備忘録として

タイトルのまま

ALWAYS 三丁目の夕日

2012-01-29 22:54:53 | 映画

今日は朝9:30から「ALWAYS 三丁目の夕日’64」3Dを近所のシネコンで観た。前2作と同様、泣き笑いの至福の2時間半だった。今作ではいい写真がなかったので、前作の「続三丁目の夕日」のポスターを公式サイトから拾ってきた。今回の「三丁目の夕日」は、1964年(昭和39年)東京オリンピック年の話である。その年、私は小学四年生で、時代の息吹は映画と同じだった。四国に新幹線はなかったけれど、東京オリンピック、シェー、ひょっこりひょうたん島、コーラは田舎にもやって来た。でも実物のエレキギターを見たのは東京オリンピックから2年後だった。カラーテレビはそのさらに2~3年後に我が家に来た記憶がある。劇中、冒険少年ブックという少年雑誌が出てくるが、自分は小学館の月刊誌「小学四年生」を読んでいた。覚えているのは鉄人28号のような大きなロボットが出てくる横山光輝の「鉄のサムソン」という漫画である。「小学四年生」には茶川の書いていたようなSFの読み物もあり漫画同様好きだった。当時の少年雑誌は、「少年マガジン」や「少年サンデー」などの週刊誌、「冒険王」や「少年画報」などの月刊誌があり、友達から借りて読んだそれらの雑誌は、小学生にとってテレビ以外では唯一の情報源だった。オリンピック年で流行ったのは、何と言っても忍者物である。漫画の「伊賀の影丸」、テレビアニメの「少年忍者 風のフジ丸」、テレビでは「隠密剣士」や「忍者部隊月光」など忍者ものは大流行だった。だから学校でも放課後も休日も忍者ごっこに明け暮れた。「三丁目の夕日」で忍者ブームが出てこなかったのは、淳之介や一平が高校生(中学生?)になっていた所為かもしれない。

「ALWAYS 三丁目の夕日’64」2012、監督:山崎貴、出演:吉岡秀隆(茶川竜之介)、堤真一(鈴木オート社長)、小雪(ヒロミ)、堀北真希(六ちゃん)、薬師丸ひろ子(鈴木オートのおかみさん)、須賀健太(淳之介)、小清水一輝(一平)、吉岡秀隆は「北の国から」のジュンや寅さんの甥の満男のイメージのままなのだが、もう41歳になったらしい。残念だったのは、映画の最後の夕陽だ。六ちゃんが新婚旅行の新幹線から見る夕陽も、夕日町の人たちがそれぞれ見上げる夕陽も、もったいぶって見せず、最後に主人公の吉岡と小雪が赤ん坊を抱いて見上げるところから視点が空にせり上がり、東京タワーの向こうに夕陽が姿を見せるのだけれど、その夕陽が、観客に気を持たせたにしては、特徴のないぼやっとした夕陽なのである。前作の日本橋から見る夕陽同様の素晴らしい夕陽を期待していたのに。私の心象風景にある50年前の夕陽は、赤くて大きくて少し縦にへしゃげた楕円の夕陽が周りの雲と街を赤く染めるノスタルジーいっぱいの夕陽なのである。そんな夕陽を再現して欲しかった。それでも、★★★★★


Real Steel

2012-01-10 22:45:15 | 映画

 1月の機内映画は、野球特集だった。新作の「マネーボール」と、旧作の「フィールド・オブ・ドリームス」と「2度目のキッス」を放映していた。旧作は両方とも観ているので、「マネーボール」を先ず観てから、別ジャンル新作の「Real Steel」を観た。まだ時間があったので面白かった記憶のある「2番目のキッス」を観た。

