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貧困世代

2016-08-23 | 気になる本

藤田孝典(2016)「貧困世代」

 はじめにで、「現代の若者たちは一過性の困難に直面しているばかりではなく、その後も続く生活の様々な困難さや貧困を抱え続けてしまっている世代である。」という指摘は題名の主題である。高度経済成長時代は、普通に働けば、普通の暮らしが享受できた。働いただけ報われる体制があった(今や若者に、「普通のミライ」がない)。今の若者は大学で奨学金の借金、ブラック企業での雇用環境、長時間労働・低賃金・休暇がないなど社会的弱者でもある。著者は「監獄から出られない囚人たち」と指摘している。(  )内は私のコメントである。

 第1章では関わった具体的な事例を紹介している。そのことから、「貧困世代」と「下流老人」につながっていると説く。非正規の拡大で年金が高齢になっても、まともに受け取れないからである。トヨタの国内販売台数の減少は、若者が車を買う購買力の低下である。少子化問題と貧困問題をセットで考えなくてはならない。(結婚できない、出産しない要因は何かが、政府の政策では見落とされている。豊田市では非正規が増え、若者が市外流出している。30代男性の未婚率も高い。)

 第2章 「大人が貧困をわからない悲劇」で、劣悪な労働環境でも働く先を選べない。奨学金という借金を背負い、転職もままならない。長時間労働やパワハラの横行で、精神疾患を発症する人が増加している。少子化で「保育園義務教育化」(古市15、小学館)は、本質的な問題でないとしている。(が、豊田市は公立保育園を民間へ無償で払い下げで、保育士の非正規化、低賃金が拡大する側面がある。保育に情熱がなくなる可能性が高まると考える)。

 第3章ブラックバイトと奨学金問題(略)

 第4章「住めない悲劇―貧困世代の抱える住宅問題」では、親と同居の若者が日本で4割いるという。イギリス、スウェーデンでは1割以下という。先進国では住宅政策が福祉の基本であるが、日本では量は足りたとして市場原理に任せている。非正規、低賃金の若者は住宅取得のローンが組めない。15年に生活困窮者自立支援法が制定した。一般的な家賃補助制度ができるか、低家賃の住宅が創出されるか、注目しなければならない。少子化の原因は住宅にあるのではないか、という仮説が浮かぶ(豊田市では中堅層が市外へ転出している。定職につけない。安い地価と岡崎などへ良い住環境を求める。30代独身未婚率が高い。この解決策が定住対策であるべきだが、豊田市の8次総合計画には欠けている)。若者は公営住宅の入居が制限されている。住宅がなければ、少子化も人口減少も止まらない。住宅取得の見通しもなければ、家族形成の姿をイメージできない。

 第5章提言では、、労働組合で戦う。ワーキングプア問題の解決。ここでは若者サポートステーションによる就労支援は貧困を温存する危険性がある。十分な職業訓練も用意されないままの再就職を指摘する。スカラシップの導入と富裕層への課税。家賃補助制度の導入と住宅政策の充実。平山の住宅政策の充実が少子化問題を改善していることを紹介している。

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