80歳の女性の患者さんと施術中に話したできごとです。物忘れが話題になり、私が「脳のトレーニングには恋をすると良いといいます。前頭葉が活性化するそうです」と話しますとーー。
小唄の師範の免状を持つ患者さんは「君と寝やろか 五千石とろか」と唄い出しました。そして「この唄、知っています」と尋ねられました。
「初めて聞いた唄です。誰の唄ですか」と質問しますと、「五千石の旗本がほれた遊女に語ったといわれる言葉です」と言って「何の五千石 君と寝よ」と続けました。そして「五千石を放ってまで恋を貫く男は、今どきいないわね」とため息交じりに話しました。
割烹の女将をしていた患者さんは、高度成長期の大手会社の幹部社員が常連さんだったといいます。常連さんの誘いで、小唄を習い始めたそうです。
ネットで調べますと、五千石の旗本の藤枝外記が新吉原の遊郭「大菱屋」の遊女「綾衣」と恋仲になり、心中事件を起こしたとあります。江戸時代の天明5年(1785年)8月13日のことです。旗本と遊女の心中事件とあって、江戸の人たちの関心を集め、新歌舞伎狂言「箕輪心中」として劇化されました。小唄(都都逸とも書かれていました)は、中島棕隠(そういん)の作といわれています。
確かに、藤枝外記は「粋でかっこいい」ですね。でも、私たち庶民は、そんな粋なことができないから「やってのけた人」にあこがれ、心意気を評価するのでしょう。
タケちゃんは、迷うことなく「五千石」をとります。
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