 「マネーボール」2011、監督: 出演:ブラッド・ピット、 球団に所属する選手の総年俸額がヤンキースの4分の1のアスレチックスGMのビルが、イェーツ大学経済学出の若者ピーターを雇い統計を駆使して安い選手を集め優勝を目指す実話である。昨年アスレチックスには松井秀喜が所属しイチローのマリナーズと同じアメリカンリーグ西地区である。ピーターが何やらややこしい数式を使い、”守りはよくないけど年俸に見合ったバッティングをする”なんて、松井を査定して獲得したのだろうか。アスレチックスの2011年は途中で監督が解任され、結局74勝88敗の成績と振るわず西地区4位、マリナーズよりはましという成績だった。松井は前監督には完全に干されていたが、監督が代わってから活躍した。統計とキャスティングだけでチームが強くなるわけではなく、映画にもあったようにその選手を使いこなす監督も重要なのである。まだ行き先の決まらない松井の2012年の去就が気になるところだ。★★★☆☆

 「Fever Pitch 邦題:2番目のキッス」2006 監督:ボビー・ファレリー、ピーター・ファレリー、出演:ドリュー・バリモア、ジミー・ファロン 熱烈なレッドソックスファンの主人公はその所為で恋人を失いそうになる。ドリュー・バリモアを始めて観たのはもちろん「ET」の子役で彼女と認識していたはずもなく、成人してからは「チャーリーズ・エンジェル」が最初だった。映画そのものが駄作だったうえ、ドリュー・バリモアという女優自身も特に美人というわけでもなく記憶のTrash Boxに放り込む程度の扱いだった。普段、恋愛映画(ロマンチック・コメディーというジャンル)は観ないのだが、選択肢のあまりない機中で彼女の映画に何度(「50 First Date」、「Going the Distance」)か出会ううちに、結構Cuteじゃないかと思うようになってきたのである。おそらく彼女の出演映画がそこそこ面白く、適役だったからだという気がする。マネー・ボールじゃないけれど映画も適材適所なのである。★★★☆☆

今まで観た野球映画をリストすると、

  1. 打撃王   はるか昔に観てルー・ゲーリックという鉄人と呼ばれる選手がいたことを知った。内容はほとんど覚えていない。
  2. さよならゲーム   ケビン・コスナーの引退寸前の選手の話。★★☆☆☆
  3. メジャーリーガー1,2,3   とんねるずの石橋と娘さん(前の奥さんとの子)に偶然旅先のロスのNike Shopで会った。★★☆☆☆
  4. プリティー・リーグ    ジーナ・デイビス、マドンナやトムハンクスが出てる。女子プロ野球の草創期の話。★★☆☆☆
  5. フィールド・オブ・ドリームズ   ケビン・コスナーのトウモロコシ畑に今は亡き往年の名選手が現れ野球を始める。★★★☆☆
  6. ミスター・ベースボール   高倉健が中日の監督役で助っ人外人とやりあう。監督の娘と助っ人が仲良くなる。★☆☆☆☆
  7. 瀬戸内少年野球団    阿久悠の原作も読んだあと映画を観た。夏目雅子が輝いていた。★★★☆☆

こう見てくると、面白い野球映画はないような気がする。日本の野球漫画の方が格段に面白いので、一応自分の中で面白かった順にリストしておく。

  1. 「キャプテン」と「プレーボール」 ちばあきお 学生時代に喫茶店でコーヒー一杯で何時間もねばって読んだ。
  2. 「ドカベン」 水島新司 ドカベンだけでなく、男・岩鬼やトノマ、里中君など個性が光る。
  3. 「あぶさん」 水島新司 週刊マンガを購入し一時期読み続けたが長すぎて途中で断念した。
  4. 「H2」 あだち充 子供たちがコミックスを買い揃えていたので読んだ。
  5. 「タッチ」 あだち充 テレビ漫画を見た。岩崎良美の主題歌でないほうの歌「青春」の歌詞はせつない。
  6. 「巨人の星」 川崎のぼる テレビ漫画の世代なので、主題歌は今も歌える。

