではない」との声もあるようです。

香港の富豪からの8100万円の義援金も報じられていますが、戦乱が続くアフガニスタンからも400万円の支援表明がなされています。現地の事情を考えると大きな金額です。

****アフガニスタンが「400万円」支援表明***
アフガニスタンのカンダハル州のグラム・ハイダル・ハミディ市長は12日、東日本大震災の被災者に義援金5万ドル(約400万円)を送ることを表明した。
AFP通信によると、カンダハル州は反政府勢力タリバンとの内戦が最も激しい地域の一つ。それにも関わらず、これまでに日本がアフガン復興を熱心に支援してきたことへの恩返しとして、「市民を代表して地震と津波の被災者を支援したい」と述べているという。
アフガニスタンの生活水準では、国民の3分の2が、1日あたり2ドルという生活水準だとも言われており、いかに大きな金額かが理解できる。【3月13日 ゆかしメディア】
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【「なぜ日本では略奪が起きないのか」】
3月13日ブログ「東日本大震災 日本人の冷静さに対する海外からの称賛」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110313)でも取り上げたように、危機に際しての日本人の冷静さに対する称賛も海外で話題になっています。 

****大災害より強い日本人」=「危機でも協力」と称賛―韓国紙****
14日付の韓国紙・中央日報は「大災害より強い日本人」との見出しの社説で、「凍り付くような恐怖の前で日本人は冷静な国民性を遺憾なく発揮している。われわれは日本から学ぶことが多い」と論じた。韓国各紙は14日付朝刊でも東日本大震災を大々的に伝えたが、日本人の冷静ぶりを称賛する記事や、日本への協力を呼び掛ける記事が目立った。

中央日報は東京特派員の記事で、「南三陸地方では街が壊滅的な被害を受けているのに、叫び声や不満の声は聞こえない」「人々は『復旧を願うだけ』とあすを語り、誰のせいにもしない」と指摘。「危機でも協力する共同体意識は日本社会の底力だ」と書いた。
同特派員は、こうした背景に「他人に迷惑を掛けてはいけない」という日本人の考えと、降りかかってきたことを宿命と受け入れる国民性があると分析した。

一方、毎日経済新聞は「韓日関係、転換点へ」との見出しで、「今回の地震を契機に、韓日関係を協力と和解に発展させなければならないとの声が高まっている」と伝えた。また、ソウル新聞は1面に、韓国語と共に日本語で「震災に対し、深い哀悼の意を表します」とのメッセージを載せた。【3月14日 時事】
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****被災日本人のマナー、米紙が称賛****
米ロサンゼルス・タイムズ紙は13日、東日本巨大地震を取材中の特派員電を掲載、「非の打ち所のないマナーは、まったく損なわれていない」という見出しで、巨大な災害に見舞われたにもかかわらず、思いやりを忘れない日本人たちを称賛した。
記事は、足をけがして救急搬送をされた年配の女性が、痛みがあるにもかかわらず、迷惑をわびた上で、ほかの被災者を案じる様子などを紹介した。【3月15日 読売】
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****なぜ略奪ないの?」=被災地の秩序、驚きと称賛―米*****
東日本大震災の被害や福島第1原発事故が連日、トップニュースで伝えられている米国で、被災者の忍耐強さと秩序立った様子に驚きと称賛の声が上がっている。「なぜ日本では略奪が起きないのか」―。米メディアは相次いで、議論のテーマに取り上げている。

