発想が足らない場合に勘違いは起こりやすい。十分に考えていないからだが、干烏賊(ほしいか)も、そんな発想が足らない男で、よく勘違いをした。勘違いしないようによく考えればいいのだが、考えるのが苦手(にがて)な干烏賊は、ついつい考えが足らず、勘違いすることが多かった。
この日も干烏賊は課長の蛸墨(たこすみ)に課長席前で叱責(しっせき)されていた。
「そんなことで勘違いする訳がないだろっ! 子供だって分かるっ!」
「ど、どうもすいません…。いつも家で食べるのが笊(ざる)ソバだったもので…」
「笊ソバだったから、どうだというんだっ!」
「はあ、ソバ粉を買わないと、と…」
「それはお前さんの家っ! ここは会社っ! ソバ粉で、きつねうどんでも作れというのかっ!」
「たぬきソバもあるんですから、出来なくないと思うんですが…」
「? …そうだな、出来なくもないか…」
それ以降、この食品会社が新製品として発売した、きつねうどんのような、たぬきソバうどんは、多大な当期純利益を会社に計上したのである。
※ このお話は、飽くまでフィクションです。多大な当期純利益が得られる保障は、ありませんから悪しからず…。^^
完