豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

中心市街地のバリアフリーと今後の課題

2006-03-31 | 都市計画・まちづくり
豊田市では早い時期に、住民参加で「駅から歩いて目的地に誰でも安全・快適に行ける」歩行者空間ネットワークをコンセプトに、モデル地区の計画をまとめ事業化しました。現在は「豊田市駅周辺ユニバーサルデザイン基本構想」に、一応引き継がれています。この間、音声誘導システムの導入を巡って、視察、実験などを行ってきました。福祉まちづくりではハートビル法・愛知県条例、交通バリアフリー法などが制定され、条件は整ってきました。そして現在総合的な法律が、制度的には作られようとしています。一方で、「ガイドヘルパー」の有料化、「障害者自立支援」法も制定されました。モデル地区の取り組みの内容と到達状況および残された課題をまとめました。福祉の街づくりを推進するには、予算と人をどれだけ配置するかに関わります。結論的に言えば、人ひとりと年間予算1億円程使うことだと考えます。
 モデル地区の設定
豊田市では97年、98年にかけて市民参加で、駅周辺のバリアフリー計画を策定しました。その背景として、1994年ハートビル法および愛知県人にやさしいまちづくり条例が制定されました。豊田市では95年(平成7年度)に人街対策監制度ができ、4つの部会と30課ほどの庁内組織ができ建築相談課が事務局を担いました。最初は市施設のバリア点検を行い、市道が先行し、次に営繕課が続き計画を作り改修など行ってきました。次に、身障者団体が図書館の点検をし、音声誘導システムが問題となり、世田谷、町田、日進など調査しました。また、市の施設の技術指針をまとめました。県が計画およびモデル地区の整備に補助金制度を設けたので、豊田市では97、98年度(H9,10)に策定しました。H13年度補助事業が終了ました。
問題点と課題
事業の特徴的な問題点や課題を以下列挙します。
①153号線の加茂病院角にある歩道橋の撤去を、国に要請しましたが却下されました。同線の電線地中化工事に伴い、V字型の誘導ブロック導入計画がありましたが、一宮でも問題となり導入しませんでした。同路線の電線地中化・歩道整備について、計画図の提供をいただき、検討内容を要望しベンチなど改善しました。歩道橋については継続課題となっています。また、歩道整備で市道との擦り付けが上手くできていません。
②重点整備区域の中で信号機について、音響式への改善を警察へ身障者団体から要望書を提出した結果、一部改善しました。また、警察の動きとして153号線の名古庄ビル交差点では横断歩道にエスコートラインが設けられました。さらに、狭い道路についてはセンターライン撤去し、道路の端のラインを歩行者通行分として確保するようになりました。交差点などの段差解消が進み、かえってクルマの駐車違反が目に付きます。ボラードを設置するのか検討すべきです。標識については歩道にあるものは縁石の中に設置をするよう改善が望まれます。全般的には警察のバリアに関する理解は深まっています。
③市道の緑陰歩道は歩行者専用道路です。誘導ブロックについて、設置でなく色塗り塗装の現地実験をしましたが、結果は「中途半端なものは設置しない、色は黄色を原則」として確認し色塗り塗装方式は中止しました。その後、道路部局で誘導ブロック設置をしました。また、駅西のデッキでも誘導ブロックを設置しました。
④公園計画については、神田公園はじめワークショップ方式で住民利用者の意見が反映し、評価が高いです。公園トイレについて身障者対応の洋式トイレが普及しましたが、管理人のいないトイレでは女性に不評です。
⑤市役所は最も市民の出入りする公共施設です。増設した南庁舎はハートビル法の基準で建設され概ね良好です。しかし、前後に3台配置されたEVは戸惑います。歩道橋で南庁舎と接続しましたが、法律の壁で東庁舎の3階には上れません。東庁舎にエスカレータが設置されましたが、2階まででベビーカーは上れません。旧庁舎に洋式トイレ、ローカウンターなどが改善されましたが、手すり、誘導ブロックなどは不十分です。敷地内においても、誘導ブロックなどが改善されていません。
モデル地区でネックとなった課題
① 緑陰歩道の交差点で横断歩道が不連続になりました。ガードレール代わりの鎖は事故の危険性があり、一部外されています。
② 那古庄ビル交差点は段差が解消されましたが、建物との段差が残りました。
