備忘録として

タイトルのまま

三足のわらじ

2018-12-31 23:10:57 | 話の種

今年もあと1時間を切った。3月にシンガポールから帰国し、しばらくブログから離れていたが来年は再開するぞ。

4月より、三足のわらじをはいている。週3.5日大学生、週1.5日サラリーマン、週2回ジョガー

大学の授業は、週に英語2限、第2外国語1限、体育1限、必修4限、その他7つの授業(1限90分)で、同級生は18歳。7月末の期末試験が終わり夏休みには野外発掘実習もあった。10月より後期が始まり、今は冬休み明け提出の課題レポートに追われて、4編のうち2編がまだ終わってない。

2018年のまとめ

  • 1月東大島ハーフマラソン
  • 3月板橋Cityマラソン
  • 4月大学入学
  • 4月高校同窓会(東京)
  • 4月さきたま古墳、鋸山
  • 6月館山
  • 8月トルコ・ミュンヘン
  • 8月長男入籍
  • 9月発掘実習
  • 9月徳島
  • 9月シンガポール・KL
  • 11月学園祭
  • 11月成田ハーフマラソン
  • 11-12月妻バンクーバー
  • 12月徳島
  • 12月広島
  • 12月二女が出産(男)

2018春

2018-04-01 16:15:24 | 話の種

 昨日シンガポールから帰国し、今日は桜が満開の自宅近くの公園をジョギングした。気温約20℃のもと15kmを平均速度6分/kmで快適に走った。一昨日、気温30℃のシンガポールでは8㎞を6分45秒/kmでやっとの思いで走ったのとは大違いだ。風が吹くと桜吹雪になり、花びらが口に入った。桜の下に咲く紫の花は、おそらくムラサキハナナだと思う。家の前では菜の花が満開だ。明日からいよいよ新生活が始まる。

 3月中旬に一時帰国したとき、板橋Cityマラソンを走った。この2回目のフルマラソンは完走したものの1回目よりも記録は悪くほろ苦いものだった。1回目よりも事前の走り込みを増やし、走ったあとの疲労回復は早かったから、30kmを過ぎてから苦しいときの気持ちの問題だったと思う。それでも5時間を切るために40㎞からは必死に走った。板橋Cityは出場者1万人のマンモス大会で馴染みの荒川河川敷を押し合いへし合い走る。夏場に向けて走り込みと今回弱点と判明した上半身の筋トレを続け今秋からのシーズンでは雪辱したい。


Big History

2018-03-04 15:52:36 | 話の種

 C大学歴史学科の社会人入試問題に、”大きな歴史と小さな歴史について私見を述べよ”という設問があった。ここでいう大きな歴史とは、歴史を巨視的にみて解釈するもので歴史観や歴史認識や歴史の発展過程の分類などに結び付けた歴史の見方である。幕末を例とするなら、封建制から近代化の政治的変革の過程を日本史全体の文脈の中で読み明かそうとするもので、一方、小さな歴史はもっと微視的で幕末から明治維新の庶民の生活史などに焦点を当てる。そのような歴史の見方について考えたことがなかったこともあり、うまく回答はできなかった。他の設問は、”Archives”と”Historiography”を説明する英語の文章を日本語訳するものだった。Archivesはそこそこ和訳できたが、Historiographyは言葉そのものを知らなかったため、直訳に頼った上、critical examinationを”批評的な考察”と訳さず、技術の世界で一般的なcritical=”臨界”から、”厳格な審査”としてしまい、結局、翻訳全体の意味が混乱してしまった。後の学習によると、Historiograhyとは史学史のことで、史書の中の歴史観や学説の変遷を調べる学問のことである。だから、史書の記述に客観性があるか批評的に考察しなければならないわけだ。

 さて、David Christianの提唱する”Big History”は、入試問題に出た”大きな歴史”とは意味がまったく異なる。137億年前のビッグバンから始まり恒星に続いて太陽系と地球ができ生命が生まれ人類に進化し文明が形成される現在までの歴史を通観する、我々の棲むUniverseの特大の歴史のことを指している。そして宇宙と人類の歴史を通して人類の未来について考えようというものである。David Christianによる”Big History”講演はこちらで観ることができる。

<講演要旨> 

 宇宙はどんどん複雑(Complexity)になっていく。しかし、複雑になるちょうどいい条件、ゴルディロックス条件が必要である。宇宙はその条件下でその都度、閾(しきい)値(Threshold)を超えながら段階的に複雑性を増していく。

 137億年前、何もないところでビッグバンが起こり、最初の1秒で重力や電磁気力のエネルギーがものすごいスピードで解放されると同時に凝固し物質を形成し始める。ビッグバンの38万年後に水素とヘリウムが生まれる。わずかな原子の密度の違いに重力が作用し原子が集合しはじめ無数の雲ができる。密度が増せば重力も増えるのでますます雲は凝集し温度も上がり、閾値を超え恒星が生まれ宇宙はより複雑になった。星の終期には高温で生じるエネルギーによって今知られている元素のすべてが形成された。若い星の周りには岩石からなる惑星が造られる。45億年前に地球が生まれ、そこに原子の集合体であるより複雑な生物が誕生する。適度なエネルギーがあり、多様な原子が存在し、ちょうどよいゴルディロックス条件下で、それらが複雑に結合する、生物は単なる化学反応にとどまらずDNAによってコピー(情報)を子孫に伝達することで地球全体に広がる。DNAは完ぺきではなく何億ケースに一度エラーを生み、それが多様性と複雑性を作り出す。生物は単細胞から多細胞に進化し、6億から8億年前に多様な植物、魚類、両生類、爬虫類が生まれた。6500年前に小惑星が衝突し恐竜が絶滅し、生き残った哺乳類が進化を続け人類が誕生する。DNAによる情報伝達と不規則な偶然によるエラーには膨大な時間がかかったが、脳を与えられた人類は情報を蓄積し学習することができるようになり進化の時間が短縮された。言葉によって個人の情報は集団で共有され、個人よりも長く生き世代を超えて蓄積される。人類だけに与えられたこの能力を集団的学習(Collective Learning)と呼ぶ。アフリカを発した人類は集団的学習能力を発揮し地球各地の環境に順応し広がっていった。氷河期が終わり農業が始まると人口が飛躍的に増え、交通や通信の発明と発展によって人類は相互につながり、今では70億の人類がひとつにつながっている。ひとつになった脳はものすごいスピードで学習を続けている。

