備忘録として

タイトルのまま

阿倍仲麻呂

2013-12-30 23:22:54 | 古代

新聞紙上で紹介されていた新刊の上野誠「遣唐使 阿倍仲麻呂の夢」を読んだ。仲麻呂は遣唐使として唐に渡り現地で異例の出世をし、帰国途上に遭難し、望郷の念から百人一首の「三笠の山にいでし月かも」の和歌を残し、唐で没した。という知識しか持っていない。まずは略歴から述べる。

  • 701 大宝元年生誕 (698年説もあり)
  • 716 仲麻呂16歳で遣唐使に任命される
  • 717 遣唐使長安へ
  • 718 遣唐大使らは帰国
  • 724 聖武天皇即位
  • 733 遣唐使 栄叡、普照
  • 735 玄、吉備真備ら帰国
  • 743 鑑真第一次、二次渡航失敗
  • 748 鑑真第五次渡航失敗、海南島漂着
  • 749 鑑真失明、祥彦没、栄叡没
  • 750 遣唐使に藤原朝臣清河、大伴古麻呂、吉備真備らを任命
  • 753 朝賀の際に新羅との席次問題
    • 仲麻呂、鑑真、吉備真備ら帰国の途に
  • 755 安禄山の乱
  • 762 玄宗皇帝没
  • 770 仲麻呂没

安倍一族

桜井市付近に本拠地を置く。日本書紀に名前が見られ代々外交や軍事に関わる役職についている。安倍比羅夫は数回蝦夷討伐を行い、663年には白村江の戦に従軍する。

旧唐書

九州王朝説の根拠のひとつである倭と日本国の使節が争ったというのは717年の遣唐使の時のことである。「日本国は倭国の別種である。倭国自らがその名が雅でないとし名を改めて日本とした。別の言い伝えでは日本はもともと小国であったが倭国の地を併合したともいう」

「仲満(仲麻呂)は中国の風を慕い、帰国せず留まり、姓名を晁衡(ちょうこう)と改めた。衡は京師に留まること50年、書籍を愛し帰国の許可を与えても帰らなかった。」

科挙

仲麻呂が科挙に合格していたという記録はないが、仲麻呂が唐朝で就いた役職から、科挙に合格していたと推定されている。最高位は秘書監で従三品、その後、鎮南都護、安南節度使、贈潞州大都督。仲麻呂が受けたと推定されているのは、科挙のうち最難関コースの進士科で、試験科目は「帖経」儒家の経典の知識を問うもの、「詩賦」詩や賦の優劣を競うもの、および「時務策」時事問題に関する論文である。唐だけでなく歴代の中国王朝は外国人、異民族、異教徒でも能力があれば重用したと言える。仲麻呂だけでなくマルコ・ポーロやイスラム教徒の鄭和なども重用されている。

送別詩

玄宗皇帝、王維らが仲麻呂の帰国に際し送別詩を送り、仲麻呂はそれに答える詩を残している。また、李白は仲麻呂が帰国の途上、遭難死したと聞いて死を悼む七言絶句「晁卿衡を哭す」を残す。王維の詩は、中国の古典に対する基礎知識がないと理解できない。詩の送り手と受け手双方の知識人の中に「共有された知」がある。論語や礼記や易経や春秋左氏伝などの儒教関係経典、淮南子列子楚辞などの古典、史記、漢書、三国志、山海経などの歴史書である。卑弥呼関羽も出てくるので王維は三国志と魏志倭人伝の記事も知っていた。漢書李陵伝からの引用もあるという。史記の楽毅や信陵君も登場する。

王維:699-759 唐の詩人、書家、画家。李白や杜甫と並び称される。字の摩詰(まきつ)は、仏教の維摩経の維摩詰からとっている。維摩は俗に居ながらにして文殊菩薩や釈迦の弟子たちと知恵を競った。

和歌 

天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも 

この有名な百人一首にもある仲麻呂の歌は、唐土にて月を見て詠んだ歌と注釈されている。仲麻呂作とされるこの歌には、実作説、偽作説、仮託説、伝承歌説があるらしい。実作説は少数派らしい。偽作説には、そもそも中国語による漢詩だったという原漢詩説がある。仮託説と伝承歌説は、作者不明の歌を仲麻呂の作とした(仮託)というもので、それを伝承したものが伝承歌説である。この歌は905年編集の古今和歌集に収められている。935年の土佐日記で紀貫之が土佐の室戸の室津で潮待ちで焦燥する中、仲麻呂が異郷で詠んだこの歌のことを書いている。

