伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

2007年6月の出来事から

2007年07月08日 | エッセー
■ 2、3日 内閣支持率が30%(朝日新聞調査)、政権発足以来最低に
 1ヶ月後の今はもっと落ちているだろう。まことにアンバイくんのアンバイがわるい。ただ気をつけねばならぬのは、世論調査自体の信憑性。このことについては、2月12日付け本ブログ「うへぇー! 世の中、ゴミだらけ!!」で取り上げた。さらに、アナウンス効果の問題だ。
 90年代初めに投票前の予測報道を公選法で規制しようとの動きがあった。鍔迫り合いの末、マスコミ側が自粛することで落ち着いた。今はたしか1週間前からこの種の報道を控えている。しかし期限ギリギリまで報道は続くし、残像は消えない。かてて加えて、日本人の国民性。勝ち馬に乗るか、判官贔屓か。こと選挙に関しては「勝ち馬」組が圧倒的だ。発足以来、不運続きのアンバイくん。同情を禁じ得ないが、九郎判官ともいかず弁慶よろしく仁王立ちするしかないか。まことに「男はつらいよ」である。

■ 4日 政府が年金記録問題の対策を発表 ―― 記録の照合、第三者委員会の設置など
 問題は三つある。
① 「問題の構図」の問題 ―― 社保庁解体を阻止するために、自治労がM党に情報をリークした。身内の腐敗を曝(サラ)けることと引き換えに、捨て身の戦法に出た。差し違えである。……との見方がある。宜なるかな。状況を勘案すると、当たらずといえども遠からず、である。だが、この意図はアンバイくんの『頑張り』のまえに潰えた。30日、徹夜国会の末に社保庁改革関連法が成立。
② 「問題のすり替え」の問題 ―― 記録の問題と年金制度自体の問題とは違う。これを意図的にすり替えたり、ない交ぜにする向きがある。政府の肩を持つわけではないが、記録に不備があり受給に問題が生じても、年金制度自体が崩壊したわけではない。制度の設計論議は別にして、本体に揺らぎはないのだ。「記録」の問題と「制度」のそれとを混同してはならない。ここのところを冷静に考えたい。
③ 「こちらにも問題」の問題 ―― 『あちら』は口が裂けても言えぬだろうが、加入者側にも落ち度はあった。97年の名寄せ紹介に対してキチンと対応していれば5000万件も宙に浮きはしなかった。年金といわず一般に行政サービスは申請主義を旨とする。言ってもやらない連中が言わずにやるわけがない。油断はおさおさ禁物である。

■ 19日 東京渋谷区の温泉施設が爆発、6人死傷
 風呂嫌いのわたしなら、「だから、言わないこっちゃない。あんなアブねー所に行くからだ」と、一発吠えてみたいところだ。しかし通行人まで大ケガをしたとあってはそうはいかない。
 事故のあった渋谷区松濤といえば、「超」の付く一等地だ。しかも温泉だ。つまり、水を沸かした銭湯ではない。千から2千メートル、地球に針を刺して中身を吸い取っているのだ。大都市・東京といえども、地球の上に浮いているわけではない。幾重もの地層に乗っかっている。
 南関東ガス田 ―― 250~40万年前に堆積した地層に天然ガスがある。埋蔵量は国内の9割。千葉県で生産される天然ガスは国内生産量の十数%を占める。東京の江東・江戸川区でも採っていたが、地盤沈下のため昭和40年代末に採取を止めた。
 つまり大東京のど真ん中で、温泉も出ればメタンガスも出るのだ。地表から、地球の半径の僅か6万3千分の1で「生身」の地球にぶつかる。たとえていえば、薄氷の上に御殿があるようなものだ。この危うさに気づかされる事件であった。

■ 20日 「牛肉」の偽装でコロッケなどを回収
 最初の一報に接した時、「カニカマ」を連想した。カニ風味のかまぼこ、いわゆるモドキ食品である。ミートホープ社の『牛肉ミンチ』を使ったコロッケは本物と見分けがつかないらしい。牛肉を入れない牛肉ミンチを造る、なんと奇想天外な。間違いなく、「カニカマ」を超える『逸品』にちがいない。是非とも、食してみたかった。
 わたしは小さいころから、生ものよりも加工品を好んで食べる。刺身、焼き魚、煮魚よりも蒲鉾、天ぷらなどの練り製品。ステーキよりもハンバーグ、メンチカツ。つまり素材の原形を留めない食い物が嗜好だ。大トロのにぎりよりもシーチキンの罐詰がいいのだ。お笑いめさるな、幼少期よりの家計の都合とそこから帰結される食環境の、ひとつの結実である。偏向した食育が偏屈なる人格と味覚を生み出した一典型である。
 さて、この問題。はなっからモドキで売り出せばよかったのだ。牛肉『モドキ』ミンチであればなんらのお咎めもない。なにせ、ミートホープ社のコロッケで死んだ人はいないし、詳しくは分からぬが栄養価にさしたる違いはなかろう。豚肉が主体であれば、牛肉よりむしろ身体にはいいかもしれない。学校給食に使うもよし。刑務所など、もってこいではないか。モドキを噛みしめながら来し方のモドキ人生を反省し、出所後のモドキからの決別を誓う。なかなかの食育ではないか。
 学歴、職歴を詐称して憚らない議員がいる。こんな手合いはクズだ。こういうモドキ人間は何の役にも立ちはしない。しかし、件のコロッケは捨てがたい。使い道は十分にある。だから、なんとも残念だ。田中社長もモドキに徹していれば、ミート界の『ホープ』になれたものを ―― 。

■ 23日 「憑神」全国公開
 詳細は前稿で述べた。
―― 時代・社会は黄昏れても、己の人生は決して黄昏はしない。そんな作者のエールが聞こえる。□


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