備忘録として

タイトルのまま

Upside Down

2013-09-29 08:36:16 | 映画

鈴鹿ひろ美の歌う潮騒のメモリーズに感激したのも束の間に「あまちゃん」が終わった。シンガポールではNHKのWorld Premiumで毎日「あまちゃん」を楽しめた。お気に入りの「半沢直樹」と「Doctors 2」も終わり、次の連ドラが倍返しでつまらなくなるような気がして気がかりである。半沢の言動は痛快だったけど、あれだけ好き勝手を言い放ち、最も管理主義的であろう集団からはみ出した言動をする半沢の左遷は避けられなかったと思う。なんてことを言うと、腹黒い体制派だという烙印を押されかねないけど。

さて、昔読んだ広瀬正の「鏡の国のアリス」は、主人公が左右逆転した鏡の中の世界に迷い込むSF小説だった。小説の内容はほとんど覚えてないが、鏡の国はこちらの世界と違い左利きには快適だったと記憶している。そして「Upside Down」2012は、上下が逆転した世界の話である。地球から手の届くところに正反対の地球が浮かんでいるという奇想天外な世界の話である。下の地球と上の地球は重力が反対に作用するので、上の物質を下の世界に持ち込むと上に落ちる。さらに上の世界は富裕で下は貧困の格差があり、両者の交流はある会社を除いて禁じられている。この二つの世界に住む若者が恋に落ちるというストーリーである。監督:ジュアン・ソラナス、出演:ジム・スタージェス、キルステン・ダンスト(Spiderman)、「In Time」と同じように奇想天外な世界の普通の恋愛を描いた普通の映画だった。★★★☆☆

「After Earth」2013 監督:ナイト・シャマラン、出演:ジャーデン・スミス、ウィル・スミス 人間の恐怖心に反応して襲い掛かるモンスターと戦う人類の中で、ただひとり恐怖心を克服しモンスター退治の先頭に立つヒーローの父親と、幼いとき自分の目の前で姉をモンスターに殺された息子の相克と成長の物語である。ナイト・シャマラン監督は「シックス・センス」が強烈だったので期待してみているがずっと裏切られている。今回も「エアーベンダー」と同程度にだめだった。★☆☆☆☆

「スタートレック Into the darkness」2013 監督:J.J.アブラムズ、出演:クリス・パイン、ザカリー・クイント、ベネディクト・カンバーバッチの超人ぶりだけが見所だった。元来SF好きなのだが、スタートレックには思い入れがなく、パロディー映画の「Galaxy Quest」を笑える程度の知識しかないために評価が低いのかもしれない。★★☆☆☆

「Sherlock」2010、2012 シャーロックをベネディクト・カンバーバッチが演じるイギリスのテレビシリーズで、シャーロック・ホームズを現代に移植した作品である。Dr. Watson役はホビットでビルボー・バギンズを演じるマーティン・フリーマンである。カンバーバッチは原作のシャーロックの雰囲気をよく出していて秀逸である。ANA機内での鑑賞だけで5作になる。最強の敵モリアーティ教授もすでに登場した。ホームズ物としては異色だが各話のストーリーは原作の要素を取り入れながら現代風にアレンジされよく練られている。5作目は「ボヘミアの醜聞」ならぬ「ベルグレービアの醜聞」で、シャーロックが唯一心を動かされたとされるアイリーン・アドラーがさらに妖艶になって出てくる。面白い。★★★★☆ 

「The Internship」2013 監督:出演:ビンス・ボーン、オーウェン・ウィルソン、ローズ・バーン ITとは無縁の人間力だけが頼りの二人組がGoogleのInternshipになり、与えられた課題をITおたくとはまったく異なる方法で解いていく。ハリー・ポッターのクイディッチ・ゲームを競技する場面が出てきた。映画が現在の若者を皮肉ったのか、IT最先端企業Googleでも人間力が必要だと言いたかったのか、単なるお笑いだったのか、いずれにしても面白かったので、★★★★☆ 


東京スカイツリー

2013-09-28 14:23:26 | 江戸

先週シンガポールからの客人と初めてスカイツリーに上った。霞の中にマッチ棒のような東京タワーが見え時代の流れを感じた。

展望台には、江戸文化6年(1809)に鍬形斎(くわがたけいさい)が描いた江戸一目図屏風のレプリカが展示されていた。富士山を背景に江戸の町を鳥瞰したものでスカイツリーから見たかのような構図になっている。広重の両国の花火も鳥瞰図で、北斎の「神奈川沖浪裏」の浪に飲み込まれそうな富士山など、江戸時代の浮世絵師の想像力の豊かさには感服する。この日の富士山は霞の所為で被写体にはならなかった。