 集団的学習により人類は発展を続けているが、人類がそれを使いこなせるかという危険を内包する。核兵器の発明は人類滅亡の危険を生じさせ、石油の使い過ぎは地球環境を変え、ゴルディロックス条件を弱体化させた。Big Historyは、我々に複雑性と脆弱性を認識させ危険の本質を示すとともに、集団的学習の力も示してくれる。将来の世代に横たわる課題や機会に対処する不可欠な知的ツールになる。(了)

 Big Historyはこのように、天文学、生物・生命学、歴史学など多くの学問を包摂する。

 ビル・ゲイツは、”Big History Project”として高校などでBig Historyの授業を行うことを支援している。授業では以下の1~10の講座が示すように、宇宙の歴史を学び現在を学び人類の将来について考える。

 (注):ゴルディロックスの原理(Goldilocks principle):”ちょうどいい程度”が選択されるという原理で、イギリスの童話による。ゴルディロックスという女の子が森で見つけた3匹の熊の家に入り、3つあるお粥のうち熱すぎず冷たすぎないちょうどいいお粥を食べ、3つある椅子のうち大きすぎず小さすぎないちょうどいい椅子に座り、3つあるベッドのうちもっとも寝心地のいいベッドを選ぶ。このことからゴルディロックス経済=適温経済(過熱しすぎず不況でもない景気)、ゴルディロックス惑星=太陽からちょうどいい距離にある生命誕生が可能な惑星などという言葉が造られた。


立春

2018-01-28 16:52:15 | 話の種

 1月20日(土)、気温20℃という陽気に誘われ自宅近くの公園を散歩した。咲き乱れる水仙に春を思った。暦の上の立春は2月4日だという。翌日21日(日)も好天で、3月に出場を予定しているマラソンの練習に荒川河川敷でハーフを走った。陽気の所為で前半飛ばしすぎ中盤に失速したが、終わってみれば予定の平均速度6分/kmで走り切っていた。

 ところが、翌22日(月)に寒波が日本列島を襲い、日中の気温は0℃近くまで下がり午後から大雪になった。交通機関の乱れが心配で14時には退社した。翌朝23日、自宅のまわりは一面雪景色になった。積雪量は10㎝を超えた。

 その日の夕方、成田空港からシンガポールに向かった。空港は雪の所為で飛行機の発着が乱れ、搭乗予定便の離陸も2時間ほど遅れた。前日の同時刻便に乗るはずだった知り合いが乗り込んできた。空港で一夜を過ごしたという。

 シンガポールは雨季とはいえ日中の気温が30℃を超す相変わらずの暑さで、夜締め切ると室温は高く、エアコンで風邪をひかないように体調管理に気をつけている。25日(木)と27日(土)、雷雨が心配で空調のきいたジムでトレッドミルを走った。ジムの外、プールでは住人が水泳を楽しんでいる。

 今年のシンガポールの中国正月は2月16日である。立春と旧暦正月は一致しないというが、当地では中国正月を春節ともいう。街はきらびやかに飾りつけられ、新春を祝う準備はできている。


Kazuo Ishiguro: Nobel Lecture

2017-12-09 21:02:17 | 話の種

ノーベル文学賞の授賞式でのカズオ・イシグロの講演録を読んだ。

 以前、疑問に思った、5歳でイギリスに両親と行った少年がまったく日本語が話せなくなることがあるのだろうか、イギリスの最も伝統的な執事の小説を書く力をどのように培ったのか、日本人としてのアイデンティティーをまだ持っているのだろうか、が知りたかった。

 イギリスに渡り、現地の教育を受けながら家では日本へ帰ることを前提とした生活を送ったこと、日本への思いとフェードアウトする記憶と最初の小説、小説を書くに際して受けたインスピレーションなど、講演は時系列で進む。中でも以下の話に引き付けられた。

Tom Waits『Ruby's Arm』

33歳のとき、ちょうど3番目の小説『日の名残り』を書き終えたころ、Tom Waitsの『Ruby's Arms』を聴いていた。早朝、男が女の部屋を出ていく状況を淡々と歌うTom Waitsのしゃがれた歌声から、男の底知れない悲しみが伝わってきた。言葉での説明はいらない。歌声は計り知れない複雑な感情を表現できる(A human voice in song is capable of expressing an unfathomably complex blend of feelings.)活字に頼らず小説にそのような複雑な感情を表現したいと思っている。

アウシュビッツを訪れたときのこと

1999年、ガス室の廃墟の前で、施設管理者は、廃墟が自然に朽ちていくに任せるか、ドームで保護し後世に残すべきか、大きな葛藤があると説明した。(What should we choose to remember? When is it better to forget and move on?) 第2次世界大戦は父親たちの世代の出来事だが、作品を世に出す戦争を知らない時代の作家としてどうすべきだろうかと自問する。その経験は、『日の名残り』の中で主人がナチスの協力者でありながら執事として何もしなかったことを恥じる箇所に表現されている。大きな歴史の中に生きる個人が、人生を振り返り、暗く恥ずべき記憶と妥協したかを苦悶させる。忘れたい(forgetting)と記憶したい(remembering)のはざまで苦悶する個人の問題を、今度は、社会や国家の問題として書きたいと思っている。

東日本大震災で身内を失くした人の中に、災害遺構を残したいと考える人と壊して早く忘れたい人がいることを思い出す。

Howard Hawks『Twenties Century』

この映画を見て、自分の小説で描く人間の関係性について考える。小説の中の登場人物たちを取り出し、彼らの関係がステレオタイプになっていないか、他の小説の登場人物たちと同じでないか、ダイナミックで感情が共鳴し発展性があるか、説得力のある驚きがあるか、三次元的なキャラクターになっているかを調べ修正を加えたが、自分の作品はそれに失敗している。しかし、映画を見続けるうちに、いい物語は、革新的だろうが伝統的であろうが、結局、重要なのは読者の心を動かし、楽しませ、怒らせ、驚かせるような人間関係を付与できればいいのだということに思い至った。(had to contain relationships that are important to us; that move us, amuse us, anger us, surprise us. )

作家としてのターニングポイントは、『Never Let Me Go』で描いたように、まず中心的な人間関係からスタートし、他の関係を扇のように広げていくというものだった。

分断の時代における文学の役割

 物語とは、結局のところ一人の人間が別の人間に語りかける一対一のものだ。最近の世界は自分を憂鬱にさせる。テロや富と機会の極端な不平等は、国家間に、あるいは国家内にも存在する。極右勢力やナショナリズム、人種差別が幅をきかせる。一方、遺伝子科学、AI、ロボットなど科学技術の発展は有益であると同時に、激しい実力主義と失業の増加をもたらしている。このような変わりゆく時代に対し、疲れた作家である自分は作品を通して全力で議論し戦いを挑むだろう。文学は重要で不確実な世界の将来に重要な役割を果たすだろう。よい作品とよい読者は分断の壁を壊してくれる。Good writing and good reading will break down barriers.