③ 竹生線では歩道橋2箇所が残ったままです。
民間建築物の届け(県条例による)
愛知県条例による建築物の届けは年間100件ほど出されますが、完了率は4割弱です。個別的には郵便局は改修されました。松坂屋出入り口も自動ドアに改善されました。
 モデル地区の評価
歩行者空間ネットワークは量的にみればかなり整備されましたが、ネックとなる部分が残ります。モデル地区の評価のワークショップも行ったが、悪い箇所は多く指摘されました。事業で補助金をもらう場合は事業箇所が限定されます。モデル地区では地元住民の参加がほとんどなかったので、手段としての移動の課題が主となり、居住の課題が議論されませんでした。当地区の位置づけは、全市への展開を想定しハード整備だけでなくソフトも含めて総合的に実験的に行い、多くのことを学びました。全市へ展開するには居住地を出発地とし、地区の福祉防災まちづくり計画を持ち、計画的に改良整備することでしょう。
人にやさしいまちづくりは住民参加の民主主義が大事です。①住民参加(市民の立場)で現場(ワークショップ)から発想すること。②計画段階から事業化、さらに完成後の検証も住民参加でおこなった。③決まったことは実行し、決まらないことは実施しないこと、社会実験で信頼を築いた。参加の形態は深まりましたが、参加による効果とコストの評価が課題となります。
施設計画では、①トイレのコンペを実施、②公園でワークショップによる計画作りが定着した、③道路計画、建築計画で身障団体の施設検討委員会と協議した。
法制度、技術指針で、①指針の検討、見直しをした、②先進地視察や市民講座で学習を深めた。③法律、県条例、道路構造令の制約が当時あった。
 公務員のスリム化、財政悪化の中で中長期の効率、効果の視点が必要です。さらに、成熟型都市社会での既存集落の住環境整備がまちづくりの重要となります。
 中心市街地での残された課題
 他市と比べても、あるいは過去の駅周辺の状態から見ても、綺麗になり整備されてきました。残された課題は以下の3点だと考えます。
① 竹生線歩道橋撤去2箇所、横断歩道のハンプ(建設会社社員の提案)
② 道路から建築物へのアプローチと民間助成
③ 市庁舎全面バリアフリー点検
 全市展開への政策提案
 ハートビル法、交通バリアフリー法を一本化する新法の動きもありますが実現性がありません。高齢社会を迎えて福祉・防災まちづくりの全市展開への課題が求められていると思います。
① 新法ができても具体化するのは自治体であり、地区住民です。愛知県条例は当時ではトップランナーでしたが、公的施設の届け、罰則、事前指導などで現在は遅れをとっています。豊田市の独自条例が必要です。
② 住民協議組織や、住民参加システムの体制が重要で、事務局の体制強化、NGOとの連携が必要です。全市展開への手法として地区公募方式(歩いて暮らせるまちづくりモデル)を提案します。地区の課題は福祉・防災など複合的で柔軟で実効性のある制度が重要です。
③ この課題を実行するには、人ひとりと年間予算1億円が必要です。
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稲武で農家訓練施設

2006-03-31 | 都市計画・まちづくり
 旧稲武町が計画してきた「帰農者滞在施設」が12戸完成し、3月30日に開村式を行ないました。この施設は約44㎡で土地が100㎡ついて、年間27~28万円です。稲武では人口が6200人から3150人半減しています。週末に都市からやってきて農業に親しんでもらったり、農業への転職を支援するなど、都市と農村の交流を狙ったものです。評判次第では拡張する予定だそうですが、どうなることでしょうか。
 農山村が高齢化と財政逼迫を背景に、工業都市で財政的に恵まれた豊田市に編入合併して1周年です。旧市内では合併の機運はありませんでしたし、メリット・デメリットの比較ではメリットなしでした。広域になっても都市内分権をすることと、都市と農村の交流を旗印に合併が強行されました。結果は財政力指数が1.86から1.44と大きく減少しました。都市と農村は合併しなくても交流できますが、この施設がどのような効果をもたらすか注目していきたいです。さらに合併については道州制の動きもあり、「西三河都市」の政令市の模索も底流に感じます。
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