下は、図屏風の中の浅草付近とその日にツリーから撮った浅草を並べたものである。図屏風には、左から雷門、仁王門、五重塔、浅草寺が並んで描かれている。

現在の浅草寺五重塔は仁王門の奥に見えるが、図屏風では手前に描かれている。広重の描いた浅草寺五重塔も仁王門よりも隅田川寄り(手前)だったので、明治以降に建て替えられたことになる。浅草大百科というWeb-siteによると、関東大震災では被害を免れ、第2次世界大戦で焼失し戦後再建されたという。下はシュリーマンが日本滞在中一回ならず通ったとされる吉原である。四角い区画の中に家屋が密集し、日本堤の上を三々五々歩く遊び人や駕籠が見える。見返り柳もきちんと描かれている。

スカイツリーのあと浅草、隅田川クルーズ、浜離宮、汐留からゆりかもめに乗ってお台場を一周すると、新旧の江戸が見られ、ほどよい1日江戸観光になった。 


大乗非仏説

2013-09-08 22:05:53 | 仏教

 1964年の東京オリンピックは徳島で白黒テレビの放映をかじりついて見た。2020年の東京オリンピックは生で見られるかもしれない。今回の招致レースでは、福島の汚染水が問題になったが、汚染水は安倍首相じゃないけど適切な対策でなんとかなる。それより切実で対策が見えない東海東南海地震のことはまったく話題にならなかった。2020年までの準備期間中に東京を巨大地震が襲ったときにどうなるのか、どうするのかという質問はなかった。仮定の話には答えないというわけにはいかないはずだったが、結局、海外のメディアは現前のリスクだけを見て、本当のリスクは見ていないのではないか。

 東京招致のプレゼンは良かった。子供、身障者、被災地、世界中の人々を勇気づけ励ますことがスポーツ本来の姿であり、それがオリンピックの理念であることを示し、東京がそれを確実に実現できるということをそれぞれのプリゼンターが伝えていて素晴らしかった。金はかかるが、昭和の東京オリンピック時の老朽化したインフラを更新するチャンスでもある。滝川クリステルが日本には”おもてなし”の心があると言っていたが、それは大乗仏教の他者への奉仕、援助、救済の伝統が日本に根付いているということなのかもしれない。と、今日の大乗仏教論に強引にもってきた。

日本に深く根付いた大乗仏教だが、江戸時代に富永仲基という人が、「大乗非仏説」なるものを唱えた。大乗仏教である般若心経の空の理論法華経に書かれた教説はブッダ(釈迦=ゴータマ・シッダールタ)の説く阿含経に記された原始仏教と異なるということは、現在では疑いようのない説であるという(「バウッダ佛教」中村元・三枝充悳)。大乗仏教の法華経では本来のブッダを仮の姿の迹仏と呼び神格化したように、仏教はブッダの死後、大きく変容する。思想は、歴史の展開する一過程にあり、それ以前のものの上に加え、しかも正統を装って形成される。これを富永仲基は”加上”と呼ぶ。加上では非主流であった考えは昔に追いやられるため、”古いものほど新しい”(陳舜臣)というようなことが起こる。

しかし、大乗仏教は仏教ではない、非仏なのかというと一概にはそう言い切れないところも少しはあるようだ。それは大乗仏教の教説の中に、ブッダの原始仏教で萌芽している思想の発展形が認められるからである。空の思想につながる思想がブッダの言葉の中に見出されるのである。大乗仏教は北伝し、中国、朝鮮を経て日本へ入ってきて聖徳太子などによって国教になる。

法華経には数知れない仏や菩薩が出てくる。ブッダはその中の一人の釈迦仏にすぎない。本仏は他にいて我々は久遠の大生命の中に抱かれ生かされている。さらに、日本の各宗派を見ると、釈迦仏よりも宗派の宗祖のほうが大切に扱われている。それぞれの宗派では、親鸞、日蓮、道元などの宗祖がお釈迦様より厚く祀られている。寺で詠まれるお経は般若心経や法華経の一節であり、浄土真宗は宗祖親鸞の教行信証である。ブッダの言葉はどこにも出てこない。ブッダが、呪術、呪文、迷信、密法を批判し禁止したように、初期仏教は、透明で、理性的で、倫理的である。ところが後世、大乗仏教の主流を占めた密教はヒンズー教の影響を受け、護摩をたくなど神秘性を帯びた作法を行じ真言(マントラ)を唱え、一種のエクスタシーに浸り功徳を占有するように秘儀的色彩が濃い。