 さて、以前抱いた疑問への答えとして、日本人としてのアイデンティーは、自分のルーツと初期の作品と記憶の話から明瞭だった。日本語能力については、小さいころ日本の祖父から送られた漫画や雑誌を家で読みふけったこと、両親はかなりの年月いつか日本に帰ると考えていたことから、相当の年齢まで日本語を保持したはずであり、ある程度の日本語はできると想像できる。伝統的な執事についての知識については、家の外でイギリス人として育ったとしても、それでイギリスの伝統に精通するとは考えられないので、『日の名残り』を執筆するに際し相当勉強したのだと思う。


マラソン

2017-12-03 10:00:05 | 話の種

 今日、日曜朝、いつものようにECPにジョギングに行くと、シンガポールマラソンSCSM2017のランナーで溢れかえっていた。ちょうど25km付近だろうか、軽快に通り過ぎていくランナー、疲れ切った表情で歩く人、上半身裸のランナー、中国人もインド人もマレー人も西洋人もいる。応援の人の中から女の子の日本語が聞こえてきたのでお父さんでも走っているのだろう。ランナーを見ているうちに、自分も次のレースをがんばろうという気になった。

 https://youtu.be/W6X1pFZdTbs

 先週、つくばマラソンで初フルを完走した。マラソン完走を目指し、昨年からジョギングを始め、ハーフのレースを4度走りトレーニングを積み、万を辞しての挑戦だった。それなのに、30km以降は何度も心が折れそうになり、給水所ではその都度立ち止まって給水給食ストレッチをしながら、何とか走りとおすというギリギリのレースだった。一応、1km7分ペースで5時間未満の目標をクリアはしたが、約1万人が参加した中、後ろには1000人しかいなかった。

 ゴール後は疲労困憊、足はパンパンでもう2度と走りたくないと思った。ところが、翌日、1月のハーフと3月にフルを申し込み、大会に向けて練習計画まで作っていた。すでにランニング中毒かもしれない。


夢の国

2017-07-31 23:24:48 | 話の種

 孫とシンガポール動物園と東京ディズニーランドに行った。どちらも幼い子供たちを連れて行って以来なので、おそらく20年ぶりになる。動物園は動物との距離がさらに近くなり大きな水遊び場もあり園内の様子は一変していた。ディズニーランドはアトラクションやキャラクターは増えていたが見覚えのある乗り物も多く大きな変化を感じなかった。シンガポールも日本もうだるような暑さの中、園内を一日中歩いた3歳の孫は疲れ知らずだった。2年前のとくしま動物園の孫はよちよち歩きで片言しかしゃべらなかった。そのとき徳島の両親は孫の手を引いて園内をしっかりと歩けたが、以来体力も記憶も急速に衰えてきた。写真左はシンガポール動物園の象のショー、右はディズニーランドの懐かしいキャラクターたちが名シーンを演じるショー。このあとピーターパンとウェンディーは宙を飛ぶ。

 その盛況とは裏腹に、今日7月31日のCNNニュースは、『朽ちてゆく「夢の国」』と題し10年以上前に閉鎖され放置されていた奈良ドリームランドの写真と記事を載せた。世界中の廃墟が自然に飲み込まれていく様子を撮影しているフランス人写真家ロマン・ペイロン氏の作品である。

 奈良ドリームランドには、昭和36年か37年頃に行ったことがある。徳島(小松島?)から南海フェリーで和歌山に上陸し、高野山、東大寺、天理を巡る団体旅行の最後に訪れたのだ。初めての一人旅で大型遊園地に興奮した記憶が残っている。ネット情報によるとドリームランド開業は昭和36年なので開業してすぐのことになる。写真下の蛇のようなジェットコースターはまだなかった。遊園地で何を見て何に乗ったかの記憶はあいまいで、確からしいのはジャングルクルーズと、コーヒーカップを回しすぎて気分が悪くなった記憶だ。写真下のコーヒーカップに乗ったかもしれない。廃墟になり誰もいない遊園地の写真を見ると、大勢の家族がはしゃいでいる場面が瞼に浮かぶノスタルジックな感覚と、人間界が自然に飲み込まれてしまう破滅の感覚を同時に味わえる。ペイロン氏が言うように、現地に身を置けばそれをもっと強く感じられるのだろう。「人間が地上から姿を消した後の世界の様子を垣間見ることができる。」とペイロン氏はいう。滅びゆく世界を植物や自然が再生する宮崎駿の『風の谷のナウシカ』の世界だ。


Golden Age of Stupidity

2017-07-29 19:15:52 | 話の種

 一昨日、米国某有名大学のW教授と会食をする機会があった。シンガポールの地元大学に客員教授として招かれたのである。上手に箸を使って中華料理に舌鼓をうちながら、アカデミックな話に始まり最後は案の定、トランプの話になった。彼曰く、現在のアメリカは「Golden Age of Stupidity」なのだそうである。直訳すると「馬鹿の黄金時代」となる。Post-Truthの時代よりもこちらの表現の方がきついが、要は真実や誠実が重視されない愚かな時代になったということである。

 W教授の話では、トランプが嘘をついた日のカレンダーというものがあって、それによるとトランプは大統領就任以来ほぼ毎日嘘をついていて、嘘をつかなかったのはゴルフをしている日だけだったというのだ。W教授のいうカレンダーをネットで探した。それはトランプがFalse Mediaと攻撃するThe New York Timesの以下の記事にあった。

T r u m p  s   L i e s

UPDATED July 21, 2017

Trump Told Public Lies or Falsehoods Every Day for His First 40 Days

The list above uses the conservative standard of demonstrably false statements. By that standard, Trump told a public lie on at least 20 of his first 40 days as president. But based on a broader standard — one that includes his many misleading statements (like exaggerating military spending in the Middle East) — Trump achieved something remarkable: He said something untrue, in public, every day for the first 40 days of his presidency. The streak didn’t end until March 1.

