父子合作の”孤愁 サウダーデ”を読んで父新田次郎が取材旅行に行った足跡をたどって藤原正彦がポルトガルを訪ねた紀行本を知った。故国ポルトガルへの熱い想いを抱きながら、妻おヨネの墓を守りつつ徳島の地で死んだモラエスに新田次郎は憑かれたように取り組み、ポルトガルを隈なく訪ねた。その父の詳細な取材ノート(絵や歌も書き込まれているそう)をたどり、息子も憑かれた様に駆け巡った。父親が亡くなって二年後、悲しみの内に凄い気迫が感じられる。エヴォラの民宿へ泊まりベットへ横になった時犬の鳴き声が聞えハッとした。父のノートに「犬がなく」と書いてあった。夕闇がたちこめ二年前と何ら変わらない自然の営み、著者は激しい憤りを感じる。父があっけなく生を終わったと言う事に…。それから30年後やっと父の未完の”孤愁”を息子が完結させた。彼の内でも30年という年月は必要だったのでしょう。亡き父を求めた烈しい旅だったから。(CDは2005年ポルトガルで手に入れたコインブラ大学の学生のファドとCDショップのおじさんのお勧め2枚)