英国のロンドンの北にあるトリングの自然史博物館から、300羽もの貴重な美しい鳥の標本が若きアメリカのフルートを王立音楽院で学んでいる学生に盗まれた。2009年に起こった事件のノンフィクション。不思議な事に博物館は1ヶ月以上も盗難に気付かなかった。鳥の剥製(内臓を抜きとり皮に羽の付いた状態)だけでも700万羽以上もあり他の膨大なコレクションと共にキューレターが把握できる範囲ではなかったらしい。英国人はフライ・フィッシングは高級な趣味とされ綺麗な毛鉤作りから夢中になる。そうした人の間ではレアな美しい羽は高価に取引されていると言う。学生もその知識は持っていた。一年半も経ってから学生は捕まった。しかし驚いた事に裁判所は無罪を言い渡した。何故か?学生はアスペルガー症候群だったと言うのです。たった10年前にこんな奇妙な事件が起きていたとは…。トリングの博物館はかの有名なロスチャイルドがその財力で収集した鳥類のコレクションが寄贈されてスタートした。19世紀には婦人の帽子にレアな美しい鳥一羽を飾るファッションが流行し多くの貴重な鳥が公然と失われたそうです。 我が夫もフライ・フィッシングが好きで安い毛鉤を川の流れに任せて雰囲気を楽しんでいた姿が今となっては愛おしく眼に浮かぶ。