(中略)以下はトランプが嘘を言った大統領就任後40日カレンダー

Trump Told Public Lies or Falsehoods Every Day for His First 40 Days

The list above uses the conservative standard of demonstrably false statements. By that standard, Trump told a public lie on at least 20 of his first 40 days as president. But based on a broader standard — one that includes his many misleading statements (like exaggerating military spending in the Middle East) — Trump achieved something remarkable: He said something untrue, in public, every day for the first 40 days of his presidency. The streak didn’t end until March 1.

上は記事に掲載された2017カレンダーの1月、2月、3月を示し、色の違いは赤は嘘を言った日(Told a public lie)、薄ピンクは正しくないことを言った日(Told a public falsehood)、灰色はどちらも言わなかった日(Didn’t tell a public lie or false)である、LieもFalsehoodも嘘だけれど、記事では、Lieは故意の嘘(Lie deliberately)、Falsehoodは正しくないこと(untruth)と定義している。矢印は就任以来初めて嘘を言わなかった日である。この日はゴルフをしていた。

 加計学園と防衛省日報を審議した国会中継でも、”どちらかが嘘をついている”と糾弾する質問者がいたが、日本の大臣も官僚も嘘つきばかりに見えた。森友学園の財務局の答弁も同じだった。それに、”記憶にございません”も、あったかなかったか、イエスかノーをはっきり言わない点、真実を隠す点では嘘と同義だと思う。唖然としたのは、森友に関わったことはないと答弁したのに、後日自身が森友の担当弁護士だった記録が暴露され、「そのときの記憶が誤っていただけで、偽証をするような意図はなかった」と答えた大臣がいた。これが許されるならその場限りの嘘を公言できる。国の政治を動かす人たちの言葉の何と軽いことか。「Golden Age of Stupidity」はアメリカだけの話ではなく、日本にもあてはまるということだ。地元大学の教授が、トランプは任期を全うできるかという質問を出したところ、辞めるのは安倍の方が早いかもという意見が出た。

 W教授は続けて、トランプ支持者がクリントン支持者よりも多かった大都市で人口が一番多かったのはどこかという質問を出した。ヒューストンやダラスという共和党が強いと思われる南部の大都市の名前が挙がったが、正解はJacksonvilleでほとんどの大都市はクリントン支持者が多かったという。彼の言う記事はネットですぐに見つかった。

The Largest City to Vote for Donald Trump

February 20, 2017 At 2:02 PM  Data Dives  

  1. New York City- Clinton
  2. Los Angeles- Clinton
  3. Chicago- Clinton
  4. Houston- Clinton
  5. Philadelphia- Clinton
  6. Phoenix- Clinton
  7. San Antonio- Clinton
  8. San Diego- Clinton
  9. Dallas- Clinton
  10. San Jose- Clinton
  11. Austin- Clinton
  12. Indianapolis- Clinton
  13. Jacksonville- needed to parse
  14. San Fransisco- Clinton
  15. Columbus- Clinton
  16. Charlotte- Clinton
  17. Fort Worth- needed to parse
  18. Detroit- Clinton
  19. El Paso- Clinton
  20. Memphis- Clinton
  21. Seattle- Clinton
  22. Denver- Clinton
  23. Washington, D.C.- Clinton
  24. Boston- Clinton
  25. Nashville- Clinton
  26. Baltimore- Clinton
  27. Oklahoma City- needed to parse
  28. Louisville- Clinton
  29. Portland- Clinton
  30. Las Vegas- Clinton
  31. Milwaukee- Clinton
  32. Albuquerque- Clinton
  33. Tucson- Clinton
  34. Fresno- Clinton
  35. Sacramento- Clinton
  36. Long Beach- Clinton
  37. Kansas City- Clinton
  38. Mesa- Trump
  39. Virginia Beach- Trump

 上のリストでneeded to parseとは解析が必要ということで、明らかにトランプ支持者が多いとされたのは人口38位のMesaになる。すなわち、大都市の住民はトランプを支持していないのだ。選挙の分析でも、トランプ支持者は田舎の白人が多いと言われていた。メディアの記事は信用できないFalse Newsとするので、トランプにとって真実は重要ではない。

ブログでトランプの名前を出したのはこれで5回目になる。トランプの策略に嵌っているようで腹立たしい。 


Post Truth

2017-07-01 10:58:55 | 話の種

 トランプのメディア攻撃がとまらない。相変わらず自分のことは棚にあげてメディアはウソつきだと言っている。「温暖化には根拠がない」という、根拠のない理由でパリ協定から離脱した。一方、イギリスでは、総選挙のとき、メイ首相を揶揄する『Liar Liar GE2017』という”She's a liar, liar. You can't trust her. No, No, No"を連呼する軽いノリの曲が流行った。何がLiarかというと、EU残留派だったのが離脱派になったことや社会保障、警察、病院、学校の予算をカットし、若者が未来に不安を抱くようになっても、未来の人々は私たちの政策を評価するだろうと強弁するのだ。そのうち、ロンドンでテロが起こり警察官を減らしたことが非難され、続く公営高層ビル火災では、以前から防火や避難路の不備を訴えていた住民の声を取り上げなかった政府の対応に非難が集まった。

Liar Liar GE2017

"We have a mission to make Britain a country that works, not for the privileged and not for the few, but for every one of our citizens. And together we, the Conservative Party, can build a better Britain...'

