Willow's Island

since 2005

ワシントンポスト紙による安倍首相へのインタビュー 日本語訳

2013年02月24日 06時30分39秒 | 中国

http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=69674
2013年2月21日からの訪米に先立ち、安倍晋三首相は16日に米紙ワシントン・ポストのインタビューに応じたが、ここでの発言内容が中国の激しい反発を招いている。

中国紙・京華時報が22日付で報じた安倍首相の主な発言内容は以下の4点。

1)中国は日本や周辺諸国との衝突を根強く求めている。
2)中国は愛国主義と反日感情を過度に強調した教育を行っている。日本をはじめとする隣国への反発的な世論を生み出し、これによって政治基盤を固めようとしている。
3)尖閣諸島問題に短期的な解決は不可能である。
4)アジア諸国との経済連携や貿易が減少すれば、中国政権にとって深刻な打撃となる。経済成長がなければ、中国政府は13億の国民をコントロールできない。

中国外交部は21日、これに対し、強い反発を表明するとともに説明を求める声明を出している。記事には22日午後1時時点で、3万3000件近い一般からのコメントが寄せられた。以下はその代表的なもの。

<以下略>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この中国側の非難声明を受け、菅官房長官は「中国国内で報道、掲載された首相のインタビュー記事は、首相の実際の発言を正確に引用していない。誤解を招くものとなっている」と反論したそうだ。中国側の報道に誤りがある、とのことである。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130222-OYT1T00732.htm?from=ylist
 どちらが正しいのだろうか。といっても当然、日本側が正しいのだろうが、念のためワシントンポストのインタビュー記事を読んで、問題となっている中国に関する部分だけ、日本語に訳してみた。以下が私による翻訳だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
http://www.washingtonpost.com/world/transcript-of-interview-with-japanese-prime-minister-shinzo-abe/2013/02/20/e7518d54-7b1c-11e2-82e8-61a46c2cde3d_story_3.html
<略>
問:彼らのより大きな目的は何だと思いますか? 中国は尖閣諸島における一連の行為で何をしようとしているのでしょうか?

安倍:中国という国家は共産党の一党支配下にある国ですが、市場経済を導入しました。共産党の一党支配下にある国として、通常目指すべきものは、結果の平等です。そしてそれが、共産党による一党支配の正当性を構成するものではないか、と言ってよいと思います。しかし市場経済を導入した結果、中国は「万人に平等な結果」という正当性を支える柱の一つを失ってしまいました。

そのため、彼らには別の支柱が必要になりました。その一つが経済成長であり、もう一つが愛国主義です。

高い経済成長に必要な天然資源を求めるための努力の一環として、彼らは海洋進出したのだと思います。

そして、彼らが追求しているもう一つの柱が、愛国主義教育です。しかしながら不幸なことに、中国の場合は、愛国主義を教えることは反日感情を教えることでもあるのです。言い換えると、中国が改革開放政策を開始したと同時に、愛国主義教育という政策がより顕著になったということです。

そうした過程において、経済に必要な天然資源を得るため、中国は南シナ海においても、東シナ海においても、威圧と恫喝による行動をとっています。これは、中国人民による強い支持を生むことにもなりました。彼らは、愛国主義を強調する教育制度で育ってきたのですから。

しかしこれは、中国が直面するジレンマでもあります。つまり、愛国主義を重視する中国の教育は、事実上は反日感情に焦点を当てるものであり、これによって造成された雰囲気が、次第に日本との友好関係を蝕み、中国の経済成長にとって逆効果となったのです。そして中国政府はこのことをよく分かっています。

問:なるほど。その理論で行くなら、中国の問題は非常に根深いということを意味します。日本はこれにどう対抗しますか。この海上における問題、ひいては日本と中国の全体的な関係について、何か解決策はあるのですか?

安倍:何よりも重要なのは、中国の指導者らと財界リーダーが、この問題の根がいかに深いか、認識することにあります。この認識がなければ、結果を生む解決策を見つけることなどできないからです。こうした背景において、もし経済成長がなくなってしまえば、共産党の一党支配で13億の中国人民をコントロールすることはできない、ということを強調したいと思います。

さらにもっと重要なことは、威圧や恫喝によってルールを変えたり、人の領海や領土を奪うことはできない、ということを中国側に理解させることです。そのために、私は11年ぶりに、海保の予算だけでなく防衛費も増加させました。威圧や恫喝によって自分の思い通りにしていくことは不可能だ、ということを認識させることが重要なのです。そうした意味において、米軍の存在だけでなく、日米同盟が決定的に重要となります。

東シナ海だけでなく、南シナ海も含めた海洋の自由を確保するためのルール作りが大切になる、と私は考えます。

日本の実効支配下にある尖閣諸島に関しては、この日本による実効支配という現状を、威圧や恫喝によって変えることはできない、と中国側に認識させる必要があります。あのような振る舞いは、最終的には彼らの経済活動にも影響を与えることでしょう。それは国際社会からの信用を失うことにつながり、結果として中国への投資が減ることになるからです。中国側がそう認識するようになれば、彼らの政策を変更させることは、十分に可能だと思います。

現在、日本も中国への投資で利益を得ている一方、日本の対中投資によって中国も、一千万人もの雇用を増加させています。リスクが大きくなれば当然、日本による投資は急激に落ち込むでしょう。そのことを理解していただくことが重要であろうと思います。
<略>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 すがすがしいほどの正論である。(^^) こういうことを日本の総理大臣がはっきりと言えなかった今までが、異常だったのだと思う。
 こうして読んでみると、中国紙・京華時報の記事にある「中国は日本や周辺諸国との衝突を根強く求めている。」という部分は、正確ではないことが分かる。安倍首相は「中国は資源を得るために南シナ海と東シナ海で威圧や恫喝を行っている」と言っているだけだ。中国のマスゴミは、都合の悪い部分を捻じ曲げて報道したようである。


<2013年2月26日 追記>
安倍首相のインタビューについて、日本語原文を入手した中国人記者がいたようなので、以下にそのリンクを張っておく。
http://livedoor.blogimg.jp/kinbricksnow/imgs/e/5/e5f306bf.jpg
大筋において間違いはなかったようだ。