伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

断簡 【強制不妊】

2018年02月24日 | エッセー

 毎日新聞は〈記録が残る1949年以降の全国の強制不妊手術1万6475件のうち北海道では15%強が行われ、全国件数の4分の1を占めた年もあった〉と報じている。北海道は際立って多い。なぜか。寡聞にしてこれに切り込んだ報道を知らない▼揣摩するに、北海道のみ遵法意識が抜きん出て高かった訳ではあるまい(旧優生保護法の施行に対して)。道民気質に因るのであろうか。あるとすれば、すべて移住者によって造られてきた北海道の特異な成り立ちが考えられはする。命懸けで切り開いたフロンティアをなんとしても次世代へ継承したい。その熱願が歪な行政をためらいなく受け入れた、と。あるいは、時の道政の要路にあった者の偏向した信条が推力となったか。ともあれ、憶測の域を出ない▼まさか如上の一件を誠実で純朴なコンプライアンスの好例として嘉する愚か者はいないだろう。だが、なぜそうだったのかを詳らかにすることは、ひとり北海道のみならず一国の向後に大いに資するマターではないだろうか。□