”我々はイギリスを特権階級や少数者のためではなくすべての民衆のための国にする使命を持ち、皆と共に保守党はイギリスをより良くできる”。どこかトランプの”We make America great again”に似ている。

We all know politicians like telling lies Big ones, little ones, porky pies

政治家は皆嘘つきだとわかってる。大嘘、小嘘、Porky Pieはスラングで大嘘

She's a liar, liar. You can't trust her. No, No, No

 トランプが用いる嘘や都合のよい事実を用いて大衆を扇動する手法を代表例として、現代は、ポスト真実(Post-truth)の時代に入ったと言われる。Post-truthとは、オックスフォード辞典によると、 

post-truth 

ADJECTIVE

  • Relating to or denoting circumstances in which objective facts are less influential in shaping public opinion than appeals to emotion and personal belief.

    ‘in this era of post-truth politics, it's easy to cherry-pick data and come to whatever conclusion you desire’
     
    ‘some commentators have observed that we are living in a post-truth age’

(訳)ポスト真実

   形容詞

客観的事実よりも個人の感情や信仰に訴える方が公共の意見形成により影響する状態を指す。ポスト真実の政治の現代においては、自分に都合のいいデータだけを選別し自分の望む結論を誘導することは容易い。何人かのコメンテイターは我々はポスト真実の時代に住んでいるとみている。

 都合のいいデータだけを採用し結論を導く方法は科学論文や学術論文でも問題になる。データをねつ造したわけではないから不正ではないように思われるが、ばらつきのあるデータから不都合なデータを省き、ある相関関係を導き出し成果としたなら、それはもうねつ造である。だから、政治の世界でも、政治家が都合のいいデータのみを示し大衆を扇動するとしたら、それは事実のねつ造であり不正になる。誰かを忖度し、M学園で根拠の希薄?(ない?)地中のごみを理由に土地の販売価格を下げた財務局の対応もこれに相当する。昔から政治家の公約破りは常で、選挙に当選すれば選挙中に約束したことなど忘れると言われる。そういう意味ではトランプは選挙中の公約を果たそうとしている点では誠実であると言える。公約を果たすふりをしている点では、巧妙であり、別の見方をすれば狡猾である。ビジネスマンであるトランプは、自分は交渉に長けていると言っている。それは一面、狡猾であるということで、目的を達成するために愚鈍な大衆をだまして扇動できれば、それはSmartな政治家だということになる。ポスト真実の時代において、狡猾(Smart)は褒め言葉になる。本邦を振り返ると、自分のお友達の学校しか選べない規則をつくって便宜を図り、それが非難されると、長年新規参入を拒んできた学会や役所の岩盤規制に風穴を開けたと抗弁する手法は、お友達のトランプの得意な議論のすり替え手法そっくりだ。自衛隊を我が軍と呼び、教育勅語を肯定する。Y新聞はついに政府のお抱え新聞社になった。戦前の軍国主義体制そのものだ。政治家の放送規制発言、特定秘密保護法、メディアの自主規制の影響で日本の報道の自由度ランキングは年々下がり、現在72位と先進国としては最下位になっている。大新聞が政府お抱えになったことや共謀罪の成立で来年はさらに下がり、中国による締め付けが著しい73位の香港より下になるのも時間の問題かもしれない。政府批判がほぼ許されない自由度151位のシンガポールで国民が自国を自由で民主主義だと思っているのを滑稽だと思うときがあるが人を笑えない。


2017春

2017-04-09 20:01:20 | 話の種

3月中旬、旅先の黒海から吹き付ける北風で引いた風邪をこじらせた上、引越しで忙しく雨もあって、しばらく日課のランニングから遠ざかっていた。そうこうしているうちに季節はめぐり春が来た。写真は、引越し先自宅近くの公園で、一周1.1㎞の水源地周りが桜並木になっている。雨上がりの夕方、3週間ぶりに満開の桜の下を走った。コースには雨上がりを待って繰り出したランナーが大勢いた。

これで何度引越しをしただろうか。覚えている限りでは、徳島、仙台、広島、東京、シンガポール、そして千葉と計24回になる。それでも、93回転居したという北斎には遥かに及ばない。次の引っ越しは老人ホームか棺桶になるだろう。


上原和逝く

2017-02-18 11:03:50 | 話の種

 先週2月9日、上原和が92歳で亡くなった。葬儀は成城学園前のカトリック教会で行われた。研究対象が聖徳太子や鑑真ら仏教者であることや、著作から上原和がクリスチャンだとはまったく気づかなかった。もともと西洋美術史の専門家だということを忘れていた。これまで参列した葬式はすべてが仏教式で、教会で行われる葬儀に出席するのは初めてだ。葬儀はミサで始まり、告別式へと進んだ。もう少し詳しく式次第を説明すると、以下のとおりである。

  1. 開祭の儀 「いつくしみふかき」を歌う
  2. 司祭が祭壇と御遺体が納められた柩に聖水と香を捧げ、お祈りの言葉をかける
  3. 使徒パウロのコリントの教会への手紙の一説を読み上げる
  4. 「主はわれらの牧者」を歌う
  5. 司祭が福音(ヨハネ14・1-6)を朗読する
  6. 司祭による説教とヨゼフ・フィデリス(上原和の洗礼名)へのお祈りに合わせ出席者は「神よ、わたしたちの祈りを聞き入れてください」と唱和する

感謝の典礼と交わりの儀

  1. 奉納の歌「みもたまも」を歌う
  2. 司祭が奉納祈願、奉献文の読み上げと感謝の賛歌(いずれも神と主イエスを賛美することば)を行い、都度一同「アーメン」

告別式(閉祭の儀)

  1. キリスト復活の歌
  2. 司祭のことば「いつくしみ深い神である父よ、あなたが遣わされたひとり子キリストを信じ、永遠のいのちの希望のうちに人生の旅路を終えたヨゼフ・フィデリス上原和をあなたの手にゆだねます。わたしたちから離れてゆくこの兄弟の重荷をすべて取り去り、天に備えられた住みかに導き、聖人のつどいに加えてください。別離の悲しみのうちにあるわたしたちも、主・キリストが約束された復活の希望に支えられ、あなたのもとに召された兄弟とともに、永遠の喜びを分かち合うことができますように。わたしたちの主イエス・キリストによって。」一同「アーメン」
  3. 遺族挨拶 娘さんが亡くなった日の様子と、家族にとっての上原和の人となりを述べられた。
  4. 出席者は順に花を一輪柩に納め最後のお別れをした
  5. 出棺

