博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『清平楽』その8

2020年05月30日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第36~40話まで見ました。

仁宗は三皇子、七公主と立て続けに子供を亡くします。八大王は病床で彼に「これも生前に実母李宸妃を宮廷に迎えず、その死に目にも会わなかった罰だ」という呪いの言葉を吐いたようで、仁宗は忘れかけていた実母に対するトラウマが再びぶり返します。


本作序盤の若い頃の八大王。包青天物の八賢王に相当する人物ですが……

李宸妃といえば、彼女と縁のあった梁家の梁元生が、このあたりで開封随一の酒楼で迎賓館的な役割を担う礬楼を買い取る買い取らないという話が挿入されます。仁宗は彼が梁家果子店の身寄りであると承知していた模様。ついでに言うと仁宗お気に入りの梁懐吉もそうなのですが、まだそのことには気付いていません。


そして官界では范仲淹・韓琦らが進めていた新政に暗雲が垂れ込みます。慶州知州の滕宗諒の公金使い込みが中央で問題となり、王拱辰は彼を弾劾しますが、范仲淹は西夏との戦いに従軍した兵士たちを労う際に生じたミスで、公金を私物化したものではないと擁護。仁宗も一旦はその言い分に理解を示しますが、これに不満を持った王拱辰は朝廷への出仕をボイコットし、髪をざんばらにして自宅に籠もります。

いわゆる「慶暦の党議」と呼ばれる事件ですが、王拱辰は妻のことを范仲淹の一派の欧陽修に長年からかわれていたことを苦にしていたのです(王拱辰は初め薛奎の三女を妻としていたのを、その死後にその異母妹を娶り、同じく薛奎の四女を妻にしていた欧陽修からそれをいじりのネタにされていた)。結局仁宗は政治的判断もあり、范仲淹を陝西に、同じく新政派で謀反の噂を立てられていた富弼を河北に飛ばし、こうして新政は潰えたのでした。


後宮でも更に不幸が相次ぎます。花粉アレルギー事件以後すくすく育っていた四公主瑶瑶が寒暖差アレルギーから喘息を発症して急死。仁宗は李宸妃の肖像画を前に「これも私が不孝を重ねたからでしょうか?」と必死に詫びようとします。呪いの言葉を残した八大王はつくづく罪深いなと。しかし仁宗の懇願も空しく、唯一残された男児の二皇子最興来が蜱虫(マダニ)に噛まれたことから熱病を発症。疫病ということで、その見舞いすらかないません。

仁宗は、最興来の熱病は天からの予兆ではないかと解し、各地で虫鼠の駆除などの疫病対策を進めさせようとします。ここで范仲淹ら新政派が進めていた冗員整理が問題に。官署の人員が足りなくなったことで疫病の対策に手が回らなくなっていたのではないかという批判です。これに対して新政派の方は、冗員整理の対象となっていたのはまともな働きをする能員ではなく、いても役に立たない連中だと反論。

ともに現代日本の公共事業であるとか、目下の問題の公衆衛生での議論で取り沙汰される論点です。この作品でもなぜか日本の世相を反映する描写が出てきましたね。
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『清平楽』その7

2020年05月25日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第31~35話まで見ました。

仁宗は地方に回されていた范仲淹・欧陽修らを宮廷に呼び戻し、韓琦・富弼といった鉄壁の布陣による、官員の冗員整理を核とした政治改革に乗り出します。


ここらへんで徽柔も成長し、大人の関係の機微というか、仁宗&曹丹姝夫婦の真実というか、この2人が微妙な仲であることに気付いてしまいます。お陰で宗実(後の英宗)と高滔滔の婚約にも否定的な見方をしてしまいますが、これは確実に自分の結婚にも響いてくることでしょう……

そしていつぞやの巫蠱疑惑の一件が尾を引いて、張妼晗にも反抗的な態度を示すようになります。曹丹姝主催の聞香会で許静奴が褒賞を授けられるのですが、彼女がすっころんで褒美を破損してしまいます。彼女への処分をめぐって張妼晗がイチャモンをつけてくるのですが、これに徽柔が反論。張妼晗の方も性格が大概子供なので、いよいよ困った状況に。