CNNテレビは、2005年に米国で起きたハリケーン・カトリーナ災害や10年のハイチ大地震を例に「災害に付き物の略奪と無法状態が日本で見られないのはなぜか」として意見を募集。視聴者からは「敬意と品格に基づく文化だから」「愛国的な誇り」との分析や、「自立のチャンスを最大限に活用する人々で、進んで助けたくなる」とのエールも寄せられた。【3月16日 時事】
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****東日本大震災 台湾、対日強硬派も応援 「略奪なく、すべてに秩序****
台湾の著名評論家、南方朔(本名・王杏慶)氏は15日付の台湾紙「中国時報」のコラムで、未曽有の大震災に見舞われた日本の国民や各界の対応を絶賛、「武士道精神の日本が災難に打ち負かされることはない」と最大限のエールを送った。
中国時報は親中派紙で、南方朔氏も「保釣(尖閣諸島防衛)」の強固な主張者だが、こうしたメディア、評論家も今回はおしなべて日本を応援している。
台湾では一般的に戦前から台湾に居住する台湾人が親日的な一方、戦後中国大陸から渡来した外省人が日本に厳しい傾向がある。
南方朔氏は後者の代表的評論家だが、「超大地震と津波に見舞われた日本で(米ニューヨーク大停電やカトリーナ災害時のような)商店略奪も起きず、すべてに秩序が保たれている」ことを称賛。
「日本独特の栄誉を重んじ、恥を知り、礼を重んずる特性」の原点を新渡戸稲造が指摘した武士道精神に求めている。
「ぐらつく菅直人政権も責任逃れせず」、官僚体制も的確に機能し、メディアも、冷静客観的に報道責任を果たしていると評価。「日本はいま、全世界のかわりに最も尊い試練に立ち向かっている」と述べている。【3月16日 産経】
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対応の遅れ、情報開示の不徹底への批判も
一方、日本政府の危機対応についてはWTOは評価していますが、それとは異なる批判もあります。
****東日本大震災 原発事故 WHOが日本の対応を評価*****
世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)は15日、東日本大震災による福島第1原発事故での日本政府の措置は適切だと評価した。WHOの報道官はロイター通信に、「原発から30キロ以上離れると被曝(ひばく)の危険性は格段に下がる。危険はかなり早く小さくなる」と語った。ヨウ化カリウムを準備したり、屋内にとどまるよう指示したりしているのも適切だと述べた。【3月16日 産経】
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****チェルノブイリ経験露専門家、日本入国足止め*****
福島第一原子力発電所の事故後の経過を注視するロシアで、東京電力と日本政府の対応のまずさを指摘する「人災説」が強まっている。
16日付の有力紙「イズベスチヤ」は、国営原子力企業「ロスアトム」専門家の見方として、「事故直後、(東京電力は)放射性ガスを大気中に放出してでも、即座に原子炉を水で浸さねばならなかった。最悪の事態を避けられると期待し、対応が遅れた」と伝えた。
露独占事業研究所の研究員は、「2004年のスマトラ島沖地震など強大な地震が起きたのに、事業者は、原子炉だけでなく冷却装置など関連施設の強化を怠った」と地元紙に述べた。
露各紙は、チェルノブイリ事故の処理に当たったロシアの専門家が、入国許可が遅れたために15日にハバロフスクで足止めを食ったとして、日本政府の対応の遅れに疑問を呈した。【3月16日 読売】
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****独メディア「日本政府は事実を隠蔽、過小評価****
ドイツでは、福島第一原発の爆発や火災などに関する日本政府の対応について、不信感を強調する報道が目立っている。
被災地で救援活動を行っていた民間団体「フメディカ」の救援チーム5人は14日、急きょ帰国した。同機関の広報担当者シュテフェン・リヒター氏は地元メディアに対し、「日本政府は事実を隠蔽し、過小評価している。チェルノブイリ(原発事故)を思い出させる」と早期帰国の理由を語った。

メルケル首相も記者会見で「日本からの情報は矛盾している」と繰り返した。ザイベルト政府報道官は、「大変な事態に直面していることは理解している。日本政府を批判しているわけではない」と定例記者会見で釈明したが、ドイツ政府が日本政府の対応にいらだちを強めていることは間違いない。【3月16日 読売】
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なお、オーストリア外務省は15日、福島第1原発の事故の先行きが不透明なことから、大使館の業務を都内の大使館から大阪にある総領事館に移すと発表しています。





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