中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

一崩し着物と格子帯

2016年08月02日 | 着姿・作品


お客様にお求めいただいた紬の着物が仕立てあがってきました。
「一崩し」という色糸効果による織りです。
「一崩し」は若いころから好きで色を変え何反も織ってきました。こちらは藍とヤマモモで染めたもので、男女問わず着られる色調です。
この崩し縞には二崩し、三崩しなどと呼ばれるものもあります。網代織りなどもこの類です。
紬織りの根源的な魅力があります。

一見単純に見えるかもしれませんが、直に見ると真綿紬糸の太い、細い、色の濃淡、立体的な風合い、奥行きに見飽きることがありません。
一般的には濃淡2色で織りますが、色の濃淡プラス、糸の番手の違うものなども混ぜながら織っています。まずは力のある手紡糸でなければこの味わいは出ませんが、さらにはこの織物には相反する性質のものが混在しています。そのことが奥行や立体感に通じているのです。
案外設計も難しい織物です。糸選びにいつも時間をかけています。
ただ、わざとらしさが出ては品が悪くなりますので、気をつけなければなりません。

お客様は当初、袷で仕立てるということでしたが、いろいろ検討され単衣で冬も着るという決断をされました。
普段から気軽にたくさん着たいということで、長襦袢や肌着で調節することにしました。
この着尺は一般的な紬よりも太めの糸でしっかり織られたものですので、
後ろ身頃に裾までの居敷き当てを付けただけでも十分だと思います。
ただ、背の高い方で、仕立ての方には長く着るための最善の策を考えていただきました。
剥ぎがあるのですが、とことん着尽してほしいと思います。


                          
帯はお手持ちの二本とも合いそうでしたが、上の画像の私の帯(節糸紬「山笑う」)も決めて下さいました。
着物と帯、襦袢、小物の取合せも季節だけでなく、場、目的、年齢の変化など、一様ではありません。こちらも一生をかけて学び、楽しみ、磨くものと思います。
白地の更紗、濃い茶地に細い縞帯、そしてこの格子の三本の帯で時に応じて使い分けていただきたいと思います。

毎回みなさんそうなのですが、特にまだ若い方ですし、大変な決心だったと思います。何か強い思いもあったと思いますが、ものには人を突き動かす力もあります。

作り手としては表層に流されず、ものの本質を見失わないよな創作をこれからも続けたいと思います。

一生をかけて着る――、そして次世代へ手渡してもらえたなら幸いです。









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