備忘録として

タイトルのまま

Darkest Hour

2018-03-17 14:18:28 | 映画

Success is not final.
Failure is not fatal.
It is a courage to continue that counts. 

  • 映画字幕:成功は最終形ではない。失敗も最終形ではない。大切なのは継続する勇気だ。
  • ネット訳:成功は決定的ではなく、失敗は致命的ではない。大切なのは続ける勇気だ。

 イギリスの政治家ウィンストン・チャーチルのことばである。このことばを紹介する第二次世界大戦初期のチャーチルを描いた映画『Darkest Hour』2017をよりよく理解するために、彼の略歴をWikiをもとにまとめた。

 チャーチルは1874年にイギリス貴族で政治家の父とアメリカ人の母を両親として生まれる。パブリックスクールでの成績が悪かったので18歳で王立陸軍士官学校に入る。当時イギリスは世界中に植民地を持っていて、キューバ独立戦争、英領インド駐在、スーダン侵攻に従軍したチャーチルは文才があったため、都度従軍記や小説を書き出版する。1899年に除隊し、保守党から選挙に出馬するが落選する。そのとき南アフリカで第2次ボーア戦争が勃発し「モーニング・ポスト」の特派員となり戦地に赴くが、すぐに捕虜となってしまう。民間人だからすぐに釈放されると思っていたが、特派員としてイギリス軍を称揚する記事を書いていたため身の危険を感じ収容所から脱出する。モザンビークのイギリス領事官に逃げ込んだあと軍に戻りボーア戦争を戦う。

 戦争後の選挙に保守党から立候補したチャーチルは、脱走劇などで有名になっていたことから初当選する。1900年、26歳のことである。議会では、所属する保守党の陸軍予算案や保護貿易に反対したため、保守党執行部との対立が深刻となり、1904年の選挙では自由党から出馬し当選する。1908年に通商大臣として入閣する。その後、商務大臣や内務大臣、海軍大臣を歴任する。1914年に第一次世界大戦が勃発し、イギリス軍はドイツ軍とのアントワープの戦いやオスマントルコ軍とのダーダネルス海峡での局地戦で敗北し、西部戦線も膠着状態となったことで、海軍大臣のチャーチルは激しく糾弾され大臣を罷免される。閑職になったチャーチルは軍に戻り陸軍少佐として西部戦線に従軍する。1917年に戦時内閣の軍需大臣として政治家に復帰し、1918年第一次世界大戦が終結する。国民の間で厭戦気分の広がっていた1922年の総選挙でチャーチルは好戦派の烙印を押され落選する。1924年の選挙では保守党に復帰し出馬するが再度落選し、1924年末の解散総選挙でやっと復活当選する。

 1924年の保守党ボールドウィン内閣に大蔵大臣として入閣する。大蔵大臣として戦争中に廃止されていた金本位制を復活させる。輸出産業の劣勢や戦争と植民地経営での出費でイギリス経済は疲弊していた。金本位制の復帰でポンドが過大評価され輸出競争力が低下し石炭産業が打撃を受け、各地でストライキが起こった。チャーチルによる共産主義を背景にしたストは違法であるという訴えが奏功し、ストに大衆の支持は集まらなかった。1929年世界大恐慌の時、チャーチルは大蔵大臣を退任する。チャーチルのいない内閣は、経済政策として金本位制の停止やブロック経済による保護貿易などチャーチルと反対の政策を推進する。植民地を持つ国々のブロック経済に対し、植民地を持たないドイツや日本は保護貿易のあおりを受けて経済が疲弊し植民地拡大政策に向かっていった。

 インドはその頃、ガンジーを中心に独立運動が盛んになっていたが帝国主義者のチャーチルはガンジーを嫌っていた。また、ドイツではヒトラーが台頭しナチスが独裁体制を敷き再軍備を進めていた。ナチスがロシアの共産主義拡大の防波堤になることを期待する保守党議員は対独融和派が多かった。しかし、チャーチルはドイツの拡張主義がイギリスの世界支配を脅かすだろうと考え対独強硬論をとった。ドイツは1938年にオーストリアを併合し、1939年にポーランドへ侵攻を始めたため、イギリス・フランスはドイツに宣戦布告し第二次世界大戦がはじまった。開戦により永らく政権から離れていたチャーチルは海軍大臣に復帰する。ドイツ軍との初戦での敗戦などの責任を問われ退任を決意した首相チェンバレンは、後任として海軍大臣チャーチルと外相のハリファックスが候補にあがった。

 このあたりから映画『Darkest Hours』2018がスタートする。監督:ジャー・ライト、出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、ベン・メンデルゾーン、リリー・ジェイムズ、映画は、チャーチルが対独融和派を退け首相に任命されてから、ドイツとの国を挙げての戦いと『ダンケルク』撤退を決断するまでを描く。ドイツの攻勢に危機感を抱くチャーチルが、アメリカ大統領ルーズベルトに電話し、参戦と支援を呼びかけたとき、ルーズベルトはモンロー主義を盾にまったくの他人事だった。その後、チャーチルが日本の南方侵略を餌に危機感をあおり、アメリカを大戦に引き込むことに成功したことは別の話である。チャーチルの人生は自身の言葉どおり何度も失敗し何度も成果を収め、その精神は不屈である。しかし、帝国主義的思想や好戦的な性格は彼の生きた時代や彼の生い立ちによるものだろうが疑問も多い。映画は史実をはしょったり前後を入れ替えたりして、第二次世界大戦下におけるイギリス政府の舞台裏をスリリングに脚色していて面白かった。★★★★☆

『Dunkirk』2017、監督:クリストファー・ノーラン、出演:フィオン・ホワイトヘッド、バリー・ケオガン、マーク・ライランス、第二次世界大戦初期、ドイツ軍の急速なフランス侵攻によりイギリスやフランスなど同盟国兵士40万人がドーバー海峡の海岸ダンケルクでドイツ軍に包囲される。兵士を救出するためイギリスの漁船など民間船が動員される。救出劇の数日を描く。遠い昔の遠い場所での出来事であり、救出での各エピソードがそれほどドラマチックではなく、特別な思い入れがないと面白いとは言えない。『Darkest Hour』を観ていなければ星2くらいか。★★★☆☆

 下の写真3枚は、左から本物のチャーチル(Wiki)、映画のチャーチルと役者のGary Oldman(映画ポスターも含めIMDbより)である。このチャーチルの特殊メークで辻一弘がアカデミー賞メークアップ部門のオスカーを受賞した。本作に関わる前、辻一弘は特殊メークの仕事を辞め現代美術家となっていたが、Gary Oldmanから直接懇願されチャーチルのメーキャップを引き受けたという。

 

 

 


オリエント急行殺人事件

2018-02-12 20:55:06 | 映画

 『Murder on the Orient Express:邦題:オリエント急行殺人事件』2017、原作:アガサ・クリスティ、監督:ケネス・ブラナー、出演:ケネス・ブラナー、ジョニー・デップ、ミシェール・ファイファー、デイジー・リドリー(SW7, SW8)、イスタンブールとロンドンを結ぶオリエント急行で殺人事件が起こる。アガサ・クリスティ原作、ベルギー人探偵エルキュール・ポアロが主人公の推理小説を映画化したもので、1974年のリメイクである。エルキュール・ポアロをアルバート・フィニーが演じた1974年版『オリエント殺人事件』は封切当時、仙台の映画館で観て結末に驚愕したことを思い出す。殺人犯は忘れようもなく結末はわかっていたのだが、事件の背景にある関係者の深い怒りと悲しみに感情移入した。1974年当時は事件の結末に驚愕したため気にもとめなかったが、今回、12人の容疑者の背景を短時間にすべて解き明かすポアロの推理には無理があると思った。結末を知っていた余裕の所為かもしれない。ポアロがイスタンブールに到着しブルーモスクの尖塔がボスポラス海峡から見える場面は行ったことがあるだけに感慨深かった。★★★☆☆

 ヨーロッパ各国を結ぶ豪華列車があることを知ったのは、この映画だった。1993年、ヨーロッパのオリエント急行を模して、シンガポールとバンコクを結ぶイースタン・オリエンタル・エクスプレスと呼ばれる豪華列車が運行を始めた。その間のマレー鉄道は電化されておらずディーゼル車がけん引する普通列車はシンガポールとクアラルンプール間を約7時間で結んだ。自分はマレー鉄道に乗る機会はなかったが、日本人小学校の修学旅行はマレー鉄道でクアラルンプールへ行ったので子供たちは利用している。2011年マレー鉄道はシンガポール内での運行が停止し、マレーシアのジョホール・バルが終点になった。今は、クアラルンプール・シンガポール間約350kmを1時間半ほどで結ぶ高速鉄道が計画され、日本、中国、フランス、ドイツ、韓国が入札に参加するはずである。インドやインドネシアでの高速鉄道導入の経緯から、中国と日本が有力視されている。

 アガサ・クリスティー原作でポアロシリーズの映画『ナイル殺人事件』1978は、『オリエントーーー』が面白かったことと、当時の売れっ子俳優が多数出る豪華配役(ミア・ファーロー、オリビア・ハッセイ、ディビッド・ニーブン等)だったので期待して観たが、『オリエントーーー』には遠く及ばなかった。次作の『地中海殺人事件』1982は、『世界殺人公社』のダイアナ・リグが出演していなければ観ていなかった。この映画でダイアナ・リグは陰険な富豪婦人を演じていて、コケティッシュな可愛い女のイメージが壊れ、”観なければよかった”とがっくりしたことを思い出す。そのため、その後も公開されたポアロの映画はすべてパスした。

『スパイダーマン・ホームカミング』2017、監督:ジョン・ワッツ、出演:トム・ホーランド、マイケル・キートン、ロバート・ダウニー・Jr、マリッサ・トメイ、3人目が演じるスパイダーマンなので、今更感が強かったのが観るものがなくて手をだしてしまった。アイアンマン(ロート・ダウニーJr)が出てきて、アベンジャーズの一員になるマーベルコミックになってしまった。★★☆☆☆

