寂(さび)しい…と思える気分は、心に何かが足らないからである。何が足らないか? は、人それぞれだが、足らないその何かは何かで補わなければ寂しい気分は晴れない。人とは気分に左右されるから困ったものだ。^^
とある温泉旅館である。新型コロナの影響からか予約のキャンセルが相次ぎ、いつもの人の賑わいが感じられない。辺りは寂しい限りだ。旅館の仲居頭と番頭の会話である。
「寂しいですわねぇ~番頭さん!」
「そうですか? 私は今までで一番、寛(くつろ)げておりますよ」
「でも、寂しいでしょ?」
「そらまあ、寂しいといっちゃ寂しいですがねぇ~。五十年…今までが忙し過ぎましたから…」
「五十年になりますか? それはそれは…」
「いつの間にやら五十年ですよ、ははは…」
五十年続けると寂しい気分は消えるようである。^^
完