原始・古代1 (岩波講座 日本歴史 第1巻)の感想
今巻は縄文時代から倭の五王あたりまで。歴博のAMS炭素14年代測定による弥生時代の開始年代引き上げ論については、懐疑的というか否定的な論調が強いようだ。縄文農耕論についても、近年の研究では縄文末期を除いて否定的な論調が強いとのこと。邪馬台国研究については中国史学者の渡邉義浩の著書も引用する。特に考古学の分野では未だに唯物史観を克服しきれないようだ。月報の白石太一郎「考古学と古代文献史学のあいだ」では、考古学研究者による文献史料の扱い、文献史学者による考古資料の扱い、双方ともに問題を抱えているとする。
読了日:3月1日 著者:大津透,佐藤宏之,設楽博己,岩永省三,仁藤敦史,福永伸哉,菱田哲郎,田中史生,田中俊明
仏典はどう漢訳されたのか――スートラが経典になるときの感想
タイトル通りインド語由来の仏典の漢訳がテーマだが、話題は漢訳の手順、漢訳に要する日数、中国で作られた偽作経典がどのような史料となり得るか、漢訳仏典が漢字・漢語や仏典以外の文章に与えた影響(四字句による文章が好まれるようになったことなど)、更には中国を「辺土」と見なす視点が生まれ、世界認識にも影響を与えたこと等々、仏典や翻訳論にとどまらず多岐に及んでいる。
読了日:3月7日 著者:船山徹
中世1 (岩波講座 日本歴史 第6巻)の感想
今巻は院政期から承久の乱あたりまで。前巻の「古代史への招待」はいまいちピンとこない内容だったが、今回の「中世史への招待」は権門体制論、時期区分(中世のはじまりや範囲)、東アジアの中の位置づけなど、問題点をわかりやすくまとめている。この章で取り上げられている桃木至朗氏による「私の日本史賛美と日本史批判」が月報に掲載。各論では最近話題になった鎌倉幕府の成立時期についての言及もある。「中世前期の文化」では王権論と絡めて蹴鞠や音楽などの芸能も取り上げる。
読了日:3月9日 著者:桜井英治,本郷恵子,川合康,高橋典幸,鎌倉佐保,高橋修,鈴木哲雄,上島享,坂井孝一
人文学と著作権問題ー研究・教育のためのコンプライアンスの感想
資料や研究成果のウェブ公開でどのような問題が発生しうるのか?教育現場での著作物の利用はどの範囲まで認められるのか?古典文献の翻刻や校訂にも著作権が認められるのか?等々、法学者と人文学者との対談という形で具体例を挙げつつ研究・教育に関係する著作権の問題について解説。小保方氏の一件が問題となっている昨今、非常にタイムリーな内容。人文学以外の分野の研究者や小・中・高の教員にも参考になると思います。
読了日:3月13日 著者:石岡克俊小島浩之上地宏一佐藤仁史田邉鉄千田大介二階堂善弘師茂樹山田崇仁
戦争の日本中世史: 「下剋上」は本当にあったのか (新潮選書)の感想
副題から戦国時代がメインと誤解されそうだが、扱っている時期は蒙古襲来から応仁の乱まで、特に南北朝の時期が中心。本書を読むとこれまでの日本中世史の研究が意識的・無意識的に「階級闘争史観」に影響されていたことがわかるが、かといって研究者のすべてが「左翼」というわけではないだろう。それが時代のはやりというか雰囲気だったわけである。個人的には、現在の「階級闘争史観」にあたるのが「グローバル指向」ではないかと思うのだが……
読了日:3月17日 著者:呉座勇一
百姓貴族 (3) (ウィングス・コミックス)の感想
今回のメインはデビューの前後、実家の農場で働きながら漫画を描いてた頃の話など。「は?ブーム?人類にとって農業は有史以前からのブームですよ?」という台詞が私のツボにはまった(^^;)
読了日:3月22日 著者:荒川弘
西遊妖猿伝 西域篇(5) (モーニングKC)の感想
