哲仙の水墨画

デジカメの風景写真、四季の草花、水墨画、書、短歌などを楽しみます。

祈りの多い三か日(写真)

2009-01-16 07:36:43 | 写真
三か日過ぎし寺院はおみくじの
願ひが枝にひしめき合へり       樋田哲仙

 あわただしい三か日が過ぎた社寺の境内には大潮の引いた感がある。大阪貝塚市水間寺を訪ねると、平静を取り戻した中に辛うじて人出の痕跡ともいうべきおみくじが、本堂前の桜の古木にびっしりと結び付けられていた。壮観でもあり、滑稽でもある。現代でも神仏への祈願を運試しとして求めたなによりの証である。

鈍牛といわれた宰相(水墨画)

2009-01-15 07:35:05 | 水墨画
往々に陥りがちな外見に
人見ることの戒めるべし     樋田哲仙

 30年前宰相にまで上りつめた人物に国会答弁もインタビューも口は重く、あーうーの連発で国民から宰相には不向きと思われ、「鈍牛」とも「こって牛」ともあだ名さられ揶揄された。人は見かけで判断しがちだが、中身は決してそうではない。じっくりその人物が分かってくると、よさが目につき段々イメージが変るものだ。 にほんブログ村 美術ブログへ 

正月の 一茶(書)

2009-01-14 07:22:22 | 
正月の子供と成りて見たきかな      小林一茶

 現代でも正月は心機一転して全てが新しく出発する年の節目である。大人も子供どこか心に気合がみなぎり、安らぎも生まれる。一茶の生きた江戸中期は生きること自体が厳しい時代である。信州での生い立ちは尋常ではなく、江戸へ出ている。そんな一茶は大人になっても無邪気な子供の心は羨ましかったのだろう。このことは誰にでもある。

除幕式なるえべっさん(写真)

2009-01-13 07:14:34 | 写真
石像の除幕となりてえべっさん
年の初めの祈りを込める        樋田哲仙

 大阪貝塚市の脇浜戎大社では宵宮の9日、戎石像が建立され除幕式が行われた。高さ2・1㍍、台座を含めると3㍍を越える。台座の上には直径20㌢の干支玉が12個めぐらし、生まれ年にあわせて祈るようになっている。この神社は大阪南部では名が知られ3日間は商売繁盛の福笹を求める参拝客が多い。

牛に迷惑なこと(水墨画)

2009-01-12 07:30:45 | 水墨画
迷惑と牛もさぞかし嘆くらむ
時に議会の牛歩戦術        樋田哲仙

 牛の歩行は一般的に遅いイメージがあるが、どうしてどうして実の歩きは言うほど遅くはない。大地を力強く踏みしめるため人間が勝手に遅いと表現してしまった。牛にしては心外だろう。牛歩戦術なる言葉まである。議会で審議を引き延ばすための戦術で採決にわざと牛歩を行う。牛が怒っている気がしてならない。字は意識しての忙中歓(閑) にほんブログ村 美術ブログへ 

京阪神で賑わう十日戎(書)

2009-01-11 06:13:42 | 
福笹をかつげば肩に小判かな       山口青邨

 京阪神で盛んな十日戎は1月9日を宵戎、10日を本戎、11日を残り福と称して3日間行われる。特に有名なものは大阪市・今宮戎神社、西宮市・西宮神社が知られている。商売繁盛を求めて今宮戎は100万人の人出となる。この日は孟宗竹の枝(福笹)に縁起物の小判、米俵、鯛、、打出の小槌、護符などをつけてもらい家や店に1年間飾る風習。

嵯峨野の竹やぶ(写真)

2009-01-10 06:54:24 | 写真
風なきに葉ずれの音の竹やぶの
薄暗き道行く嵯峨野かな        樋田哲仙

 足利尊氏が後醍醐天皇の冥福を祈るために建立した天竜寺の裏門を出ると東西に伸びる孟宗竹の竹やぶがある。東へは野宮神社へ、西へは大河内山荘へと続く。両側に竹の穂先でこしらえた道は昼でも薄暗く風もないのに葉ずれの音がして旅情を醸し出す嵯峨野がある。他所では見ない人工的景観を人は楽しむ。

丑の力(水墨画)