『Kingsman・The Golden Circle』2017、監督:マシュー・ボーン、出演:タロン・エガートン、コリン・ファース、マーク・ストロング、ジェフ・ブリッジズ、ジュリアン・ムーア、キングスマン前作で主人公のコリン・ファースが記憶喪失になって出てくる。ジュリアン・ムーアがサイコの悪役ボスで、麻薬に仕込んだ毒物で世界征服とキングスマンの壊滅を画策している。Elton Johnが本名で出てくる。この映画を観た後、ツアーをやめるというニュースが流れた。★★☆☆☆


Alien

2017-12-10 22:31:19 | 映画

11月に観た機中映画のうちSF4作はすべてが駄作で、選んだ自分が悪い。あとは司馬遼太郎原作の邦画『関ケ原』を観た。ポスターはいつものIMDbより。

『Alien:Convenant』2017、監督:リドリー・スコット、出演:マイケル・パスベンダー、キャサリーン・ウォーターソン、ビリー・クラダップ、ヒューマン型ロボット(アンドロイド)が自分の意志で創造主(神)になろうとする。それに比べ人類はひ弱で甘い。過去のエイリアンシリーズでは、恐ろしいほど凶暴で生命力と強烈な個性を持つエイリアンに対し、人間、特に主人公のリプリーが生存権をかけて戦いを挑む姿をサスペンスいっぱいに扱っていた。ところが本作は、変な創造主を登場させたばかりにエイリアンのおどろおどろしい魅力が削がれてしまった。最後の人口冬眠(Cold Sleep)に入る場面も、おそらくほとんどの観客が想定できるだろう。エイリアン3作目でリプリーがエイリアンを宿す衝撃に遠く及ばない。前作『Prometheus』2012同様に駄作と言わざるを得ない。監督リドリー・スコットはエイリアン映画で何を目指しているのだろうか。★☆☆☆☆

『Life』2017、監督:ダニエル・エスピノーザ、出演:ジェイク・ギレンホール、レベッカ・ファーガソン、ライアン・レイノルズ、真田広之、宇宙ステーションで、火星で見つけた単細胞の生命体を顕微鏡観察するうちに、生命体は細胞分裂をはじめ多細胞の知的生命体に変貌する。そして宇宙ステーションのクルーを攻撃し始める。成長を続ける生命体と人間とが戦い、クルーの一人が犠牲となって生命体を宇宙の彼方に葬り去ることに成功したかに見えたがーーーー。『Alien:Convenant』のエイリアンは凄みがなくなり、こちらのエイリアンの方が凶暴で知的でその成長は予想がつかなかった。★★★☆☆

『猿の惑星:聖戦記』2017、出演:アンディー・サーキス(シーザー)、ウッディー・ハレルソン、スティーブ・ザーン、シーザーが主人公の猿の惑星シリーズ3作目。身内が残忍な大佐に率いられた人間に殺されたシーザーは、数人の仲間と人間の基地に向かう。シーザーは基地に捕らえられ重労働を課せられた猿たちを救おうとするがシーザー自身も囚われの身となってしまう。第1作の『Rise of the Planet of Apes』2011は面白かったが、第2,3作は駄作。次が出てももう見ない。★☆☆☆☆

『The Dark Tower』2017、監督:ニコライ・アーセル、出演:イドリス・エルバ、マシュー・マコノフィー、トム・テイラー、予知能力のある少年は、世界を征服しようとする異次元世界のボスから狙われるが、世界を救うために戦っているガスリンガーとボスに戦いを挑む。多次元世界を行ったり来たりする。荒唐無稽のSFに必然性を求めてはいけないのはよくわかっているのだが映画の世界観がよくわからなかった。★☆☆☆☆

幸い11月洋画は『Sherlock Ep4.2』2017に救われた。Ep4は残りが公開されてから評価する。

 公式Twitterサイトより

『関ケ原』2017、監督:原田眞人、出演:岡田准一(光成)、役所広司(家康)、有村架純(伊賀忍者)、平岳大(島左近)、東出昌大(小早川)、司馬遼太郎の『関ケ原』を読んだのは学生時代だから、もう40年も前のことだ。当時、戦国時代と幕末明治維新の知識は、ほぼ司馬の作品から仕入れていたので、確実に司馬史観のフィルターがかかっていた。大谷刑部や島左近が好きになったのも『関ケ原』の影響だった。その後しばらく司馬作品から遠ざかり、『街道をゆく』を手にしたのは30歳代半ばだった。未完の『街道をゆくー濃尾参州記』までを読破するのに10数年を要した。今、『街道をゆく』43冊は本棚に並び、旅や読書の際、折々に参照している。

 さて、映画は小説のダイジェストとして観るにはよかった。映画には珍しく、司馬遼太郎が小説で述べる人物評を語りとして取り入れていた。有村たち忍者は蛇足で映画の飾りにもなっていなかった。それと光成が処刑される直前に柿を勧められ、柿は体に悪いとして断ったエピソードがなかった。この有名なエピソードが原作『関ケ原』にあったかどうか定かではない。CGが中途半端で天下分け目の関ケ原の戦いにしては迫力が足りなかった。司馬が描いた島津の敵中突破は活字ながらもっと迫力があったように思う。LORのような迫力ある戦闘場面を期待したからかもしれない。★★☆☆☆


家族はつらいよ2

2017-10-08 13:12:56 | 映画

 人生はつらいよ。丸田(小林稔侍)を見て、家族って何だろう、幸せって何だろう、人生って何だろう、って考えさせられた。丸田の人生をとやかく言う気も資格も自分にはないし、彼の気持ちを憶測する気もない。周造(橋爪)の老後は経済的には恵まれてはいるけれど、なんだかなと思う。自分はまもなく退職し、いわゆる老後の生活というものが始まる。自分の生を自分らしく生き抜くだけだ。

『家族はつらいよ2』2017、監督:山田洋二、出演:上のポスター(公式Web-siteより)のとおり。前作同様、居間での家族の掛け合いは、寅さんが久々に柴又に帰ってきて最後はたこ社長も加わり騒動になる、あの楽しい”くるまや(旧とらや)”の居間だ。橋爪の歳までにはまだまだなのだが、日本でレンタカーを借りるとなぜか車体をこすってしまう。特に徳島に帰省したときが多くて、相手はいつもどこやかしこの縁石なのである。この数年で数度だから相当の頻度だ。その都度、警察に報告し保険のお世話になっているので、最近は保険のランクを上げて車の休業保証保険に入っている。毎日乗っているシンガポールでは一度もないので、日本の道路が肌に合わないとしか言いようがない。★★★★★

 8月、9月は飛行時間がたっぷりで映画三昧できたはずなのに、『家族はつらいよ2』と『シャーロック・シーズン4』(これは後日寸評)以外は面白い映画がなかった。機中で本を読む気にならなかったし、ましてや仕事をする気もないので暇つぶし覚悟で映画を見まくった。その中でも一応気に留めた映画の寸評をしておく。ポスターの洋画はIMDb、邦画は公式Web-siteより。

『ボンジュール・アン 副題:Paris Can Wait』2016、監督:エレノア・コッポラ(巨匠フランシス・コッポラ夫人)、出演:ダイアン・レイン、アーノルド・ビアード、アレック・ボールドウィン、ダイアン・レインの映画を見逃すわけにはいかない。フランス・カンヌからパリまでの旅行に夫は急な仕事で同行できなくなり、Anne(ダイアン・レイン)は夫のパートナーの男とドライブすることになる。美しい景色、美味しい食べ物とワイン、男との会話を通して自分の人生を見つめなおす。IMDbにある映画のあらすじは、”アンは人生の十字路にいる(Anne is at a crossroads in her life.)"で始まる。ある年齢になると皆、人生を見つめなおすらしい。

 二人はパリ近くで、獅子王リチャードが1190年に十字軍遠征の途中立ち寄ったヴェズレー教会(世界遺産)を訪ねる。サンティヤゴ巡礼路の出発地でもある。フランスを巡りたいと思う映画だった。トルコで会ったフランス人にフランス料理で安くて手軽なものはあるかと聞いたところ、あるけど、パリのほとんどのレストランは高いということだった。★★★☆☆

『万能鑑定士Q モナ・リザの瞳』2014、監督:佐藤信介、出演:綾瀬はるか、松坂桃李、初音映莉子 ルーブル美術館から貸し出され来日するモナ・リザの強奪を企てる窃盗団に、鑑定の才能を利用される主人公が、寸前でモナ・リザを取り戻す。鑑定採用テストで本物を二人で選んでいくトリックは面白かった。モナ・リザにかつて盗難や贋作があったことを知った。盗難によってイタリアに持ち込まれたときイタリアは名画が帰ってきたと喜んだという。画面を通して細部までたっぷりとモナ・リザに触れ、その素晴らしさに改めて感動した。★★★☆☆

『キング・アーサー』2017、監督:ガイ・リッチー、出演:チャーリー・ハンナン、ジュード・ロウ、アストリッド・バージェス・フリスベイ、アーサー王と円卓の騎士の話だから見ないわけにはいかなかった。エクスカリバーを岩から引き抜く場面も出てくる。魔法使いマーリンは出ず、その弟子が活躍する。好きな魔法と剣のファンタジーだが、あらすじはスターウォーズのパクリかと思った。★★☆☆☆

『The Circle』2017、監督:ジェイムズ・ポンソルト、出演:エマ・ワトソン、トム・ハンクス、世界的なSocial Media企業で働き始めたMae(エマ・ワトソン)は自分をネット上で四六時中さらす実験を始めるが、家族や友人たちが巻き込まれ、悲劇が起こる。ネットは便利だけど怖いので一方通行が無難だと改めて思った。アナログ男がGoogleに就職する『The Internship』と『ターミネーター』のスカイネットを思い出していた。エマ・ワトソンはどうしても『ハリーポッター』のハーマイオニーを思い出すので成人女優として見られない。安達祐実や小林綾子と同じだ。★★☆☆☆