これまで宗実ら宗室の子女と宮学に通っていた徽柔ですが、宮学の教師である石介が改革支持派で学生たちもその影響を受けがちということで、曹丹姝は彼女を政治的な影響から遠ざけるために宮学から退学させ、家庭教師による教育に切り替えることにします。宮学での勉強が外の空気に触れるよい機会となっていた徽柔は当然不満顔。


彼女が公主の立場を離れて気軽に本音を吐き出せる存在は、いよいよ梁懐吉しかいなくなります。後宮の管理人たる曹丹姝は、徽柔が将来後宮の安寧を脅かす重大なセキュリティホールになるであろうことを察知して今からあれこれと手を打っているのでしょうが、これが果たして良い方向に作用するのでしょうか?

張妼晗といえば、三公主楚玥を亡くした後、四公主瑶瑶を出産していましたが、これが季節外れの花粉アレルギーにより重篤となってしまいます。実のところこれは教坊時代の張妼晗の同僚で、現在はその侍女となっている許蘭苕の仕組んだ陰謀なのでした。ついでに巫蠱の一件も問題となった人形を仕込んだのは彼女です。ここで張妼晗には良い印象を持っていない董秋和が瑶瑶を救い、陰謀を察知するきっかけを作るのが面白いところ。


教坊時代の二人の師で、張妼晗に請われてそのお付きとなっていた賈玉蘭は、陰謀を察知して許蘭苕を問い詰めますが、教坊時代の張妼晗の振る舞いや、自分と同じように彼女を快く思わない同輩がいることを持ち出し、結局有耶無耶にせざるを得なくなります。

一方、外界では長年北宋を苦しめた西夏との和平が成立し(いわゆる慶暦の和約)、都ではこれを祝って祭りが開かれることになります。仁宗や徽柔らもお忍びで祭りを見物し……というあたりで次回へ。開封の街並みや祭りの様子なんかは、『長安二十四時』ほどではありませんが、それでもかなり作り込んでいます。
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『清平楽』その6

2020年05月20日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第26~30話まで見ました。

張妼晗の産んだ公主は結局あのまま病死してしまい、一方の苗心禾は男児を出産。


前回の件で梁懐吉を怨む張妼晗一派は、仁宗から司馬光に下賜されるはずの瑠璃盞を割ったという濡れ衣を着せて彼を陥れようとしますが、ここで若き日のイケメン司馬光が「宝物は慎重に扱うべきですが、一方で宝物は壊れやすいもの」と『礼記』や白居易の詩を典拠に梁懐吉を擁護。張妼晗一派の陰謀はあっさり仁宗にも見破られ、仁宗はそれをネタに皇嗣宗実や愛娘徽柔が学ぶ宮学で特別授業をします。何ですかこの出木杉君な皇帝は…… これを機に梁懐吉は仁宗や苗心禾のお付きとなります。

その徽柔、遼国から太子妃として嫁入りするよう求められますが、仁宗は「夫婦の関係は兄弟・朋友より間隙を生みやすい。宋と遼は今まで通り兄弟の関係でよい」と、やんわりと拒絶。この台詞、何気に彼の人生経験が反映されてますよね……

その頃、曹皇后は若年ながら腕利きの髪結い職人として苗心禾に推薦されてきた董秋和を、そのような抜擢は却って本人のためにならないとして尚服局での勤務を続けるようにと諭します。仁宗の方も、髪を結っている最中に政治に関して口出しした髪結い係の李司飾とその一党をさっくり追放処分に。しかしその場で本人に怒らずに、後になってから人を介して重大な処分を下すって、あなたそれ郭皇后を廃する時にもやりましたよね……?

