備忘録として

タイトルのまま

暗号

2013-12-09 22:46:25 | 近代史

 昨日12月8日は1941年に日本が米英に宣戦布告し真珠湾を攻撃した日である。NHKは「日米開戦への道、知られざる国際情報戦」という番組を放映した。最近イギリスで公開された機密文書に、チャーチルが進めた世界規模の情報戦が記録されていて、そこに日米開戦に至った経緯が読み取れるという。その頃、チャーチルは各国情報の暗号解読に注力しスパイを駆使し情報戦を有利に展開しようとしていた。その情報網でいち早く日本の南部仏印(インドシナ)への進駐計画を知り、マレーシアやシンガポールの自国の利権が日本によって侵害されるのではという危惧を持つ。しかし、イギリスはドイツによる空爆を受けヨーロッパ戦線では劣勢にあったため遠く東南アジアに兵力を割く余裕はなかった。そこで、チャーチルは日本の南方進駐による危機感を煽り、アメリカを戦争に引きずり込もうとする。手始めにイギリスはアメリカとともに日本に対し経済制裁を発動する。石油の9割をアメリカからの輸入に頼っていた日本にとって経済制裁は死活問題だった。アメリカは制裁解除の条件として南部仏印からの撤退だけでなく中国での権益を放棄するよう要求するハルノートを突き付ける。ハルノートを創案したアメリカの要人ハリー・ホワイトは実はソビエトのスパイで、ハルノートの中身はソビエトに有利な内容になっていたという。また、アメリカがハルノートに添えた南部仏印や中国からの撤退の代わりに資金援助をするという妥協案は、アメリカを太平洋戦争に引きずり込みたかったチャーチルの工作によって日本側に提示されなかったともいう。その頃、ワシントンの駐米大使や大使館付武官の必死の非戦努力や情報はアメリカによって妨害され日本の中枢には伝達されず国策を変えるには至らなかった。ハルノートは日本が戦争を回避できなくなった決定的な原因だったとされている。番組の解説者である静岡県立大学准教授は結局、日本の中枢の政策決定者たちは新しい情報がもたらされても既定路線を修正することができず、内向きの論理で政策決定していたと断じた。日本海軍の証言で陸軍参謀や海軍軍令部の目的が組織防衛になっていたという結論と同じだ。折しも日本では特定秘密保護法案が可決され、番組で扱われたような秘密情報が向う何十年も保護されることになる。国家権力が言論の封殺、スパイ冤罪、極端な国家主義に向かわないことを祈るばかりである。

 ハワイ沖海底で旧日本海軍の伊400という巨大潜水艦が見つかったというニュースが先日流れた。全長120mの巨大潜水艦で、水上飛行艇3機を搭載する当時の最先端技術を有していた。アメリカ軍は戦後すぐこの潜水艦を旧日本軍から接収しハワイへ回航し調査の後、技術が旧ソ連に漏れることを危惧しハワイ沖に沈めた。取得した技術は後の原子力潜水艦に生かされたという。そのころ日本の航空機技術も高度で、開戦当初「風立ちぬ」のゼロ戦との空中戦でアメリカはまったく歯が立たなかった。アリューシャン列島で偶然無傷のゼロ戦を入手しゼロ戦の性能をアメリカは徹底的に研究した。以降、機動性で劣るグラマンがゼロ戦に勝つため、上空から一気に急降下しヒットエンドランで打撃を与え逃走するという戦法を採用し空中戦での劣勢を挽回した。戦時中コロンビア大学において日本研究で学位をとったドナルド・キーンは情報士官としてアリューシャン列島のキスカ島に上陸している。映画「Big Year」で主人公たちはアッツ島へバードウォッチングに行くが何もない最果ての島である。アッツ島で日本軍は玉砕しキスカ島の日本軍は無傷の撤退に成功する。戦時中も何もなかったに違いないこんな島に大勢の日本兵が駐留していた理由がわからない。何もない島が戦略的に重要だったのだろうか。太平洋戦争で日本軍は、北はアリューシャン列島、広大な中国本土、さらに広い東南アジア、南太平洋、果てはオーストラリア本土にまで戦線を広げすぎている。兵站確保は兵法の基本なのに誰も疑問に思わなかったのだろうか。こちらはシンガポール拠点に東南アジアを駆け回っているが、情報入手が容易な現在でも隣国マレーシアの市場(戦線)でさえ担当者の報告のみで状況判断しているに過ぎない。ましてや広いインドネシアやビルマ(ミャンマー)のことまで責任が持てるはずがない。目の届く範囲で地道に仕事していようと思う。

 もうひとつ、暗号の話題としてBitcoinというインターネット上で流通する仮想電子マネーがある。別名、暗号通貨とも呼ばれる。Minerと言われる人たち(金鉱掘りのような人)がコンピューター上の暗号を解読することで少しずつBitcoinを手に入れられる仕組みになっているらしい。円やドルのように国が管理する通貨ではなく、また運営会社が発行する電子マネーでもない。正体不明の“中本哲史”という人物が2008年に出した論文に基づいてネット上に提供されている通貨で、徐々に利用する人が広がり今ではBitcoinで買い物ができるショップも出現しているという。Bitcoinが投機の対象になり急速に値上がりしたため、取扱量の多い中国の人民銀行が、個人的な取引は容認するが銀行がBitcoinを取引することは禁ずるという通達を出した。この12月5日のニュースを知るまでBitcoinの存在を知らなかった。著名な経済学者のBitcoinに対する評価は、将来性があるとする肯定的な意見と、破たんや負の側面が多いという否定的な意見に割れている。でも短期間で値が何十倍にも変動する通貨が物を売り買いする通貨として機能するのだろうか。結局、投機対象の仮想通貨でしかありえないような気がする。Bitcoinが外国為替クロスレートにでも入るようになったら通貨として認知されたことになるので利用してみるかな。


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