その他の映画は、有名俳優主演だが星ゼロまたは星1 

ガル・ガドットとクリス・パインの『ワンダーウーマン』2017星1、トム・クルーズの『マミー』2017星0、クリス・プラットの『ガーディアン オブ ギャラクシーVol2』2017星0、モーガン・フリーマンの『Going in Style』2017星1、スカーレット・ヨハンセンの『Ghost in the Shell』2017星0

『カンフー・ヨガ』2017はタイトルのとおり中国とインドの合作映画。ブッダと関わりのあるマガダ王国の秘宝をめぐる冒険活劇で、最後はジャッキー・チェンがボリウッドダンスまで見せてくれる超エンターテイメント映画だ。そのサービス精神に星ひとつおまけしておく。★★☆☆☆


Manchester By the Sea

2017-08-07 00:01:08 | 映画

『Manchester by the Sea』2017、監督:ケネス・ローガン、出演:ケイシー・アフレック(ベン・アフレックの弟)、ミシェル・ウィリアムス、カイル・チャンドラー、故郷を捨てた男が、兄死亡の知らせを受けて故郷に帰ってくる。映画のタイトルのManchesterをイギリスのマンチェスターだと思って映画をみていたらボストンが出てくるのであれって感じだった。男は悲劇的な事故を起こし、妻と別れ故郷を捨て、ボストンでは何でも屋として将来の希望も持たずその日暮らしをしていた。故郷に戻り、兄の葬式の準備しながら、遺児の高校生の甥の養育をどうするか奔走する中、ずっと避けてきた過去の事故や別れた妻と向き合わなければならなくなる。事故を知る故郷の人々と触れ合い、傷を深くするだけのときもあれば、癒されるときもある。父親を亡くした甥も精神的に不安定になり自暴自棄になるが、主人公との触れ合いの中で現実を受け入れるようになる。死んだ兄も、10年ほど前、心臓病で50歳まで生きられるかどうかわからないと宣言され妻が去り一人息子を育てながら人生を生き死んだ。過去と向き合おうが過去を避けようが、時は流れ現実の人生を生きるしかない。人生ってこんなんだなと思う。この映画でケイシー・アフレックはアカデミー主演男優賞を獲得していたが、最初はなんてかったるい映画だろうと思いながら眠気をこらえてみた。最後まで放り出さずに観てよかった。 ★★★★☆

『Hidden Figures』2016、監督:テオドール・メルフィ、出演:タラジ・P・ヘンソン、オクタビア・スペンサー、ジャネル・モネイ、ケビン・コスナー、NASAの初期、差別されていた黒人女性がそれぞれ能力を発揮し、宇宙開発に貢献する実話をもとにした映画。能力と成果を重視する偏屈なNASAの責任者ケビン・コスナーの存在感がよかった。★★★☆☆

『ローガン』2017、監督:ジェイムズ・マンゴールド、出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュアート、ダフネ・キーン、年老いたウルバリン・ローガンとエグゼビア教授が痛々しい。ずっとX-menシリーズを観てきた責任で気乗りしないまま観た。ローガンは自分のDNAを受け継ぐ女の子と徐々に心を通わせていく。時間つぶしのバイオレンスアクションのつもりで観ていたのに、DNAがつなぐ親子の情はTouchingだった。ヒュー・ジャックマンとパトリック・スチュアートはこれが最後のX-men出演にするということである。妥当な判断で、自分も余程のことがない限りX-menシリーズは最後にするつもり。★★★☆☆

『X-men Origines』2009、監督:ガビン・フッド、出演:ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュライバー、リン・コリンズ、テイラー・キッシュ、ライアン・レイノルズ、『ローガン』を観るため復習のつもりで観たが面白くなかった。★☆☆☆☆

 上の4作は、いずれも時間つぶしにはなった。『Kong』はやはり人間の美女が好きだった。『The Great Wall』(万里の長城)には、不思議な知的化け物「饕餮(とうてつ)」が出てくる。『Live by Night』の最後、マフィアのボスへの反撃はボス側が不用意すぎる。それは『Spectre』の悪者も同じ。娯楽アクションだとしても、もう少しリアリティーが欲しかった。いずれも星1つ。それともう1作『John Wick:Chapter2』は残念ながら星ゼロ。上の4作以上にありえない設定に驚く。でもIMDbの評価は5作品の中でこれが一番高いことにもう一度驚いた。


La La Land

2017-05-06 18:45:30 | 映画

2017年アカデミー賞にノミネートされ話題になった『La La Land』と『Arrival』よりも、評価のあまり高くない『Collateral Beauty』と『Passengers』の方が面白かった。アメリカ人(ハリウッド?)とは違う感性を持っているということだ。エマ・ストーン、アイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンスと、旬の女優が演技を競う。ポスターはいつものIMDbより。

*****以下、ネタバレだらけなので要注意*****

『La La Land』2016、監督:ダミアン・チェイゼル、出演:エマ・ストーン、ライアン・ゴスリン、今年のアカデミー賞の話題作。女優を目指すミアと自分の店をもつ夢を持つジャズピアニストのセバスチャンが出会い恋に落ちる。お互いを愛し拘束することが夢の障害になることに気づき、ミアが女優になるチャンスをつかんだときセバスチャンは身を引きミアの背中を押す。数年が経ち有名女優になり結婚もしたミアは偶然彼の店を訪れるが、ミアはセバスチャンに声もかけず店をあとにする。それぞれの道が交わることはもうない。ロスのグリフィス天文台の場面など映像は美しいのだが、二人の感情の揺れに共感できなかった。★★★☆☆

『Arrival、邦題:メッセージ』2016、監督:デニス・ヴィレヌーブ、出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・ルナー、こちらもアカデミー賞の話題作。異星人の宇宙船が地球にあらわれたとき言語学者のルイーズは異星人の言葉を解読するために呼ばれ、物理学者のイアンとともに異星人と交信し彼らが地球にきた目的を探る。異星人の言葉の解読に成功したルイーズは、彼らが友好的で、かつ未来を見る能力を有していることを知る。宇宙船は世界中に12隻出現し、それぞれの国が対応するが、中国は異星人に不信を抱き攻撃を開始しようとする。ルイーズは異星人の未来予知能力で中国軍総司令官個人しか知りえない妻の遺言を告げ彼の説得に成功する。ルイーズの見る夢が過去ではなく未来の出来事だということが伏線になる。イカかタコのような巨大な異星人の吐く墨の言語がユニークだった。異星人との交流とコミュニケーション過程が、アカデミックな根拠があるのか気になった。映画は淡々としすぎていて、ファーストコンタクトの盛り上がりに欠け、もうひとつ物足りなかった。★★★☆☆

『Collateral Beauty、邦題:素晴らしきかな、人生』2016、監督:デヴィッド・フランケル、出演:ウィル・スミス、ヘレン・ミレン、キーラ・ナイトレイ、ナオミ・ハリス、エドワード・ノートン、マイケル・ペナ、娘を失くしたハワード(ウィル・スミス)は喪失感から生きる意味をなくしていた。広告代理店の共同経営者たちは彼を会社から追い出すための証拠集めに探偵を雇う。ところがハワードはLove、Time、Deathに手紙を書いていること以外まったく何もしていなかったし自殺願望も持っていた。会社の同僚たちは3人の劇団員を雇い彼の異常な行動を引き出そうとする。3人はハワードに近づき、Love、Time、Deathを演じる。一方、ハワードは肉親を失くした人々が集い悩みを語り合うカウンセリンググループの会に立ち寄るが、そこでも心を開こうとはしなかった。後日、ハワードはカウンセリングリーダーのマデリンと夕食をし、彼女の娘が亡くなったときの話を聞く。娘がまさに亡くなろうとしていたとき、病院の待合室で隣に座った老女が、”Collateral Beautyが訪れる”と話したという。Collateral Beautyは字幕では”おまけのご褒美”と訳されていた。マデリンは最初それを信じなかったが今はそれに気づいたとハワードに話す。ハワードは娘の死にBeautyなど訪れるはずがないと反論する。劇団員の言動や共同経営者たちの悩みなど、映画の主題に無理やり関連づけようとするエピソードのすべてがわざとらしく説教くさい。それらをそぎ落とし我慢して映画を見続ければ、最後にCollateral Beautyが訪れ胸が熱くなる。それでも、娘を失くした親の心情を見せる映画に、邦題の”素晴らしきかな、人生”はいただけない。★★★★☆

『Passengers』2016、監督:モルテン・ティルダム、出演:クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、マイケル・シーン、地球型惑星への移住を目指す宇宙船は、5000人の移住者と280人のクルーを冷凍カプセルで冬眠させ、自動航行によって120年の恒星間飛行を続けていた。航行中に隕石が衝突し、宇宙船に不具合が生じ、移住者の一人ジム(クリス・パイン)だけが30年目に冬眠から目覚めてしまう。再冬眠を試みるも果たせず、慰めはロボットバーテンダーのアーサー(マイケル・シーン)の給仕で飲むことだけで、残りの90年をひとりぼっちで過ごすことに堪えられなくなり自殺を試みるも果たせなかった。ジムは悩んだ末、冬眠カプセルの中に見つけた美女オーロラ(ジェニファー・ローレンス)を冬眠から目覚めさせる。オーロラには自分と同じようにカプセルの不具合で目覚めたと思い込ませていたが、ある日オーロラは、アーサーとの会話の中でジムが自分をカプセルから出したという真実を知る。オーロラは裏切られたことから激しく動揺し怒りをジムにぶつけ、二人は絶交状態になる。そんなある日、再びカプセルの不具合が発生し、クルーの一人ガスが冬眠からさめ、宇宙船の動力源に深刻な問題が生じていることが判明する。ガスは重度の病気のため宇宙船の修理をジムに託し亡くなる。宇宙船を救うためジムは自分の命をかけて動力源の修理に向かう。ジムの孤独と無償の行為、オーロラの動揺と怒りと許し、極限状態の宇宙船の中で二人の揺れ動く感情に引き込まれる。★★★★☆