張妼晗は後任の司飾として、自分のお気に入り許静奴を推薦しますが、普段は人と争わない性格の苗心禾がこれに対抗するかのように董秋和を推薦。前回徽柔が巫蠱の疑いをかけられた件が余程腹に据えかねている様子です。仁宗は他の妃嬪にも職人を推薦させ、七夕節の宴で彼女らが結い上げる妃嬪の髪型の品評会を催して後任を決めることとします。


その晩、曹丹姝は寝室で苗心禾に「もうあんな波風を立てるようなことをしてはいけない」と諭します。しかし女同士が夜な夜なベッドに腰掛けて「10年後、20年後もお互いこのようでありたい」と語りあう後宮物というのは新しいですね。


一方、この2人の美しい関係と対比するかのように、賈玉蘭との関係がもとで正妻との夫婦関係が破綻する美しくない夏竦…… 賈玉蘭との関係は正妻との結婚以前からのものなんですね。

そして七夕節の品評会で新しい司飾に選ばれたのは、許静奴でも董秋和でもなく、兪婕妤が推薦した顧采児なのでした。帰りの馬車の中で「董秋和はあんなに腕が良くて賢いのに、どうして司飾に選ばれなかったの?」と問いかける徽柔に対して「最も優れた者は必ずしも側に置く必要はない。最も賢い者が最もよいというわけでもないのだ」と答えますが、「でも皇后様は最も賢くて最も優れた女人よね」と返されて言葉に詰まります。皇后として賢明なら賢明で不幸がある。このドラマ、やはり宮廷物として地味に革新的ですね……
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『清平楽』その5

2020年05月15日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第21~25話まで見ました。

仁宗が対西夏情勢の処理に追われる中、張妼晗が懐妊。案の定「お腹が痛む」だの「かと言って太医は信用できないから処方される薬は飲みたくない」だの「官家に側にいて欲しい」だのとわがままを皇后にぶつけます。曹丹姝は仁宗がそれどころではないと知りつつも、彼女が皇嗣となる男児を産む可能性もあるということで、わがままを聞き入れてやります。仁宗も皇后の処置が妥当だと褒めていますが、こんなことの繰り返しで曹丹姝さんが精神を病まないかどうか不安になってきます……

曹丹姝は皇后への不信感を仁宗にぶつけます。ここで仁宗が彼女の言うことを真に受けたらベタな後宮物になるのですが、このドラマの仁宗は良くも悪くもそこまではバカではないので、そういう展開になりそうでなりません (^_^;)

ここらへんで歴史イベント、畢昇の膠泥活字と活版印刷術の発明が挿入されます。と言っても「こんなもんが発明された」と韓琦や蘇舜欽らが官署で現物を手にするだけなのですが。

その韓琦らのもとで書記のような仕事を務める梁懐吉くん。温厚な性格と才識を買われて危うく張妼晗の側仕えにさせられそうになりますが、死亡フラグを適当に回避していますw また張茂則からさりげなく兄の梁元生も死亡フラグを無事に回避して生存していることを知らされます。この梁元生、対西夏戦の主将劉平の冤罪事件の証人として出頭する場面で、この作品では珍しいアクション・シーンで活躍したりしております。

そして康定二年、対西夏の最前線延州では、和平策の范仲淹と積極策の韓琦とが対立。韓琦の意見が通りますが、探索に出た宋側の軍が大敗してしまいます。


『左伝』に見える「止戈を武と為す」の字源説を狄青に説く范仲淹。結果としては范仲淹の和平策の方が妥当であったということになるのですが、李元昊と書信を取り交わしていたりして、西夏との内通を疑う声もあり、燿州へと左遷。

そんな中、張妼晗は女児を出産。ところがこの楚玥公主が病気がちということで色々ナーバスになっています。そこへ巫蠱によって楚玥が呪詛されているという疑惑が発生。張妼晗は側近の申告を信じて徽柔がその犯人ではないかと騒ぎ立てますが、梁懐吉の証言により、徽柔は心労で倒れた父帝のためにお祈りをしていたのだと明かされます。張妼晗は当然不満顔ですが……というあたりで次回へ。
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『清平楽』その4

