水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (53)待つ

2020年12月24日 00時00分00秒 | #小説
 待っている時間が長ければ、イライラする人と、そうでない人に態度が分かれる。その人の性格による思いようの違いで生まれるものだ。両者には同じように時間が流れていて、待つ時間はどちらに贔屓(ひいき)している・・という性質のものではない。だが、待っているときの両者の気分は、大違いを見せる訳だ。^^
 とある駅ホームである。一人の男が腕を睨(にら)めっこしながら、イラついて人を待っている。
「ったくっ! あれだけ言っといたんだから、ちゃんと時間には来てくれないとっ!」
 待つ男は怒った顔で愚痴る。するとそこへ、待つ男がバタバタと走りながら、ようやく現れる。
「悪(わり)~い、悪~いっ!! 待ったぁ~~!?」
「そりゃぁ~待ちますよっ!!」
「まだ発車まで五分もあるじゃないかっ! 赤鼻(あかはな)君!」
「11:20発、兎名海(となかい)行き、あと五分ですよっ、先輩っ!」
「まあまあっ! イライラしたって同じことさっ! 時間にならないと発車しないんだからっ!」
「時間になれば発車しちまう! って考え方もありますよっ!」
「そりゃまあ、そうだがな…。思いようの違いだ。おっ! あと三分しかないぞっ! 急ごう!」
「はいっ!!」
 二人は慌(あわ)てて改札を通り抜けた。そのとき、構内アナウンスが流れた。
『お知らせいたします。11:20発、兎名海(となかい)行きは、豪雪のため30分、延着いたします。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません』
 そのアナウンスを聞いた先輩、参田(さんた)は、厳(おごそ)かな声で後輩の赤鼻に言った。
「なっ!」
「確かに…」
 赤鼻は納得したのか、首を縦に振った。
 どう思おうと、それぞれの思いようは勝手だが、待つ時間は変化しないのである。焦らない、焦らないっ!!^^

                      

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