「課長! …係長!」
二人は眠たげに身体を起こした。
「工藤、戻(もど)ったようだな」
「そうみたいですね…」
両腕を伸ばし身体を解(ほぐ)しながら、工藤は軽く言った。
「どういうことです?」
由香は怪訝(けげん)な表情で二人を見た。
「いや、なんでもないさ、ははは…。有難う、席へ戻りなさい」
由香は自席へ戻った。時間は始業開始前辺りらしかった。少しずつ課員達が出勤してきていた。
「工藤、この分だと、今日は平凡に過ぎ、明日は平林にエントランスで社長と言われるだろうな」
「はい! 僕は専務ですか?」
「ああ、私が言ったサイクルならな」
「ずっと、この繰り返しが続くんでしょうか?」
「それは分からんが…。まあ、運命と諦(あきら)めて気長にいこう」
「僕達二人だけが、なぜなんです?! よりにもよって!」
「興奮するな、工藤。どうにもならんことだ…」
篠口は工藤を宥(なだ)めた。
「そうですね。どうでもいいんですよね…」
その思いに至った途端、篠口も工藤もスゥ~っと胸のつかえがとれたように楽になった。神秘な力によって二人は解毒されたのである。それ以降、篠口と工藤を襲った不思議な現象は鳴りを潜(ひそ)めた。
THE END。