ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

第3世代移動通信の標準化(8) 統一された標準化の場、3GPP設立へ向けて

2011-02-01 11:52:10 | 昔話

ヨーロッパの大激論が決着し、私は日本のARIBにおけるIMT2000の日本案作成の細かい詰めの作業を継続していた。次第に議論が細かくなってくるにつれて、日本とヨーロッパで並行して標準化作業を継続し、調整会議ですり合わせを行うのでは手戻りが多くて回らなくなる、全員が一堂に会して議論するような場を作るべきだ、という話になってきた。

これが3GPP( 3rd Generation Partnership Program)という組織になる。この話をまとめるのにも相当に大きなエネルギーが必要だったと思うが、組織作りの話は佐々木秋穂さん(故人)が中心になって動いていて、私に設立準備会合に出席するように話が来た時には大体の大枠が決まってからだった。つまり、ヨーロッパ、日本にアメリカと韓国の標準化団体が加わった形で設立する。会議は英語で行う。参加の単位は企業とする、というような基本方針が決まっていた。

この参加を企業単位とする、というのが重要な点で、それまで世界標準を作るにはITUという組織があったのだが、この組織は国連の下部組織で国単位で参加しており、意見も国単位で表明する。しかし、国の中には様々な意見があり、それを国内で調整してから持ってくる。それが皆が集まったときに意見が割れたりして調整が必要になった場合、国としての調整を判断する権限を持った人は普通はいないので持ち帰りになってしまう。これが物事を決定するときに、時間がかかり迅速な決定の障害になる。従って、決定責任者を置くことのできる単位として企業単位が良い、ということになっていた。

私が参加したときには具体的な進め方や、組織のルール、議長の選出と言ったあたりが話題になっていた段階だった。この3GPP設立準備会合に出席して私は自分にとって第3の師と思っているKarl Heinz Rosenbrockと出会うことになった。