上原和 1924年12月30日出生、1963年3月24日洗礼、2017年2月9日帰天、享年92歳

上原和との個人的な関わり 1975年頃『斑鳩の白い道の上に』を読む、2004年(あるいは2005年)親族を通して『世界史上の聖徳太子』と『聖徳太子ー再建法隆寺の謎』を贈られる(サイン入り)、2008年9月頃『トロイヤ幻想』を読む、2008年11月上原和の愛読書『風立ちぬ』を読書、2009年1月『高松塚古墳の年代』1973年論文を自宅本棚で発見し再読、2009年『法隆寺を歩く』購入と法隆寺の芯柱を伐採して80年もあとに再建された疑問を質問、2010年9月奈良旅行と法隆寺探訪、2010年10月成城大学で鑑真の『大唐和上東征傳』講演を聴講し言葉を交わす、2011年9月唐招提寺訪問、2014年『大和古寺幻想』、2016年12月上原和が記したアクロティリ遺跡の航海図の大きさを確認、2017年2月14日告別式参列


メリル・ストリープのスピーチ

2017-01-22 21:59:36 | 話の種

ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任した。就任式のスピーチは選挙キャンペーンと同じで真新しいものはなく、彼はいつものように演説を”Together, we will make America great again!"で締めくくった。それよりも、1月9日のゴールデングローブ賞で行ったメリル・ストリープのスピーチが心に残った。ネット検索でスピーチの全文を報じたサイトがいくつも見つかった。Youtubeにもスピーチの様子がアップされていた。以下全文。

Please sit down. Thank you. I love you all. You’ll have to forgive me. I’ve lost my voice in screaming and lamentation this weekend. And I have lost my mind sometime earlier this year, so I have to read.

Thank you, Hollywood Foreign Press. Just to pick up on what Hugh Laurie said: You and all of us in this room really belong to the most vilified segments in American society right now. Think about it: Hollywood, foreigners and the press.

But who are we, and what is Hollywood anyway? It’s just a bunch of people from other places. I was born and raised and educated in the public schools of New Jersey. Viola was born in a sharecropper’s cabin in South Carolina, came up in Central Falls, Rhode Island; Sarah Paulson was born in Florida, raised by a single mom in Brooklyn. Sarah Jessica Parker was one of seven or eight kids in Ohio. Amy Adams was born in Vicenza, Italy. And Natalie Portman was born in Jerusalem. Where are their birth certificates? And the beautiful Ruth Negga was born in Addis Ababa, Ethiopia, raised in London — no, in Ireland I do believe, and she’s here nominated for playing a girl in small-town Virginia.

Ryan Gosling, like all of the nicest people, is Canadian, and Dev Patel was born in Kenya, raised in London, and is here playing an Indian raised in Tasmania. So Hollywood is crawling with outsiders and foreigners. And if we kick them all out you’ll have nothing to watch but football and mixed martial arts, which are not the arts.

They gave me three seconds to say this, so: An actor’s only job is to enter the lives of people who are different from us, and let you feel what that feels like. And there were many, many, many powerful performances this year that did exactly that. Breathtaking, compassionate work.

But there was one performance this year that stunned me. It sank its hooks in my heart. Not because it was good; there was nothing good about it. But it was effective and it did its job. It made its intended audience laugh, and show their teeth. It was that moment when the person asking to sit in the most respected seat in our country imitated a disabled reporter. Someone he outranked in privilege, power and the capacity to fight back. It kind of broke my heart when I saw it, and I still can’t get it out of my head, because it wasn’t in a movie. It was real life. And this instinct to humiliate, when it’s modeled by someone in the public platform, by someone powerful, it filters down into everybody’s life, because it kinda gives permission for other people to do the same thing. Disrespect invites disrespect, violence incites violence. And when the powerful use their position to bully others we all lose. O.K., go on with it.

O.K., this brings me to the press. We need the principled press to hold power to account, to call him on the carpet for every outrage. That’s why our founders enshrined the press and its freedoms in the Constitution. So I only ask the famously well-heeled Hollywood Foreign Press and all of us in our community to join me in supporting the Committee to Protect Journalists, because we’re gonna need them going forward, and they’ll need us to safeguard the truth.

One more thing: Once, when I was standing around on the set one day, whining about something — you know we were gonna work through supper or the long hours or whatever, Tommy Lee Jones said to me, “Isn’t it such a privilege, Meryl, just to be an actor?” Yeah, it is, and we have to remind each other of the privilege and the responsibility of the act of empathy. We should all be proud of the work Hollywood honors here tonight.

As my friend, the dear departed Princess Leia, said to me once, take your broken heart, make it into art.

名前こそ出さないが、トランプが以前、障害のあるニューヨークタイムズ記者を真似て揶揄したことを強く非難する内容で、メリル・スリープは、時折大きく息をして感情を抑えるように訴えかけていた。要旨は以下のとおり。自分なりに意訳しているので厳密ではない。

ハリウッドは様々な経歴や出自の人間から成り立っている、その人たちを追い出したら何も残らない。俳優は他人の人生を演じ、今年も人々に感動や共感を与える演技がたくさんあった。ところが、ただひとつの演技が私を打ちのめした。それは障害者を揶揄する演技であり、私の心は折れた。映画の中のことではなく現実の場で起きたのである。最高権力者が公共の場で弱者を嘲笑ったなら、人々はそれが許されると思うだろう。侮辱には侮辱、暴力には暴力で答えるようになる。権威ある者が立場を利用して他をいじめるとしたら、私たちの誰も勝てない。私たちはジャーナリストを守り、ジャーナリストは真実を守る。今は亡きレイア姫(キャリー・フィッシャー)がかつて私に言った言葉です。”傷ついた心(Heart)を、芸術(Art)に変えよう!”

このスピーチに対し、トランプは以下のTweetを返している。

Meryl Streep, one of the most over-rated actresses in Hollywood, doesn't know me but attacked last night at the Golden Globes. She is a.....Hillary flunky who lost big. For the 100th time, I never "mocked" a disabled reporter (would never do that) but simply showed him "groveling" when he totally changed a 16 year old story that he had written in order to make me look bad. Just more very dishonest media!

