水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (52)後ろ向き

2020年12月23日 00時00分00秒 | #小説
 (51)の前向きがあれば、当然、後ろ向きもある。^^ この言葉も姿勢を示す意味合い以外にその人物の思いよう・・すなわち、気分を表す言葉にもなる。国会で「前向きに善処し、対処いたしますっ!」と答弁した大臣さんに、「ちっとも前向きじゃないっ! 後ろ向きじゃないかっ!」と、野党の議員さんが反発し、表現されるその手合いだ。^^
 地球の温暖化が問題視される昨今、とある会場では多くの聴衆を前に賑(にぎ)やかな討論会が行われている。
「ですから、温室効果ガスを抑止(よくし)する対策だけでは地球温暖化を抑止できないように思えるんですよ」
「確かにそれはそうでしょう。では、どうしろと?」
「私は文明の進歩自体をもう一度、考え直す必要があるんじゃないかな? と思ってるんです」
「ほう! 具体的にはっ?」
「これ以上、文明、特に環境に付随する文明を進めれば、地球そのものが危うくなると考えてる訳です」
「なるほど…。しかし、現にここまで進んでこうなってる訳ですから」
「だから、前向きを後ろ向きに方向転換する訳ですよ」「具体的にはっ?」
「例(たと)えばですね。草刈り機を使わず、以前のように鎌で除草するとか…」
「そ、それはいくらなんでも…」
「ははは…例えばですよ、例えばっ!」
「なるほどっ! 他の例(れい)ですと?」
「他の例ですか? 他の例ですと…すぐには思いつきませんが、要するに過去の次元まで一端、生活水準を戻(もど)す・・ということです」
「そう言われましてもねぇ~」
「過去のデータは数多くある訳ですから、その生活が今現在、どう変わっているか? を問題視して戻す訳です。むろん、出来ることからですが…」
「なるほどっ! ピンポイントで修正していくと?」
「そうですっ!」
「やってみますかっ!」
「一人の力では不可能ですから、地球全体で取り組むという方向で…」
「分かりましたっ! やってみましょう! ははは…私一人では無理ですが…」
 こうして討論会は終了した。会場からは割れんばかりの拍手が湧き起こった。
 思いようによっては、後ろ向きな事態も前向きに変化する・・というお話である。^^

                      

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