備忘録として

タイトルのまま

夢の国

2017-07-31 23:24:48 | 話の種

 孫とシンガポール動物園と東京ディズニーランドに行った。どちらも幼い子供たちを連れて行って以来なので、おそらく20年ぶりになる。動物園は動物との距離がさらに近くなり大きな水遊び場もあり園内の様子は一変していた。ディズニーランドはアトラクションやキャラクターは増えていたが見覚えのある乗り物も多く大きな変化を感じなかった。シンガポールも日本もうだるような暑さの中、園内を一日中歩いた3歳の孫は疲れ知らずだった。2年前のとくしま動物園の孫はよちよち歩きで片言しかしゃべらなかった。そのとき徳島の両親は孫の手を引いて園内をしっかりと歩けたが、以来体力も記憶も急速に衰えてきた。写真左はシンガポール動物園の象のショー、右はディズニーランドの懐かしいキャラクターたちが名シーンを演じるショー。このあとピーターパンとウェンディーは宙を飛ぶ。

 その盛況とは裏腹に、今日7月31日のCNNニュースは、『朽ちてゆく「夢の国」』と題し10年以上前に閉鎖され放置されていた奈良ドリームランドの写真と記事を載せた。世界中の廃墟が自然に飲み込まれていく様子を撮影しているフランス人写真家ロマン・ペイロン氏の作品である。

 奈良ドリームランドには、昭和36年か37年頃に行ったことがある。徳島(小松島?)から南海フェリーで和歌山に上陸し、高野山、東大寺、天理を巡る団体旅行の最後に訪れたのだ。初めての一人旅で大型遊園地に興奮した記憶が残っている。ネット情報によるとドリームランド開業は昭和36年なので開業してすぐのことになる。写真下の蛇のようなジェットコースターはまだなかった。遊園地で何を見て何に乗ったかの記憶はあいまいで、確からしいのはジャングルクルーズと、コーヒーカップを回しすぎて気分が悪くなった記憶だ。写真下のコーヒーカップに乗ったかもしれない。廃墟になり誰もいない遊園地の写真を見ると、大勢の家族がはしゃいでいる場面が瞼に浮かぶノスタルジックな感覚と、人間界が自然に飲み込まれてしまう破滅の感覚を同時に味わえる。ペイロン氏が言うように、現地に身を置けばそれをもっと強く感じられるのだろう。「人間が地上から姿を消した後の世界の様子を垣間見ることができる。」とペイロン氏はいう。滅びゆく世界を植物や自然が再生する宮崎駿の『風の谷のナウシカ』の世界だ。


Golden Age of Stupidity

2017-07-29 19:15:52 | 話の種

 一昨日、米国某有名大学のW教授と会食をする機会があった。シンガポールの地元大学に客員教授として招かれたのである。上手に箸を使って中華料理に舌鼓をうちながら、アカデミックな話に始まり最後は案の定、トランプの話になった。彼曰く、現在のアメリカは「Golden Age of Stupidity」なのだそうである。直訳すると「馬鹿の黄金時代」となる。Post-Truthの時代よりもこちらの表現の方がきついが、要は真実や誠実が重視されない愚かな時代になったということである。

 W教授の話では、トランプが嘘をついた日のカレンダーというものがあって、それによるとトランプは大統領就任以来ほぼ毎日嘘をついていて、嘘をつかなかったのはゴルフをしている日だけだったというのだ。W教授のいうカレンダーをネットで探した。それはトランプがFalse Mediaと攻撃するThe New York Timesの以下の記事にあった。

T r u m p  s   L i e s

UPDATED July 21, 2017

Trump Told Public Lies or Falsehoods Every Day for His First 40 Days

The list above uses the conservative standard of demonstrably false statements. By that standard, Trump told a public lie on at least 20 of his first 40 days as president. But based on a broader standard — one that includes his many misleading statements (like exaggerating military spending in the Middle East) — Trump achieved something remarkable: He said something untrue, in public, every day for the first 40 days of his presidency. The streak didn’t end until March 1.