メリル・ストリープは、ハリウッドで最も過大評価されている女優だ。私を知らないのに夕べ私を攻撃した。彼女は(選挙で)敗れたヒラリーのflunky(腰ぎんちゃく)だ。私は障害者の真似などしていない。私を貶めるために彼が書いた16年前の話を完全にねじ曲げたので、単に”groveling”(卑屈にふるまった様子?)を見せただけだ。メディアは不誠実だ!

以前、メリルストリープのことを素晴らしい女優だと評していた人間が、悪口を言われ”最も過大評価されている女優だ”とケチをつけ言い訳をする。トランプの振る舞いや言動はあまりに子供じみていて下品で、これが世界一の大国の大統領かと思う。この男が核弾頭の発射ボタンを押す権限を持つことになるとは、何かの冗談ではないかと思ったりする。大統領就任式ではアメリカ各地で大規模なデモが発生し、今日も俳優ロバート・デ・ニーロが反トランプの先頭に立っていた。アメリカが健全なことは、ハリウッドと並んで目の敵にされているメディアが、トランプの言動をチェックし批判を続けていることである。どこかの国のメディアのように政府の顔色をうかがって自主規制をしたり、お抱えメディアとして政府の代弁者になってはいない。

今、アメリカだけでなくヨーロッパもアジアも中東も世界中が激動している。力を誇示する威勢のいい政治家ばかりが称賛され支持され、オバマのような理想主義者は退場し、世界は経済優先、利益偏重の分断と混沌の時代に入った。我々のような無力な民衆は、荒波の中で立ち尽くし、うろたえるしかないのだろうか。昨日シネコンで観た『この世界の片隅に』の戦時下を生きた人々が他人ごととは思えず胸に迫る。

トランプが過大評価されているというメリル・ストリープの映画のうち観たものを一応列挙しておく。

  • 『Kramer vs. Kramer クレイマークレイマー』1979 アカデミー助演女優賞
  • 『The River Wild 激流』1994
  • 『The Devil Wears Prada プラダを着た悪魔』2006
  • 『Mamma Mia! マンマミーア』2008
  • 『Julie & Julia ジュリー&ジュリア』2009
  • 『It's Complicated 恋するベーカリー』2009
  • 『Hope Springs』2012
  • 『Florence Foster Jenkins』2016 最新作

アカデミー最優秀主演女優賞をとった『ソフィーの選択』と『The Iron Lady 鉄の女』は観てない。メリル・ストリープの最新作と『この世界の片隅に』の映画評は次回とする。


慈しみ

2016-12-24 09:54:10 | 話の種

昨日、アメリカの次期大統領トランプが、「アメリカは世界が核に関する判断能力(sense)を持てる時が来るまでは核戦力を大幅に強化、拡大しなければならない。」(”the United States must greatly strengthen and expand its nuclear capability until such time as the world comes to its senses regarding nukes.")とTweetした。これは、プーチンが先に米国のミサイル防衛(MD)を念頭に、「戦略的な核戦力の能力を強化する必要がある」という発言に反応したとみられている。プーチンはトランプの発言にすぐに反応し、「トランプは核戦力を強化すると選挙公約しているのだから当然(Nothing unusual=たぶん元はロシア語だからAP通信の英訳)だ。」と述べた。続けて、「アメリカは(ロシア)より多くのミサイル、潜水艦、空母を持っているが、ロシア軍はどんな侵略者の軍隊よりも強力だ。」と強調した。12月23日CBS/APニュース

数日前に発表された日本の来年度防衛関係予算は5年連続で増加し5兆円を超え過去最高になった。中国の軍拡に呼応したのは明らかで、トランプの駐留米軍の負担増発言に配慮したものかもしれない。

中村元のお墓の脇にブッダのことばを収めた経典スッタニパータの一節”慈しみ”を刻んだ石碑があることを、NHK番組『こころの時代”ブッダ最後の旅に学ぶ”』を見て知った。写真は中村元東方研究所ホームページのものを若干加工した。

セイロンのジャヤワルダナ首相がサンフランシスコ講和条約のときに憎悪の連鎖を止め戦争を終結するために語ったブッダのことばも慈悲だった。アショカ王は征服と殺戮を繰り返したのち自身の行為を反省し、仏教に帰依し慈悲をもって国を治めようとした。龍樹が創始し、ボロブドールを残したシャイレンドーラ朝や、中国を経て日本へ伝わり聖徳太子が信仰した大乗仏教の教義も一切衆生を救いたいという慈悲である。

慈悲の英語訳を検索すると、Mercy、Benevolence、Charityなどの単語が並ぶ。Benevolenceは、孔子が最高の徳としたの英訳でもある。紀元前5,6世紀、時を同じくして、他者への思いやりである慈悲(仁)を重んじる思想家がインドと中国に出現していたことになる。それから数世紀後に起こったキリスト教も、人々の悲しみに寄り添う神の愛(アガペー)や”隣人を愛せよ”として慈悲を重視している。中村元が遺言した慈悲を人類皆が重視したなら、宗教、信条、思想、道徳の違いは人間が生きる上で問題とはならず、諍いや戦争は起きないはずである。ところが、諍いも戦争もなくならない。今世界はとても不安定な時代に入ってきた。

そもそも孔子そのものが理想と現実のハザマで苦しんでいるし、ブッダの弟子たちはブッダの死後すぐに師の教えを裏切っている。人々の幸せを願って成立したはずの宗教が理由で、聖戦と称したテロや戦争が起こっている。多くの犠牲を出した第二次世界大戦のあと、人々は不戦、非戦を誓ったはずなのに戦争はなくならない。慈悲そのものであるEUの難民受け入れの理想はテロの現実の前に修正を迫られている。何事も利害で考えるアメリカのトランプに慈悲ということばは似合わない。KGB出身で秘密警察の力で反対派を封じ込め自国の力を誇示するプーチンに慈悲は感じられない。権力闘争の只中にいて自国の”核心的”利益だけを主張する習近平に他者への思いやりを期待することはできそうもない。ナショナリズムにあふれた『美しい国』を書いた我が国の首相がアジアの国々の戦争被害者の加害者に抱く感情に思い至るとは考えにくい。世界のリーダーたちがこんな状況なので、せめて草の根レベルだけでも理想に少しだけ軸足をのせ、中村元の遺言をかみしめて新しい年を迎えたいと思う。