筆者は本書の題になってる「仲麻呂の夢」が何だったかを明確には書いていない。17歳の若年で遣唐使となったとき、遣唐留学生の誰もがそうであったように唐で最新の学問を身に着け帰国し国作りに貢献することが夢だったはずだ。ところが、仲麻呂の才は図抜けていたため最難関の科挙の進士に合格してしまう。合格後、仲麻呂は成行きのまま唐朝に出仕し、順調に出世し高官を歴任する。当時、世界最高峰の文化を有する中国の知識人の中の「共有された知」の世界に身を置いてしまえば、小さな日本に戻る選択肢などなくなってしまったのだと思う。仲麻呂の夢が、最高の舞台で力を発揮する方向に変わったとして、誰がそれを非難できるだろうか。


The Way

2013-12-21 13:54:39 | 映画

キリスト教徒でも真言宗徒でもない人間が、サンティアゴの道や四国八十八か所を巡礼して人生の意味を見出すことができるだろうか。サンティアゴの道のことはずっと以前、シンガポール日本人会で俳人の黛まどかの講演を聞いて初めて知った。彼女が講演で語ったはずのサンティアゴの道で見つけた人生の意味を思い出せないが、得たものが大きかったという感動をもらったことはかすかに覚えている。サンティアゴの道は900㎞もあるので、毎日30㎞歩いても1か月を要する。体力的にきつい長旅をひとり歩くことで、自然と向き合い、他の巡礼者と触れ合い、キリスト教徒なら神と向き合いながら、旅人は何を考え何に気付くのだろうか。

サンティアゴの道は正確には、Camino de Santiago(スペイン語)、Saint Jacques de Compostelle (フランス語)、The Way of St. James(英語)と呼ばれフランス各地からピレネー山脈を越えスペイン北部を巡り聖ヤコブを祭る聖堂サンティアゴ・デ・コンテスポーラまでの巡礼路である。聖ヤコブはスペイン語でSantiago、英語でSt. Jamesで、レオナルド・ダ・ビンチの最後の晩餐ではキリストの右側二人目に座る人物である。9世紀に聖ヤコブの遺骸がスペインで奇跡的に発見され、そこに建てられた聖堂がサンティアゴ・デ・コンテスポーラである。

ポスターはIMDbより 地図はWiki

 映画「The Way 邦題:星の旅人たち」2010は、巡礼の最初の難所ピレネー山脈で死んだ息子の意思を継いでサンティアゴの道を歩く初老のアメリカ人眼科医トムの話である。息子の死の知らせを受けてフランスに渡ったトムは現地で息子を荼毘にふしたあと遺灰と息子のリュックを背負い息子の果たせなかったサンティアゴの道を歩き始める。大学の博士課程を途中で投げ出しサンティアゴを目指した息子の生き方をトムは理解できない。息子の言った”There is a difference between the life we live and the life we choose”という言葉の意味を考えながらの旅である。巡礼宿や道中で他の巡礼者と触れ合い、野宿をし、リュックを川に流したり、ジプシーの子供に盗まれたり、同行者と諍いになったり、息子の幻影を見たりする。様々な国から参加する巡礼者も皆、それぞれがそれぞれの目的で巡礼路を歩いている。サンティアゴに着いた後、トムはさらに海まで歩き息子の遺灰をすべて海にまくのだが、トムが息子の人生を理解し、息子を亡くした喪失感を乗り越えこれからの人生を歩みだす決心をしたのだと思う。ポスターには、”It's never too late to find the way"というメッセージが書かれている。遅すぎることはないということはわかるが、What kind of the way to findが問題である。My wayはいつ見つかるだろうか。監督:エミリオ・エステベス、出演:マーティン・シーン、エミリア・エステベス、★★★★★

黛まどかにはサンティアゴ巡礼のことを描いた著書「星の旅人」があるので、映画の邦題はこれに由来するのだろう。トムのリュックには聖ヤコブのシンボルであるホタテ貝がぶら下がっていたが旭日旗が縫い付けてあったのには驚いた。映画の中で、巡礼路の途中にチャールトン・ヘストンが主演した映画の主人公であるエル・シドの墓(像?)があると話していた。映画「エル・シド」はCDを持っていて★5つである。エル・シドは11世紀スペインをイスラムの侵攻から救った英雄で、9世紀から15世紀まで続くスペインのイスラム勢力からの国土回復運動をレコンキスタという。チャールトン・ヘストンの「黒い絨毯」でヒローインを演じたエレノア・パーカーの訃報が流れたのは12月9日だった。合掌

