加地伸行『「史記」再説 司馬遷の世界』(中公文庫・2010年1月)
以前読んだ『白川静の世界』で引用されていたので、新著かと思って取り寄せてみたら、1978年に講談社現代新書で出た『史記 司馬遷の世界』の改訂版でした…… 本書の目新しい主張としては以下の2点が挙げられます。
○『史記』孝武本紀を司馬遷の筆になるものとする。……孝武本紀は、一般的には早い時期に散佚し、現在のものは後人が『史記』封禅書をもとに補筆したとされています。これを本書では、少なくとも末尾に論賛がちゃんと付いているなど、形式的には問題ないとしていますが…… 正直私の目には孝武本紀は封禅書のコピペにしか見えません(-_-;)
○漢代までの書物には、説話の後ろに詩書を引用するという著述スタイルが多く見られるが、詩書の中で引用される箇所は大体決まっていた。司馬遷はこの形式にあきたらず、引用する句や書の範囲を広げ、更に論賛の形式を作りだした。……このあたりは原書の出版から30年以上経っても古びていない部分かなあと。
あと、原書のあとがきで武田泰淳の『司馬遷』について、戦時中の昭和18年に出た初版には序説と結語に太平洋戦争を賛美した言が見えるが、戦後に出た版ではこれを削って無かったことにしてしまっているのだが、これはいかがなものかというようなことを書いたら色々と反響を呼んでしまったようで、付論としてこの件について更に詳しく述べた文章を加えています。これがなかなか面白い。
戦時中はこういう戦争を賛美する言説を入れておかないと、当局の検閲を通過して出版にこぎつけることができなかったんだから仕方が無いという武田泰淳を擁護する意見に対して、著者は同時期に出版され、同じく古代中国に関する研究所である森三樹三郎の『支那古代神話』や重沢俊郎の『周漢思想研究』にはそんな言説は全く見られないが、それでもちゃんと出版できているぜ?などと反論しています。何というか、反論の仕方がいちいち大人気なくて思わず笑ってしまいました(^^;)
以前読んだ『白川静の世界』で引用されていたので、新著かと思って取り寄せてみたら、1978年に講談社現代新書で出た『史記 司馬遷の世界』の改訂版でした…… 本書の目新しい主張としては以下の2点が挙げられます。
○『史記』孝武本紀を司馬遷の筆になるものとする。……孝武本紀は、一般的には早い時期に散佚し、現在のものは後人が『史記』封禅書をもとに補筆したとされています。これを本書では、少なくとも末尾に論賛がちゃんと付いているなど、形式的には問題ないとしていますが…… 正直私の目には孝武本紀は封禅書のコピペにしか見えません(-_-;)
○漢代までの書物には、説話の後ろに詩書を引用するという著述スタイルが多く見られるが、詩書の中で引用される箇所は大体決まっていた。司馬遷はこの形式にあきたらず、引用する句や書の範囲を広げ、更に論賛の形式を作りだした。……このあたりは原書の出版から30年以上経っても古びていない部分かなあと。
あと、原書のあとがきで武田泰淳の『司馬遷』について、戦時中の昭和18年に出た初版には序説と結語に太平洋戦争を賛美した言が見えるが、戦後に出た版ではこれを削って無かったことにしてしまっているのだが、これはいかがなものかというようなことを書いたら色々と反響を呼んでしまったようで、付論としてこの件について更に詳しく述べた文章を加えています。これがなかなか面白い。
戦時中はこういう戦争を賛美する言説を入れておかないと、当局の検閲を通過して出版にこぎつけることができなかったんだから仕方が無いという武田泰淳を擁護する意見に対して、著者は同時期に出版され、同じく古代中国に関する研究所である森三樹三郎の『支那古代神話』や重沢俊郎の『周漢思想研究』にはそんな言説は全く見られないが、それでもちゃんと出版できているぜ?などと反論しています。何というか、反論の仕方がいちいち大人気なくて思わず笑ってしまいました(^^;)