(中略)以下はトランプが嘘を言った大統領就任後40日カレンダー

Trump Told Public Lies or Falsehoods Every Day for His First 40 Days

The list above uses the conservative standard of demonstrably false statements. By that standard, Trump told a public lie on at least 20 of his first 40 days as president. But based on a broader standard — one that includes his many misleading statements (like exaggerating military spending in the Middle East) — Trump achieved something remarkable: He said something untrue, in public, every day for the first 40 days of his presidency. The streak didn’t end until March 1.

上は記事に掲載された2017カレンダーの1月、2月、3月を示し、色の違いは赤は嘘を言った日(Told a public lie)、薄ピンクは正しくないことを言った日(Told a public falsehood)、灰色はどちらも言わなかった日(Didn’t tell a public lie or false)である、LieもFalsehoodも嘘だけれど、記事では、Lieは故意の嘘(Lie deliberately)、Falsehoodは正しくないこと(untruth)と定義している。矢印は就任以来初めて嘘を言わなかった日である。この日はゴルフをしていた。

 加計学園と防衛省日報を審議した国会中継でも、”どちらかが嘘をついている”と糾弾する質問者がいたが、日本の大臣も官僚も嘘つきばかりに見えた。森友学園の財務局の答弁も同じだった。それに、”記憶にございません”も、あったかなかったか、イエスかノーをはっきり言わない点、真実を隠す点では嘘と同義だと思う。唖然としたのは、森友に関わったことはないと答弁したのに、後日自身が森友の担当弁護士だった記録が暴露され、「そのときの記憶が誤っていただけで、偽証をするような意図はなかった」と答えた大臣がいた。これが許されるならその場限りの嘘を公言できる。国の政治を動かす人たちの言葉の何と軽いことか。「Golden Age of Stupidity」はアメリカだけの話ではなく、日本にもあてはまるということだ。地元大学の教授が、トランプは任期を全うできるかという質問を出したところ、辞めるのは安倍の方が早いかもという意見が出た。

 W教授は続けて、トランプ支持者がクリントン支持者よりも多かった大都市で人口が一番多かったのはどこかという質問を出した。ヒューストンやダラスという共和党が強いと思われる南部の大都市の名前が挙がったが、正解はJacksonvilleでほとんどの大都市はクリントン支持者が多かったという。彼の言う記事はネットですぐに見つかった。

The Largest City to Vote for Donald Trump

February 20, 2017 At 2:02 PM  Data Dives  

  1. New York City- Clinton
  2. Los Angeles- Clinton
  3. Chicago- Clinton
  4. Houston- Clinton
  5. Philadelphia- Clinton
  6. Phoenix- Clinton
  7. San Antonio- Clinton
  8. San Diego- Clinton
  9. Dallas- Clinton
  10. San Jose- Clinton
  11. Austin- Clinton
  12. Indianapolis- Clinton
  13. Jacksonville- needed to parse
  14. San Fransisco- Clinton
  15. Columbus- Clinton
  16. Charlotte- Clinton
  17. Fort Worth- needed to parse
  18. Detroit- Clinton
  19. El Paso- Clinton
  20. Memphis- Clinton
  21. Seattle- Clinton
  22. Denver- Clinton
  23. Washington, D.C.- Clinton
  24. Boston- Clinton
  25. Nashville- Clinton
  26. Baltimore- Clinton
  27. Oklahoma City- needed to parse
  28. Louisville- Clinton
  29. Portland- Clinton
  30. Las Vegas- Clinton
  31. Milwaukee- Clinton
  32. Albuquerque- Clinton
  33. Tucson- Clinton
  34. Fresno- Clinton
  35. Sacramento- Clinton
  36. Long Beach- Clinton
  37. Kansas City- Clinton
  38. Mesa- Trump
  39. Virginia Beach- Trump

 上のリストでneeded to parseとは解析が必要ということで、明らかにトランプ支持者が多いとされたのは人口38位のMesaになる。すなわち、大都市の住民はトランプを支持していないのだ。選挙の分析でも、トランプ支持者は田舎の白人が多いと言われていた。メディアの記事は信用できないFalse Newsとするので、トランプにとって真実は重要ではない。

ブログでトランプの名前を出したのはこれで5回目になる。トランプの策略に嵌っているようで腹立たしい。 


ルネッサンスの女たち

2017-07-23 18:42:27 | 西洋史

 田中英道がモナ・リザのモデルとしたイザベラ・デステのことがもっと知りたくて、彼女のことを描いた塩野七生『ルネッサンスの女たち』を古本屋で探してきた。彼女の生きた時代を理解するために、本から拾ったルネッサンス時代の略年表と1494年の勢力図(Wiki英語版)を掲げる。

