哲仙の水墨画

デジカメの風景写真、四季の草花、水墨画、書、短歌などを楽しみます。

銅製の金剛力士(写真)

2008-04-30 07:15:14 | 写真
登り来て繖山に銅製の
金剛力士の怒りの顕わ       樋田哲夫

 滋賀・安土町の西国三十三札所観音正寺は繖山(きぬがさやま)の九合目あたりに建つ古寺。以前の訪問に比較して境内がすっかり様変わりした。まず、迎えたのが銅製の金剛力士。これが露天である。本堂が火災による再建。横の斜面が大きな岩石で埋め尽くされ、露座の大仏など記憶にはない。登山道も自然石が整備されていた。

鯉のぼり(墨彩画)

2008-04-29 07:03:36 | 墨彩画
風なきに幟の鯉は珍しく
泳ぎ忘れて竿に寄り添ふ          樋田哲夫

 きのうは早朝から京都や滋賀を一日中歩いた。穏やかな日差しに風のない旅は快適であるが、近江八幡や安土をめぐっていると近江平野の田舎の民家には本格的な鯉のぼりを時々見かけた。が、残念ながら風のない日の鯉のぼりはポールにまとわりついて無残で死んだも同然である。これは凧揚げも同じである。 にほんブログ村 美術ブログへ

海棠の 介我(書)

2008-04-28 05:39:59 | 
海棠のはなの満ちたり夜の月       佐保介我

 介我は大和の人だが、江戸に出て芭蕉に師事。カイドウが満開になって美しい。夜は満月となってカイドウの花を際立せている意だらう。ハナカイドは単にカイドウと呼ばれ、中国原産の落葉低木。花柄が長く1ヶ所から4~6個のピンクの花が垂れ下がる。庭園の花木で桜の終わったころに可愛らしい花が咲き始める。

桜の通り抜け(写真)

2008-04-27 07:06:45 | 写真
歳ひとつ重ねし故か見るほどに
去年(こぞ)の桜と異なりて見ゆ      樋田哲夫

 {桜の通り抜け」は大阪造幣局の中の八重桜125種、370本、560㍍を一般公開する行事で今年は16~22日までの期間中80万人の花見客が押し寄せる。年齢を一つずつ重ねるせいか去年見た桜と同じ桜が今年は少し違って見えてくる。あと何年生きられるかと思うこのごろの心で見る感慨がそうさせるのだろう。

鯉のぼり(墨彩画)

2008-04-26 07:42:46 | 墨彩画
吸ひ込みて時折鯉は青空の
高きを泳ぐ今日の風かな       樋田哲夫

 風が弱く緋鯉や真鯉の鯉のぼりが垂れているときに、急に風をはらんで泳ぎだすことがある。風にも命の躍動があるらしく、鯉のぼりの動きは風そのものであり、強弱、風向を示しながら、まるで深呼吸をするがのように動く。よく晴れて空が青いときは、人の心までも浮き立たせてくれているが、実は、風を見ているのでもある。 にほんブログ村 美術ブログへ

紫の 句仏(書)

2008-04-25 06:51:28 | 
紫の桜とみゆるつつじかな       大谷句仏

 句仏は東本願寺第23法主(彰如)。俳諧を好み自らを句仏と号す。画は京都画壇の重鎮竹内栖鳳に、書は杉山三郊に学ぶ文化人で昭和18年没す。ツツジが紫の桜に見えたという。どんなツツジであろうか。まず、ツツジと桜では樹高、樹形が違う。ツツジの花の色は薄いピンク、濃いピンク、白が多い。韻文学は理屈を言うべきではないらしい。

天王山山頂(写真)

2008-04-24 06:47:53 | 写真
新緑をひたすら登る戦ひの
天王山はわが裡の山           樋田哲夫

 京都府・大山崎町の天王山は標高270㍍の低山ながら景勝地にある。淀川を挟んで男山と向かい合い、付近一帯は社寺や、史跡が多い。天王山は天正10年本能寺の変で信長の死後、秀吉と光秀の決戦の舞台となった歴史の山である。山頂は石垣があるのでもなく、視界も雑木でよくない。ただの山に過ぎない。

水路に泳ぐヒゴイ(水墨画)