2020年05月10日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第16~20話まで見ました。

西北では西夏の趙元昊(李元昊)が宋の支配から離脱して皇帝を称したということで、北宋朝廷に緊張が走ります。


ここで一瞬登場する名将狄青。県令を告発したということで辺境に流されていた梁元生も彼の配下のようです。


張妼晗さんの入内の夢もそれどころではないということで頓挫を強いられます。一方、仁宗と感情が通い合わないことに思い悩む曹丹姝は、将軍である伯父から贈られた甲冑に身を包み、仁宗お付きの宦官張茂則に、いっそ皇后の座を辞して西夏との前線に一将兵として赴きたいと訴えます。そう言えば同じく仁宗の時代が舞台の『花と将軍』は、武門の娘が西夏との戦いに従軍して凱旋し、皇室に嫁ぐという話なんですよね。2人のヒロインの境遇を対比してみると面白いかもしれません。


こちらは宦官の張茂則。幼い頃から仁宗を見守る忠実な家臣で、仁宗の行動に口を挟むことには慎重ですが、曹丹姝の立場には同情的です。あと彼女の剣の相手ができる程度には強いw

仁宗の方も群臣の前で西夏との戦いに親征すると宣言しますが、晏殊に「万が一戦死されると跡継ぎがいなくなるので、皇嗣を指名してからにして下さい」と言われてしまい、ようやく重い腰を上げて一族の子弟宗実(後の英宗)を皇嗣に指名します。

さて張妼晗はと言えば、教坊の同僚でライバルの許蘭苕の陰謀により、禁書(政治的なやつではなくエロ方面のです)を持っていたことにされ、監禁されてしまいます。教習の賈玉蘭は彼女を助け出して仁宗のもとに駆け込みます。張妼晗は仁宗の差配により、教坊から皇帝お付きの侍女となり、更に後宮の妃嬪となります。仁宗の妃嬪は宮廷物と思えないぐらいにみんな大人しいですが、彼女が秩序を乱す存在となっていくのでしょうか?後宮がよく収まっているというのは、曹丹姝が自分の感情を犠牲にしてちゃんと皇后としての仕事をしているということでもあるわけですが。

西北情勢はと言えば、ひっそりと宋軍が西夏に大敗していた模様。茂則に兄のことが心配ではないかと聞かれても「そんな人などいません」と気丈に答える梁懐吉くんも、敗報を耳にして辺境に出征している兄が死んだものと思って悲しんでいます。それにしても懐吉のような年端もいかない少年宦官もいっちょ前に重臣たちの人物論評をしたり、対外情勢について話題にしたりするところはなかなか面白いですね。
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『清平楽』その3

2020年05月05日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第11~15話まで見ました。

宮廷では苗心禾が仁宗の初めての子を懐妊。宰相呂夷簡は苗心禾を昭儀に昇格させることを提案しますが、皇后曹丹姝は昇格は出産後にすべきと反対。このドラマ、他の宮廷物だと懐妊した妃嬪に毒を盛るだの盛らないだのという話に力を入れるところを、こういう細々とした礼制とか政治に関わる論争の描写に力を入れているのが面白いです。


一方、一家離散した元梁家果子店の次男坊梁元亨くんは、母親とともに母方の実家で暮らしていたところ、母親と伯父が病没し、生き残った伯母に身柄を売っ払われて宦官にさせられておりました。しかも上官の前で自分の名前の説明をするのに『易経』の「元亨利貞」を引いて仁宗の諱「禎」を犯してしまい、良くて宮中から追放、悪くて死罪となるところを、仁宗お付きの宦官張茂則のはからいにより処分は一時保留となります。

苗心禾の方は無事に皇女徽柔を出産。こちらの名前の由来は『尚書』無逸の「徽柔懿恭、懐保小民」。皇女誕生による恩赦で救われる形になった元亨くんも、皇后の提案により懐吉と改名。