「天使と悪魔」2009、監督:ロン・ハワード、出演:トム・ハンクス、イワン・マクレガー、「ダヴィンチ・コード」の続編。ローマ教皇の跡継ぎ選び(コンクラーベ)にまつわるサスペンスで、ダヴィンチ・コードと同じくトム・ハンクス演じるラングドン教授が活躍する。誘拐された聖職者4人を救うためローマ・バチカンの教会を駆け回る。バチカンのサン・ピエトロ広場と最後の審判のシスティーナ礼拝堂など1998年に家族旅行をした時に訪ねた懐かしい場所が出てきた。最後のどんでん返しは”なるほどね”の程度で前作「ダヴィンチ・コード」ほどの驚きはなかった。★★☆☆☆

「バガーバンスの伝説」2000、監督:ロバート・レッドフォード、出演:ウィル・スミス、マット・デイモン、シャーリーズ・セロン、アメリカ南部の町で開催されるゴルフの話。有望なゴルフプレーヤーだったマット・デイモンは悲惨な戦争体験でのトラウマから抜け出せずゴルフを捨て自暴自棄の生活を送っている。元恋人の富豪令嬢のセロンは負債返済のため自分のゴルフ場に有名選手を呼ぶ大会開催を企画する。地元代表としてマットにも参加を呼びかけるが断られる。しかし、流れ者のキャディーであるウィル・スミスに出会ったことで大会に出場し、かつての自分を取り戻していく。シャーリーズ・セロンの美貌が際立っている。★★★☆☆

「Paranoia」2013、監督:ロバート・ルーケティック、出演:リーアム・ヘムスワース、ハリソン・フォード、ガリー・オールドマン、IT企業に努める若者が会社の金を使い込んだことを責められ、会社の命令でライバル企業に入り込み非合法の産業スパイをすることになる。大企業の力の前で追い詰められた男は友人たちと逆襲に転じる。IT産業は生き馬の目を抜くような世界でトップは悪玉ばかりだった。題名Paranoiaは偏執病のことで、誇大妄想や被害妄想を患う自己中で独占欲の病気である。ITトップ、例えばAppleやFacebookやYahooやMicrosoftやSoftbankやLivedoorの創業者は偏執病者だということか。★★☆☆☆

「ウルヴァリン:サムライ」2013、監督:ジェイムズ・マンゴールド、出演:ヒュー・ジャックマン、ウィル・ユンリー、真田広之、X-menシリーズは嫌いじゃなかったのにこれにはがっかりした。☆☆☆☆☆


土下座

2013-12-15 20:50:29 | 話の種

 今年もあと2週間を残すのみとなった。年々時針の刻みが早くなる。中島敦の山月記「人生は何事をも為さぬにはあまりに長いが、何事かを為すにはあまりに短い」という言葉が身に染みる。だから、何事かを為すのは”今でしょ”ってことである。その流行語大賞だが、本命視されていた4つすべてが選ばれて拍子抜けしてしまった。少し古くなるが、その中の”倍返し”のドラマ「半沢直樹」最終回で、大和田常務が半沢に土下座する場面は圧巻だった。以前、半沢を土下座させたときに自分が負けたら土下座してやると安易に約束したために、土下座せざるを得なくなったのである。

 土下座は謝罪のためだけにあるのではない。和辻哲郎の随筆に「土下座」(http://www.aozora.gr.jp/cards/001395/files/49903_41932.html)という小編がある。祖父の葬式のため故郷に戻った孫(たぶん和辻自身)が、式のあと父親に促され会葬者に土下座する。この土下座は感謝の土下座である。大学生の孫はプライドもあり、そもそも気持ちがあれば形式は重要ではないと考えていたので当初土下座することに違和感を持つ。ところが、父親に並んで土下座を続けるうちに自然と謙虚な気持ちになり故郷の人々に対し感謝の念がわいてきたという。形式的な行為を繰り返すうちに自発的に感謝の気持ちが芽生えてくるのである。大和田と和辻の土下座には、謝罪と感謝という目的の違い以上に、強要による行為と自発的(最終的に)な行為の違いがある。土下座によって大和田の心に謝罪の気持ちなど決して芽生えないことは明白である。土下座は逆に大和田常務の心に深い屈辱感とそうさせた半沢に対する激しい憎悪を植え付けたに違いなく、続編があるとすれば大和田常務は半沢に対し倍返しを意図するはずである。これが憎悪の連鎖である。日中国交正常化のとき中国の首相だった周恩来は、戦後30年で反日感情の残る世論を緩和するため、”中国国民も日本国民も軍国主義に苦しめられた”ことでは同じだとして「未来志向」を提唱し日本側もそれに応じた。今そのような大人の発想をする政治家は出てこないのだろうか。

