梶山三郎(2019)『トヨトミの野望』小学館文庫
この本は図書館で予約して1年待ちであった。「トヨトミの逆襲」は既に購入して読んだ。日本のトップ企業、世界に通じる企業である。近くの人が、コロナで遅れたが、先日海外へ赴任した。小さい子どもを二人抱え、期待と不安が交錯していただろう。数年で帰ると言っていたので、再会が楽しみだ。以下、本からの抜き書きメモである。( )書きは私のコメント。
小説であるがどこまで真実か、解説では99%とも半分とも言っているが、登場人物の感情は兎も角、自動車業界や会社の大きな流れはそんなに外れていないと思う。2%の株式しか保有していない豊臣家が人事権を握り、27兆円の企業を支配している、というメインテーマがある。工場を持たない世界最大の携帯電話メーカーApple,自動運転で世界最先端を走るGoogle、新興企業なのにEVで自動車業界を翻弄するTESLA,時代について行けない産業、企業は淘汰される。(先行する中国のEVと、トヨタが進めるFCV: Fuel Cell Vehicleの行方は?)
P47ジャストインタイムで凄まじい効率化が図られた。倉庫も在庫もいっさい持たない。道路が渋滞し指定時間に遅れるとラインが止まる。ペナルティが課せられる。30分前に着けば工場が渋滞し、外で待機させられる。下請けはトヨトミとの取引を継続したければ呑むしかない。
P115 1980年代中国政府は、トヨトミに合弁会社を打診している。が、ケンタッキーの工場建設を理由に断った。本音は中国を発展途上国とみなしていた。
P170「日本経済を牽引した家電や電気、エレクトロニクスなど大規模メーカーが衰退してきたのは生ぬるい自己満足の投資のせいだ」。
P190グローバル化の推進で多忙を極める現場、トヨトミシステムに追いまくられる工場労働者たち、日々のノルマの重圧、ストレスと疲労、家庭を守る妻の心労、弱い立場の子会社への苛烈なコストカット要求。
P259「日本人記者は期間工の問題に触れない。触れた時点で即出入り禁止だ。広告も入らなくなる。オフリミットを食らったら会社が傾く、記者が路頭に迷うことになる。
P312 2002年、トヨトミ自動車がF1に参戦した年、会長が経団連会長に就任した。「トヨトミの役員はよく病気で死ぬ。過労から来るストレス、体調不良、役員の日常は過酷の一言です。」(2001~06年小泉内閣発足、新自由主義の構造改革が吹き荒れる。)
P357トヨトミ病院で生まれ、トヨトミ系列の幼稚園に通った。図書館では豊臣の伝記を読み、副読本で豊臣家の生涯とトヨタシステムを学び、課外事業で博物館や記念館を回り、トヨトミの栄光の歴史をみっちり学んだ。(2021年度より豊田市に88億円の博物館が着工される)街を走る車は全てトヨトミ系、住宅、教育のローンはトヨトミクレジット。
P362リーマンショックが招いた経済危機に寄り高価で利益率の高い大型ビックアップトラックの売れ行きはいっきに冷え込んだ。USモーターズは80年近く君臨した世界一の座を、あろうことか東洋の自動車メーカーに奪われ、デトロイトは厳冬の時代を迎えた。(デトロイトは2013年財政破綻。豊田市はデトロイトと姉妹都市である。機会があれば訪れてみたい。)粉飾決算まがいの提案だが、損益の数字は為替レートなど、前提条件を変えればある程度操作できる。「赤字はいかんが・・」、「嘘はもっといかんぞ」。(安倍・菅政権に聞かせたい。オリンピック組織委員長の森会長の女性蔑視発言に、トヨタはスポンサーの立場から望ましくないと批判した。さすがグローバル企業である。)
*歴史と時代の変化を読み解く、面白い読み物である。
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