さて、梁懐吉の兄の梁元生は一家離散の後、一人酒場の小二として働いておりましたが、どうやら伯母が聊城県県令と結託して口減らしに弟を売っ払ったと察し、人身売買を行ったとして2人を告発。しかもその県令が宰相呂夷簡に賄賂を使って科挙に合格したという疑惑が噴出し、呂夷簡、そして彼を弾劾した王曾が地方に出ることになります。


そしてここらへんで宮中の教坊の踊り子張妼晗が登場。実は子供時代に仁宗と一度出会っているのですが、仁宗はすっかり忘れてしまっている様子。仁宗に恋い焦がれる張妼晗は何としても彼に近づこうとし、彼女の踊りの師匠である賈玉蘭はその意気込みと魅力を見込み、懇ろとなっている重臣の夏竦の力も借りつつ彼女をバックアップしようとします。

そんな中、都では大きな地震が発生。曹丹姝が仁宗を庇いつつ屋外へと避難した後に、「太妃は大丈夫か?」「あそこで火災がおこってないか確認せよ」と宦官にテキパキ指示する姿を目にした仁宗は、彼女の後ろ姿を亡き劉太后と重ね合わせるのでありました……

ということでこの作品、今のところベタな宮廷物になりそうでならない絶妙なバランスを保っています。また宮廷での政争を描いてはいるのですが、従来の歴史物とは違ってどぎつい印象はありません。類似作がたくさんあるように見えて実は似ているものがないという、いい意味で不思議な作品になっています。
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『清平楽』その2

2020年04月30日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第6~10話まで見ました。

仁宗の生母が李宸妃(李蘭恵)であることは民間にも知り渡り、更には劉太后が彼女を毒殺したという謡言が広がまります。仁宗は謡言を打ち消すため、太医に李宸妃の遺体を検査させ、毒殺でないことを証明させます。そして晏殊は長年仁宗の側で仕えながら実母のことを知らせなかったということで、地方に飛ばされます。この一件を収めるには誰かしらの責任を問う必要があるということでしょうね。

これで何とか一件落着と思いきや、今度は仁宗が郭皇后を後宮を取りまとめる器ではないと廃しようとしたことから、范仲淹らが反対運動を繰り広げます。それを何とか押さえ込み、呂夷簡ら重臣の意見を容れ、後任の皇后に才女として知られ、建国の功臣曹彬の孫ということで身分的にも申し分のない曹丹姝を入内させることに。


曹丹姝はドラマ的にもヒロインという位置づけになるようです。これまでも男装して范仲淹のもとで学問を修めたり、神仙趣味で女性に興味のない李植と結婚させられ、新婚初夜に三行半を書かせて実家に戻ったりと、ちょいちょい出番がありました。曹丹姝の方は以前から仁宗にぞっこんなのですが、仁宗の方は形ばかりの夫婦と割り切っており、新婚初夜に床を共にすることすらなく、彼女は失意の日々を送ります。

曹丹姝はそれでも懸命に皇后としての務めを果たそうとします。彼女は仁宗に、廃后となった後は宮中を追われていた郭氏を呼び戻して賢妃の地位を与え、苗心禾ら3人の妃嬪たちも昇格させるよう提案し、容れられます。


ところがこれに宰相の呂夷簡が反発。曹丹姝に政治的識見があると見るや、「皇后には章献太后(劉太后)の風がある」と警戒。劉太后は生前重臣たちから第二の武則天になるのでは?と警戒されていたのでした。郭浄妃(廃后の後の封号)は呂夷簡の意を受けた者により毒殺され、呂夷簡は苗心禾らの昇格に反対したのみならず、曹丹姝を弾劾します。


これにまたも范仲淹が反発。仁宗に「百官図」を献上し、呂夷簡が朋党を形成して我が物顔に振る舞っていると弾劾します。しかし仁宗は范仲淹の方を宮廷から退けて地方に飛ばす決断を下します。かわりに晏殊を都に呼び戻し……というあたりで次回へ。宮廷物であると同時に、晏殊・范仲淹な北宋仁宗朝を支えた名臣たちの物語でもあるという話の構図が見えてきました。
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『清平楽』その1

2020年04月25日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』の鑑賞を始めました。今回はTV版全69話予定のうち第1~5話まで。