三枝は、大乗仏教は「仏教の名のもとに一大文化を形成している。殊に我が国においては文献学的に明白な誤りでありながら、大乗経典を釈尊に帰してみたり、あるいは仏教以外のものをかなり自由に放埓に、仏教内部に取り込んで、----文学、芸術、芸能に、生活の規範に、祈祷や占いに、日本語の言語そのものに、とりわけ葬祭に、そのいわば美名のもとに濫用される。」と辛辣に批判する。しかし、三枝の批判は宗教をご都合主義で勝手に改ざんする点にあって、滝川クリステルが言った”おもてなし”の心など日本人の精神性に深く浸透し民族の美徳にまで昇華されている大乗文化は、けっして批判されるようなものではないと思うのである。

日本と同じように大乗仏教が伝わった中国では、大乗仏教は単なる外来宗教の一つで、道教などの中国固有の宗教にわずかな影響を与えたに過ぎず、日本ほどは受容されなかった。

宗教とは「神的な力を信じること」、哲学が「人生の叡智を求めること」 とすれば、ブッダは人々を人生の苦から開放する知恵を教えたという点では哲学であり、大乗仏教は諸仏の力や経典の力に頼るという意味で宗教と言える。ここにおいても、大乗非仏説は成立するのである。 

*富永仲基(1715-1746)は、町人思想家で懐徳堂の流れを引いた合理主義・無神論者であった。懐徳堂は大阪商人が開いた学問所で門人に山片蟠桃や大塩平八郎がいる。 


クローン

2013-09-01 11:07:21 | 映画

 トム・クルーズ主演の映画「オブリビオン (原題:Oblivion)」2013を機中で観た。監督:ジョセフ・コシンスキー、出演:トム・クルーズ、モーガン・フリーマン、アンドレア・ライズボロー、オルガ・クリレンコ、このところのトム・クルーズははずれがない。「ミッション・インポッシブル4 Ghost Protocol」2011も「ジャック・リーチャー」2012も面白かった(★3)。IMDbではいずれも7以上の評価をとっている。「Oblivion」は異星人と地球人が戦う話で、「Independence Day」1996と「Total Recall」1990にクローン人間を合わせたような話だった。クローン人間は、古くはヒトラーの遺伝子を伝える少年たちの話でグレゴリー・ペック主演「ブラジルから来た少年」1978、一人の妻と何人ものクローン夫によるどたばた喜劇のマイケル・キートン主演「Multiplicity」1996、シュワルツェネッガーのクローンが出てくる「6デイズ」2000、ユアン・マグレガーとスカーレット・ヨハンセンの「アイランド」2005、カズオ・イシグロ原作「Never Let Me Go」2010などが扱っていた。「スター・ウォーズ」にもクローンが出てくる。 「アイランド」と「Never Let Me Go」は臓器移植のために作られたクローンの人間としての尊厳を主題にしていて話は重かった。人以外では「ジュラシック・パーク」1993の琥珀の中の蚊の血から創った恐竜もクローンである。

 ここまではSF小説や映画の中の話で、クローンは1996年に最初の哺乳類クローンと言われるひつじのドリーが生み出されて現実になってきた。以降、DNAとか遺伝子工学とかいう言葉が世間で頻出するようになる。ノーベル賞の山中教授のIPS細胞はクローン技術を発展させると言われている。最近ではシベリアの凍結マンモスから血液を採取しクローンマンモスを創り出そうという研究が話題になっている。遺伝子組み換え作物、いわゆるクローン作物は日常になっている。

クローン技術にはネガティブな部分も多く、欧米ではクローン人間は法律で禁止されているし、遺伝子操作の人体への適用は倫理面で問題視され議論になっている。クローンは均質な個体を大量に生産する技術であり、生態系を維持する上で重要とされる生物多様性に逆行する。クローンバナナがある種のウィルスに感染し全滅した例があるように自然界においてクローンは脆弱なのかもしれない。羊水検査で染色体異常を事前検出し胎児を選別する親の心情は理解できるが、これも異質なものの排除につながる広義のクローン化かもしれない。クローンにはこのように遺伝子レベルでの脆弱性があるが、没個性の人間を画一的に生み出すクローン教育も耐性の低い人間を生み出す。人間が均質化し、一定方向の思考や全体主義に走ることは危険である。人間が生物学的にも社会性、思考面、精神面でも多様性を失いつつあるとしたら、その先にあるのは絶滅しかないのではないかという疑問がわいてくるのである。ここにも自然との共存を目指す思想と遺伝子技術で自然の支配を目指す思想の対立がある。

