Con Gas, Sin Hielo

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「イントゥザウッズ」

2015年04月05日 21時32分32秒 | 映画(2015)
おとぎの住人だって、人間だもの。


Yahoo!映画の評価を見ると散々な本作。確かに登場人物の紹介を兼ねる冒頭から違和感が満載なのである。

シンデレラを演じるA.ケンドリックは好きだし美人だと思うが、輪郭やパーツがシャープなので、スーツ姿などでは映える一方で、お姫さま衣装はどこかしっくり来ない。

赤ずきんはそもそもかわいげがない。その上、パン屋でパンを分けてもらうお願いをする傍らで店のパンを次々と勝手に食べていく。

ジャック少年は母親の言うとおり、賢さとは程遠い行動をとり続ける。正体不明の人に対して大事な牛を豆粒と交換してしまう。

こんな話でよかったっけ?と首を傾げたくなるような主役たち。

ここで違和感が嫌悪感に変わるともうダメだろう。

おとぎ話の登場人物を俗人に置き換えてごちゃ混ぜにした悪戯の世界として許容できた者だけが先へついていける感じだ。

「クレヨンしんちゃん」に出てくるネネちゃんが、おままごとを俗世間に落とし込んで楽しむ「リアルおままごと」の精神に近い…気がする。

ラプンツェルを含めた4つの話を、子供が欲しいパン屋の夫妻と、パン屋との因縁を過去に持つ魔女が一つに束ねる。

魔女がパン屋にかけた呪いを解くアイテムがそれぞれの話に結び付いていて、夫妻がそれを追って悪戦苦闘するのだが、彼らもエゴ丸出しでアイテムを横取りにかかる。

うまくいったり、反撃されたり、諦めたり、反省したり。俗人の素性を見せつけられて苦笑するばかりだ。

それでも何とか呪いを解き、主人公たちは自分らの話を型どおり完成させるのだが、実は話の途中に小さな綻びが仕掛けられていて、突然空から降りてきた巨人にハッピーエンド後の世界をめちゃくちゃにされてしまう。

ここからが更に本作の本領発揮で、登場人物は災厄の犯人探しでなすり合いを始め、パン屋の妻はあろうことかシンデレラの王子様と不貞の関係に。

最後に力を合わせるところだけは純粋なファンタジーへ回帰するが、バッドエンドに書き直されてもおかしくない流れ。

愚かながらも愛すべきところがあるのが人間。一度過ちを犯してもやり直して大丈夫、と激励されているもうな気になってくる。

登場人物が目的を持って分け入っていく森は、混沌の世の中の象徴。そこで人は様々に振る舞い、抜け出す者もいれば彷徨い続ける者もいる。

世の中の不条理が皮肉を込めてみっちり語られるのとは対照的に、前半で展開するおとぎ話で既に承知のエピソードは気持ちよくすっ飛ばす。

赤ずきんがオオカミに食べられて救出されるまで、ジャックが天空の世界へ上ってから戻ってくるまで、シンデレラが舞踏会へ行って逃げ出すまで、これがいずれも数秒。

あとは、俗世からかけ離れた存在の王子2人が、まるで頭空っぽに描かれているのが特徴的。これは笑えた。

巨人の風体と、最後の下りに少し雑な印象を受けたが、物語が持つ精神は好みに近い。

(70点)
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