水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第96回

2013年01月29日 00時00分00秒 | #小説

 代役アンドロイド  水本爽涼
    (第96回)
「中華がいいな。ラーメン!」
『余り身体に、よくないわよ。まあ、お茶漬けよりは、いいか…』
「ひと口でいいんだ」
『はい、それなら、すぐ食べられます。小鉢に分けておくわね』
「えっ! 出来てるの?」
『ええ…。温めたらいいだけ。それが何か?』
 凄いなお前! とは言えず、保は黙って上がると、台所へ入った。確かにテーブル上には、和、洋、中と、それなりの料理が置かれていた。保の後ろから入ってきた沙耶は、その中から出汁(だし)つゆだけ入ったラーメン鉢を手にして調理場へ行った。そして、出汁つゆを温め、別に準備しておいた湯がいた麺を笊(ざる)に入れ、熱湯を通して湯切りする。その麺を温めた出汁つゆ入りの鉢の上に盛り、軽く混ぜたあと具材を添えた。ゆで卵、刻み葱、チャーシューの代わりの厚切りハムetc.だ。そして、盛り付けの終った鉢に箸を添え、テーブルへと運んだ。ほろ酔い気分の保は、こりゃ、ラーメン屋もいけるぞ…と、冗談っぽく思った。
『はい!』
「おお、美味そうだな…」
 保は、さっそく箸をとり麺を啜った。そして、出汁つゆをひと口、飲む。プロの職人と遜色ない味に仕上がっていた。いったいこの味は、どこで…と、保は出汁つゆの旨味(うまみ)に舌鼓を打った。


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