期日前投票

2016-06-26 22:12:23 | 話の種

帰国中に参院選の期日前投票をしてきた。投票所から出るとANNの出口調査を受けた。選挙権を得た20歳からシンガポール駐在中の一時期を除きほぼ欠かさず投票を続けてきたが出口調査を受けたのは初めてである。渡されたタブレットにチェックを入れるだけだったのでほんの数秒だった。誰に投票したかだけでなく何を基準に選んだかという質問があり、選択項目は、経済、社会福祉、憲法改正、外交、TPPなどだった。この選挙から選挙権年齢が18歳に引き下げられたが区役所の投票所に来ていたのはお年寄りばかりだった。

今回から郷里徳島は高知と併せた合区になった。違憲状態の1票の格差解消のためだというが、徳島県人が馴染みのない高知出身の候補者に投票するとは思えない。逆もないだろう。徳島と高知のそれぞれの有権者数と得票率が勝敗を左右するだろう。それと、都市選出の国会議員が増え地方は減るので、都市中心の政治になり地方はますます疲弊する。国会議員が国政の為に働き、選挙区のために働くものではないというのはきれいごとだと思う。

大方の予想を覆しイギリスがEUから離脱することになった。その所為で、株安、円高が一挙に進み日本経済に影響がでるのは必至である。昨年シンガポールの建築設計では長く使っていた英国規準を止め、ユーロコードというEU規準を導入した。正直なところ、EU規準は各国規準を網羅的に取り込んだため非常にわかりにくくなった。保守的なイギリス人が、EUに留まることで自国文化が変貌することに拒絶感を持つことがわかるような気がする。EU政府は統合を優先するため、各国の個別事情に配慮するより独善的権威的になってきたのかもしれない。UKのEU離脱に反対しスコットランドがUKから独立を求めることにも矛盾を感じる。政府と対立する沖縄の問題や、地方と都市の格差、地方自治も同様の問題を含む。統一という理想の前でどう多様性を確保すればいいのだろうか。

自宅近くの公園のあじさいが満開だ。


活断層

2016-06-19 16:11:06 | 話の種

熊本地震が発生して2か月が経つ。東日本大震災の海溝型あるいはプレート型地震ではなく、活断層が動いたことによる内陸型地震で、1995年の阪神淡路大震災の野島断層と同じように地表面に断層面が出現した。この断層沿いの家屋で大きな被害が出た。被害規模を判断する最大地表面加速度は4月14日の前震が0.74gで、16日の本震は0.68g(気象庁三成分合成観測記録)と前震よりも小さかったが、前震で損傷した家屋が本震の追い打ちを受けて倒壊した。屋根瓦の重い木造家屋で1階部分が押しつぶされる被害が多かった。地震加速度は0.89gの神戸も木造家屋の被害が多かった。熊本城の石垣の一部がくずれ落ち、天守閣の屋根瓦も落ちた。

動いた活断層は、以前より認識されていた布多川断層と日奈久断層で、東の延長線上には熊本に連動して動いた大分の別府万年山断層を経由して、日本最大の活断層である中央構造線に繋がる。

活断層の定義: (日本)約10万年前以降に活動した痕跡のある断層。USGSの用語を紐解くと、活断層(Active Fault)とは、A fault that is likely to have another earthquake sometime in the future. Faults are commonly considered to be active if they have moved one or more times in the last 10,000 years.とされ、活動時期を日本の10万年前に対し、1万年前としている。

左:東京新聞Webサイトより、右:国土地理院『都市圏活断層図 利用の手引き』(http://www.gsi.go.jp/common/000112914.pdf)より

地震の規模は動く活断層の長さに関係があると言われ、Log L=0.6M-2.9という断層の長さLとマグニチュードMの関係式が提唱されている。この式を使うと100㎞の活断層が動くとマグニチュードM=8.12の地震が起こるという計算になる。中央構造線の全長は1000㎞以上あり、それが動くとマグニチュードM=9.8というとてつもない数字になってしまう。研究者は中央構造線沿いで過去に発生した地震記録や痕跡から最大地震動がM=8以下であることを推定し、また地質や地形の活動痕跡から中央構造線全線が一度に動くことはないということにしている。式が正しいとして、M=8から逆算した活動長は80㎞となり、なんか短かすぎて本当だろうかという疑念がわく。

被害は対象とする構造物が揺れる加速度で評価し、この地表面加速度は地震のマグニチュードと震源からの距離とその間の地盤状況で決まる。2011年のニュージーランド地震は、M=6.3と小さかったが震源深度は5~6㎞の直下型で、地表面加速度は2gを超え被害は大きかった。神戸はM=6.8、震源深度は16㎞で地表面加速度は0.8gであった。中越地震はM=6.6、深度10㎞で柏崎原発で測定された地表面加速度は1g以上だった。一方、東日本大震災本震のマグニチュードはM=9の巨大地震で、仙台沖のプレート境界沿いで震源深度5~40㎞の巨大地震が連動して発生した。観測された最大加速度は2gを超えていた。

熊本の活断層は2mほど、野島断層は1.5mほどずれた。そのため、日本の原発を活断層上に建てることが禁止されている。ところが日本の活断層がすべて判明しているわけではなく、敦賀原発では同じ断層の露頭をみた専門家の間でもそれが活断層かそうでないかで意見が割れている。2008年の宮城内陸地震ではそれまで活断層とされていなかった断層が5mもずれ、観測された最大地表面加速度は4gだった。そんな場所では、どんな耐震構造を施した構造物でももたない。要するに、現在の科学技術では克服できない5mずれて加速度が4gを超すような活断層が日本のどこかに潜在している可能性があるということである。それでも原発を作り続け稼働し続けるのかということである。

アメリカのカルフォルニアにあるサンアンドレアス断層は延長1300㎞の巨大断層で、両側15m内に住めないことになっている。上の国土地理院の地図でもわかるように狭い国土の日本で活断層のないところを探すのは大変だ。その上に、液状化する緩い砂のあるところ、津波の来る沿岸部、土石流や地すべりの発生する斜面、火山の近く、洪水を起こす河川流域なども避けて住居を決めなくてはいけない。自然災害の少ない場所を選んだとしても、潜在的活断層の存在や設計や施工の人為的なミスや不良のリスクを完全に排除することはできないからやっかいだ。