2009-01-09 07:26:44 | 水墨画
干支のみにあらざる丑の底力
方位にもなり時刻にもなり        樋田哲仙

 現在使用されて生きているのは干支第2番の丑であるが、昔は方位をも示し、北から東へ30度の方角となる。また、時刻では午前1時から3時までの間である。「丑の時参り」は嫉妬深い女が恨みを持つ男を呪い殺す手法で、男に模したわら人形の胸に5寸釘で大木に打ちくけるものだが、人に見られないように丑時に行う。  にほんブログ村 美術ブログへ

匙重く 時彦(書)

2009-01-08 07:35:50 | 
匙重くなりて葛湯の煮えにけり        草間時彦

 葛湯に砂糖を入れて熱湯を注ぎ、匙(さじ)でかき混ぜていると粘りが出てきて出来上がりである。初めは湯を混ぜるだけだから軽いが、粘りで急に匙に抵抗感が出たところを句にしたものだ。子供のころ病気になると、母が作ってくれた記憶があり、病人食だと理解した。吉野を訪ねると、特産として良質の吉野葛がみやげ物店で売られている。

新年を寿ぐ獅子舞(写真)

2009-01-07 07:12:52 | 写真
新しき年迎へたる喜びに
祈りも深く獅子が寿ぐ       樋田哲仙

 今年ほど静かな正月を過ごしたことはない。強い寒気団に出鼻を挫かれてしまったもので、初詣どころではない。毎年京都の伏見稲荷大社、平安神宮、岩清水八幡宮を巡拝していたのだが。やむなくスーパーの正月イベントで我慢することにした。元日は五穀豊穣を祈り、悪魔祓いをする新年にふさわしい獅子舞が行われた。

牛に引かれて善光寺(水墨画)

2009-01-06 05:24:57 | 水墨画
寺に牛深くかかわる諺に
牛に引かれて善光寺参り       樋田哲仙

 牛は天神さんにだけに縁があると思いきや、ことわざに「牛に引かれて善光寺参り」がある。辞書には思いがけない縁で、また自身の発意でなくて他のことに導かれて偶然良い方向に進むこととある。人生にはこんなことは良くあるものだ。予期せぬ方向へどんどん発展すれば順風満帆である。そんな丑年にしたいものだ。  にほんブログ村 美術ブログへ

門松の 一茶(書)

2009-01-05 05:56:50 | 
門松のややかたむくを直し入る       小林一茶

 月日の経つのは早いもので、丑年の正月を迎えたと思ったらもう5日も過ぎた。門松も数日を経ると、形の崩れるものも出てくる。気になって元通り形を整えたというのである。正月の飾りは15日の小正月までに片付ければよい。最近は門松を見かけなくなった。商店街は近郊に大型スーパーの出店で大打撃を受けて、シャッター街といわれる街が多い。

寺に牛とは(写真)

2009-01-04 06:04:47 | 写真
天神の使ひなれども三室戸は
本堂前に牛の像あり       樋田哲仙

 学問の神で知られる菅原道真を祭る天神さんには牛の像が境内に鎮座するのが通例であるが、宇治・三室戸寺は寺でありながら桜御影の牛の石像が本堂前に居座る。大きく口をあけた中の玉に触れると勝運がつくといわれる珍しい牛で「宝勝牛」と名づけられている。参拝客を迎える向きではなく、逆に本堂を向いている。

初夢は宝船(水墨画)

2009-01-03 06:48:06 | 水墨画
丑年になりて見たきは初夢の
俵に財貨積む宝船         樋田哲仙

 宝船は正月の初夢を見るために枕の下に敷いた縁起物で、米俵、巻物、財貨を積んだ帆掛けの船である。回文(後ろから読んでも同じ)の「ながきよのとおのねぶりのみなめざめなみのりぶねのおとのよきかな」を書き添えた昔の風習で、現在は聞いたこともない。船には七福神が乗る場合もある。 にほんブログ村 美術ブログへ 

ふるきよき 龍太(書)

2009-01-02 07:31:56 | 
ふるきよきころのいろして冬すみれ      飯田龍太

 人は誰でもよき時代の記憶があるものだ。しかし、そのときは決してよいとは気づかない。むしろ、悩み多く、苦しみと思いがちなものだ。青春時代は特にそれが強い。それらも老齢になると懐かしさが出て、あののころは良かった回想に変る。スミレは多年草で春の草花。冬とことわりがあるから春間近の薄紫が目にとまったのだ。