『Allied』2016、監督:ロバート・ゼメキス、出演:ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、1942年ドイツ軍占領下のモロッコで夫婦役を演じたカナダ情報局のスパイ(ブラピ)とフランスのスパイ(マリオン)が恋に落ち、ロンドンで結婚生活を始める。子供も生まれ幸せな生活を送る中、妻に二重スパイの嫌疑がかけられる。妻の無実を証明するために夫は妻を知る人間を必死で探す。夫に感情移入し、彼女が無実であって欲しい、彼女の愛が真実であって欲しいと願いながら観たが、最後衝撃の結末を迎える。★★★☆☆

『Assasin's Creed』2016、監督:ジャスティン・カーゼル、出演:マイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤール、遺伝子レベルの記憶を再現できる機械で、アサシン教団の血筋の男が15世紀の教団の首領とリンクする。先祖の技能を身に着け現代で自分を捕えた組織と戦う。アサシン教団の存在をマルコ・ポーロが東方見聞録で記録していることと、マリオン・コティヤールが出ていなければ観なかったし、観たことを後悔している。★☆☆☆☆

『Fences』2016、監督:デンゼル・ワシントン、出演:デンゼル・ワシントン、ビオラ・デイビス、スティーブン・ヘンダーソン、父親の息子たちや妻に対するあまりの独善的な行動についていけなかった。そんな夫の言動に耐え家族に寄り添って生きていた妻が、夫の裏切りに感情を爆発させる。妻役のビオラ・デービスの演技はアカデミー賞助演女優賞に値すると思う。★★★☆☆

『百日紅 Miss HOKUSAI』2015、監督:原恵一、声の出演:お栄(杏)、北斎(松重豊)、北斎の娘お栄のことを描いた杉浦日向の原作を漫画映画化したもの。北斎も北斎と同じくらい変人のお栄も描き方が甘いように感じた。自分の中で北斎像が出来上がってしまっている所為だと思う。そういう意味では観ない方がよかった。★☆☆☆☆ 


オケ老人

2017-04-14 15:40:47 | 映画

『オケ老人』2016、監督:細川徹、出演:杏、笹野高史、左とん平、小松政夫、藤田弓子、石倉三郎、坂口健太郎、黒島結菜、高校教師の小山千鶴(杏)は新任地のアマチュアオーケストラにバイオリン奏者として入団する。楽団は、いつ天国に旅立つかわからない老人ばかりで、団員の確保に苦労していたので、千鶴は大歓迎される。団員それぞれが無秩序に活動する楽団のレベルの低さに驚く千鶴は、実は似た名前のエリート楽団と勘違いしたのだ。もともと老人楽団にいた連中が脱退してつくったのがエリート楽団で、残された老人たちは新楽団を敵視していた。レベルの高い楽団で演奏することを望んでいた千鶴はエリート楽団の入団試験をひそかに受け合格する。入団はしたものの、統制的で自由がなく演奏技能だけを重視する楽団で息苦しさを覚え老人楽団に戻る。そんなとき老人楽団の演奏会が開催されることになる。指揮者の笹野高史は街の小さな電気店の店主で、近くの家電量販店の所為で売り上げ不振が続いていたことや、商売敵の量販店からの買収話で持病が悪化し、千鶴が代わりに指揮をすることになる。ある日、エリート楽団が招待した世界的音楽家フィリップ・ロンバールの持っていた古いアナログテープレコーダーを笹野が修理したことからロンバールは、老人オーケストラに肩入れするようになる。演奏会で楽しそうに演奏する老人たちとそれに歓声をあげる聴衆やロンバールをみて、エリート楽団の主催者で量販店社長も音楽本来の楽しみを思い出し老人楽団にもどる。上のポスターは公式ホームページより。

 映画で演奏する左とん平をみて、学生のとき友人Sの部屋で左とん平の『ヘイユーブルース』のレコードを聞いていたことを思い出した。

ヘイユーブルース https://www.youtube.com/watch?v=dPVIXgfZSZI) 

Sは同じ曲を何回も聞くという性癖を持っていたので「ヘイユー、ホワッチューネイム? 人生はすりこ木だ!」の歌詞は耳にこびりついている。Sの部屋でたくさん曲を聞いたがその多くは素養のないクラシックだったので、覚えているのは、この左とん平の『ヘイユー』とエディット・ピアフのシャンソンだけである。シングル盤『ヘイユー』をSは何度も何度もかけ直した。エディット・ピアフはLPだったのでシングルほどではなかったがそれでもSの部屋に入り浸っていたので聞いた回数は数えきれない。その所為で、はるか後年、映画『プライベイト・ライアン 原題:Saving Private Ryan』でパリの戦場にエディット・ピアフが流れたとき「あっ!」と反応したのも、マリオン・コティヤール主演映画『エディット・ピアフ 原題:La'Meme』を観たのも、今、大竹しのぶのエディット・ピアフの舞台を観たいと思うのも、すべてSの影響である。

 IMDbより

 元気な老人はどこにでもいる。うちの親父は92歳でまだ自転車に乗っている。沖縄小浜島で活動する天国に一番近いアイドルグループKBG84は、昨年12月、92歳を筆頭にシンガポールを訪れ、ボタニックガーデンで公演した。高齢化の進むシンガポールで老いをどう生きるかのヒントにするため地元メディアChannel News Asiaが招待したのだ。グループの公演顛末を紹介するNHK海外向け英語放送NHK Worldの番組がYoutubeにupされている。

NHK World動画 https://www.youtube.com/watch?v=8DQ7ylIGh3g 

Channel News Asia記事 http://www.channelnewsasia.com/news/cnaconnect/event/okinawa

映画評は元気なオケ老人たちに加え、KBG84の踊り出すおじいもおばあも総まとめで、★★★★☆ 

 今日4月14日(金)、シンガポールはGood Fridayの休日である。キリストが磔にされた受難日である。朝から雨模様だ。3月中旬、最高気温35℃のシンガポールから最低気温5度のトルコへ現地2泊機中2泊の強行軍で行き、シンガポールへ戻るとすぐ最低気温5℃から最高気温20℃を日替わりで反復する日本へ行き、また35℃のシンガポールへ戻った。トルコで引いた風邪が治らないのは歳の所為か? 来週は帰国し週末にはハーフのレースが待っている。ハーフ2時間切りを目指していたが、練習不足は明白なので完走できればいいと控えめ(弱気?)だ。

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PS. エディット・ピアフとSのことは2008年5月7日”GW映画漬け”の回で言及済みだった。何度も同じことを言う健忘期の痴呆初期症状は何年も前から出ている。もの忘れもひどい。自分も十分”〇ケ老人”ということだ。(2017.4.15記)


Inferno

2017-02-25 22:51:38 | 映画

トム・ハンクス主演『ダ・ビンチ・コード』の3作目は、ダンテの神曲の地獄篇からとった『Inferno』だった。1月に観た『The Sea of Trees』には煉獄が出てきたのでダンテづいてる。映画の筋は超要約すると、大きな目的のためには細菌兵器を使った大量殺人も辞さないという狂信者にトム・ハンクス扮するラングドン教授が利用され、危ういところでWHOとともに阻止するというものである。悪者が誰か?という謎を終盤まで明かさず聴衆を引っ張る手法は2作目『天使と悪魔』と同じだった。前2作と同じく展開が単純で深みがなく、次から次と出てくるイタリアの歴史上の人物、文化宗教遺産、絵画を楽しむ映画だった。それは1作目『ダ・ビンチ・コード』も同じで、映画の展開よりも、マグダラのマリアとキリストの磔から復活までを知ることができたほうに意義があった。下は、左より1作目、2作目、3作目のポスター(IMDbより)

下の映画の場面(IMDb)は順に、ボッチチェリの『地獄の図』、フィレンツェのウフィッチ美術館、ダンテのデスマスク、ヴェネチアのサンマルコ広場

 上でラングドン教授が見上げるボッチチェリの『地獄の図』には狂信者が残した”The truth can be glimpsed only through the eye of death.(真実は死者の眼を通してしか見えない)"という言葉が隠されていた。「Facts are the enemy of truth.」のドン・キホーテの言葉で”真実は心の眼でしか見えない”ということは理解できるが、死者の眼を通してとは何と不吉な言葉だろうか。それでも事実は、死者が見ても同じでなければならない。ところが、事実(Fact)にも見る人間によって異なる別の事実(Alternative Facts)があるというのだから驚きだ。トランプ大統領の就任式の聴衆数がオバマの時に遥かに及ばない映像を見ても、トランプの方が多いAlternarive Facts(別の事実)があると大統領顧問ケリーアン・コンウェイが主張した。この映画でもCreated Reality(作られた現実)という言葉が出てきたが、それは事実をねじ曲げて主張することとは違う。どう考えてもAlternative Factsは嘘(Fake)だろう。Alternative Factsは映画の中ではなく、現実の世界(Real Life)で語られた。Factsを流すマスコミをFake Newsと非難し、嘘を平然とつく政府が、国民の信頼を得続けることなどできるはずはないのだが、当たり前のことが通じない世界になってしまったのだろうか。虚実(Real LifeとVirtual Life)が混然としてしまったのはそれを無作為無秩序に流すネットがあまりにも私たちの生活に浸透している所為かもしれない。

 ところで、ボッチチェリの有名な『プリマヴェーラ』や『ヴィーナス誕生』は、1998年のイタリア旅行のとき、フィレンツェのウフィッツィ美術館で見た。ボッチチェリはレオナルド・ダ・ヴィンチの兄弟子になる。今読んでいる田中英道『レオナルド・ダ・ビンチ』によると、レオナルドにとって思想を抱合するものが絵画であり、自分の思想にもとづきじっくり考察した上でなければ筆が動かない作家がレオナルドだった。しかし、ボッチチェリは神曲も読まずに、その挿絵が描ける作家だった。レオナルドはボッチチェリについて、”貧弱な風景を描く”、”自分のほうが遠近法を知悉している”などと手記に書き残している。しかし、田中英道は、「レオナルドのボッチチェリへの態度は、今まで言われてきたように無関心なものでも否定的なものでもない」とし、「それは尊敬の念と、それを凌ごうとする精神とに要約される。いわばよい意味での競争心が存在していたのである。」と述べる。