 実は、野球映画よりも、もうひとつの映画「Real Steel」2011のほうが面白かった。監督:ショーン・レヴィ、出演:ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨー(息子)、エバンジェリン・リリー、母親を亡くした11歳の子供と、離婚してずっと離れて暮らしていた父親が、短期間だけリモコンで動くロボットによるボクシング試合のために転戦する間に、父子の情愛を取り戻していくというストーリーである。以前どこかで見聞したような親子のロードムービーにロボット対戦を絡ませただけの単純明快な映画である。劇中の父子だけでなく映画の観客(たぶん私だけでなく)も、いつのまにかアトム(ロボットの名)が自分の意志を持っているかのように見え、映画の終盤では父子とロボットボクシングに熱狂する観衆と映画の観客すべてが強敵と戦うアトムと一体になるのである。下のポスター(IMDbより)には、”Courage is stronger than steel."というキャッチコピーが付いているけど、”Real Steel”はStrong Courage(勇気)ではなく鉄のように硬い父子の絆を指しているのだと思った。★★★★☆

 


寺田寅彦 その2

2012-01-04 01:44:49 | 近代史

NHK「坂の上の雲」第3部は多々不満に思う部分はあったが、とにかく3年にわたる大作が完結した。最大の不満点は、演出家の”どうだ迫力満点だろう”という自信満々の戦闘場面で、銃撃、突撃、爆発、流血という似た場面の繰り返しに閉口した。人物の描写や脚本にも注文したいことがあった。1部、2部は純粋に物語が楽しめたのに、3部の出来は残念だった。はるか昔、原作を読んだときも同じような感覚を味わったような気がする。耽読していたものが子規が死に203高地が終わるころから急速に冷めていった記憶がある。

ところで、「坂の上の雲」第3部、日露戦争の最中に、子規の弟子たちと夏目漱石が子規庵に集い、子規や戦争について議論する場面が出てくる。寺田寅彦は、その弟子たちの中に混じっていたのではないかと思う。

青空文庫には寺田寅彦の作品287編が公開されていて、内容は専門の物理学や自然科学に関するものから、映画評、日々の雑感など多岐にわたり、まさに寺田のブログなのである。その中に子規について書かれた作品があり、寺田が頻繁に子規とその弟子たちと交流していたことが窺えるのである。以下、子規との交流を描いた作品。

「子規自筆の根岸地図」昭和9年8月 

寺田寅彦は子規の自筆を二つ持っていて、一つははがき、もう一つは子規の家から中村不折(洋画家、「吾輩は猫である」の挿絵を描いた)の家までの道順を教える根岸の地図である。”仰向けに寝ていて描いたのだと思うがなかなか威勢のいい地図で、また頭のいい地図である。その頃はもう寝たきりで動けなくなっていた子規が頭の中で根岸の町を歩いて画いてくれた図だと思うと特別に面白いような気がする。”と寺田は書いている。また、鶯谷の子規庵の近くに書道博物館というのがあるが、それは中村不折が収集した書の博物館だそうだ。

「子規の追憶」昭和3年9月

子規は自然科学に興味を持っていた。学芸の純粋な発展を阻害する政治的な圧力に対し憤懣を持っていた。ゾラの「ナナ」の筋や若い僧侶が古い壁画の裸体画を見て春の目覚めを感じると話す病子規を若々しく水々しい人のように感じた。と寺田は記す。

「高浜さんと私」昭和5年4月 

出版社から高浜虚子のことを書けと言われて書いた随筆である。上京して始めて子規庵を訪ねたときに虚子とすれ違ったことと虚子が描いた熟柿を本人が馬の肛門のようだと言ったことを笑った寅彦に向かって、”ほんとうにそう思ったから面白いのだ”と子規が虚子を弁護したことが書かれている。また、子規の葬式で会った憔悴した虚子を回想している。千駄木の夏目漱石宅で開かれた文章会では虚子が文章を少し松山訛りで読む話を載せている。

 

2012年初詣は、昨年同様、西新井大師へ行った。基本的に不可知論者(agnostic)なので実証されていないものや理屈に合わないことは信じないのだが、毎年のように初詣に行き、神仏祈願し、死後の世界、天国地獄、宗教、SFやUFO、最近では老荘思想と仙人思想などが大好きだというのだから、自己矛盾がはなはだしい。一種の人格破綻者かもしれない。とはいえ、矛盾する理想(信条)と現実(現業)の狭間に自分を置いて今年も生き抜きたいと思う。