3巻・4巻とまったく進んでいなかった話がようやく進み出したという感じ。掲載誌が今巻の途中で月刊のモーニングtwoに変わってるんですね。この作者はやはり月刊ペースの方が合ってるんでしょうか。
読了日:3月24日 著者:諸星大二郎
昭和史をさぐる (読みなおす日本史)の感想
当時の要人の日記等の史料を中心に読み進める戦前の政治史講義。もとは朝日カルチャーセンターでの講義をまとめたものとのこと。「憲政の常道」成立から敗戦までのトピックを取り扱うが、前の版に収録されていたという「ロンドン軍縮会議」等四章が削られているのが残念。本書を読んで、宇垣一成は案外「やるやる詐欺」な人だったのかもしれないなとか、近衛文麿は首相とか責任のある地位さえ与えなければ普通に出来る人だったんだなと感じた。
読了日:3月26日 著者:伊藤隆
風雲児外外伝 松吉伝の感想
『風雲児たち』の原作者みなもと太郎氏の祖父松吉をめぐるファミリーヒストリー。日露戦争勝利に隠された秘話、朝鮮で警察署長をしていた話、甘粕正彦との交流など、面白すぎる話のオンパレードなんですが、作者自身も「フィクションだと思ってください」と書いてるぐらいですしね… その方面の研究者なんかの協力を仰いで、事実関係や当時の背景などもう少し詳細が突き止められないものだろうか。あと、朝鮮で警察署長が現地の裁判官にもなっていたというのは、江戸町奉行に限らず前近代の中国の地方官なんかもそうですね。
読了日:3月29日 著者:みなもと太郎
唐物の文化史――舶来品からみた日本 (岩波新書)の感想
著者はこれまで『源氏物語』や平安時代の唐物を中心に論じてきたが、今回は奈良時代から江戸時代までを扱う。平安時代の唐物と江戸時代の唐物を同じ土俵で扱ってよいものなのかどうか、若干疑問を感じましたが… 105~106頁の清盛が東宮時代の安徳天皇に『太平御覧』を贈った話は、大河ドラマの『平清盛』でも使われていました。
読了日:3月30日 著者:河添房江
読書メーター
今巻は縄文時代から倭の五王あたりまで。歴博のAMS炭素14年代測定による弥生時代の開始年代引き上げ論については、懐疑的というか否定的な論調が強いようだ。縄文農耕論についても、近年の研究では縄文末期を除いて否定的な論調が強いとのこと。邪馬台国研究については中国史学者の渡邉義浩の著書も引用する。特に考古学の分野では未だに唯物史観を克服しきれないようだ。月報の白石太一郎「考古学と古代文献史学のあいだ」では、考古学研究者による文献史料の扱い、文献史学者による考古資料の扱い、双方ともに問題を抱えているとする。
読了日:3月1日 著者:大津透,佐藤宏之,設楽博己,岩永省三,仁藤敦史,福永伸哉,菱田哲郎,田中史生,田中俊明
仏典はどう漢訳されたのか――スートラが経典になるときの感想
タイトル通りインド語由来の仏典の漢訳がテーマだが、話題は漢訳の手順、漢訳に要する日数、中国で作られた偽作経典がどのような史料となり得るか、漢訳仏典が漢字・漢語や仏典以外の文章に与えた影響(四字句による文章が好まれるようになったことなど)、更には中国を「辺土」と見なす視点が生まれ、世界認識にも影響を与えたこと等々、仏典や翻訳論にとどまらず多岐に及んでいる。
読了日:3月7日 著者:船山徹
中世1 (岩波講座 日本歴史 第6巻)の感想
今巻は院政期から承久の乱あたりまで。前巻の「古代史への招待」はいまいちピンとこない内容だったが、今回の「中世史への招待」は権門体制論、時期区分(中世のはじまりや範囲)、東アジアの中の位置づけなど、問題点をわかりやすくまとめている。この章で取り上げられている桃木至朗氏による「私の日本史賛美と日本史批判」が月報に掲載。各論では最近話題になった鎌倉幕府の成立時期についての言及もある。「中世前期の文化」では王権論と絡めて蹴鞠や音楽などの芸能も取り上げる。
