Willow's Island

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高橋留美子傑作集「赤い花束」

2005年07月03日 23時52分44秒 | 
 高橋留美子の短編集「赤い花束」を読んだ。前作「専務の犬」から実に6年ぶりの短編集だ。
 読んでみれば、さすが高橋留美子である。期待を裏切らない作品ばかりだ。収録されている短編は(「義理のバカンス」を除いて)哀愁を漂わせる「おじさん」を主人公としたものばかりだが、そのおじさんたちに注がれる作者の温かい視線が、全編を通じて感じられる。読んでいると私まで癒されたような気分になってくる。子供から見れば私も立派な「おじさん」であり、中高年の悲哀は他人事ではないのだ。しかも、この高橋留美子という作家は話作りが非常にうまく、ユーモアセンスが良いので、深刻なテーマを扱っていても作品が暗くなることはない。漫画として気楽に楽しめるようになっている。
 とはいえ、やはり全体的に作品のテンションが低めになっており、そういう意味では前作「専務の犬」には及ばなかったのではないか、と思う。