 感謝と謝罪の土下座に加え、もうひとつ敬意の土下座がある。魏志倭人伝に倭人の風俗として「見大人所敬、但搏手以當跪拜」すなわち”目上の者を敬うときは、拍手しひざまずいて拝む(拝跪)”とあり、敬意の土下座があったことがわかる。日本で敬意の土下座は卑弥呼の時代からずっと続いていたようで、終戦の日の玉音放送を国民が泣きながら土下座して拝聴する映像を思い出す。土下座は日本だけの風習ではなく、中国でも昔、皇帝の前で拝跪する土下座があった。中国で儒教が見直されているというNHKのドキュメンタリー番組で、かつて拝金主義者だった女性が過去を懺悔し大勢の聴衆の前で土下座するのである。これは謝罪の土下座で自発的な土下座である。

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21 Dec 2013

今日最終回のNHKドラマ「太陽の罠」を見ていたら、尾美としのりが土下座した。感謝でも謝罪でも敬意でもない。お願いの土下座だった。主人公のしんちゃんと葵の2人の場面で流れる曲”As time goes by”は、イングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガードの映画「カサブランカ」で使われた有名な曲だ。詩の内容から、ドラマのテーマは”時が過ぎても愛は不変”だということと、そして寅さん口癖の”お天道さんはお見通しよ”から正直に生きろ。だろうな。


暗号

2013-12-09 22:46:25 | 近代史

 昨日12月8日は1941年に日本が米英に宣戦布告し真珠湾を攻撃した日である。NHKは「日米開戦への道、知られざる国際情報戦」という番組を放映した。最近イギリスで公開された機密文書に、チャーチルが進めた世界規模の情報戦が記録されていて、そこに日米開戦に至った経緯が読み取れるという。その頃、チャーチルは各国情報の暗号解読に注力しスパイを駆使し情報戦を有利に展開しようとしていた。その情報網でいち早く日本の南部仏印(インドシナ)への進駐計画を知り、マレーシアやシンガポールの自国の利権が日本によって侵害されるのではという危惧を持つ。しかし、イギリスはドイツによる空爆を受けヨーロッパ戦線では劣勢にあったため遠く東南アジアに兵力を割く余裕はなかった。そこで、チャーチルは日本の南方進駐による危機感を煽り、アメリカを戦争に引きずり込もうとする。手始めにイギリスはアメリカとともに日本に対し経済制裁を発動する。石油の9割をアメリカからの輸入に頼っていた日本にとって経済制裁は死活問題だった。アメリカは制裁解除の条件として南部仏印からの撤退だけでなく中国での権益を放棄するよう要求するハルノートを突き付ける。ハルノートを創案したアメリカの要人ハリー・ホワイトは実はソビエトのスパイで、ハルノートの中身はソビエトに有利な内容になっていたという。また、アメリカがハルノートに添えた南部仏印や中国からの撤退の代わりに資金援助をするという妥協案は、アメリカを太平洋戦争に引きずり込みたかったチャーチルの工作によって日本側に提示されなかったともいう。その頃、ワシントンの駐米大使や大使館付武官の必死の非戦努力や情報はアメリカによって妨害され日本の中枢には伝達されず国策を変えるには至らなかった。ハルノートは日本が戦争を回避できなくなった決定的な原因だったとされている。番組の解説者である静岡県立大学准教授は結局、日本の中枢の政策決定者たちは新しい情報がもたらされても既定路線を修正することができず、内向きの論理で政策決定していたと断じた。日本海軍の証言で陸軍参謀や海軍軍令部の目的が組織防衛になっていたという結論と同じだ。折しも日本では特定秘密保護法案が可決され、番組で扱われたような秘密情報が向う何十年も保護されることになる。国家権力が言論の封殺、スパイ冤罪、極端な国家主義に向かわないことを祈るばかりである。