地獄の図(Wiki)

『Inferno』2016、監督:ロン・ハワード、出演:トム・ハンクス、フェリシティー・ジョーンズ、イルファン・カーン、ダンテがベアトリーチェと結ばれなかったように、初老のラングドン教授とWHO長官のエリザベスには結ばれない過去があった。映画の最期、どちらが言い出したか忘れたが「自分と結婚していたらと考えたことはあったか?」という問いに、相手が「ある」と答える。それでも分岐点に戻ることはできない。二人はそれぞれ今の人生を生きていくしかない。ふっと『ニューシネマパラダイス』の結ばれなかったトトとエレナのことを思い出していた。★★★☆☆   

『ダビンチ・コード』2006、★★★☆☆、『天使と悪魔』2009、★★☆☆☆ 

PS(26/Feb/2017) 『Inferno』のラングドンは大学での研究を選び、エリザベスはWHOで働くことを選んだ。その関係は、『ニューシネマパラダイス』のすれ違いで結ばれなかったトトとエレナではなく、どちらかといえば『日の名残り』のスティーブンスとミス・ケントンに近い。自分自身の選択だったとしてもほろ苦い思いは残る。

 


この世界の片隅に

2017-01-27 21:10:02 | 映画

 『この世界の片隅に』2016、監督・脚本:片渕直、声の出演:のん(すずさん)、細谷佳正(夫・周作)、尾身美詞(義理の姉・径子)、評判の『シンゴジラ』や『君の名は。』を差し置いて、2016年キネマ旬報ベストテンの1位に選ばれたと聞き、すぐに近所のシネコンに観に行った。土曜日の朝の映画館は私のような中高年でいっぱいだった。おそらくキネマ旬報の記事を読んで思い立ったのだと思う。『君の名は。』は若者向けなので、中高年からなる審査員が『この世界の片隅に』を選んだのは必然だろう。映画は昭和10年代から戦争終了まで、広島と呉に生きた一人の女性を描く。当時の(銃後?の)庶民の生活に、戦後派の自分が懐かしさを感じたのは、戦時下の食糧不足、言論統制、艦載機からの爆弾投下や銃撃、身近な者の死などを、父母から聞いていたからだろう。それと舞台となった広島に一時期住み、原爆ドームや江波や呉の見覚えのある風景が丁寧に描かれていたことも懐かしさを覚えた理由だと思う。上のポスターは公式ホームページより。洋画ポスターはいつものIMDbより。

 主人公のすずさんの成長と結婚、戦時下の生活、戦争の悲劇、逆境の中で生きる姿が淡々と描かれる。昭和20年8月6日も8月15日も当然彼女のところにやってくる。困窮や悲しみの中にも喜びをみつけ生きるすずさんに感情移入した。庶民は生きる時代を選べない。こんな時代に生まれたのが不運だったとあきらめるしかないのだろうか。今の平和な生活を絶対に手放してはいけない、反戦の声を上げ続けなければならないと強く思った。というわけで、『君の名は。』ではなく、こちらに軍配をあげる。★★★★☆

 『星のむこう、約束の場所』2004、監督:新海誠、声の出演:吉岡秀隆、荻原聖人、南里侑香、『君の名は。』の監督作品だったので機中で観た。津軽海峡をはさんで本州側の日米同盟と北海道のユニオンに分断された日本を背景に、手作り飛行機で津軽海峡を渡り北海道にそびえるタワーを見に行こうと約束した中学生3人を描く。ユニオンが造ったタワーはパラレル宇宙とつながっていると考えられていて、少女はそれを作った学者の孫である。パラレル宇宙の出来事を夢で感知する少女は、いつしか眠りに入り政府の監視下で夢を見続けることになる。ある日、日米とユニオンの間で戦争が始まり、それでも少年は少女を連れ出し約束を果たす。運命や社会に翻弄されながら自分の意志を貫こうとする若者を描くところは『君の名は。』と同じ。でも、『この世界の片隅に』を観た後では、架空ではあっても、戦争を安易に描きすぎだと思ってしまう。★★☆☆☆

 『Deja Vu』2006、監督:トニー・スコット、出演:デンゼル・ワシントン、ポーラ・パットン、バル・キルマー、ジム・カビーゼル、500人以上が犠牲になったフェリーボートの爆破事件を追う捜査官は、4日前を監視できる装置を開発したチームとともに爆破犯を追う。以前観た映画を機中で再鑑賞した。大好きなタイムトラベル物で、過去を変えることで現在や未来を変える話である。同じタイムトラベルを扱っても、過去は変えられないとする話の方がどちらかといえば多いような気がする。ドラえもんの『日本誕生』では、過去を変えてはいけないので時間を守るタイムパトロールが出てきた。代表的なタイムトラベルを扱う映画『Back to the Future』は過去と未来を縦横に駆け巡り、不都合な未来を変えようとする。あっちの未来やこっちの未来というパラレルワールドの概念も使われる。2作目のスポーツ年鑑で大金持ちになるビフはトランプがモデルらしい。他にも起こってしまった出来事を、過去に遡って変えようとする映画は、『ターミネーター』シリーズや『Source Code』などがある。『All You need is kill』も過去をリセットするということでは同類だ。近い過去にタイムトラベルすると過去の自分に出会うことになる。『ハリー・ポッター・アズカバンの囚人』では、ハリーは過去の自分を救う。でもそれは過去の出来事を変えるのではなくて、過去にあった不思議な出来事が実は未来の自分がしたことだったという謎解きをして見せるものだった。この手の映画には無理や矛盾はつきもので、あまり詮索せずに素直に受け入れることが映画を楽しむ秘訣である。

 事件の捜査官デンゼル・ワシントンは、4日前の出来事を見ているうちに爆破犯に殺される前の女性に恋してしまい、事件前に戻り女性を救おうとする。過去には過去の自分とタイムトラベルした未来の自分が同時に存在するのだが、二人は出会うことはなく、事件の終了とともに未来の自分は消える。映画の最後、その時代(過去)の捜査官が女性の前に現れたときのHappy Endにホッとし、『オブリビオン』のトム・クルーズのクローンを思い出していた。★★★★☆

 『Timeline』2003、監督:リチャード・ドナー、出演:ポール・ウォーカー、ジェラルド・バトラー、ケイト・エリクソン、アンナ・フリーエル、同じくタイムトラベル物。14世紀の英仏100年戦争の遺物を発掘していた考古学者が、遺物の中に自分たちを指導していた教授の書いた”Help me”という手紙を見つける。その手紙のインクは炭素年代法で600年前と鑑定され、教授が14世紀にいる(いた?)ことに驚く。若い考古学者たちは教授を救うため、教授が使った時間転送装置で14世紀にタイムトラベルし、その時代に深く関わっていくことになる。送られた時代と場所は、現代人が想像できないほど生死が紙一重の戦場だった。送り込まれた考古学者たちの必死の行動は、歴史を動かすことになるが、それは必然だったという落ちになる。すなわち、発見された考古学的遺物は彼らのとった行動と矛盾しなかったのである。『Deja Vu』と同じく、愛は時空を超えるのだ。★★★☆☆

 『Florence Foster Jenkins』2016、監督:スティーブンス・フレアース、出演:メリル・ストリープ、ヒュー・グラント、サイモン・ヘルバーグ、メリル・ストリープがドナルド・トランプに噛みつかなければこの映画はパスしていた。音痴のオペラ歌手を主人公にした映画が面白いはずがないと思い込んでいたからだ。実際、そんなに面白い映画ではなかった。主人公フローレンスに遠慮して何も言わない観客の中でただ一人、音楽ホールには場違いで上品とは言えない女が、フローレンスの歌声を聞いて本当に転げ廻って笑う場面が痛快だったのと、夫でマネージャーのヒュー・グラントの献身ぶりに感心したところだけが見どころだった。メリル・ストリープの音程の外し方が名人芸だという評価があるが、音痴の自分にそれがわかるはずがない。この映画のお蔭で、自分にはミュージカル映画の評価は無理であることに気付いた。★★☆☆☆

今回のブログでもトランプが2回出てきた。しばらくはこんな世界の片隅にいてもトランプに振り回されそうだ。


The Sea of Trees

2017-01-07 11:12:11 | 映画

『The Sea of Trees、邦題=追憶の森』2016、監督:ガス・ヴァン・サント、出演:マシュー・マコノヒー、ナオミ・ワッツ、渡辺謙、主人公のアーサー・ブレナン(マシュー)は、Perfect place to dieとされる富士の樹海で自殺をしようと日本へやってくる。森に入り睡眠薬を飲んでいるとき森をさまよう男ナカムラタクミ(渡辺謙)に出会う。ナカムラとともに樹海を彷徨する中で、妻(ナオミ)との日々がFlash Backされ、徐々にアーサーがなぜ樹海で死のうと思ったかがわかってくる。自分の不貞が原因で夫婦間に亀裂が入り、贖罪の気持ちはあるものの、アルコール依存で自分をなじる妻を素直に愛せない日々が3年も続いていた。そんな時、妻に脳腫瘍がみつかり、闘病の中でお互いを理解しやっと絆を取り戻そうとした矢先に妻を亡くしてしまう。妻を亡くした喪失感と償えなかった罪の意識からアーサーは自殺をしようとしたのだった。ナカムラが何者かということはすぐに予想がつくのだが、映画の最後にアーサーはそれに気づき、妻のいない人生を歩み始める。