クローンにはいろいろと問題があるのだが、「Oblivion」のクローンは、最後観る者を幸せにしてくれた。★★★☆☆

Youtubeで見つけたテレビ版「Dune」2000と続編「Children of Dune」2003を暇に任せて9時間連続で観た。Frank Herbert原作のハヤカワ文庫「デューン 砂の惑星」を読んだのは確か20代のことだったと思う。映画版「Dune」1984(ディノ・ド・ロレンティス制作、デビッド・リンチ監督)はやはり20年以上前、DVDが普及する以前にシンガポールで買ったCDで観ている。この映画はカルトっぽくて、特に悪役のハルコーネン家の人間は変質者ばかりだったが、不思議な世界観を創り出していた。原作「Dune」も暗いSF小説だった。テレビ版監督:ジョン・ハリソン、グレッグ・ヤイタヌス、出演:アレック・ニューマン、ウィリアム・ハート、ジェームズ・マカボイ、

砂の惑星「Dune」に棲むSand Worm(芋虫のような巨大生物)が生み出すスパイスだけがNavigatorによる惑星間飛行を可能にする。Navigatorとそれを操るギルドという組織と皇帝はスパイスと惑星間飛行を独占し全宇宙を支配する。それをJediのような超能力集団ベネ・ゲセリットが支える。ベネ・ゲセリットは女性中心で「Star Wars」のジェダイの騎士がライトサーベルで戦うのと異なりVoiceという超能力で人の心や空間を操るだけである。帝国内には有力な貴族が多く、皇帝は特に力のあるアトレイデ家の弱体化を画策する。アトレイデ家をDuneに送り込みスパイスの採掘権を持つ宿敵ハルコーネン家と対立させる。アトレイデ家の公爵はハルコーネン家に取り込まれた側近の裏切りにより暗殺されるが、公爵の息子ポールと母親のジェシカはDuneの砂漠の民Fremenに救われる。皇帝のもくろみは崩れ、逆にポールはFremenの革命軍を組織しスパイスを掌握し、ベネ・ゲセリットである母親や超能力を持つ妹とともに帝国に戦いを挑む。劣勢となった皇帝は娘を政略結婚させ、ポールに皇帝の地位を譲る。そのときポールはFremenの娘と結婚し双子をもうけていた。皇帝になったポールとアトレイデ家一族にさらなる悲劇が起こる。「Children of Dune」にクローンが出てくる。元皇帝一派は革命戦で死んだアトレイデ家の側近をクローン人間にし、ポールを暗殺せよという暗示をかけて送り込む。クローンは暗殺を実行しようとする瞬間に本来の心を取り戻し、ポールの妹アリアの夫となる。ポールが去ったあと実権を握ったアリアを夫は支えようとするがアリアはスパイスのため精神が破たんしていき、ポールの子供と対立することになる。

「Star Wars」1993には、宇宙を支配する帝国と革命軍、砂の惑星タトゥーウィン、超能力集団ジェダイ、Voiceと同じような超能力Force、重要な役割を持つ双子、銃があるのに剣(ナイフ)ファイトなど類似点が多く、「Star Wars」は「Dune」のクローンのような物語である。宮崎駿の「風の谷のナウシカ」のオームもSand Wormに着想(パクリ?)したのではといわれている。★★★★☆

「Children of Dune」にも出ていたジェームズ・マカボイは、「X-men、First Class」でプロフェッサーXの若き日を演じ、「Welcome to the Punch」2013と「Trance」2013に主演する成長株である。「Welcome to the Punch」は、刑事の自分がかつて取り逃がした悪党と組んで警察内の悪に挑む話。★★☆☆☆。「Trance」は脳を損傷して記憶をなくした主人公がセラピストによる催眠療法を受ける。彼は夢と現実の区別がつかなくなってしまうが、観客も主人公の夢を見せられるので、どこからが夢なのか現実なのかがわからなくなってくる。観客である自分が催眠にかかっているような映画だった。★★★★☆

「The Big Wedding」2013、監督:ジャスティン・ザックハム、出演:ロバート・デ・ニーロ、ダイアン・キートン、スーザン・サランドン、アマンダ・セイフライド、ロビン・ウィリアムス、豪華キャストに惹かれて観たが時間の無駄だった。名優を並べただけの超B級映画。最後まで観てしまったことが余計に腹立たしい。映画館で観ていたら時間と金をかえせと毒づいていたと思う。☆☆☆☆☆

「Gambit」2012、監督:マイケル・ホフマン、出演:コリン・ファース、キャメロン・ディアズ、アラン・リックマン、冴えない詐欺師コリン・ファースの片棒を担ぐことになったキャメロン・ディアズが騙す相手のアラン・リックマンに気に入られるので、コリン・ファースよりキャメロン・ディアズが活躍する話かと思っていたら、最後は冴えない詐欺師が笑うのである。という意味では詐欺師映画お決まりのどんでん返しがある。にも関わらず、名作「スティング」や「マーベリック」や「A Big Hand for a Little Lady」の爽快感はなかった。強いて見どころを言えば、キャメロン・ディアズが颯爽としていたことと変な英語をしゃべる変な日本人が出ていたのが笑えたことか。★★☆☆☆