北宋の仁宗を主役とする作品ということで、物語は即位から間もない天聖年間(1023~1032年)から始まります。主役の仁宗(趙禎)を演じるのは『琅琊榜』などでお馴染み王凱ですが、2話の途中まで青年役を挟んでいます。


まだ年少ということで劉太后(劉娥)の臨朝称制を受けています。しかし仁宗は叔父の八大王(趙元儼)から、実は仁宗の実母は劉太后ではなく、先帝真宗の墓を守る李蘭恵であると知らされます。ここから「狸猫換太子」の話……には行きません (^_^;) 劉太后は先帝にその識見を見込まれて仁宗の生母として政務を執ることを認められ、八大王はそんな劉太后に偏見を持ち、周囲からもちょっとおかしな人扱いされているといった具合に、従来の包青天物の設定を引っ繰り返したような感じになっています。

何とか実母と会おうとする仁宗ですが、群臣に阻まれ、せめて思い出の母の手作りの味と同じ味という蜜餞を求めれば、それが原因で果子店の梁家が破滅したことを知らされ、仁宗の苦悩は深まります。なお、この一件で若き日の韓琦と知り合うことになり、更に范仲淹、欧陽修、富弼といった具合に仁宗を支えることになる名臣たちが序盤から続々と登場。


なお、序盤で出番が多いのは、仁宗の学問の師替わりの立場の晏殊。中の人は『武林外伝』呂秀才役などでお馴染みの喻恩泰です。


伝説とは違って実母との対面がかなわないまま、彼女の病没を知らされる仁宗を支えようとするのは、仁宗の乳母の娘で幼馴染みの苗心禾。彼女は敢えて後宮に入り、仁宗の心の支えとなる道を選びます。

一方の劉太后にも死期が迫ります。仁宗は実母との対面がかなわなかった怒りは隠せないものの、一方で劉太后のことも理解できるようになっていきます。欧陽修が科挙で状元間違いなしとの評判ながら艶詞を書いていることを問題にし、別の者を状元としたり、彼女が敢えて天子の着るべき袞服で太廟での祭祀に臨もうとするのを認めたりと、その心にかなうような行動を取るようになります。そして彼女の葬儀の場で彼女を悪し様に罵る八大王を戒め……というあたりで次回へ。

古典文献からの引用を積極的に盛り込んできたり、袞服の件では細々とした礼制上の議論が展開されたりと、割と歯ごたえのある作品となっています(『陳情令』でお馴染み「明知不可為而為之」も出てきます)。今のところ流行りの宮廷物というよりは稀少な文人ドラマといった雰囲気になっており、その調子で最後まで突っ走ってくれることを願うばかりです。
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『大明風華』その2

2020年02月29日 | 中国歴史ドラマ
『大明風華』第5~10話まで見ました。

「黄大人」こと朱瞻基の協力により、孫若微は前回の永楽帝暗殺未遂事件で捉えられた聶興と再会し、更には聶興らを牢内から救出します。朱瞻基の方は、若微らの頭目「皇爺」が実は死んだはずの建文帝ではないかと睨み、彼女から皇爺の情報を聞き出したいようです。靖難の変から10年が過ぎ、瞻基の祖父永楽帝は、建文帝が生きているなら和解したいと願っていたのでした。


この前後で若微の兄貴分として登場する徐浜。喬振宇が演じています。彼も皇爺の配下なのですが……

朱瞻基は若微を永楽帝一家の顧問格の名僧姚広孝と引きあわせます。姚広孝は実在の人物で、靖難の変に際して永楽帝の軍師を務めたことで知られています。彼は若微の人相から「そなたは皇帝になることができる」と予言。彼女が景清の遺児であることも見破ります。その後、姚広孝は永楽帝にも「お前だけでなく子も孫も一族の者を殺すことになるぞ」と予言。