映画『巴里のアメリカ人』でジーン・ケリーが歌う「Stairway to Paradise」をナカムラが歌う、子供たちが森を彷徨う童話「Hansel and Gretel」、ナカムラの妻Kiiroと娘Fuyu、ナカムラの身体を覆うコートの下に咲く花、死人の魂はすぐそばにいる、などがKey Wordとして散りばめられる。中でもナカムラがつぶやく煉獄(Purgatory)が映画のストーリーの中心になっているように思う。ダンテの神曲でダンテは男に煉獄を案内され、煉獄の先にある天国では最愛の女性ベアトリーチェが待っている。アーサーが喪失感と罪悪感を克服し自殺を思い止まり生きる決意をした理由は、神曲のキリスト教的な世界観からはわからなかった。それよりも、病床のブッダを前に嘆き悲しむ弟子たちにブッダが言った次の最後の言葉のほうが彼の立場を代弁しているように感じた。

「やめよ。アーナンダよ。悲しむなかれ、嘆くなかれ。アーナンダよ。わたしはかつてこのように説いたではないか。すべての愛するもの・好むものからも別れ、離れ、異なるに至るということを。およそ生じ、存在し、つくられ、破壊されるべきものであるのに、それが破壊しないように、ということがどうしてありえようか。さあ、修行僧たちよ。お前たちに告げよう、もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成しなさい。」

人生は諸行無常であり、死にゆくものにいつまでも関わるな。自分自身で生きる意味をみつけなさい。とブッダは教えている。

アーサーと同じように、ネットで「Perfect Place to Die」と検索すると、すぐにAokigaharaが出てきた。毎年数十人の自殺者が発見されているらしい。海外でも人気(?)で、映画では主人公に加えドイツ人の自殺体が出てきた。映画は暗いがいろいろなKey Wordsが思索を刺激してくれた。★★★★☆

『Rogue One、A Star Wars Story』2016、監督:ガレー・エドワーズ、出演:フェリシティー・ジョーンズ(Theory of Everything)、ディエゴ・ルナ、近くのシネコンで観た。Star Wars 第4話は、反乱軍が手に入れた設計図から弱点をみつけDeath Starの破壊に成功する。映画ローグワンはその設計図を手に入れるために帝国の要塞に忍び込んだ反乱軍戦士たちの戦いを描く。映画の主人公を含め反乱軍の兵士は要塞での戦いの中で全員死んでしまう。映画の最後、手に入れたDeath Starの設計図を指さしたC3-POの「それは何?」という問いに、レイア姫が「Hope!」と答える。CGで登場し若きレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーの冥福を祈って星をひとつ追加した。★★★☆☆

『Jack Reacher:Never Go Back』2016、監督:エドワード・ツウィック、出演:トム・クルーズ、コビー・スマルダーズ、ダニカ・ヤロッシュ、トム・クルーズが特殊能力を持つアウトローの元軍人Jack Reacherを演じる第2弾。今回のJack Reacherは米軍のアフガニスタン撤退に際し武器横流し事件を摘発する女性将校を助け、悪徳軍人、武器商人、殺し屋と戦う。自分の娘と名乗る若い女性と行動を共にする。第1作のようなサスペンスがなく脚本が明らかに劣化していた。★★☆☆☆

『Magnificent 7』2016、監督:アントイン・フグア、出演:デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、クリス・プラット、ハレー・ベネット、極悪鉱山主に搾取される西部の町の住人がガンマンを雇い、鉱山主に立ち向かおうとする。カバーされた黒澤明の『七人の侍』と比べいろんな部分が端折られ人物の掘り下げもない。原作『七人の侍』で最も重要で魅力の鍵だった村を要塞化する中で侍と村人の間に一体感が生じ、ともに野武士に立ち向かうという骨格がなく、勘兵衛に対応する司令官役のデンゼル・ワシントンへの求心力にも必然性が感じられなかった。結局、迫力(?)のガンファイトを見せただけで、黒澤明の『七人の侍』はもちろんのことユル・ブリンナーの『荒野の七人』とも別物として見なければいけない。時間つぶしのレベルにもない。★☆☆☆☆

『ビリギャル』2015、監督:土井裕秦、出演:有村架純、伊藤淳史、田中哲司、野村周平、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に合格した実話の映画化。ビリギャルの学力レベルに応じた先生の熱血指導に、彼女の揺れる心理状態や家族関係を絡ませ、奥行きのあるドラマになっていて面白かった。★★★☆☆


君の名は。

2016-12-17 11:19:20 | 映画

 公式ホームページより

話題の『君の名は。』をシンガポールからの帰国便で観た。

山間の村の女子高生・三葉はある日自分が東京の男子高校生・瀧の身体と入れ替わっていることに気付く。そのうち二人は定期的に入れ替わるようになる。少女はかつての隕石落下による災害の記憶を伝承した一族の末裔で一種の霊能力をもち、無意識のうちに都会の高校生に隕石落下から村を救うことを託していたのである。隕石が村を直撃することを知った瀧は時空を超えて村を救うために奔走する。隕石落下から数年が経ち、入れ替わったときの記憶を失くした二人はいつの日か運命の糸に導かれる。

『君の名は。』2016、監督:新海誠、登場人物(声):三葉(上白石萌音)、立花瀧(神木隆之介)、先輩の奥寺(長澤まさみ)、三葉の祖母(市原悦子)、時間と空間と人物(魂)が複雑に絡み合うので一度観ただけのこのストーリー解釈で良かったのか自信がない。SFと純愛を巧みに結びつけたこの映画は大変な人気らしい。多感でもう少し純なころに観ていれば星5だったかもしれないが、今はそこまでの評価ができなくなっている。歳を経ることは純真さを失うことと同義なのだなどと自己肯定し、せっかく学んだ孔子の教えに背いてしまった。★★★☆☆

 IMDbより

『Jason Bourne』2016、監督:ポール・グリーングラス、出演:マット・デイモン、トミー・リー・ジョーンズ、アリシア・ビカンダー(Ex Machina)、ずっと観ているジェイソンボーンシリーズ最新作。シリーズ物の常で、アクションは派手になっているがストーリーに驚きや深みがなく退屈だった。なぜ超人的なCIA工作員Jason Bourneが生まれたかという創成話だけでは観衆の興味をつなぎ留められない。どの回もJasonは若い女に助けられる。今回の女CIA局員(アリシア)がJasonに肩入れしていく過程に必然性と説得力はなかった。アリシア・ビカンダーの魅力におまけして、★★★☆☆

『The Legend of Tarzan』2016、監督:デイヴィッド・イエーツ、出演:アレクサンダー・スカースガード、マーゴット・ロビー、サミュエル・L・ジャクソン、初めてターザン映画を観たのは、徳島の丸新デパートの中にあったテアトル丸新という洋画専門映画館だったと記憶している。1960年初頭、小学校低学年のことである。同じ頃その映画館で、『狼王ロボ』や『南海漂流記』などのディズニー映画を観た。ターザンが、例の甲高い雄叫びをあげて蔦をあやつり木から木へと移動し、ライオンやワニと格闘する。ターザンは早送りで格闘していたので本物のライオンやワニが相手だったのかはわからない。いつも連れていたチンパンジーは本物だった。ターザン映画に着ぐるみはいなかったと思うが定かではない。今のターザン映画はCGですべて解決する。それと、昔のターザン映画が字幕だったのか吹き替えだったのかの記憶がなく、小学生に字幕を読む力があったとは思えないので吹き替えだったのではないかと思うが判然としない。

その頃、徳島市中心部には映画館が多数あり、記憶にある洋画専門館だけでも、東新町のテアトル丸新、かごや町のピカデリー、秋田町裏のOS劇場、城山近くの徳島ホール、それに西新町にも名前は忘れたが映画館があった。邦画は、東映、東宝、日活、大映、松竹が東新町とその近辺に林立していた。映画黄金期である。ゴジラは当然東新町とかごや町の分岐点のダイエーの上にあった東宝で観た。そういえば名前は忘れたが東宝の隣に洋画専門館があった。ゴジラなどの邦画は幼い頃、家族で観、中学高校になると友人と洋画ばかり観ていた。ターザンの原作者が火星シリーズや金星シリーズのエドガー・ライス・バロウズだと知ったのは中学時代だった。思い出話はこのへんにしておいて、今回のターザンの評価は、勧善懲悪、超人的アクション、動物愛護だけで星はあげられないが、ジェーンの美貌におまけして、★★☆☆☆


シンゴジラ

2016-11-12 20:36:53 | 映画

『シンゴジラ』2016、監督:庵野秀明、樋口真嗣 出演:長谷川博己、石原さとみ、竹野内豊、映画前半、正体不明の巨大生物への対応に政府、特に首相の大杉漣が右往左往する様は笑えた。官僚主義、セクショナリズム、前例主義など、映画を見ながら都庁の豊洲市場担当部署も、小池ゴジラの出現に右往左往しているのだろうと思ったりした。それに比べ力のなさそうな平泉成を擁立した臨時政府の後半は、長谷川に対応を一任し、数次にわたるゴジラ攻撃を筋書き通り完璧に遂行して見せた。意思決定が一元管理されたからこそ可能だったということになる。映画を観て、統帥権のことを思い出していた。総意型の文民統制は、多様化したリスクや不測の事態、特に急激な変化に対応できないが、個人に統帥権を付与すると独裁をまねく。バランスが重要なのだとは思うが、そううまくはいかないだろう。

ゴジラは放射線を東京で撒き散らし原発を皮肉っているので、映画は格好の原発リスク管理シミュレーションになっていた。戦前、総力戦研究所という組織があり、開戦前に日米戦の机上演習(シミュレーション)を行ったところ、何度やっても日本敗戦という結果になったという。この予測結果を報告された当時の東条陸相は、”机上の空論”だと言わんばかりに反論し予測の口封じを命じた。彼には日露戦争勝利の成功体験バイアスがかかっていたのである。東日本大震災の10年前、2001年には貞観地震をもとに津波シミュレーションが行われ福島沿岸部を大きな津波が襲うことが示されていたが、その結果は活かされなかった。原発事故後すぐに放射能の拡散シミュレーションが行われ、どの地域に放射能が拡散するか報告されていたが、それも活かされなかった。いずれも、責任者の中で、一つの可能性としてのみ認識され、予測を真剣に吟味する態度がなかったからだ。自分の希望に沿わない予測を排除した東条の態度とまったく同じだった。逆に、石巻の大川小学校の問題では、津波シミュレーションが小学校まで津波は来ない予測となっていたことが、先生たちの判断を曇らせた。再三避難勧告がされていたにも関わらず行動を起こさなかったのは、過去に津波が来ていないという経験と、先生のこうあって欲しいという気持ちと、シミュレーション予測が一致したからだ。シミュレーションの精度はもちろん重要だが、予測をバイアスなしに判断する高次で公平な判断力が要求される。

