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博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『中国抗日映画・ドラマの世界』

2013年12月28日 | 中国学書籍
今年の仕事は今年のうちにということで、今年読んだ本で面白かったものをいくつかアップしておきます。(と言っても、いずれもツイッターで上げた感想をまとめ直したものですが……)

劉文兵『中国抗日映画・ドラマの世界』(祥伝社新書、2013年10月)

個人的には近年色々と物議を醸している抗日ドラマの解説に期待してこの本を購入したのですが、メインはどちらかというと映画の方です。抗日ドラマより抗日映画の方が歴史は長い(同時代の日中戦争の時代から制作されている)ので、これは仕方ないのかなと。

この本の著者は以前に『中国10億人の日本映画熱愛史』なんて本も書いてまして、そちらでは日本の映画やドラマが中国で受け入れられたのかという話をしてました。今回はその逆バージョンみたいな話ですね。

で、お目当ての抗日ドラマですが、本書によると、ドラマの検閲に関しては、政府は企画の審査に関わるのみで、完成した作品に対する「このシーンがアカン」といった個別の検閲は、制作会社の所在地の検閲機関が行っているとのこと。そして映画と比べたらドラマの個別のシーンの検閲は緩い方で、よほどのことがない限り検閲に引っかかることはないなんて書いてます。

それにしては歴史ドラマで数年単位でお蔵入りしていた作品だとか、結局本国で放映の認可が下りないので韓国・台湾や日本で先行放映(あるいはDVD販売)された作品だとか、放映には至ったものの個別のシーンが総計数話分削除を迫られたなんて話をしょっちゅう耳にするような気がするのですが、あれで緩い方なんですか……

あと、留学中に抗日ドラマの『亮剣』という作品を見てまして、展開のテンポも早いし面白いドラマだなあと思っていたのですが 本書の解説を読んでこの『亮剣』はやはり名作であったということを再確認しました(^^;)

『古語と現代語のあいだ』

2013年12月28日 | 日本史書籍
白石良夫『古語と現代語のあいだ ―ミッシングリンクを紐解く』(NHK出版新書、2013年6月)

この人の前著『かなづかい入門』では、現代仮名遣を毛嫌いし、歴史的仮名遣を称揚する人々に対して強く批判していましたが、そんな人が今の日本にどの位いるものなのかと疑問に思っておりました。

今回出た本書によると、実のところ著者自身も熱烈な歴史的仮名遣の信奉者なんてごく少数という前提で(つまり「確信犯」で)書いていたとのこと。ところが『かなづかい入門』出版後に改めて調べてみると、ジャーナリズムの現場で歴史的仮名遣い復活を主張する人が意外に多いのに驚いたということです。それだけならまだしも、国会議員が自民・共産・無所属もひっくるめて超党派で「正仮名遣い復活」を唱えて連盟を組み、勉強会を開くなど、政界でも隠然たる勢力を形成しており、歴史的仮名遣いの復活が国策レベルの話になっているとのこと。……何だよそれ、一体どういうことだよ(´Д`;)

そういう声がそれなりに大きい中で、漢字・かな表記を廃止して日本語をローマ字で表記しよう!なんてうっかり言い出そうものなら一体どういうことになるのか…… 実は最近亡くなられた私の師匠の師匠は段階的に日本語のローマ字表記を進めるべきという考えの持ち主でした。その考えには賛同しかねるものの、敢えてそういうことを主張では偉かったんだなと思った次第です。


『聖書考古学』

2013年12月28日 | 世界史書籍
長谷川修一『聖書考古学 ―遺跡が語る史実』(中公新書、2013年2月)

文字通り聖書の舞台となった古代イスラエルの考古学について解説した本ですが、特に第二章で考古学は何を明らかにする学問かということと、考古学と歴史学との関係をわかりやすく説明しており、良質な考古学の入門書ともなっています。(聖書については第一章にてざっくりと解説してます)

で、第七章に出て来る聖書学のミニマリストとマキシマリストというのは、中国の古史研究における疑古派と釈古派みたいなもんかなと思いつつ読んでいると、こんな一文が……「昨今、少なからぬ良心的な研究者たちは、骨董市場に出回ったものを購入したり、研究対象にしたりすることを控えている。」(223頁) その理屈でいくと、骨董市場から買い取られた戦国竹簡やら周代の青銅器を史料として使用している中国古史の研究者には良心が無いということになりますな(´・ω・`)