伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

断簡 【羽生・藤井】

2018年02月18日 | エッセー

◇「はにゅう」も「はぶ」も漢字では同じ「羽生」だ。結弦クンの切り札は4回転ジャンプ。羽が生えた如くに宙を舞う。善治氏の得意技は居飛車で、こちらも盤上を翔ぶが如くに切り込む。なんとも名は体を表すではないか。きのう(2/17)はその2人が明暗を分けた。
◇暫定トップ3の控えで宇野君の得点が出た後、結弦クンはそれまで3位だった中国選手をハグしなにやらしきりに言葉をかけていた。想像を逞しくすると「ボクがいたからメダルが取れなくてごめんね」とでも言ったのかしらん。勝者の振る舞い。一番印象に残ったシーンだった。それと、もうひとつ。インタビューで「今回は(金メダルを)取らなきゃいけない使命感もあった」と語った。起死回生のドラマは闘争心やプレッシャーではなく、より高次のマインドセットがなさしめたということか。蓋し、示唆的だ。
◇若干ビッグニュースに隠れた感があるが、藤井聡太クンも快挙をなしとげた。史上最年少で公式戦初制覇・六段昇格。結弦クンに勝るとも劣らない。こちらは「羽生」が敗れた結果だ。明暗の暗である。遂にひふみんの記録が書き換えられた。コマーシャルに準えるなら、ひふみん会長は「この展開は分かってましたよ」とおっしゃるに違いない。すました顔して……。 □