2008-04-23 06:57:23 | 水墨画
そそられて旅の津和野は塀沿ひの
水路にあまた真鯉に緋鯉            樋田哲夫

 島根南西部の津和野は亀井氏4万石の城下町で、昔の面影が残り小京都と呼ばれる一つである。和紙を産し、医師で作家の森鴎外が有名。民家の塀沿いの水路にはゆったりとコイが泳ぎ、季節にはカキツバタやハナショウブの花が咲く光景は旅情をそそる。旅行会社のパンフレットにはこんな風景が紹介されている。 にほんブログ村 美術ブログへ

山吹や 芭蕉(書)

2008-04-22 06:26:24 | 
山吹や宇治の焙炉の匂ふとき       松尾芭蕉

 宇治市にある西国三十三札所三室戸寺の境内に、この句碑が建つ。芭蕉は茶所宇治を訪ねて、茶の煎(い)る匂(にお)いをかいで詠んだ。現在寺の周辺には茶畑も製茶工場もない。茶を煎る工場からの匂いが漂い、辺りに山吹が咲いていたのである。宇治のどこかで詠んだ句を人の多数訪れる寺に碑を建てたと思う。出身地の伊賀と山城は近い。

時の人「くいだおれ太郎」(写真)

2008-04-21 07:09:57 | 写真
「くいだおれ太郎」の行方気遣ひて
早き朝より人だかりせり       樋田哲夫

 今年7月8日で閉店が発表されて全国ニュースで流れた道頓堀の「名物くいだおれ」の「くいだおれ太郎」を見るため、天王山へ行く前に立ち寄ったが、開店前で人形は出てなかった。店頭を清掃する従業員に尋ねると後10分ほどで出すと言うので待つことにした。人形が出される前から人だかり。昼ごろからは交通渋滞が出るという。

ハスの葉を傘代わりに差すカエル(水墨画)

2008-04-20 06:13:25 | 水墨画
散る花に目覚めて外に出るらし
蛙の声はいまだ聞かねど      樋田哲夫

 ハスの葉を傘代わりに差して歩くカエルの絵は漫画である。水に強く雨などなんとも気にもかけないカエルが傘を差すなどありえない。3月5日の啓蟄(けいちつ)から40日を過ぎ、冬眠より目覚めてどこかに出ているが、声は立てない。田植えで田に水を張るころの賑やかな合唱はオスからメスへのラブコールという。 にほんブログ村 美術ブログへ

散る花を 守武(書)

2008-04-19 06:29:26 | 
散る花を南無阿弥陀仏と夕かな        荒木田守武

 守武はこのブログ初登場。伊勢内宮の禰宜の子で自らも禰宜となる。幼少のころから連歌をたしなみ後にわずらわしい約束から逃れ、俳諧連歌を文学の一分野に独立させ守武は俳祖といわれた。伊勢神宮では毎年9月に守武際記念俳句大会を開催している。無情に散る桜を見て僧ならぬ神官が南無阿弥陀仏と唱えるはやはり人間である。

草津・追分道標(写真)

2008-04-18 06:34:49 | 写真
                   追分道標


              高札場
右左示して石の道しるべ
東海道と中山道と       樋田哲夫

 江戸時代の重要な街道・東海道と中山道の分岐点には追分道標が建っている。すぐ側には高札場もあり、多くの旅人が足を止めて眺めたことであろう。その数少ない面影が現在も残る草津は大きな宿場であったことをしのばせる。本の知識よりも現地を歩くことで得る知識はより鮮明であることを今回は実感した。

躍動する鯉(水墨画)

2008-04-17 07:53:42 | 水墨画
窓際に小さき鯉の吊るされて
薫れる風は幸運びくる        樋田哲夫

 新緑の季節になると爽やかな風を受けて空に舞う鯉のぼりの光景は心が和む。田舎の大きな屋敷では加工された杉の大木を立て、賑やかに音を立てて回る矢車に大小の鯉のぼり3~4匹が泳ぐ姿はつかの間疲れが取れる。都会では住宅事情もあってそれも適わず、玄関や窓際に飾る程度でほんのしるしだが、子供には大きな夢となる。にほんブログ村 美術ブログへ 

てのひらに 水巴(書)

2008-04-16 05:45:32 | 
てのひらに落花とまらぬ月夜かな         渡辺水巴

 桜の花びらが静かに落ちてくるのを手のひらに受け止めらないのは、手を差し出しただけの自然任せにしていて、少し風が流すのだろう。月夜とあれば幻想的な光景である。桜ほど散るときまで美しく感じさせる花は数少ない。花弁が小さく、軽くて花数が多くないと落花の美しさは生じない。桜はこの条件を満たしているのである。