原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

子供の就職先決定は子供本人に一任しよう

2016年09月03日 | 人間関係
 8月下旬に、失敗も沢山あったが後で思えば有意義だった台北旅行より娘と共に帰国した。

 その直後より、国内では何故か子と親が関係する事件報道に触れる機会が多い。


 我が娘に目をやれば、帰国の次の日から仕事だ。
 少し休ませてやりたいものの、一旦社会人となるとそうもいかない。 今回の旅行は時差がほとんどなかったため時差ボケ症状は無いものの、やはり旅行とは疲れるもの。 それにもかかわらず、娘は旅行の片付けをそそくさと済ませ、職場の皆様へのお土産配布の段取りを付けたり、翌日からの仕事の準備に取り掛かっている。

 この状況下で娘から「お母さんは毎日お休みでいいね」とでも非難されたものならば、「一人楽して本当にごめん!」と謝りたい程だったのに、「疲れた…」の一言も吐かない娘の成長ぶりと、新卒新人との未熟な立場での職業人としての心構えの程に脱帽だ。
 こんな立派な子を誰が育てたの!?! と問われれば、 “へっへっへ、この私だよ”、とでも自慢したくもなる。 (勝手に自慢してろ、って?? はい、そうします。)


 今回のエッセイは、前回公開した本エッセイ集バックナンバー 「親の子との関わり方を再考させられる事件が多発しているが…」 の続編の形となろうか。

 朝日新聞8月27日付 “悩みのるつぼ” に、またもや親と子との確執を綴った相談を発見した。
 早速、50代母親による 「会社をやめたいという娘」 と題する相談内容を、以下に要約して引用しよう。
 相談者である私は50代半ば。 娘は美大卒業後4月から社会人となった。 本人は児童書を扱う出版社に就職したかったのだが夢が叶わず、とある会社にデザイナーとして採用された。
 ところが内定式の後から「会社と合わない」「就職したくない」と言い出し、実際就職すると毎日「辞めたい」と文句ばかり。 本人曰く「私のやりたい仕事ではない」。 会社でも真面目に働いていない様子で、いつかクビになるのではと心配している。
 先日娘に、「希望通りの仕事をしている人間など少数」「ただ辞めたいと言うのは大人のする事でない」と叱りつけ、退職してバイトすると言う娘に「正社員が如何に恵まれているか」を言い聞かせた。
 本人には将来絵本作家になる夢があるので、私は仕事を続けながら絵を描き、夢を追いかけたらよいと思っている。 夫も「娘が仕事を辞めるなら家を出て行かせる」と言うが、娘には直接伝えられず、嫌われたくないので私に任せるそうだ。
 娘は単に仕事を辞めたいがためにいろいろ言い訳をするが、親として突き放した方が良いのか? あるいは、温かく見守るべきか?
 (以上、朝日新聞 “悩みのるつぼ” より相談内容を要約引用したもの。)


 一旦、原左都子の私論に入ろう。

 何と申しましょうか。  幾重にも論理破綻したご一家だこと‥…。

 ます娘さん本人だが、ご自身の第一志望であった児童書を出版する会社への就業を何故断念したのだろう?  それはおそらく、デザイナー正社員として採用してくれる会社が存在する事に単純に安堵してしまった結果であろうと私は推測する。 しかも親達も、娘の正社員採用に糠喜びする始末…
 そうなると、成人後月日が流れていない娘さん側は、その内定先を自分の就職先と定める以外方策が取れなかったとの事ではなかろうか?

 ところが実際就職してみて、「やはり私がやりたい仕事ではない」と気付く始末…
 それならば父親氏が望むように、とっとと家を出て自分のやりたい事を実行するべく頑張ればよいのに…
 何故か職業経験が乏しいと思われる母親から、「いかに正社員が恵まれているか」なる無意味な叱咤を受ける現状‥…

 
 ここで、今回の “悩みのるつぼ” 回答者であられる経済学者 金子勝氏のご回答の程を紹介したいところだが、残念ながら原左都子の回答と180度 論理が食い違っている。


 やむを得ないため、原左都子自身からの回答を記そう。

 まず問いたいのは、この相談者一家の娘さんを産んでからの歴史の程だ。
 娘さんを美大卒業させたとの事は、おそらくある程度娘さんの進路希望に関して柔軟な理解があるご家庭だったのであろうと想像する。
 と言うのも、原左都子の娘も当初美大志望だった故だ。
 その立場で物申すならば、通常美大を卒業させるということは、将来に於いて「就職先が無い」事を物語っていると私は理解していた。  もしも、娘が美大卒業後に就職先が皆無だったとしても、それは娘の責任ではないなる悲壮感にも燃えていた。
 ところが我が娘の場合、ラッキーにも高2段階で自身の希望で大幅な大学進路変更を申し出た。 ただ、この進路も(美大程ではないが)、就職が芳しくない事実を親として視野に入れてはいたが……
 更にラッキーな事には、我が家の娘は昨年就活中の夏頃、自らの意思で自分の就活進路を大幅に変更したのだ! これぞ素晴らしい我が子の判断だった。

 どうしても自分の大学での専門分野にて「内定」をゲット出来ない娘が、新たに挑戦したのは、IT技術分野だ。 これならば、口数が少なく対人関係苦手な自分でも成就できそうだ! と娘自身が確信した様子だ。
 そして娘は独力で昨年10月に、遅ればせながら、現在勤務中のIT関連企業内定をゲットして来た。
 その後の企業側からの娘に対する研修の数々や入社前までのIT国家試験受験合格必須!も難なくこなし、我が娘は“晴れて” 「IT技術者」として現在の企業へ今年4月に入社を遂げている。
 来る10月には更なる上位のIT国家試験が実施されるが、その合格ゲットを目指すべく現在娘は精進中だ。 それよりも何よりも、職場にて我が子の存在を認めてくれる社員の皆様の温情に、ここで親として心より感謝申し上げたい。 (恐らく、サリバンによる22年間に渡る壮絶とも表現出来る厳しい教育指導に耐えた娘の事、これしき平ちゃら!と頑張っているものと評価する。


 話題を、朝日新聞 “悩みのるつぼ” に戻そう。

 やはり相談内容にある娘さん側の、今後の進退が気にかかる。
 我々よりもおそらく10年程若き世代の両親の元に育った娘さんだろう。 ご自宅の経済力の程を心得ないが、ここは娘さんご自身が思い切って家を出ては如何だろう。
 と言うのも、どうやら貴女の御両親は、結局「正社員」との身分にばかり執着し、貴方が本来成し遂げたい職種への思いをまるで軽視しているように考察する故だ。

 そんなご両親の思いに迎合出来る程の小動物であるのならば、それを全うすればよいが、そうでないのなら、ここは思い切って自宅を出てご自身が目指すべく分野へ今一度方向転換するべきと応援したい。

 世の中の移り変わりになど疎いであろう特に若き世代は、自らの未来図を描きにくいものだとも承知している。
 それでも思い切って自分の世界を開こうと志し次なる道程に精進し続ける若者には、必ずや応えてくれる未来が待っている!と、私自身の経験からも指南しておきたい。