ゴジラシリーズは小学生のときの『キングコング対ゴジラ』が最初だったと思う。その後、ゴジラはラドン、モスラと戦い、『三大怪獣 地球最大の決戦』のキングギドラでピークを迎え、この映画をもって自分のゴジラ人気は終了した。第1作の『ゴジラ』をテレビで見たのはずっと後のことだった。ところで、『シン・ゴジラ』の”シン”は何を意味してるのだろう? ★★★★☆

『64 (ロクヨン)』2016、原作:横山秀夫、監督:瀬々敬久、出演:佐藤浩市、永瀬正敏、夏川結衣、三浦友和、吉岡秀隆、綾野剛、榮倉奈々、緒方直人、NHkのピエール瀧主演の同名ドラマの最終回を見逃していたので、結末がずっと気になっていた。映画はテレビと途中までほとんどいっしょだったので同じ脚本を使ったか、あるいは双方とも原作に忠実な脚本だったのだろう。『シン・ゴジラ』といっしょで、こちらも警察機構、キャリアとノンキャリの対立、保身、記者クラブとの関係など事件以外の舞台背景が面白かった。昭和64年、自分は広島にいて勤務先事務所に半旗を掲げたことを思い出す。小渕官房長官の「新年号は平成です」という会見もリアルタイムでみていた。誘拐事件で娘を失くした父親の執念に胸が熱くなった。★★★★☆

選ぶ映画が悪いのだと思うが、以下はいずれもはずれで時間つぶしにしかならなかった。

『X-men Apocalypse』2016、監督:ブライアン・シンガー、出演:ジェームズ・マカボイ、ジェニファー・ローレンス、マイケル・ファスベンダー、このシリーズも今は惰性で見ている。シリーズ初期のころのドラマ性や意外性はなくなってきた。本作も『Mummy』と同じような超能力を持った過去の亡霊が出てきた。もともと荒唐無稽のミュータント話が、前回あたりから空間移動だけでなく時間移動もするようになり、遂に数千年の時空を超えることも時間の問題だった。次回作でミュータントは、宇宙や未来を駆け巡り宇宙人と戦うことになるかも。★★☆☆☆

『Star Trek Beyond』2016、監督:ジャスティン・リン、出演:クリス・パイン、ザカリー・クイント、カール・アーバン、★★☆☆☆

『Ghostbusters』2016、監督:ポール・フェイグ、出演:メリッサ・マッカーシー、クリステン・ウィーグ、ケイト・マッキノン、クリス・ヘムスワース、最後に、前作のシガニー・ウィーバーがカメオ出演したのに反応した。1984年と1989年の旧作は観ている。こっちは退屈で、星ゼロ

『Criminal』2016、監督:アリエル・ブローメン、出演:ケビン・コスナー、ライアン・レイノルズ、オールドマン・ゲッティ、CIAエージェントの記憶が移植された犯罪者がCIAのために働く。星ゼロ

『Nice Guy』2016、監督:シェイン・ブラック、出演:ラッセウ・クロウ、ライアン・ゴスリン、あらすじが思い出せない。星ゼロ

『The Huntsman Winter's Wars』2016、監督:セドリック・ニコラス・トロージャン、出演:クリス・ヘムスワース、ジェシカ・チャステン、エミリー・ブラント、シャーリーズ・セロン、豪華配役だがディズニーの雪の女王をパクってる。★☆☆☆☆

『Independence Day Resurgence』2016、監督:ローランド・エミリッチ、出演:リーアム・ヘムスワース、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマン、前作の科学者と大統領が再度活躍する。 ★☆☆☆☆


夏目の妻

2016-10-09 10:37:21 | 映画

漱石の妻は以前、ソクラテスの妻と並ぶ悪妻と書いた。悪妻だったという定説と、漱石の孫である半藤末利子『夏目家の福猫』と山折哲雄『デクノボウになりたい』を読んでの推測だった。夏目鏡子・松岡譲『漱石の思い出』は読んでない。

NHKドラマ『夏目漱石の妻』でも、第一回の熊本は”やはり悪妻だ”と思って観たが、第2回で漱石がロンドンから帰ってきたころから少し見直し、昨日の第3回『やっかいな客』の鏡子は、漱石の養父(竹中直人)を雨の中、追いかけ、なけなしの100円をたたきつけ念書を取り返す。漱石の心中を理解し、かつ養父の事情にも配慮して事を納めるその賢妻ぶりに感動してしまった。精神を病む夏目漱石に献身的に仕え、7人の子供を育て、家を切盛りしている。この鏡子夫人でなければ夏目は小説家として成功する前に、ノイローゼで退場するか家族生活が破たんしていただろうと思う。安直だが前言を翻し、漱石の妻は賢妻良母(良妻賢母でなく)だったと訂正する。本来なら原作『漱石の思い出』を読んでから結論すべきところ、夏目鏡子役の尾野真千子と漱石役の長谷川博己の熱演に洗脳された。上のポスターはNHKホームページより。

シンガポールでは、NHK衛星放送しかないので、『真田丸』も『べっぴんさん』も観ている。『真田丸』は、いよいよ大坂の陣が始まる、『べっぴんさん』は市村正親演じる靴職人が主人公の生き方を暗示し良かった。


殿、利息でござる!

2016-09-04 06:52:53 | 映画

映画『殿、利息でござる!』をシンガポールからの帰国便機中で観て”感動のドミノ倒し”に取り込まれた。その勢いのまま出張先の仙台で本屋に飛び込み磯田道史の原作『無私の日本人』を購入し一気読みをしてしまった。磯田がこの本を書くことになった由来は、『武士の家計簿』を読んだある読者から磯田のもとに手紙が届いたことに始まる。手紙には自分の故郷の吉岡宿に涙なくして語れない立派な人がいるので本にしてほしいという依頼が書かれていた。磯田がその人物である穀田屋十三郎についての史料『國恩記』を読んだところ、涙がボロボロこぼれたという。磯田の感動は、『無私の日本人』の読者を通してまわりまわって中村義洋監督の知るところとなり映画化されることになるのである。この感動の連鎖が”感動のドミノ倒し”である。

18世紀末の江戸時代、仙台城下より北六里にある黒川郡吉岡宿は、仙台藩から伝馬役という荷役を課せられていた。宿場を通る物資輸送のため藩が毎年のように人馬を強制的に徴発することによる負担は大きく宿場は疲弊していた。この負担を軽減するために、酒屋の穀田十三郎(阿部サダオ)と茶師の菅原屋篤平治(瑛太)は藩に貸金して、その利息を課役に当てようと考える。当時の利子は年1割で1000両貸せば100両の利息を得ることができ、それを人馬の費用に当てようというのである。穀田屋と菅原屋の計画に賛同した吉岡宿の有力な商人たちや大肝煎(おおきもいり=庄屋)の千坂家らは日々の生活費を削り家財を売って元手の1000両を捻出する。中でも十三郎の実家である造り酒屋で質屋の浅野屋はひときわ多く出資した。元金の目途が立ち代官の橋本権右衛門(堀部)を通して藩に貸金したいという前代未聞の嘆願書を出すが、藩の財政の実権を握る萱場杢(かやばもく=松田龍平)は即座に却下する。萱場は、富貴は利息をとる側にまわるか、取られる側にまわるかで決まるという考えを持つ男だった。却下されてもあきらめない穀田屋らの再度の嘆願を聞き届けた橋本代官は萱場に直談判する。藩の財政難に付けこみ高利貸をするような話は許可できないというのが萱場の答えだった。橋本はそうではないと延々と説く。浅野屋の先代である甚内というものが生涯をかけて小銭をため、臨終の床で、その銭をお上にさしあげ、吉岡宿を救えといって死んだのであり、それが人々の感銘をよび、宿場救済の基金に私財を投じるものが、ひとりふたりと増え、八、九人にいたったのだと直言する。実のところ藩は金に窮していたため、萱場は昨日今日のものではなかったということが判明したという理由で嘆願書を許可する。こうして吉岡宿は、毎年藩から利息をとり永代にわたり荷役の負担を免れたのである。利息が払われたのは、1766年に穀田屋と菅原屋が発案してから5年目の1771年のことである。

穀田屋十三郎は浅野屋の先代である甚内(山崎努)の長男だったがなぜか穀田屋に養子に出され、弟(妻夫木聡)が浅野屋を継いでいた。長男が養子に出された理由、弟が父親の遺言を守り私財を投げ出す話に泣かされる。他者よりも多く出資したことにより浅野屋は身代が傾くほどになっていた。彼らの行為に感動した伊達の殿さま(羽生結弦)が浅野家を訪れ、酒の銘柄を名付ける。殿さま拝領の銘柄、寒月、春風、霜夜は評判となり浅野家はつぶれずにすんだ。吉岡宿を守ろうとする人々のやさしさ、公共心、家意識が、藩から利息をとるという不可能と思える行為を成功させたのである。彼らは自分たちの計画を密かに進め、成功しても手柄を吹聴するようなことはなかった。まさに無私の行動だったのである。