 ハワイ沖海底で旧日本海軍の伊400という巨大潜水艦が見つかったというニュースが先日流れた。全長120mの巨大潜水艦で、水上飛行艇3機を搭載する当時の最先端技術を有していた。アメリカ軍は戦後すぐこの潜水艦を旧日本軍から接収しハワイへ回航し調査の後、技術が旧ソ連に漏れることを危惧しハワイ沖に沈めた。取得した技術は後の原子力潜水艦に生かされたという。そのころ日本の航空機技術も高度で、開戦当初「風立ちぬ」のゼロ戦との空中戦でアメリカはまったく歯が立たなかった。アリューシャン列島で偶然無傷のゼロ戦を入手しゼロ戦の性能をアメリカは徹底的に研究した。以降、機動性で劣るグラマンがゼロ戦に勝つため、上空から一気に急降下しヒットエンドランで打撃を与え逃走するという戦法を採用し空中戦での劣勢を挽回した。戦時中コロンビア大学において日本研究で学位をとったドナルド・キーンは情報士官としてアリューシャン列島のキスカ島に上陸している。映画「Big Year」で主人公たちはアッツ島へバードウォッチングに行くが何もない最果ての島である。アッツ島で日本軍は玉砕しキスカ島の日本軍は無傷の撤退に成功する。戦時中も何もなかったに違いないこんな島に大勢の日本兵が駐留していた理由がわからない。何もない島が戦略的に重要だったのだろうか。太平洋戦争で日本軍は、北はアリューシャン列島、広大な中国本土、さらに広い東南アジア、南太平洋、果てはオーストラリア本土にまで戦線を広げすぎている。兵站確保は兵法の基本なのに誰も疑問に思わなかったのだろうか。こちらはシンガポール拠点に東南アジアを駆け回っているが、情報入手が容易な現在でも隣国マレーシアの市場(戦線)でさえ担当者の報告のみで状況判断しているに過ぎない。ましてや広いインドネシアやビルマ(ミャンマー)のことまで責任が持てるはずがない。目の届く範囲で地道に仕事していようと思う。

 もうひとつ、暗号の話題としてBitcoinというインターネット上で流通する仮想電子マネーがある。別名、暗号通貨とも呼ばれる。Minerと言われる人たち(金鉱掘りのような人)がコンピューター上の暗号を解読することで少しずつBitcoinを手に入れられる仕組みになっているらしい。円やドルのように国が管理する通貨ではなく、また運営会社が発行する電子マネーでもない。正体不明の“中本哲史”という人物が2008年に出した論文に基づいてネット上に提供されている通貨で、徐々に利用する人が広がり今ではBitcoinで買い物ができるショップも出現しているという。Bitcoinが投機の対象になり急速に値上がりしたため、取扱量の多い中国の人民銀行が、個人的な取引は容認するが銀行がBitcoinを取引することは禁ずるという通達を出した。この12月5日のニュースを知るまでBitcoinの存在を知らなかった。著名な経済学者のBitcoinに対する評価は、将来性があるとする肯定的な意見と、破たんや負の側面が多いという否定的な意見に割れている。でも短期間で値が何十倍にも変動する通貨が物を売り買いする通貨として機能するのだろうか。結局、投機対象の仮想通貨でしかありえないような気がする。Bitcoinが外国為替クロスレートにでも入るようになったら通貨として認知されたことになるので利用してみるかな。


幸せの隠れ場所

2013-12-02 00:24:00 | 映画

機中映画を★順に並べた。(ポスターはIMDbより)

「幸せの隠れ場所、原題The Blind Side」2009、監督:ジョン・リー・ハンコック、出演:サンドラ・ブロック、クイントン・アーロン、ティム・マッグロー、NFL Ravensのプレイヤーであるマイケル・オーアの実話である。貧しい家庭に育ちホームレスになっていた黒人少年を引き取った家族の話で、彼が才能を開花させる姿を、家族、周囲の協力、偏見差別などのアメリカの日常を通して感動的に描いている。貧しい黒人少年を我が子同様に世話する母親役のサンドラ・ブロックは、この演技でアカデミー賞主演女優賞をとった。里親一家をきれいに描きすぎているようにも思うが、いつのまにか感情移入して少年を家族といっしょに応援していた。原題のBlind Sideは、マイケル・オアーが活躍するアメリカンフットボールではクウォーターバックの死角を言うらしい。ラグビーならスクラムを起点にバックスが展開するオープンに対し、ウィングだけを残した狭い方をBlind Sideという。裕福な白人社会に対して社会の底辺にいる黒人の貧困社会を指していることは言うまでもない。★★★★☆

