水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第79回

2013年01月12日 00時00分00秒 | #小説

 代役アンドロイド  水本爽涼
    (第79回)
「沙耶、危険は去ったぞ! ははは・・危険は去った、はおかしいや。空襲じゃねえんだから…」
 キッチンへ戻った保は沙耶を呼んだが、思わず本音が出て笑えた。沙耶が出てきたのは、すぐだった。
『あらっ! お帰りになったの?』
「今は、その方がいいだろ? 泊まるとでも言われたら、ややこしかったぜ。内心、やれやれだ。でも、また来るって言ってたしなあ。そのとき、どうするかだ。想定してシミュレーションしとかなきゃな。どうよ?」
 保は、気分がよかった。なんか、密かに同棲の女性がバレるのを誤魔化す男の気分になれたからだ。保はこの感じを一度、味わってみたかったのだ。
『どうよ、って、そうなんだけどさぁ。私、また隠れる訳?』
「いや、今度はちゃんと紹介するって設定で…。う~ん、でもなあ、やはり長左衛門だからなあ」
『おじいさまを呼び捨て?』
「ああ、長左衛門は凄いからなあ、この場合は長左衛門だろう。田舎じゃ、じいちゃんでいいけどさ。[怪獣長左衛門の逆襲]みたいな…」
『そんなに凄いの?』
「ああ、凄い。完璧に凄い。沙耶は知らんからなぁ~」
『保は知り尽くしてる訳だ』
「ああ、知ってるもなにも…。家じゅうが一目置く存在だ。里彩(りさ)だって、兄貴や育子さんには反抗するが、じいちゃんには、借りものの猫だからな」


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