それを気に病んだ永楽帝は、3人の息子たち、太子・漢王・趙王と太孫の瞻基を呼び出し、なぜかスクラムを組んでお互いに殺し合いをしないという誓いを立てさせます。

段々仲良くなっていくように見えた若微と瞻基でしたが、若微は彼が油断した隙を突いて皇爺のアジトに拉致……したと見せかけて、実はそれが瞻基の作戦で、自ら人質となってアジトを突きとめるのが彼の狙いなのでした。アジトを錦衣衛に囲まれて焦る若微や孫愚たち。一方で皇爺が自分たちを使い捨ての手駒としか思っていないこともお見通しで、思い切って瞻基を釈放して投降することに。


錦衣衛にあと一歩まで追い詰められながら逃亡を果たした皇爺の正体は、死んだはずの建文帝……ではなく兪灝明演じる漢王なのでした。どうやら若微ら「靖難遺児」を自らの皇位継承権掌握の尖兵として利用したかったようですが……?

投降後は若微は瞻基の客人として皇宮に連れ込まれ、父母や祖父も含めて彼女を自らの妃候補と認識させます。


その皇宮で生き別れとなっていた実の妹の胡善祥こと蔓茵とすれ違いますが、子供の時以来とあってお互いに姉妹と認識できません。そして彼女もまた瞻基の妃の座を狙っているのですが……

時に鄭和が三度目の航海より帰還し、彼が連れ帰った外国の使者をねぎらうために宴が開かれることになります。瞻基はその宴で若微を永楽帝と対面させることに。若微にとっては両親の仇のはずの永楽帝ですが、その永楽帝がモンゴル兀良衛の使者に射殺されそうになると、身を挺して彼を庇い、矢を胸に受けて重態となり……というところで次回へ。このドラマ、物凄く面白いわけじゃないし見所らしきものもないのですが、やめる踏ん切りもつかないんですよね……
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『大明風華』その1

2020年02月20日 | 中国歴史ドラマ
見たいドラマが山積みの中、明王朝物ということでちょっと気になった『大明風華』に手を付けてみることに。今回は第1~4話まで鑑賞。

ヒロイン若微は明の建文帝に仕える御史大夫景清の長女として生まれましたが、永楽帝によるクーデター靖難の変により、両親は非業の死を遂げ、妹とは生き別れになり、自分はその昔景清に恩を受けたという武官孫愚に引き取られ、その一人娘孫若微として生きることに。妹の方は宮廷女官胡尚儀に引き取られ、その養女胡善祥として生きることになります。


そして10年後。『ラスト、コーション』以来となる湯唯演じる孫若微は、義父や仲間たちとともに反政府組織に身を投じ、永楽帝暗殺のために日夜力を尽くしておりましたが、計画はダダ漏れで暗殺は失敗、孫愚とともに商売人の親子ということで捜索を逃れようとします。


そこへ永楽帝の愛孫で後の宣徳帝朱瞻基が錦衣衛に扮して捜査に訪れます。もちろん周囲には身分を隠し、「黄大人」と名乗っています。特務の一員と暗殺未遂事件の重要容疑者として出会った朱瞻基と孫若微ですが、朱瞻基の方は若微が気になるようで……?


宮廷では病弱で頼りない太子朱高熾(後の洪熙帝)をその次弟漢王がちくちくと追い詰め、太子の地位を返上させようとせっせと頑張っておりますが、どことなく星野仙一を思わせる面立ちの永楽帝↑はそんな魂胆などお見通しで、太子はあくまで朱高熾であると重臣たちの前で宣言し、漢王の野心を挫きます。


で、今回は永楽帝の夢の中で朱元璋が登場したあたりまで。この朱元璋の顔、本放送時に物議を醸したということですが、CGで作り込んでいるようです。特殊メイクの模様。

ヒロイン姉妹は後に2人とも宣徳帝の后妃となるということで(一応お断りしておくと2人が姉妹で景清の娘というのはこのドラマの創作です)、このドラマ要するに明王朝版『宮廷の泪・山河の恋』ということなんでは……とイヤな予感がするのですが、終盤の土木の変を楽しみにもう少し見続けてみることにします。
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