備忘録として

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東方見聞録

2008-04-06 16:38:06 | 西洋史
マルコ・ポーロは実在しなかったとか、中国に行かなかったという説があるらしい。マルコポーロのWikipedia(日本語版)を見て、ネガティブな評価に偏りすぎているように感じた。Wiki本文は概要と評価の2章立てになっていて、概要ではマルコがミリオン(ほら吹きの意味)と呼ばれたことや実在しないプレスター・ジョンを探す旅に出たことなど山師ででもあったかのような記述が中心で、後世に与えた貢献については3行しかない。また、2章目の評価では、中国に行かなかったという説とマルコポーロ自身が実在しなかったという説の二つを取り上げている。第1章・概要が18行で、ネガティブな評価が16行もあり、日本語版Wikiは批判で占められているといっても過言ではない。
日本語版Wiki http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AD

比較のために英語版Wikiを見たが、マルコポーロの事績の紹介が豊富でマルコが後世に影響を与えた歴史的文化的貢献度についても詳細に述べられている。マルコの業績についての評価は本文125行中10行(8%)で紹介している。章題もControversies(論争)とされていて、評価としながらネガティブなものだけを集めた日本語版とはまったく異なっている。
英語版Wiki http://en.wikipedia.org/wiki/Marco_Polo

日本語版マルコポーロの編集者に悪意を感じるのはひねくれた見方だろうか。
梅原猛が”聖徳太子”の中で、津田左右吉の方法論を激しく批判している影響を受けたばかりだからこのように感じるのかもしれない。津田の方法とは史書の記述に矛盾(史書そのものの中にある矛盾と外国文献との矛盾)があれば出来事そのものが信用できないとするもので、これによって聖徳太子の事績を始め日本書紀や古事記の記事の多くを否定している。マルコポーロ批判説を垣間見るだけで津田左右吉の方法を感じ取ってしまうのである。
Wikiに文句をつけても仕方がないか。

”東方見聞録”青木富太郎訳を読んで得た知識は以下のとおり。
1.暗殺教団アサシンの話は第1章10節にあり、9節コビナンと11節バルフの間なので地理的にもイラン、トルメニスタン、アフガニスタン国境の山岳地帯にあったのだろう。アサシンは英語”assasin”暗殺者、”assassinate”暗殺するの語源である。
2.第1章15節にロブ砂漠、ロブの町と水の話があり、19世紀末から20世紀初頭のスウェーデン探検家スウェン・ヘディンが東方見聞録を手にさまよえる湖を探したことに思いを馳せる。
3.第1章20節ハラホルム今のカラコルムにいたプレスター・ジョンというのは誰だ?マルコはワン・ハンというのがヨーロッパでプレスター・ジョンと呼ばれていると言っている。キリストの誕生に立ち会った東方の三博士の子孫とされるプレスター・ジョンのことはいずれ書くことがあるかもしれない。
4.偶像崇拝教徒は仏教徒のこと。キリスト教徒は当時の中国各地にいた。
5.第1章30節上都、今のモンゴル高原の南にありフビライの夏の都であった。英語でXanaduザナドゥー、理想郷とされ、オリビア・ニュートン・ジョンのミュージカル映画で有名である。フビライは夏の避暑地として竹で作った仮宮殿に3か月ほど滞在した。
6.第2章フビライ・ハーンはタタール人であると書いているのでタタール人はモンゴル人ということになる。カタイ人は中国人で偶像崇拝教徒である。契丹(キタイ)がなまったもので英語Cathayは13世紀ごろの中国を指したもので香港の航空会社Cathayやシンガポールの映画館Cathay Organizationなどで使われている。
7.第3章1節ブリサンギン川にかかる美しい大理石の橋は盧溝橋で、マルコポーロの描写は現在の盧溝橋の姿そのものである。マルコポーロ橋とも呼ばれているらしい。日中戦争のきっかけになった盧溝橋はこれである。

”長さ270m、幅7m以上はあるだろう。24のアーチと橋脚があるが美しい大理石で堅固に作られている。両側に大理石製のてすりと柱があり、その根本に大理石製のライオンがある。柱の頂上にもライオンがおかれ、いずれも立派な彫刻だ。手すりは灰色の大理石だ。”
8.第4章13節マンジの首都キンサイ。マンジは北のカタイに対して中国南部の南宋をいい、キンサイは今の杭州で、マルコは世界でもっとも豪華で美しいという。19世紀の太平天国の乱で街は破壊されたという。
9.第4章16節ザイトン(泉州)は世界最大の二つの商港のひとつである。もう一つの商港はどこだろう。泉州は100年後に鄭和の出航地になる。このときには元は滅び明の時代になっている。
10.第5章2節ジパングでは、黄金の話、元寇が台風で失敗したこと、住民が偶像崇拝者であることなどが述べられている。
11.第5章7節セイロン島のアダムズ・ピークのことは以前このブログに書いた。

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