「いとこのビニー、原題My Cousin Vinny」1992、監督:ジョナサン・リン、出演:ジョー・ペシ、マリッサ・トメイ、ラルフ・マッキオ、殺人事件の犯人として誤認逮捕された男が弁護を頼んだいとこのVinnyはこの事件が弁護士としての最初の事件だった。アメリカの保守的な田舎町のルールに翻弄され、有力な目撃者がいるというまったく不利な状況下で、車おたくの恋人の協力などで逆転していく過程がコメディータッチで描かれる。とにかくジョー・ぺシと恋人役のマリッサ・トメイのやり取りが抱腹絶倒なのである。ジョー・ペシはリーサル・ウェポンやホームアローンの強盗役で楽しませてくれた。マリッサ・トメイはこの映画でアカデミー賞助演女優賞を取るのだがその後パッとしない。★★★★☆

「Man of Steel」2013、監督:ザック・シュナイダー、出演:ヘンリー・カビル、エイミー・アダムス、マイケル・シャノン、ダイアン・レイン、ラッセル・クロウ。ケビン・コスナーの豪華キャスト版スーパーマン誕生物語である。観る気はなかったのだが、今は亡きクリストファー・リーブ主演のスーパーマンシリーズ4作はすべて観ているので行きがかり上、観ることにした。育ての親であるケビン・コスナーの「力はほんとうに必要な時に使え」という教えと、スパイダーマンのおじさんの「大いなる力を持つ者には大きな責任がある」という言葉が重なった。この映画で新聞記者ロイス・レインを演じたエイミー・アダムスは若く見えた。★★★☆☆

「Pacific Rim」2013、監督:ジレルモ・デル・トロ、出演:イドリス・エルバ、チャーリー・ハンナム、菊地凛子、Kaijuをやっつけるロボット操縦士たちの話で、2人一組で巨大ロボットを操縦する。準主役の菊地凛子は「バベル」で観て以来で、芦田愛菜ちゃんがKaijuに遭遇する子供時代を演じていた。時間つぶしのアクション映画。★★☆☆☆

「The Numbers Station」2013、監督:キャスパー・バウフェド、出演:ジョン・カザック、マリン・アッカーマン、情報部員に暗号指令を送信する女性オペレーターを保護する男に組織からオペレーターと施設を破壊しろという非情な指令が入る。男はその指令に疑念を抱き逆らって女性を守ろうとする。アクションもサスペンスも中途半端で話が暗い。★☆☆☆☆

「Arthur Newman」2012、監督:ダンテ・アリオラ、出演:コリン・ファース、エミリー・ブラント、自殺に見せかけて蒸発した男と家族に問題を抱えて逃避中の女のロードムービー。コリン・ファースと話の設定に惹かれて観たが、主人公も同伴することになる女も現実逃避しているだけでまったく共感できなかった。前回の「Gambit」同様、今回のコリン・ファースもはずれだった。さらに、エミリー・ブラントには魅力を感じないので、★☆☆☆☆

「2 Guns」2012、監督:バルタサー・コルマカー、出演:マーク・ウォールバーグ、デンゼル・ワシントン、麻薬組織に潜入した海軍情報将校と麻薬捜査官が麻薬組織と戦うのだが、自分たちの上司たちが麻薬組織とつながっていたというあまりにも奇抜な設定について行けなかった。最近のデンゼル・ワシントンはB級映画ばかりに出ている。☆☆☆☆☆


Malay Wedding

2013-12-01 12:33:59 | 東南アジア

知り合いのマレー系シンガポール人の娘さんの結婚披露宴に招待された。結婚式はモスクで行い、イスラム教徒でない私たち招待客はモスクでの結婚式には参加できない。披露宴は自宅のある公共住宅(HDB)の1階広場で行うのが一般的で、会場の脇に即席の調理場を設け、親戚、友人、近所の人たちが炊き出しのマレー料理を用意する。披露宴の招待客は決められた時間内に三々五々披露宴会場に集まりバイキング形式のマレー料理を御馳走になり三々五々帰っていく。その間、新郎新婦はお色直しの時間を除き会場の雛壇にずっと座っている。今回の披露宴はこのところ雨が多いこともあり、地域のスポーツクラブの大広間を借り切ったものだった。披露宴は大規模で新婦側と新郎側で2日にわけて行われた。今までマレー人の披露宴には何度も出席したが、下のようなダンスは初めてだったし、ウェディングケーキカットも初めてだった。お色直しも民族衣装からウェディングドレスへと伝統と流行が融合したものだった。

動画

https://www.youtube.com/watch?v=yancaply6Jw&feature=youtu.be

https://www.youtube.com/watch?v=xRUzh8OEwUk&feature=youtu.be