  • 1474 イザベラ・デステはフェラーラ(フェラーリの発祥地)の公爵エステ家に生まれる。
  • 1490 イザベラは16歳で隣国マントヴァ公国のフランチェスコ・ゴンザーガ侯爵と結婚する。
  • 1491 イザベラの妹ベアトリーチェがミラノ公国の摂政ルドヴィーコ・スフォルツァ(イル・モーロ)と結婚する。
  • 1495 ナポリがフランス軍に征服される。イル・モーロがミラノの公爵となる。
  • 同年 イザベラの夫フランチェスコが反フランス同盟軍の総司令官として、タローの戦いでフランスに勝利する。
  • 1497 妹ベアトリーチェ死去
  • 1499 アレッサンドロ6世の息子チェーザレ・ボルジアはフランス軍とともにミラノに侵攻する。カテリーナ・スフォルツァが守るフォルリを落とす。
  • 同年 レオナルド・ダ・ビンチがマントヴァに立ち寄りイザベラのデッサンを描く。
  • 1500 フランス軍・チェーザレ軍がミラノを占領。。
  • 1501 チェーザレがウルビーノ征服。フェラーラのアルフォンソ1世・デステ(イザベラの弟)とチェーザレの妹ルクレチア・ボルジアの結婚。ルクレチア・ボルジアはイザベラの夫フランチェスカと不倫関係になる。
  • 1502 レオナルド・ダ・ビンチがチェーザレの軍事技術者となる。フィレンツェの外交官マキャベリがチェーザレに会う。
  • 1503 法王アレッサンドラ6世死去。チェーザレ没落。ジュリオ2世が法王となる。
  • 1509 マントヴァを始めイタリア諸国はフランスと結び対ヴェネチアと戦争を始める。フランチェスコがヴェネチアに捕虜となる。
  • 1510 イザベラはマントヴァを防衛しつつ、ヴェネチア、法王、フランス、ドイツと交渉し夫の釈放に成功する。
  • 1511 法王がフランチェスコを指揮官としイザベラの実家フェラーラを攻めるが、イザベラは巧みに夫を指揮官から降ろし法王の野望を断つ。
  • 1513 法王ジュリオ2世死去
  • 1519 フランチェスコ死去
  • 1527 ドイツ・スペイン連合軍はイタリアに進行し、イザベラの居たローマではヴァティカンを守るスイス傭兵が全滅する。(ルネッサンスの終焉)
  • 1539 イザベラ死去

PAPAL STATESとは法王領である。法王はコンクラーベで選ばれるので世襲ではない。

塩野七生が「ルネッサンスの女たち」でイザベラ・デステ以外に取り上げた女性は、

  1. ルクレツィア・ボルジア(1480-1519) 法王アレクサンドル6世の娘でチェーザレ・ボルジアの妹で、イザベラ・デステの弟アルフォンソ1世と結婚した
  2. カテリーナ・スフォルツァ(1463-1509) 夫が殺され子供が人質になったとき「何人でも子供はつくれる」とスカートをめくって反乱者を挑発した女傑で、後年チェーザレ・ボルジアに敗れフォルリ国を明け渡した彼女もモナ・リザのモデルの一人として名前が挙がっている。
  3. カテリーナ・コルネール(1454-1510) ヴェネチアの貴族でキプロス王妃になり夫に代わり自身で統治しようとしたがヴェネチアに割譲する。ヴェネチアは当時東地中海の制海権を握っていた。シェークスピアの悲劇「オセロ」はその頃のヴェネチアの軍人の話。

『ルネッサンスの女たち』の挿絵で使われていた肖像画(白黒)をWikiからコピーした。左からルクレツィア・ボルジア、カテリーナ・スフォルツァ、カテリーナ・コルネール


