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働きすぎの時代

2006-03-11 | 気になる本
森岡孝二「働きすぎの時代」岩波新書、2005年
働かされすぎの日本人の方がいいかも知れません。息子は変則勤務で名古屋にある店の店長をしています。出勤は遅いせいもあって、帰るのは夜の11時か12時です。土日も出勤で変則勤務です。先週聞いた女性の話では、本人はパートで、ご主人は夜勤があり、上の娘が看護婦で、下の娘が介護施設で夜勤があるそうです。家族の食事やコミュニケーションができず、各自の勤務スケジュールが壁に貼ってあるそうです。どこかに一緒に行く用事がある時は、1ヶ月前から予定を立てるそうです。日本の政府も労働組合も年間1800時間の労働時間を目指すといっていたようですが、それは過去の話でしょうか。それにしてもILO条約を185のうち、46条約(04年3月)しか批准していないとは、時代遅れもはなはだしいです。ネット情報によれば、2001年八尾市議会では次のように意見書を採択しています。ILOの「この条約では、パートタイム労働者はフルタイム労働者より労働時間が短いだけであり、その権利や社会保障、労働条件は働く時間に応じて「均等待遇」を保障するよう必要な措置をとることを各国に義務づけている。今や日本のパートタイム労働者は増加の一途をたどり、1100万人を超えている。その大半は女性であり、かつ女性の雇用労働者の3人に1人がパートタイム労働者になっている。・・・、特に家族的責任を持つがゆえの不利益は、なかなか解消されず、フルタイム労働者との均等待遇を求める声は強まっている。1998年の厚生白書でも少子高齢化社会の原因のひとつに、パートタイム労働の低賃金をあげ、出産、育児で女性が損をしないためには、この改善が必要である」と、意見書にあります。
筆者は序章で働きすぎの時代の背景に、現代の高度資本主義の4つの特徴を挙げています。それは、グローバル資本主義で、世界的に途上国を巻き込んで競争が激しくなり、先進国ではかってないリストラと産業再編が起きています。企業が従業員の首切りをすると、株価が上がるという奇妙な現象もおきています。2つ目は情報資本主義で、労働を単純化し非正規雇用に置き換えることを可能にしています。マクドナルドはコンピュータの申し子で、作業手順のマニュアル化によりアルバイト経営が成り立ちます。3つ目は消費資本主義で、コンビニや宅配便に象徴される利便性は、消費者の需要構造を変化させ、経済活動の24時間化をもたらします。4つ目はフリーター資本主義で、中高年も含めて非正規が増加し、正規は長時間労働となっています。ここでは労働の規制緩和を取り上げ、サッチャー、レーガン、中曽根は「1980年代に『小さな政府』を唱え、福祉国家が大きくなりすぎたという理由で社会保障費を抑えるとともに、民間企業の営利機会を拡大するために規制緩和、民営化、市場化を推し進めてきた。」と、述べています。これは橋本内閣、そして小泉内閣の「構造改革」へと、今も引き継がれています。1995年の日本経団連の「新時代の『日本的経営』の名の下に労働時間が流動化され、アメリカ型の労働スタイルとなってきました。最後に「多くの若者にとっては、いかに正社員として定職に就きたくてもそれが容易にできないほどに就職環境が悪化してきたのである。」と同時に、「90年代の初めに比べて、既婚女性の就職率が高まってきたことによって、働く女性全体でみた職場と家庭の摩擦は高まったとさえいえる。」、つまり、若者の結婚、家庭生活は困難が深まり、晩婚化・非婚化へとつながります。さらに家族のコミュニケーションは減り、家庭摩擦は増えて、ストレス、うつ病、DV、離婚への要素に、現代の働きすぎの労働時間が要因になっているように思えます。弱体化した労働組合に期待するよりも、労働法制の改正に期待した方が早いかもしれません。しかし、小泉・自民党の多数政府ではそれも期待薄かもしれません。
トヨタの賃上げはボーナスをカットしてわずか1000円の賃上げです。高級官僚の天下りの一方で、一般公務員の給与カット、人員削減では国民のために働く意欲も萎んでしまいます。地域のコミュニティの希薄化が言われていますが、今や「家族崩壊」の危機を感じます。
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