変形性膝関節症に打撲が重なり、歩行が困難な90歳近い女性がおられます。背中もかなり丸まっており、足元も不安なので、靴を履くときなど手を貸そうとしますと、この人は「自分のことは何でも自分でします」と言って、手助けを受けることは遠慮します。両膝をホットパックで温め、手技で筋肉をほぐします。足関節、膝関節、股関節が円滑に動くよう、関節運動をしたあと、両足の大腿四頭筋、内転筋、外転筋を少し負荷をかけて動かす運動をしてもらっています。
初めて来られたときは手押し車を押して来ましたが、今は杖をついて訪れます。「バスのステップに乗れるようになりました」「体が伸びたのか、前には届かなかった棚のものが取れるようになりました」と、変化のあれこれを話してくれます。
歩くのが遅くなり、車の多い横断歩道は避けているそうです。日本では、横断歩道の信号は1秒で1mを歩くことを前提にして、信号の点灯時間を決めています。つまり、60mの横断歩道ならば、青信号は60秒間ついています。言い換えれば、1秒で1mを歩けなくなると、青信号では横断歩道を渡れなくなります。途中に分離帯があれば、そこに避難することもできるでしょうが、分離帯がなければ、車が行きかう中で青信号を待つ、恐ろしい時間を過ごさなければなりません。1秒で1mが歩けなくなるほど足腰が衰えると、外出するのが怖くなり、生活の質が大きく落ちてしまいます。これを防ぐため、ゆっくりスクワットを勧めています。両足を肩幅に開き、トイレの便器に座るよう腰を落とします。
「自分のことは自分でします」の女性が横断歩道を渡るのを偶然見ました。青信号に変わったとたん、ゆっくりと歩き出し、赤信号に変わる前に渡り終えました。ちょっと安心しました。
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