Post Truth

2017-07-01 10:58:55 | 話の種

 トランプのメディア攻撃がとまらない。相変わらず自分のことは棚にあげてメディアはウソつきだと言っている。「温暖化には根拠がない」という、根拠のない理由でパリ協定から離脱した。一方、イギリスでは、総選挙のとき、メイ首相を揶揄する『Liar Liar GE2017』という”She's a liar, liar. You can't trust her. No, No, No"を連呼する軽いノリの曲が流行った。何がLiarかというと、EU残留派だったのが離脱派になったことや社会保障、警察、病院、学校の予算をカットし、若者が未来に不安を抱くようになっても、未来の人々は私たちの政策を評価するだろうと強弁するのだ。そのうち、ロンドンでテロが起こり警察官を減らしたことが非難され、続く公営高層ビル火災では、以前から防火や避難路の不備を訴えていた住民の声を取り上げなかった政府の対応に非難が集まった。

Liar Liar GE2017

"We have a mission to make Britain a country that works, not for the privileged and not for the few, but for every one of our citizens. And together we, the Conservative Party, can build a better Britain...'

”我々はイギリスを特権階級や少数者のためではなくすべての民衆のための国にする使命を持ち、皆と共に保守党はイギリスをより良くできる”。どこかトランプの”We make America great again”に似ている。

We all know politicians like telling lies Big ones, little ones, porky pies

政治家は皆嘘つきだとわかってる。大嘘、小嘘、Porky Pieはスラングで大嘘

She's a liar, liar. You can't trust her. No, No, No

 トランプが用いる嘘や都合のよい事実を用いて大衆を扇動する手法を代表例として、現代は、ポスト真実(Post-truth)の時代に入ったと言われる。Post-truthとは、オックスフォード辞典によると、 

post-truth 

ADJECTIVE

  • Relating to or denoting circumstances in which objective facts are less influential in shaping public opinion than appeals to emotion and personal belief.

    ‘in this era of post-truth politics, it's easy to cherry-pick data and come to whatever conclusion you desire’
     
    ‘some commentators have observed that we are living in a post-truth age’

(訳)ポスト真実

   形容詞

客観的事実よりも個人の感情や信仰に訴える方が公共の意見形成により影響する状態を指す。ポスト真実の政治の現代においては、自分に都合のいいデータだけを選別し自分の望む結論を誘導することは容易い。何人かのコメンテイターは我々はポスト真実の時代に住んでいるとみている。

 都合のいいデータだけを採用し結論を導く方法は科学論文や学術論文でも問題になる。データをねつ造したわけではないから不正ではないように思われるが、ばらつきのあるデータから不都合なデータを省き、ある相関関係を導き出し成果としたなら、それはもうねつ造である。だから、政治の世界でも、政治家が都合のいいデータのみを示し大衆を扇動するとしたら、それは事実のねつ造であり不正になる。誰かを忖度し、M学園で根拠の希薄?(ない?)地中のごみを理由に土地の販売価格を下げた財務局の対応もこれに相当する。昔から政治家の公約破りは常で、選挙に当選すれば選挙中に約束したことなど忘れると言われる。そういう意味ではトランプは選挙中の公約を果たそうとしている点では誠実であると言える。公約を果たすふりをしている点では、巧妙であり、別の見方をすれば狡猾である。ビジネスマンであるトランプは、自分は交渉に長けていると言っている。それは一面、狡猾であるということで、目的を達成するために愚鈍な大衆をだまして扇動できれば、それはSmartな政治家だということになる。ポスト真実の時代において、狡猾(Smart)は褒め言葉になる。本邦を振り返ると、自分のお友達の学校しか選べない規則をつくって便宜を図り、それが非難されると、長年新規参入を拒んできた学会や役所の岩盤規制に風穴を開けたと抗弁する手法は、お友達のトランプの得意な議論のすり替え手法そっくりだ。自衛隊を我が軍と呼び、教育勅語を肯定する。Y新聞はついに政府のお抱え新聞社になった。戦前の軍国主義体制そのものだ。政治家の放送規制発言、特定秘密保護法、メディアの自主規制の影響で日本の報道の自由度ランキングは年々下がり、現在72位と先進国としては最下位になっている。大新聞が政府お抱えになったことや共謀罪の成立で来年はさらに下がり、中国による締め付けが著しい73位の香港より下になるのも時間の問題かもしれない。政府批判がほぼ許されない自由度151位のシンガポールで国民が自国を自由で民主主義だと思っているのを滑稽だと思うときがあるが人を笑えない。