原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

1か0かの世界

2008年10月08日 | 学問・研究
 “学問・研究カテゴリー”に分類するほど専門的で堅苦しい話でもなく軽めに綴るので皆さんにお読みいただきたいのだが、今日は算数・数学にまつわる話題を取り上げてみよう。


 朝日新聞9月29日(月)朝刊東京北部ページ「キャンパスブログ」のコラムに“「3」の重要性”と題して、算数、数学学習における「3」の学習の重要性について述べた某大学教授による記事があった。

 この記事の一部のみを取り上げて要約してみよう。
 四則計算の規則から高校数学の積分、行列に至るまで、日本の数学教育では「3」が要点となる問題を広く内含している。1、2、3、…と続いて成り立つ性質を理解させるには(例えば掛け算の計算において2けたにとどまらず3けたまで学習させる等)、「3」の場合まで確認させることが大切である。
 「3」の意義を確かめる実験として、幼稚園児を対象に“あみだくじ”の理解実験を行なった。その結果、縦の直線が2本のあみだくじをたどる方法だけを教えるよりも、3本あるあみだくじも学習させる方が理解度がぐっと上がるという結果が出た。
(以上は、朝日新聞記事の要約である。)


 話が変わって、私は小学生から高校2年生の途中位まで、算数、数学が好きな子どもだった。そのため、大学の進路希望では理系を選択したのであって、当時特段理科が好きだった訳ではない。

 数学の何が好きなのかと言うと、そのひとつの理由は確実に100点が取れる教科であるからだ。例えば国語の場合、作文等においては教員の評価の偏り等の要因で減点されてしまったりするような不透明性が避けられないのだが、これは評価される側としては納得がいかない。そういうことがなく評価に透明度が高いのが算数、数学の特徴であろう。(ただ証明問題等において、解答を導く論理に誤りがないにもかかわらず、自分が教えた通りの書き方をしていない等の理由で減点するキャパのない教員もいたが…。トホホ…)

 私が算数・数学がもっと本質的に好きだった理由は、数学とは哲学と表裏一体である点である。(このような数学の学問的バックグラウンドを把握したのは、ずっと後のことであるのだが。)紀元前の古代から数学は哲学と共に研究され論じ継がれてきているのだが、数学の概念的理解を要する部分が当時の私にはインパクトがあったのだ。
 一例を挙げると、中学校の数学の時間に「点」と「線」の概念について数学担当教員から(おそらく余談で)話を聞いたことがある。 「点」や「線」を生徒が皆鉛筆でノートに書いているが、これらはあくまで“概念”であり形も質量もないものであって、本来はノートなどに形にして書けないものである。数学の学習のために便宜上、鉛筆で形造って書いているだけのことである…。 おそらく、このような内容の話を聞いたと記憶している。
 この話が当時の私にとっては衝撃的だった。「点」や「線」とはこの世に実在しない“概念”の世界の産物なのだ! (当時は言葉ではなく、五感に訴えるあくまでも感覚的な存在として“概念”という抽象的な思考の世界に私としては初めて触れた経験だったように思う。)
 お陰で数学に対する興味が一段と増したものである。

 同様に、“2進法”を中学生の時に(?)学んだ記憶があるが、これも大いにインパクトがあった。
 「1」と「0」のみの世界! 要するに「存在」と「非存在(無)」の哲学の世界なのだが、世の中のすべての基本はこの2進法にあるのではなかろうか、(と考えたのはやはりずっと後のことであるが…)。
 小さい頃から10進法に慣らされている頭には、この2進法の洗練された世界はまだまだ子どもの私にとってとても斬新だった。 またまた数学の面白さを学ぶ機会となった。
 この“2進法”はコンピュータの計算原理でもある、と教えられ、コンピュータとは電球がONかOFFになることの発展型である、ことを頭に思い浮かべて“なるほど!”と納得したものである。


 その「電子計算機論」を大人になってから学ぶ機会があった。
 20代に医学関係の仕事に携っていた頃、データ処理用のワークシートをコンピュータで出力する業務を任せられるに当たってプログラミングを経験したのであるが、その時に仕事の合間に私は独学でプログラミング(COBOLとFORTRAN)をマスターした。
 プログラミングの学習の一環としての「電子計算機概論」に、やはり“2進法”が登場した。 コンピュータ内における情報処理の基本計算原理は“2進法”である。
 すなわち「1」と「0」の世界がコンピュータを生み出したと言っても過言ではない。


 現在は“10進法”が世の中を創り上げ人の頭も“10進法”にどっぷりと漬かってしまっているが、たまにはコンピュータになった気分で“2進法”の世界にトリップしてみると、また違った視野が広がるのかもしれない。
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