読了日:3月9日 著者:桜井英治,本郷恵子,川合康,高橋典幸,鎌倉佐保,高橋修,鈴木哲雄,上島享,坂井孝一
人文学と著作権問題ー研究・教育のためのコンプライアンスの感想
資料や研究成果のウェブ公開でどのような問題が発生しうるのか?教育現場での著作物の利用はどの範囲まで認められるのか?古典文献の翻刻や校訂にも著作権が認められるのか?等々、法学者と人文学者との対談という形で具体例を挙げつつ研究・教育に関係する著作権の問題について解説。小保方氏の一件が問題となっている昨今、非常にタイムリーな内容。人文学以外の分野の研究者や小・中・高の教員にも参考になると思います。
読了日:3月13日 著者:石岡克俊小島浩之上地宏一佐藤仁史田邉鉄千田大介二階堂善弘師茂樹山田崇仁
戦争の日本中世史: 「下剋上」は本当にあったのか (新潮選書)の感想
副題から戦国時代がメインと誤解されそうだが、扱っている時期は蒙古襲来から応仁の乱まで、特に南北朝の時期が中心。本書を読むとこれまでの日本中世史の研究が意識的・無意識的に「階級闘争史観」に影響されていたことがわかるが、かといって研究者のすべてが「左翼」というわけではないだろう。それが時代のはやりというか雰囲気だったわけである。個人的には、現在の「階級闘争史観」にあたるのが「グローバル指向」ではないかと思うのだが……
読了日:3月17日 著者:呉座勇一
百姓貴族 (3) (ウィングス・コミックス)の感想
今回のメインはデビューの前後、実家の農場で働きながら漫画を描いてた頃の話など。「は?ブーム?人類にとって農業は有史以前からのブームですよ?」という台詞が私のツボにはまった(^^;)
読了日:3月22日 著者:荒川弘
西遊妖猿伝 西域篇(5) (モーニングKC)の感想
3巻・4巻とまったく進んでいなかった話がようやく進み出したという感じ。掲載誌が今巻の途中で月刊のモーニングtwoに変わってるんですね。この作者はやはり月刊ペースの方が合ってるんでしょうか。
読了日:3月24日 著者:諸星大二郎
昭和史をさぐる (読みなおす日本史)の感想
当時の要人の日記等の史料を中心に読み進める戦前の政治史講義。もとは朝日カルチャーセンターでの講義をまとめたものとのこと。「憲政の常道」成立から敗戦までのトピックを取り扱うが、前の版に収録されていたという「ロンドン軍縮会議」等四章が削られているのが残念。本書を読んで、宇垣一成は案外「やるやる詐欺」な人だったのかもしれないなとか、近衛文麿は首相とか責任のある地位さえ与えなければ普通に出来る人だったんだなと感じた。
読了日:3月26日 著者:伊藤隆
風雲児外外伝 松吉伝の感想
『風雲児たち』の原作者みなもと太郎氏の祖父松吉をめぐるファミリーヒストリー。日露戦争勝利に隠された秘話、朝鮮で警察署長をしていた話、甘粕正彦との交流など、面白すぎる話のオンパレードなんですが、作者自身も「フィクションだと思ってください」と書いてるぐらいですしね… その方面の研究者なんかの協力を仰いで、事実関係や当時の背景などもう少し詳細が突き止められないものだろうか。あと、朝鮮で警察署長が現地の裁判官にもなっていたというのは、江戸町奉行に限らず前近代の中国の地方官なんかもそうですね。
読了日:3月29日 著者:みなもと太郎
唐物の文化史――舶来品からみた日本 (岩波新書)の感想
著者はこれまで『源氏物語』や平安時代の唐物を中心に論じてきたが、今回は奈良時代から江戸時代までを扱う。平安時代の唐物と江戸時代の唐物を同じ土俵で扱ってよいものなのかどうか、若干疑問を感じましたが… 105~106頁の清盛が東宮時代の安徳天皇に『太平御覧』を贈った話は、大河ドラマの『平清盛』でも使われていました。
読了日:3月30日 著者:河添房江
読書メーター