最近の韓国は元大統領がよく亡くなる。韓国政治史に名を刻む巨星、金大中氏が亡くなってしまった。ご存じの人も多いだろうが、この人は殺されかけたことが一度や二度じゃない。何度妨害されたり落選したりしてもめげることなく、大統領に当選してからは韓国初のノーベル賞を受賞した。これほどすさまじい波乱の人生を送った人も珍しいだろう。詳しくはこの本を読んでいただきたい。この人の送った人生は、下手な小説よりよっぽど面白い。日本で有名な金大中事件については、「KT」という映画をお薦めする。この事件に関心のない人にとってはそれほど面白い映画ではないかもしれないが。
金大中氏の大統領としての功績といえば、IMF危機から脱したこと、韓国の民主化を大きく進展させた、などことだろう。北朝鮮に多額の献金をして南北首脳会談を無理矢理実現させた、というマイナス点はあるが、ノ・ムヒョンよりは遙かに優秀な大統領だったと思う。ノムは結局、何も残さなかったから。
日本との関係でいえば、日本文化の開放がある。金大中以前にも海賊版などで日本の音楽や漫画は十分に出回っていたことから、それほど大きな動きではない、という意見もあるが、それは違うと思う。韓国のようにタテマエをことのほか重視する国において、政府公認で認められたことの意義は大きい。このことによって、韓国にとって日本が「普通の外国」へと少し近づいていったと思う。
それから、彼の任期中に映画産業が隆盛したことも功績の一つだ。左派がずいぶんと跋扈するようになってしまったが、金大中以前に比べれば韓国は言いたいことが自由に言える社会になった。その結果、表現の自由が定着し、文化が大きく発展していったのだろう。2000年以降の韓国映画がすごく好きな私にとっては、金大中時代は黄金期であった。