原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

「法人格否認の法理」

2021年01月30日 | 学問・研究
 (冒頭写真は、原左都子2度目の大学にて受講した「商法Ⅱ」の講義ノートより転載したもの。)


 エッセイテーマが、突如として我が2度目の大学時代の講義ノートに移るが。


 そのきっかけとなったのは、本日昼NHK法律関係の番組内で、「信頼関係破壊の法理」が取り上げられた事だ。

 「信頼関係破壊の法理」に関して、ウィキペディアより引用しよう。
 
 信頼関係破壊の法理(しんらいかんけいはかいのほうり)とは、「高度な信頼関係を基礎とする継続的契約において、一方の当事者の投下資本の回収の利益を保護するため、他方の当事者からの一方的な契約の解約を『当事者間の信頼関係が破壊された』場合にのみ認める」、という判例の考え方である。
   概説
 本来、一方の当事者が法律で規定された契約解除権(法定解除権:民法第541条、第542条、第543条、第617条、第626条、第627条、第628条など他多数)を持っていれば、その当事者は相手方の意に関係なく契約を解除(解約)できるはずである。しかし、大家の一方的な都合や意地悪などで契約の解約を告知されれば、賃借人は引っ越さなければならない。引越しの費用がかかり、生活に大きな支障をきたす可能性がある。このような不合理をなくすために、判例は「両当事者間の信頼関係が破壊されたと認められない特段の事情がある場合」には解除を認めない、とされている。
この法理は、主に賃貸借契約の解約、使用貸借契約の解約に関する裁判で適用される。同様の理論に、雇用契約の解約の裁判で適用される「解雇権濫用の法理」がある。
 (以上、ウィキペディアより引用したもの。)



 この「信頼関係破綻の法理」の話題が番組内に出たとき、我が脳裏に咄嗟に蘇ったのが今回のテーマである「法人格否認の法理」だ。

 「商法Ⅱ」を担当して頂いたのは、我が卒論及び修士論文指導を担当下さった 文化勲章・秋の叙勲授章者であられる吉井先生なのだが。
 
 昭和62年当時、「法人格否認の法理」は商法(会社法)に於けるトピックス的存在であったため、特に授業の時間を割いて懇切丁寧に解説して下さった記憶がある。
 
 先程書棚より我が「講義ノート」を取り出して調べたところ、当該「法人格否認の法理」の我が手書きノートが7ページに渡っていた。
 (大学の授業とは我が2度の経験に基づくと、決して担当教官が板書などしない。 すべて教官が口頭で述べる内容を、自分のノートに手書きにて筆記するのが通常である。)
 1講義テーマに関して3講時を要し、手書きノートが7ページにも及ぶのは大変珍しいことだ。
 それ程に当時このテーマこそが「会社法」を語るに際し最重要であったことを、吉井先生が伝えて下さったものと理解している。



 以下に、その7ページの写真をすべて掲載させていただこう。

         


         


         

         
         


         


         

         
         


 それでは以下に、この「法人格否認の法理」講義内容を要約しよう。

 当該「法人格否認の法理」は近年の司法学会のテーマに3度選ばれている程に、会社の法人性に関し非常に重要な問題である。 内容としては、米国判例法で形成されたセオリーをそのまま持ってきたもの。 会社をめぐる法律関係の処理において、形式を無視して実態に即し責任の帰属を求めるものである。
 これにより法解釈に弾力性が生まれるが、 悪く言えば曖昧模糊としてしまう欠点もあるともいえよう。
 当該法理を定義づけると、「会社の存在を全面的に否定するのでは無く、特定の事判の解決につき、会社という法衣を剥奪してその背後に存在する実態を捉え、その実態に即した責任の帰属を認める法理」となろう。

 例えば法律行為が会社名義か個人名義かが曖昧な時に、個人の行為につき会社の責任を追及したり、会社の行為につき個人の責任を追及可能となる。

 米国は「不文法主義(慣習法のみ)」、日本は「成文法主義」であり、本来ならば米国判例法を我が国にそのまま持ち込むことは不能。 その根拠付けの必要がある。
 法人格否認の法理の我が国への導入においては、民法1条3項 権利の乱用禁止規定により「否定の法理」を認め、商法54条に根拠付け、その解釈論として導入が可能となろうか?
 ただこの手法を使用すると、極めて法的に不安定となってしまう。 本来、個々の規定で解決可能であるならばそれを使用し、無いときには最後に一般条項が出てこよう。 しかしその場合には解釈に差がでてしまい、どの辺から「否認の法理」を使うのかにおいて問題があろう。

 (以下略すが)、以上我が講義ノートより「法人格否認の法理」につき一部を引用したもの。  
 ついでに当時の吉井先生の学生への推薦参考文献として、「商法の争点」ジュリスト。(これは私もよく購入して読んだものだ。)



 本日のNHK昼間の総合テレビ法律番組のお陰で、久しぶりに「法学」の復習が叶った。

 いやいや、まだまだ我が頭はちゃんと働いているぞ!

 30年以上前に記した自身の「講義ノート」を今読み返しても、当時の授業が昨日のように思い起こされる我が“法学脳”に、自分で感激することが叶った。

 今後も時間を見つけては、我が「講義ノート」を閲覧しようじゃないか!!
 老後の楽しみが、また一つ増えたぞ! 😁 
  

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