ANA機中映画は先月の最新映画「Saving Mr. Banks」に旧作「メリーポピンズ」を用意し、今月はコンピューターが感情を持つ「her:世界にひとつの彼女」に「2001年宇宙の旅」を配した。余命わずかで特効薬を手にするために行動するCIAエージェント「ラストミッションl」とエイズ患者「ダラスバイヤーズクラブ」が並んだのは単に偶然かもしれないけれど、番組編成者は観客の興味に配慮するプロだと感心している。ポスターはIMDbより。
「2001:A Space Odyssey 2001年宇宙の旅」1968、監督:スタンリー・キューブリック、出演:キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、シンガポールの映画館で観て以来だから30年ぶりの鑑賞だ。この映画の映像、特殊効果、ストーリーは50年後の今もまったく色あせず、交響曲「ツァラトストラはかく語りき」から始まる物語にわくわくした。人類の進化は、類人猿から猿人に始まり、感情を持ったコンピューターHal(ハル)は人類に反乱を起こし、Halに勝った宇宙飛行士は宇宙の中心で胎児に遭遇する。石版は生物の進化を司る絶対者の存在を物語る。最新映画「Gravity」や「her」に比べても遜色なく古さをまったく感じなかった。2001年に惑星間飛行は実現していないし、感情を持つコンピューターもまだ出現していないので映画の先進性が先を行く。★★★★★
「Dallas Buyers Club」2013、監督:ジャン・マーク・ヴァリー、出演:マシュー・マコノーフィー、ジェアード・レト、ジェニファー・ガーナー、エイズに感染した男が病院で処方された薬に疑問を抱き、自から勉強して世界中から特効薬を買い集め同じエイズ患者に会員制販売する実話である。この映画が描く1985年頃、エイズはアフリカや東南アジアで流行し、性交渉、特にホモセクシャルに多く感染者が出たことから、エイズ患者は世間から迫害差別された。1985年はシンガポールにいた。その頃、東南アジアでもエイズが蔓延し始めていた。政府はエイズを水際で食い止めようと外国人の労働や滞在ビザ発行の条件としてエイズ検査を義務付けた。これを人権侵害だとして検査を拒否しシンガポール入国をあきらめた西洋人もいた。映画の主人公は製薬会社や医者の利益を優先し薬を規制する政府に戦いを挑む。エイズ患者への偏見や境遇に同情するよりも、主人公の自分や患者仲間の命をかけた戦いに喝采した。この映画は今年のアカデミー賞主演男優賞と助演男優賞を取った。★★★★☆
「3 Days to Kill 邦題:ラストミッション」2014、監督:McG、出演:ケビン・コスナー、ヘイリー・スタインフェルド、コニー・ニールセン、癌で余命3か月と宣言されたCIAのエージェントは最後の時を妻と娘と過ごす決心をするが、治療薬を手に入れるために最後の任務につく。ケヴィン・コスナーは最近の出演作「Man of Steel」や「Jack Ryan:Shadow recruit」で脇役だったので、もう主演はないのだろうかと気にかけていた。パリの自宅に住み着いた不法移民の家族に妊婦や子供がいたことから追い出すこともせず、捕まえた敵に可愛い娘がいたことから見逃してやり、娘のためにイタリア人の敵にパスタのソースの作り方を聞いたり、本来冷血で非情であるはずのCIAエージェントが温情家で家庭的なのが逆に新鮮だった。本来ならCIAエージェントをコミカルにしただけのB級映画レベルの出来なのだが売り出し中のヘイリー・スタインフェルドを嘉しておまけの、★★★☆☆
「Hours、邦題:ハリケーンアワー」2013、監督:エリック・ハイセラー、出演:ポール・ウォーカー、ジェネシス・ロドリゲス、ハリケーン”カトリーナ”が街を襲った日、病院で早産の娘を産んだ妻は出血多量で死んでしまう。ハリケーンのために医者や患者は皆、病院から避難したが、父親は生命維持装置に入れられた赤ん坊を動かすことができず2人だけ病院に取り残された。生命維持装置は手動充電器でかろうじて動く状態で、食料もない中、父親は昼夜手動充電器を回し続け救助を待つ。そこに病院荒らしが乗り込んでくる。これも設定やエピソードが安直なのでB級映画に近い出来なのだが、赤ん坊の命を必死で守る父親と救助犬との触れ合いと小さな命に感情移入したので、★★★☆☆
「武士の献立」2013、監督:朝原雄三、出演:上戸彩、高良健吾、西田敏行、余貴美子、見どころは料理上手の良妻を演じる上戸彩で、半沢直樹のときの明るい内助とは異なり、ダメな夫を支えたしっかりものの良妻振りが良かった。それに引き換え夫の幼稚さにがまんできなかった。脚本家の仕掛けにまんまと、はまってしまったのかもしれない。とにかく上戸彩の頑張りを嘉して、★★★☆☆
「His Last Vow」2014、テレビドラマ「Sherlock」の第3シリーズ3作目S3E3である。ワトソンの新婦メアリーが銃を持ち黒づくめの恰好で現れたときにはマジで驚いた。メアリーの驚きの正体が語られる。これで本シリーズ3回目の星5つだ。★★★★★