水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (35)寂(さび)しい

2022年07月29日 00時00分00秒 | #小説

 寂(さび)しい…と思える気分は、心に何かが足らないからである。何が足らないか? は、人それぞれだが、足らないその何かは何かで補わなければ寂しい気分は晴れない。人とは気分に左右されるから困ったものだ。^^
 とある温泉旅館である。新型コロナの影響からか予約のキャンセルが相次ぎ、いつもの人の賑わいが感じられない。辺りは寂しい限りだ。旅館の仲居頭と番頭の会話である。
「寂しいですわねぇ~番頭さん!」
「そうですか? 私は今までで一番、寛(くつろ)げておりますよ」
「でも、寂しいでしょ?」
「そらまあ、寂しいといっちゃ寂しいですがねぇ~。五十年…今までが忙し過ぎましたから…」
「五十年になりますか? それはそれは…」
「いつの間にやら五十年ですよ、ははは…」
 五十年続けると寂しい気分は消えるようである。^^

                   完


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