なんかふいに読みたくなりました。
本棚から出してきました。
村上春樹さんの「スプートニクの恋人」。
この話が好きなのは
・主人公「すみれ」が小説家を目指している
って、これが一番の理由かもしれない。
結構後半に、物語の重要なカギとして「すみれ」の書いた文章が2つ、まるまる載ってる。
独特の文体を使う「すみれ」の文章は…おもしろい。書くことによって思考するというすみれの話にはすごく共感できるし。(まあほんとにすごいのはそれを全部書いちゃってる村上さんなんですけどね…)
あの部分、ほんとに何度も読んでしまう。
…てか、自分でもアホかと思うんだけど、あの文書の次に、「主人公がこの2つの文書をそれぞれ2度読んだ」みたいに書いてあるから、絶対うちも読み返すんだよね…。「ソフィーの世界」でもそれやってたんだよね…。ソフィーが2度読んだって書いてあったらその場でうちも読む…。あと、千と千尋の映画の序盤、千尋がハクと息を止めて橋を渡るシーンでも…ハクの言葉に合わせて息を吸って、止めて、してしまうんだよね…(3つ目関係ないだろ)。
彼女は日常的にも、文章で思考し、文章で生きていく(=小説家になる)というのを体現していておもしろいと思う。
憧れの小説の主人公をマネたワイルドな服装とか、小説家になる「以外」のことに対する無頓着さとか…なんでもきちんと明らかにしようと主人公と討論するシーンなんか、とてもおもしろくて好き。主人公もいい人だよなあ。そこまで言ってしまうんかい!みたいなこともちゃんと言葉にしてて。でも、すみれみたいな人が目の前にいたら、そうせざるを得ないのかもしれないとか、思う。
(あ、以下ネタバレありますので…)
「スプートニクの恋人」、好きだけど、だから全部理解してるかって言ったら全然そうじゃない。
全然わかってない。たぶん…。
なんですみれは消えちゃったのかとか、なんで戻ってこれたのかとか、
何度も読んでるミュウの過去の話、あれもなんでかわかんないし実際よく意味がわからない。
つか、なんでタイトルがスプートニク??…みたいな。
…でも、この話は最初から好きだった。わかんないなりに。
わかんなすぎて放り出す小説もあるし、全部わかっても好きになれない小説もあるんだから、これはこれでどっかしら自分の琴線にひっかかるんだろうなあ、とぼんやり思いつつ、好きだった。
そして、好きだから、読み返す。
2度、3度じゃまだわからない。5度目くらいで色々気づく。実は本編に示唆されてることも多いんじゃないか?って。
きっと10回目は超えている今回。なるべく丁寧に読むようにしてみた。うちはきっと、村上さんの文章のテンポが好きすぎて、頭に内容がいまいち入っていないんだ、…と、それを意識しながら丁寧に読んでみた。
じゃあ、今回気づいたことがある。
…いえ、謎の答えではないんですが。残念ながら。
気づいたこと。
・終わりに近づくにつれて読むスピードが上がるために、終盤が特に頭に入ってない。
うん。驚いた。自分で。
普通…普通の小説はさ、終わりに向かって盛り上がる(or最大に盛り上がったあとで、美しく着地して終わる)からさ、そんなのありえないんだよね!?終わり読むために読み進めてるんだから!ここが一番大事なんじゃん!
だけど…うちは…、これ、何度も読み返してるからさ、…結末を知ってるからさ、終盤に行くとその「知ってる結末」にひっぱられるんだよね…。
特にこのスプートニクは、ホントに最後の最後ですみれが帰ってくるじゃん。…ちょ、今確認したら、最後の4ページだったよ!?全309ページの小説の、306ページ目で帰ってくるんだよ!!ギリギリすぎる…。
この衝撃の展開を覚えてしまってるから、もう最終章に入ったらこのラストのことばっか考えてしまって…頭に入らないんだよねえ。意識して意識して今回読んで、ここの部分こそがいろんな謎の答えになっているんではないかとやっと気づいた、という…。
結末を知らなかった「1回目」はそんなことなかったんだろうけどな…1回目は全体的に意味わかってなかったからなあ…(おい)。
普通、読み返すたびに新たな発見があるはずなんだけど…こんなこともあるんだなあと思った。
ああ、でもこれはすばらしい発見だった。…これからは2回目からも丁寧に読もう。
読むスピードが加速していくのはすごい快感なんだけどね…。