磯田道史の語る江戸の庶民

  • 江戸時代、特に後期は庶民の輝いた時代で、庶民は親切さ、やさしさを持つことでは地球上のあらゆる文明が経験したことがないほどの美しさを見せた。倫理道徳において、一般人が、これほどまでに、端然としていた時代もめずらしい。
  • 公共心は世代をタテにつらぬく責任感に支えられていた。そんなことをしてはご先祖様に合せる顔がない。きちんとしなければ子孫に申し訳がないという意識である。
  • 子孫繁栄こそ最高の価値と考える宗教と思えるほどの家意識は極めて強かった。

磯田道史の余談

  • 江戸時代の米は寒冷種がなく冷害で不作になる年が多かった。にもかかわらず江戸で金に換えるため、年貢は容赦なく徴収され領内に餓死者が出るほどだった。江戸に米を送らされたみちのくは、昭和になって原子力発電所の立地とされ、東京に電気を送らされた挙句、東北の山野は放射能に汚染された。いつの世も金を持つ強者は弱者を翻弄する。行政側の利ではなく、民の利をはかる者が、能吏といわれる時代がくるならば、それは人類が永々とめざす理想国家の入り口に、ようやく、たどりついたということであるにちがいない。
  • 江戸時代、あり余った大勢の武士に仕事を割りふることと責任を不明確にすることのために、複数の武士を同役につけ、行政上の決めごとを複雑にし、誰が決めているかわからない組織にしていた。あちらこちらに書類がまわり、ものすごい数の武士がハンコを押すのである。たらいまわしも増えた。(黒澤明『生きる』の渡辺課長を思い出した。byブログ主)
  • 古来、心ある者には才知がなく、才知ある者には心がないといわれる。(才知も心もあるが、それを発揮する場を与えられなかった孔子のような人もいた。byブログ主)

大阪商人の山片蟠桃が仙台藩の財政を立て直したのは1780年のことだから、この物語のすぐあとのことになる。仙台藩は萱場杢の奮闘むなしく財政破たんしていたのである。山片蟠桃のことは原作にも映画にも出てこなかった。

『殿、利息でござる!』2016、監督:中村義洋、出演:阿部サダオ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、西村雅彦、寺脇康文、松田龍平、堀部圭亮、山崎努、実話を基にした脚本は笑いの中に涙ありで、『武士の家計簿』よりも数段面白かった。原作にはない飲み屋の女将(竹内結子)が右往左往する男たちをしっかり支え映画の芯になっていた。彼女は今や日本を代表する大女優だと思う。妻夫木は『家族はつらいよ』に続きいい人に嵌っている。映画を観てから原作を読む方がより感動が深まるのでお勧めである。★★★★★

『A Hologram for the King』2016、監督:トム・タイクワー、出演:トム・ハンクス、アレクサンダー・ブラック、サリタ・チャウドリー、サウジアラビアのリヤドでホログラムを使った通信技術をサウジアラビア国王に売り込むセールスマン(トム・ハンクス)の奮闘を描く。リヤドでイスラム教徒の女性医師と異教徒の主人公の恋愛が許されるとは到底思えない。私の理解では、トム・ハンクスはイスラム教に改宗しなければならない。そうしなければ宗教警察によって逮捕され宗教裁判にかけられるはずだ。★★☆☆☆

『マネーモンスター』2016、監督:ジョディー・フォスター、出演:ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコーネル、資産運用を紹介する生番組に男が乱入し司会者(ジョージ・クルーニー)を人質にする。番組が紹介したアイブス社の株が暴落し大損したことが理由である。人質事件が生中継される中で、アイブス社の株が実は社長の指示で意図的に操作されていたことが徐々にわかってくる。番組のディレクター(ジュリア・ロバーツ)と司会者は連携し、テレビ中継を通して社長の犯罪を暴いていく。新自由主義、市場原理主義の世の中で人々は金銭至上主義に走る。江戸時代の無私の人々と何と違うことだろうか。★★★☆☆ 

ポスターはいつものIMDbより


Bridge of Spies

2016-08-13 14:07:07 | 映画

「The Bridge of Spies」2015、監督:スティーブン・スピルバーグ、脚本:コーエン兄弟、出演:トム・ハンクス、マーク・ライランス、弁護士のドノヴァン(トム・ハンクス)は引き受け手のいないソ連スパイの弁護を弁護士会の推薦により引き受けることになる。裁判の担当判事でさえ死刑が決まっているとして、まともに審理をしようとしない上に、マスコミや周囲からも激しいバッシングを受ける。ドノヴァンは法に基づき弁護を進めるとともに、ソ連のスパイを生かしておけばいずれ同胞がソ連の捕虜になったとき交換要員になると判事を説得し、死刑回避に成功する。何年か後、アメリカの偵察機に乗ったパイロットがソ連に捕らえられ捕虜交換の機会が訪れる。ドノヴァンはCIAより民間人として捕虜交換の交渉役を頼まれ、ちょうど東西ベルリンを分ける壁が築かれたばかりの治安の悪い東ベルリンに乗り込む。そこには東ドイツ留学中に捕えられたアメリカ人の学生がいた。ドノヴァンはこの学生も含め2対1の交換を主張するがCIAは学生は交渉が不利になるとして交換条件に含めないよう要求する。しかし、ドノヴァンはソ連と東ドイツ政府を相手に巧みな交渉で2対1の交換を成功させる。ベルリンの壁が築かれる場面が出てくる。1961年のことで、壁の崩壊は1989年である。

ソ連スパイを熱心に弁護するドノヴァンはCIAから愛国心はあるのかと問われ、憲法に忠実であるものが愛国者だと答える。憲法を都合よく解釈する政治家が多い昨今、立憲主義と愛国心について考えさせられた。憲法は国家(為政者)の暴走を防ぐためのもので、国民を管理するためにあるのではない。★★★★☆

「Hail, Caesar!」2016、監督:コーエン兄弟(「The Bridge of Spies」の脚本家)、出演:ジョシュ・ブローリン、ジョージ・クルーニー、アルデン・エーレンライヒ、スカーレット・ヨハンセン、チャニング・テイタム、1950年代ハリウッドの映画会社のプロヂューサー(ジョシュ・ブローリン)は、売れっ子女優(スカーレット・ヨハンセン)の父親不明の妊娠や滑舌の悪い西部劇のアクションスター(アルデン)を現代劇で売り出すなど多くの問題を抱えながら敏腕を発揮する。そんな時、キリストの生涯描く「Hail Caesar」を撮影中の主人公(ジョージ・クルーニー)が共産主義者、実は報酬に不満を抱く脚本家たちのグループに誘拐され、身代金を要求さる事件が起き映画製作が中断する。西部劇俳優の活躍で誘拐事件が解決しプロヂューサーにも日常が戻る。「True Grid」の監督作品で、「ベンハー」やジョン・ウェインの頃の懐かしいハリウッドの雰囲気が出ていた。昔のハリウッド映画とその頃のゴシップに通じていればもっと楽しめたかもしれない。★★★☆☆

「The Lobster」 2015、監督:ヨーゴス・ランティモス、出演:コリン・ファース、レイチェル・ワイズ、ジェシカ・バーデン、独身であることを認めない社会で、ホテルに集められた独身者は45日以内に相手を見つけ結婚できなければ動物に変えられてしまう。もし動物にされるのなら100年は生きるロブスターになりたいというデービッド(コリン・ファース)は心にもない相手(実は心がないHeartless woman)と結婚したもののそれがばれて森に逃げ出す。森には独身者を差別する制度に反対するグループがいて、逆に恋愛禁止というルールがあった。グループに加わったデービッドはいつしか近視のホテルメイドと愛し合うようになる。それがグループリーダーにばれ、メイドは盲目にされてしまう。デービッドとメイドはリーダーを縛り森を逃げ出し街のレストランに入る。そこでデーヴィッドは自分の眼をつぶすのである。映画はそこで終わるので、デービッドがなぜ自分の眼をつぶしたのか、二人がその後どうなるのかはわからない。主人公だけでなくホテルを経営するマネージャー夫婦も動物になりたくないための見せかけの愛でペアーになっているといったカップルが描かれている。また結婚を否定する森のリーダーにも偽善がある。映画ではしつこく偽善の愛を描くので、映画の最後に「春琴抄」の佐助と同じように真実の愛、永遠の愛を貫くために眼をつぶしたとも解釈できる。映画のポスターで主人公は空白を抱いている。何を抱いているのだろうか。幻覚?真実の愛?いずれにしても、視覚によっては確認できないものということである。設定も筋書きも登場人物たちのキャラクターも奇妙で不気味だった。でも妙に面白かった。★★★☆☆

「Allegiant」2016、監督:ロバート・シュウェンケ、出演:シャイレーン・ウッドレイ、テオ・ジェイムズ、エンゼル・エルゴート、ジェフ・ダニエルズ、能力別社会の外にはそこを監視する階級社会があったのだ。「ハンガーゲーム」同様、ますます荒唐無稽で面白くなくなっていく。主人公が「The Fault in Our Stars」のシャイレーン・ウッドレイでなければ観なかった。「Divergent」星3、「Insergent」星2ときて、終に、★☆☆☆☆

「Midnight Special」2016、監督:ジェフ・ニコルス、出演:マイケル・シャノン、ジョエル・エドガートン、キルステン・ダンスト、不思議な能力を持った子供を連れ去ろうとする教団から、父母と友人が必死に守る。実はその子は---だった。★★☆☆☆

「Oympus Has Fallen」2013、「London Has Fallen」2016、監督:アオントィン・フォークア、出演:ジェラルド・バトラー、アアロン・エッカート、モーガン・フリーマン、二作続けて観た。テロリストに襲われた大統領を救うシークレットサービスの話。2作併せて★★☆☆☆

リオオリンピックはほぼ中日で、日本は金7、銀3、銅14と大健闘である。体操、競泳、柔道の活躍が続いた。メダルは獲れなかったが男子ラグビーはニュージーランドとフランスに勝った。バスケ女子もがんばっている。Joseph Schoolingが100mバタフライでUSAのフェルプスなど強豪を抑え、シンガポール初の金メダルを獲得した。シンガポールは中国からの帰化選手の卓球だけではなかったのだ。オリンピックはまだしばらく楽しめる。