原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

東京メトロが東急東横線と繋がった!

2013年03月20日 | 時事論評
 我が家が東京メトロ沿線の現在の地に自宅を買い替え転居したのは、今から遡ることほぼ10年前の頃である。

 前回の我がエッセイ「道路建設計画に翻弄された義母(はは)の人生」の中でも少し紹介したが、我々夫婦は婚姻当初義父母からの資金援助もあって、埼玉県内の超高層タワー物件マンションを購入し住まいとした。 超高層マンション物件が今ほど一般化しておらず、その存在が未だ珍しい1990年代前半の頃の話だ。

 これが実に住みにくい。
 常に強いビル風が吹き荒れ、布団や洗濯物が飛ばされるし、窓が開けられない日も多い。(管理規約によりベランダでの干し物は危険防止目的で全面的に禁止されていたのだが…。) 
 さらには管理費、及び敷地内にあるアウトレットショッピングセンターと共有の地下駐車場にかかる月極駐車料を合わせると、月々5万円に達した。 巷の賃貸物件に住むのと同額程度の管理費駐車場代金を、今後ずっと負担し続けるのは如何ほどかと身内と話し合ったりもした。

 もう一点問題点があった。 
 せっかく“モダン嗜好”の義母が推奨してくれた超高層マンション物件ではあったが、物件の所在地が都心から程遠い位置にあることが、我々若(?)夫婦のライフスタイルにとっては大いなるネックだった事も大きい。
 入居後わずか1年足らずにして、買替転居を決断する事態と相成った。

 その後、わがまま夫婦である我々は三度(みたび)の買替転居を繰り返し、不動産買替により 損失総額4000万円也!を計上しつつ、現在のメトロ沿線の地に引っ越して来るに至っている。

 さすが短期間に買替転居4度目ともなると、今後多額の損失を計上し続けないために次なる住居を永住の地と定める決断を下さざるを得ない。 そのため現在の住居選択に関しては、私の指導の下失敗なき綿密な計画性をもって事を進めた。
 まずは当時小学3年生だった娘の将来に渡る適正教育環境の確保。 親としてはこれが第一の着眼点であろう。
 次に身内が職場に通い易い距離の確保。
 そして一家のライフスタイルに見合った生活環境及び交通環境の確保。これも欠かせない。
 そんなこんなで白羽の矢を立てたのが、東京メトロ沿線駅最寄の地である。

 何分、東京メトロ沿線とは生活のフットワークが実にいい。 都心各地に出向く場合、網目状に網羅されたメトロの乗換えを利用すると、何よりも低運賃かつ何処に行くにも短時間で到着できる。
 中学から私立を目指させていた我が娘は、6年間メトロの乗換えを十分に利用し私立中高へ通学し卒業した。 昨春大学へ進学して以降も、メトロ及びその終着駅より直通運転の私鉄利用で楽に大学へ通っている。
 既に企業を定年退職した身内だが、これまたメトロを都心と逆方向へ日々座席にゆったりと座り楽して通い終えた。
 私にとっても、この地は生涯捨て難い。 趣味の音楽鑑賞や芸術鑑賞、あるいは買い物等々のため都心の地へ出かけるのに日々メトロのお世話になり続けている。 私の現在の生活はメトロ交通網なくして成り立たないと言っても過言ではない。


 さらには私が婚姻後短期間での4度目の住居買替に際して、現在の地を選択したのには私なりの“隠れた理由”があった。
 我が現在の住居が位置する東京メトロ線は、10年前の当時より既に将来「東急東横線」と直通化される予定だったのだ!

 東急東横線と言えば、30代の私が独身を謳歌した頃居住していた地である。
 当時より派手好きではあったが、決して“一ミーハー女”では終わりたくない私は“ブランド物など要らないが、自分が住む家ぐらいは自分の経済力で買うぞ!”と虎視眈々と狙っていた。
 30歳にして、ついに住居購入に踏み切った。  既に“現金一括払い”で家を買えそうな額の預貯金を貯め込み、29歳半ば頃より自分が購入して済む住居を探し求めていた。 結果としては30代にしての二度目の大学進学先に合わせ、横浜の地に住居を購入する決断をした。
 それでも当時まで住んでいた東京にも未練タラタラ状態だ。 そこでターゲット地を東京方面・横浜方面両方に利便性が高い東急東横線に絞り込んだ。 都心からは少し遠くなったが、急行停車駅である「綱島」駅徒歩4分の商店街の地に、私は中古4年2DKマンション物件を購入した。 当時独り身の私にとっては十分な広さだった。  その地から2度目の大学及び大学院へ通う傍ら自分の専門や個性を活かした仕事にも励み、独身貴族を謳歌しつつ、住宅ローンも独身の間に自らの経済力のみで全額返済し終えた。 (現在に至っては“綱島の自宅マンション”は賃貸物件として小遣い程度の収入を得ている。)


 時事論評エッセイにしては、ついつい原左都子の私事が長引いてしまったことをお詫びする。

 皆さんもご存知の通り、先だっての3月16日、東京メトロ副都心線より渋谷駅を通じて東急東横線への直通運転が開始した。
 今回の東京メトロ副都心線と東急東横線の直通運転により、東京メトロ線・東急線を含め、埼玉県西部を走る東武東上線、西武有楽町線・池袋線、それに横浜みなとみらい線も入れて、88、6kmにも及ぶ首都圏の大規模路線ダイヤ路線が開通したとの歴史的首都圏交通網の誕生である。

 メトロ・東急直通運転後初めて迎えた3月18日の通勤ラッシュ時には、渋谷駅において乗客が大混乱したとのニュース報道だった。
 それもそうであろう。 元々渋谷駅の2階に位置していた東急東横線「渋谷駅」であった。 それが何と地下5階に移動し、今までスムーズに移動可能だった1階に位置するJR線乗換に際して、な、な、なんと6階分も移動する労力と時間が発生するとのことだ!
 これが実に迷惑である事態は、サラリーマンを経験している私も重々理解可能である。

 各社鉄道間における直通運行プロジェクトも、でき得るならば鉄道利用者として一番の顧客であるサラリーマンにターゲットを絞ってあげて欲しい思いもする。
 今回の東京メトロ・東急直通運転開始の場合は、おそらく(埼玉県や神奈川県の)遠距離通勤サラリーマンの便宜を第一に図ったものと理解するべきだろう。 そのため、例えば渋谷駅で乗り換えるだけで職場に通えた都心に住むサラリーマン達は、今回の直通運転によりむしろ不便を強いられる結果となるのであろう。


 最後に、今回の東京メトロと東横線直通実現に関する原左都子の身勝手な感想を述べさせていただこう。
 我が野望に満ち溢れていた栄光かつ未熟な遠き独身ノスタルジー時代に、自宅からわずか30分程の時間で直行出来てしまえる今時の鉄道直通事業は、私にとってはミラクル世界とも表現できそうな思いである。
 反面、そんなに簡単に過去の時代に繋がっていいのかと、首都圏交通網の大進化に戸惑いが隠せないのも事実だ…… 

 それでも、近いうちにメトロ直行で東横線「綱島」駅を再び訪れ、我が所有物件近くを散策してみようかと考えたりしている複雑な心境の原左都子である。